HR用語の基礎知識

中途採用を成功させるポイントを解説|採用基準や
選考方法を見直して人材を見極めよう!

採用担当者からすると、一度は「中途採用は難しい」と感じたことがあるのではないでしょうか。中途採用には新卒採用とは異なる特徴があり、経営層や現場のオーダーにこたえて採用人数を確保するためには、ポイントをおさえた採用活動を行わなければなりません。

この記事では、中途採用がうまくいかずに悩んでいる採用担当者に向けて、採用基準の重要性や策定方法、人材を見極めるポイントなどを解説します。中途採用のポイントをおさえて、採用を成功させましょう。

中途採用ではポイントをおさえた採用活動が重要

中途採用は新卒採用に比べて難しいと感じる担当者は多いようです。経営層や現場の「即戦力となる優秀な人材がほしい」という要望に対し、すぐに適切な人材を獲得できるとは限りません。自社の求める人材を採用するために、計画立てた活動が必要になります。

ここでは、中途採用におけるポイントを押さえた採用活動の必要性と、その理由をみていきます。

母集団を形成しにくい

中途採用の求職者は、現場の即戦力として期待されます。しかしスペックの高い人材はなかなか採用市場に現われません。

これは、企業はより優秀な人材を求め、求職者はより良い企業を求めるという、双方が今いる立ち位置よりも上を求めるという、クロス構造が引き起こしていると考えられます。
「採用できる人材」よりも上のスペックを持つ「採用したい人材」では、採用における難易度が大きく異なります。

優秀な人材には取引先からのスカウトやフリーランスになるといったさまざまな選択肢があり、オープンな採用活動を行わないケースもあるためです。また採用市場に現われた場合も、目を付ける企業が多いことからすぐに就職先が決まってしまうことが多いです。

中途採用市場にいる優秀な人材の数には限りがあり、同時期に一斉スタートを切る新卒採用のような大きな母集団形成はできません。会社が必要とする人材に出会ったら、自社を選んでもらえるように積極的に自社をアピールする必要があります。

優秀な人材は争奪戦になりかねない

他社の採用担当者も、優秀な人材の獲得を狙っています。そのため採用市場に出た優秀な人材をめぐって、ライバル社と争奪戦が起こります。

2021度は新型コロナ感染症の影響で、各社は採用を控えました。しかし2022年度に多くの業種で回復基調となり、2023年度も引き続き求人倍率の上昇が予想されています。

厚生労働省の発表によると、2023年1月の有効求人倍率は1.35倍、新規求人倍率2.38倍です。企業間の人材獲得競争が続くなか、しばらくは中途採用が難しい状態が続くでしょう。

※出典:厚生労働省|一般職業紹介状況(令和5年1月分)について

人材の見極めが難しい

中途採用で入社した社員には、即戦力が期待されます。採用担当者は短い時間のなかで、求職者のスキルや人間性などを判断しなければなりません。

業種は同じでも前職と仕事内容が異なれば、一から教える必要があります。また異業種から転職を希望する未経験者のなかにも、高いポテンシャルの人材がいます。

このように中途採用の求職者は多種多様な背景を持っているため、人材の見極めが難しいのです。採用基準や評価基準などを明確にして、優秀な人材の取りこぼしがないように気を付けましょう。

中途採用を成功させるポイント 

中途採用を成功させるために、押さえておくべきポイントがいくつかあります。ここではおすすめの採用活動の時期や、採用基準の見直しなどについて解説します。

採用市場が活性化する時期を狙う

採用スケジュールがほとんど決まっている新卒採用と異なり、中途採用は会社の都合に合わせて採用活動を行えます。しかし採用市場が沈滞している時期に募集をかけても、求める人材が市場に少数しかいないので応募者の数は増えません。

中途採用では採用市場が活性化する時期を狙うことが、ポイントです。一般的に採用市場が活性化するのは、2月中旬から3月下旬と、8月中旬から9月下旬です。しかし新型コロナの影響で各社が採用を手控えたときのように、採用動向は常に変化します。いつでも採用を開始できるように、常に採用動向に対してアンテナを張り巡らせておきましょう。

