「応募者が集まらない」「内定辞退者が多くて困っている」など、採用活動に課題を抱える企業は少なくありません。自社の採用課題を解決するためには、採用計画を立てることが重要です。
近年は、採用活動を取り巻く環境が変化しているため、自社の事業計画や経営方針に沿って定められた「採用計画」がより重要性を増しています。
本記事では、採用計画の概要や重要視される理由、採用計画のつくり方について詳しく解説しますので、企業の人事担当者の方はぜひ参考にしてください。
採用計画とは
「採用計画」とは、自社の事業計画や経営方針に沿って、採用活動の目標を定めた計画のことです。人材パフォーマンスを高めることを目的に、求める人物像や採用人数、要件、スケジュールなどを明確に定める計画を指します。
採用活動においては次のような指標をもとに計画を立てます。
- どの部署に
- いつ
- どのような人材を
- どのような方法で採用するか
たとえば新卒採用の場合、学生が大学を卒業したあとの4月までに入社できるよう計画を立てなければなりません。その場合、採用計画は次のようになります。
採用目的 | 若手労働力の確保・人員補充 |
採用期限 | 新卒採用の4月入社までに |
採用部署 | 営業部 |
採用人数 | 8人 |
採用要件 | 大学卒業見込みである、学生時代に所属していたサークルやゼミ・アルバイトなどでリーダーシップを発揮した経験がある、特定の業界や業種への関心が高い、など |
採用手法 | 求人サイト、会社説明会、ハローワーク |
採用計画と混同されやすい用語に、「採用戦略」があります。採用戦略とは、自社が求める人材を獲得するために立てる戦略のことです。つまり、採用計画を達成するために「どのように採用すれば良いのか」という具体的な手順を考えるのが採用戦略と言えます。
採用計画が重要視される理由
近年、多くの企業が採用計画の重要性を認識しています。その背景には、少子高齢化や採用活動に充てられる期間の変化などが深く関係しています。
効率的な採用活動を実現させるため
近年は、採用活動が早期化・長期化の傾向にあります。新卒採用のスタート時期は、年々早まっている状況です。あさがくナビのアンケートでも、採用活動の早期化や長期化の傾向があらわれています。
【アンケートからわかった早期化の傾向】
2025年卒の学生の約40%が、大学3年生になる前から情報収集を始めていることがわかっています。
※出典:「2025年卒学生の就職意識調査(インターンシップ)2024年1月版」(あさがくナビ)(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/240117/)
【アンケートからわかった長期化の傾向】
あさがくナビのアンケートでは、25年卒学生の4人に一人は3年生の1月時点で内々定を得ていることもわかっています。
現在までに内定を獲得しましたか? |
12月 |
1月 |
はい |
11.8% |
25.0% |
いいえ |
88.2% |
75.0% |
※出典:「2025年卒内々定調査」(あさがくナビ)(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/25naiteiritsu0109/)
採用活動の早期化により、他の企業より優位に立つには、早期から採用活動を始める必要があります。しかし、早くから採用活動を行ったとしても、学生が内定を承諾する時期は従来とあまり変わらないため、結果的に企業側の採用活動は長期化する傾向にあります。このような状況で企業が優秀な人材を確保するためには、効率的な採用活動を実現できるよう、以前と比べてさらに計画的にアプローチしなければなりません。
また、計画せずに採用活動を行うと、必要な人材を採用できず、時間と費用を費やすだけになる可能性もあります。限られたリソースで進めていくためにも、採用活動全体を見通した計画が必要です。
なお、2026年卒新卒採用のスケジュールについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
採用ターゲットに合う人材をより多く採用するため
少子高齢化に伴う労働人口の減少により、人材市場では求職者有利の売り手市場の状況が続いています。