また採用市場が活性化する時期には、他社も採用活動を行います。ライバルが増えるので、争奪戦に勝つために自社なりの戦術を立ててください。

採用スケジュールは逆算して立てる

採用計画は、会社の経営戦略と事業の発展に欠かせません。人材の欠乏は、会社の存続に関わります。もし「〇月までに3名」のように入社予定時期のオーダーが現場から上がっているなら、入社予定時期に間に合うように逆算してスケジュールを立てましょう。

採用計画を立てる全体の流れは次のとおりです。

  1. 経営層や現場へのヒアリング(いつまでに、どのような人物が、何人ほしいか)
  2. これまでの実績から自社採用の課題を抽出
  3. 採用基準を作成(必要人数や雇用形態も確定する)
  4. 採用手法(求人広告、スカウト、人材紹介など)の選定
  5. 採用スケジュールの決定

採用スケジュールは、求人を開始して書類選考や面接を行うのに最低1カ月、入社して活躍を始めるまでに2カ月程度はみましょう。また採用をゴールにせず、育成研修が終わるまでをゴールとして計画すると良いです。

採用基準を見直す

採用計画の中でも、採用基準の策定は重要です。公平に評価するための指針となる採用基準がないと、面接官の好き嫌いで採用が決定される恐れがあります。

担当面接官によって見るポイントを明確にすると、より選考の基準がはっきりしていきます。各パートごとにポイントをおさえておきましょう。

人事:おもに人物面や、退職理由など、ネガティブな要素がないかに注力
現場:おもにスキル面や、一緒に働くメンバーとして好ましいか。
経営陣:会社のビジョンや方針に対する共感度などのマッチング

また既存の採用基準があったとしても、使いまわせるとは限りません。採用動向や現場の求める人物像は変化するため、その都度見直して採用基準を最新のものにしましょう。

採用基準の策定方法

採用基準の策定方法は次のとおりです。

  1. 転職トレンドの把握
  2. コンピテンシーの洗い出し
  3. 現場や経営者層とのすり合わせ
  4. コンピテンシーの確定
  5. 各選考フローに反映

まず転職トレンドを把握します。求人倍率が高く採用難易度が高い時期には、採用基準が厳しいままでは欠員の補充もままなりません。また求職者が望んでいるもの(ワーク・ライフ・バランスや企業の安定性など)を把握しておくのもポイントです。

次に求める人物像を明確化します。コンピテンシーとは、高い業績を出している人物に共通する特性です。新しい人材を必要としている部署において、モデルとなる優秀な人材をピックアップして、成果につながる行動を分析しましょう。

現場や経営者層とコンピテンシーをすり合わせて修正を行い、求める人物像を確定します。コンピテンシーが確定しても、各選考フローで応募者を見極められなければ意味がありません。最後にコンピテンシーに当てはまる人物か見極めるための、評価基準や質問項目を整えます。

自社のビジョンや魅力を積極的にアピールする

求職者に「この会社は魅力がない」と思われてしまわないように、ホームページやSNS、求人広告、面接時などを利用して、自社のビジョンや魅力をアピールしましょう。

特に注意が必要なのは、面接です。面接では企業が評価するだけでなく、求職者からも評価されます。求職者に否定的な質問をしたり、威圧的な態度をとるのはデメリットが多くおすすめできません。面接官には事前に威圧的な態度を取らないように伝えておくと良いです。

また誰が面接するかも、ポイントです。効果的なアピール方法には、最終選考での社長面接があります。社長自らが自社のビジョンや企業文化、自社の魅力などを語れば、説得力が強くアピール効果も大きいでしょう。

スピード感をもって対応する

採用にはスピードも大切です。選考がゆっくり進んでいると先に他社から内定が出て、そちらに入社してしまう危険があります。応募者が併願していることを忘れずに、連絡事項はスピーディーに行いましょう。

現職で活躍中の求職者は、平日昼間の時間帯になかなか面接予定を入れられません。早朝や夜遅めの時間帯の面接も受け付ければ、日程調整がスムーズになります。他にも連絡時間や頻度にも気を使うと、会社に対する好感度はアップします。連絡する際は、求職者が過度な不安を抱えてしまわないように、相手の気持ちに配慮しながら対応するようにしましょう。