多くの企業はすでに人手不足に陥っており、新たな人材の獲得も難しいのが現状です。自社が求める条件に合う人材を獲得できなければ、他社との競争優位性も維持できません。
このような状況のなかで自社が求める人材を採用するためには、適切な時期に適切なアプローチをしていくこと、つまり採用計画を立てることが重要です。
採用計画は採用活動が適切に進められているかを判断する基準となるため、自社が求める条件に合う人材をより多く採用することにつながります。
採用活動の進行状況を把握しやすくするため
採用活動は、人事部を中心にさまざまな部署が関わります。自社の採用活動を成功させるためには、関連部署と採用の目的やゴールなどの認識をすり合わせておく必要があります。
人事部と関連部署との認識が異なる場合、上手く連携できず、採用時期の遅れにつながりかねません。採用時期が遅れると他社に人材が流れ、優秀な人材を獲得するチャンスを逃してしまう可能性が高まります。
採用計画を立てた上で採用活動を進めれば、社内で進捗状況を共有できます。各担当者は、いつどのように動けば良いかを把握しやすくなるため、採用活動をスムーズに進められるでしょう。
【最新版】企業における採用計画の現状
これから自社の採用計画を立てる際には、採用活動を取り巻く状況を把握しておくことも大切です。ここからは、株式会社学情の「「採用計画」に関する企業調査(2023年4月)」をもとに、企業における採用計画の現状を紹介します。
新卒採用とキャリア(経験者)採用の割合は「5:5」が最多
令和5年度の採用活動における新卒採用とキャリア(経験者)採用の割合は、「5:5」と回答した企業が21.8%で最多だったことがわかっています。
新卒採用とキャリア(経験者)採用の割合が「10:0」と回答した企業は、1.2%にとどまっています。5社に1社は、新卒採用とキャリア(経験者)採用を同割合で計画している状況です。
キャリア(経験者)採用の人数を増やす予定の企業は約4割
キャリア(経験者)採用の人数を前年度と比較して「特に変更なし」と回答した企業は、41.9%だったことがわかっています。
キャリア(経験者)採用の人数を前年度よりも「増やす予定」と回答した企業は、38.5%でした。「前年度と特に変更なし」と回答した企業の41.9%を合わせると、8割超の企業が前年度の採用人数と同程度、またはそれ以上での採用を予定しています。
以上のことから、近年はキャリア(経験者)採用が拡大傾向であると言えます。
採用人数を増やすキャリア(経験者)採用の年齢層は20代が最多
キャリア(経験者)採用において採用人数を増やす年齢層は、20~29歳が77.2%、25歳以下が43.9%だったことがわかっています。
30代は56.1%、40代は20.5%と、年齢層が上がるにつれて採用人数も減っている状況です。調査からは、20代を中心とした若い世代を積極採用したいという企業の意向がわかります。
※出典元:「「採用計画」に関する企業調査(2023年4月)」(株式会社学情)(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/230429/)
採用計画を立てる前にするべきこと
自社で採用計画を立てる際には、準備が必要です。採用計画作成の効果を高めるためにも、まずは採用課題の把握や過去の採用活動の振り返りなど、準備を入念に行いましょう。
自社の採用課題を把握する
採用計画を立てる際には、まず自社が直面している採用課題を理解することが必要です。このステップを踏まなければ、採用計画をどれだけ練っても、期待した成果を効率よく得ることができないかもしれません。
たとえば、「応募者が集まらない」「内定辞退者が多い」といった課題が自社にあるとします。応募者が少ない場合は、求人文面の見直しや採用対象となる人材の幅を広げるといった対策ができます。内定辞退が多い場合は、面接プロセスの改善、企業文化の魅力を伝える方法の見直しなどの対策ができるでしょう。
このように、自社の採用課題を明確に把握することで改善策を考えやすくなり、効果的な採用計画の策定につなげることができるのです。
過去の採用活動を振り返る
採用活動では、過去と同じ失敗を繰り返さないことが重要です。そのためにも、採用計画を立てる前に過去の採用活動を振り返りましょう。過去の採用活動を振り返る際のおもなチェックポイントは、次のとおりです。