中途採用で良い人材を見極めるポイント

選考のなかでどのように人材を見極めたら良いのか知らなければ、求める人材は採用できません。書類選考と面接において、人物を見極めるポイントをそれぞれ解説します。

書類選考時の見極めポイント

書類のどのような点を評価するのか決めておかなければ、優秀な人材を取りこぼしてしまいます。ここでは書類選考時に着目すべきポイントを、3つ紹介します。審査基準や評価方法を決める際の参考にしてください。

文書作成スキルや基本的なマナー

ざっと書類に目を通しながら、誤字脱字、誤変換、文章の読みやすさ、正確さなどを確認します。誤字脱字があったから不合格というわけではありませんが、推敲をしっかり行わずに書類を提出している可能性が高く、頻度や募集しているポジションによっては合わないでしょう。

また長文で志望動機が書かれていると熱意が伝わるものですが、だらだらしていたり同じ内容が繰り返されたりしている場合、読み手を意識していないのがわかります。最近ではインターネットに掲載されている模範文をそのまま記載している書類も少なくありません。読み手を意識してわかりやすい文章作成を心がけているか、自分の言葉で表現しているかもポイントです。

経歴やスキル

経歴やスキルは、入社後に即戦力として活躍できるか見極める重要な項目です。募集要件に合致した経歴や、スキルを持っているか確認します。

職種名が一緒でも、仕事内容が異なる場合があるので注意してください。経歴やスキルで気になる点があれば、面接時に確認できるようにメモを残すと良いです。

また「ポテンシャルの高そうな人材だけれど、今回の募集要件に合わない」という求職者は、他部署で採用できないか検討するのもおすすめです。すぐに書類を破棄せずに、面接で別のポジションに興味があるか求職者に声をかけてみましょう。

実績

これまでの実績を事実に基づいて、相対的(できれば数字)に表されているかどうかも重要なポイントです。(何人中何位の成績や、何%の達成、その成果が社会に与えたインパクトなど)
また社内評価がわかるような、表彰などの記載もポイントになります。

転職理由と在籍期間

転職理由と在籍期間は、早期退職しやすいかの判断材料になります。1~3年で転職を繰り返している場合、飽き性で転職しても長く続かない可能性があります。しかしやむを得ない事情やポジティブな理由のケースもあるので、在籍期間と転職理由はセットで考えましょう。

また次のチェック項目に当てはまる求職者は、離職リスクが高い可能性があるので注意が必要です。
  • 履歴書の年月日の記入漏れが多い
  • 他業種・他職種間の転職が多い
  • 長く勤めていても昇給・昇格をしていない
  • 1~3年以内に転職を繰り返す
書類で判断しかねる場合には、書類選考ですぐに落とさず面接時に不明点を質問してみてください。

面接時の見極めポイント

短時間の間に求職者を見極めるためには、事前の準備が必要です。求職者はほとんどの場合、回答を用意しています。表面だけ面接の形をとっても、なかなか本音の部分は見えません。

採用基準を面接フローにしっかり落とし込み、どのような質問をしたら相手の本音を引き出せるのか事前に準備をしておきましょう。ここでは面接時の、ポイントを3つ紹介します。

退職理由と入社の動機

「退職理由と入社の動機」は、自社で活躍し長く働いてもらえるか確認するための質問項目です。「今の会社では、やりたいことができない」というような答えがよくありますが、退職理由や入社の動機としては不十分です。即戦力として長く活躍できるか見極めるためには、病気や家族の問題など相手が触れてほしくない点に配慮しつつ、一歩踏み込んで詳細を聞いていきましょう。

たとえば退職理由で、「長時間労働が常態化していたため」と答えたとします。長時間労働には、会社の業績不信や長時間労働の常態化といった会社側が問題のケースと、ミスの多さや仕事の遅さという本人が問題のケースがあります。

面接官は次の質問で、問題があったのは会社なのか本人なのか見極めなければなりません。独りよがりで「会社が悪い」と責任転嫁しているなら、入社しても同様の問題を起こしてしまいます。

また退職理由の本音をうまく聞き出せない場合、入社動機から探るのも有効です。次の会社に求めるものを尋ねると「ワーク・ライフ・バランス」「給料」「人間関係」などの回答が出てきますが、ほとんどのケースで前の会社で得られなかったものです。

<退職理由と入社動機を探る質問例>

  • 「転職を決意したきっかけはなんですか?」
  • 「どのような基準で、転職先を選定されていますか?」
  • 「前の会社で実現したくてもできなかったことはありますか?」
  • 「次の会社に求めることはなんですか?」

即戦力として活かせる経験とスキル

中途採用で入社した人は、即戦力を期待されます。現場が求めている経験やスキルを求職者が持っているか、採用基準に沿って面接で確認しなければなりません。

しかし専門職や技術職の場合、人事担当者が詳細まで確認するのは困難です。可能なら現場を知る社員に同席してもらい、専門的な質問で深堀りしてもらいましょう。また同席が難しい場合には具体的なエピソードを尋ねると、合否の良い判断材料が得られます。

<経験とスキルを探る質問例>

  • 前職の仕事内容について詳細を教えていただけますか?
  • 〇〇(会社が求めている経験やスキル)の経験は、何年くらいありますか?
  • 業務において苦労した点を、エピソードを交えて話していただけますか?

臨機応変なコミュニケーション力

コミュニケーション力が必要なのは、営業職や接客業だけではありません。どのような職種でも、コミュニケーション力は重要です。面接官との相性によって評価が左右されやすいので、評価のブレに注意しながら求職者を評価しましょう。

コミュニケーション力とは、人間関係を円滑に構築・維持する能力です。明るくよく話す外交的な人が、必ずしもコミュニケーション力があるとはかぎりません。一方通行で話す人よりも、双方向でコミュニケーションできる人のほうがコミュニケーション力が高いと言えます。

そのため話す内容だけではなく、話の聞き方、相槌や笑顔、言葉のキャッチボールのうまさなど、さまざまな観点からコミュニケーション力を評価してください。

評価方法には、自己紹介のようなプレゼンテーションの時間を与える方法や、答えの範囲を制限しないオープンクエスチョン(例:「〇〇についてはどう思いますか?」)を投げかける方法があります。また事前に準備しておけない質問を挟み、臨機応変なコミュニケーション力をみても良いでしょう。 

<コミュニケーション力を探る質問例>    

  • 簡単に自己紹介していただけますか?
  • もしやったことのない業務を任されたとしたら、最初に何をしますか?
  • 同僚や上司との人間関係で大事なことは何だと思いますか?

事前に評価基準をすり合わせておくことも大切

面接といっても、おもに採用担当者が採用基準に合致しているか確認する一次面接、現場の担当者が同席してスキルやともに働いていけるか確認する二次面接、社長や役員との顔合わせも兼ねた最終面接などで、評価するポイントが異なります。策定してある採用基準をもとに、採用フローごとの評価基準を取りまとめておくのが人事の役割です。

また面接官の好き嫌いや評価のばらつきによって優秀な人材を不採用にしないためにも、事前に採用基準や評価ポイントを面接官と共有する必要があります。選考メンバーを選考前に集めて打ち合わせる時間を取り、面接で確認してほしいポイントを明確に伝えましょう。

中途採用後のフォローも忘れずに

採用担当者の役割は、求職者の入社後も続きます。早期退職を減らすためにも、求職者を採用後に放置してはいけません。特に中途採用の場合、周囲が「教えなくてもできるだろう」「そのうち馴染むのでは」などと考えがちです。

入社後には人的つながりのフォローやヒアリングを行い、早く会社になじめるようにフォローしましょう。少なくとも入社後2カ月程度は見守る必要があります。また企業理念や、部署単位の業務・役割を知ってもらうためにも社員教育が必要です。

採用のポイントを押さえマッチング精度が高い選考を実現しよう

中途採用では現場が求める人数分、スキルや経験を持つ人を確保する必要があります。優秀な人材は採用市場にそれほど多くないため、採用戦線に勝つために自社なりの戦略をもって臨まなければなりません。

採用活動の時期、採用基準の策定、各選考フローごとの評価基準など、採用のポイントを押さえて、マッチング精度の高い選考を実現しましょう。

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