- スケジュールに余裕はあったか
- 採用手法は適切だったか
- 採用コストの配分は適正だったか
- 候補者が自社を選んだ理由は何か
- 内定辞退者の理由を把握しているか
- 採用した人材は期待通りの活躍をしているか など
上記ポイントは、採用活動を振り返る際に特に重要となります。
事業計画を確認する
採用計画は事業計画に基づくため、一部の部署や従業員だけで立てるのは難しいです。
採用計画を立てる前には事業計画を把握している経営層やマネジメント層にヒアリングを行いましょう。
競合他社の求人票を調査する
採用計画を立てる際には、競合他社の状況を把握することも重要です。近年の人材市場は売り手市場の状況が続いているため、求職者はより良い条件や環境の企業への就職を求めています。まずは、競合他社の求人票から次の項目を調査しましょう。
- 給与
- 待遇
- 選考内容
- 募集人数 など
競合他社の採用条件を把握した後は、自社のアピールポイントを検討します。優秀な人材を獲得するためには、採用条件を工夫して求職者に選ばれる企業を目指す必要もあります。
新卒採用とキャリア(経験者)採用の採用計画の違いを把握する
採用計画は、新卒採用とキャリア経験者(経験者中途)採用で別々に立てる必要があります。違いを把握しておきましょう。
新卒採用とキャリア経験者(経験者中途)採用の違い
新卒採用とキャリア経験者(経験者中途)採用では、採用対象や採用時期、採用要件などが異なります。
採用の種類 |
採用対象 |
採用時期 |
採用要件 |
新卒採用 |
社会人として初めて就職する、大学や専門学校などを卒業予定の学生 |
一括採用 |
|
キャリア(経験者)採用 |
社会人経験者 |
不定期の 通年採用 |
|
新卒の採用対象は、社会人として初めて就職する、大学や専門学校などの卒業予定者なのに対し、キャリア(経験者)採用は社会人経験者です。新卒採用は時期が決められた一括採用のケースが多いですが、キャリア(経験者)採用では通年採用が一般的です。
キャリア(経験者)採用は社会人経験者を対象としているため、採用要件には即戦力となる経験やスキルを盛り込むケースが多い傾向にあります。
また近年は、経験やスキルよりも将来性を重視した「ポテンシャル採用」にも注目が集まっています。ポテンシャル採用のメインターゲットは新卒や第二新卒ですが、とくに年齢制限があるわけではないためキャリア(経験者)採用でも活用できます。
新卒採用の採用計画を立てる際のポイント
新卒採用の対象者は社会人として初めて就職する学生なので、業務への適性は企業側での判断が必要です。新卒採用の採用計画を立てる際のポイントは、次のとおりです。
- 学生とコミュニケーションを取る機会を設ける
- 内定者に対するフォローを盛り込む
学生のポテンシャルを見極めるためには、面談回数を増やす、従業員と直接話す機会を作るなどの工夫も求められます。
また、内定から入社までの期間が長いため、内定者の不安を解消するためのフォローも採用計画に盛り込む必要があります。
キャリア(経験者)採用の採用計画を立てる際のポイント
キャリア(経験者)採用では、自社の即戦力となる経験やスキルを持ち合わせているかを見極める必要があります。キャリア(経験者)採用の採用計画を立てる際のポイントは、次のとおりです。
- 幅広い層をターゲットにする
- 採用時期から逆算して採用計画を立てる
キャリア(経験者)採用の場合、経験のない業種・職種でも、ポテンシャルを見込んで採用するケースが考えられます。母集団を増やすことで、より自社にマッチする人材に出会える可能性が高まるため、ターゲットは広く見据えておくと良いでしょう。
キャリア(経験者)採用では、人材の募集は、欠員補充や新たなプロジェクトに携わる人材を求めるタイミングでおこなうのが一般的です。そのため、自社の求める経験やスキルを持つ人材をいつまでに採用するかを逆算して計画を立てる必要があります。
採用計画のつくり方
新卒採用とキャリア(経験者)採用は、採用計画を立てる際の基本的な手順は変わらないものの、採用対象や採用時期、採用要件などが異なります。採用計画を立てる際には、それぞれの特徴を踏まえることが重要です。
STEP1:採用要件・人数などを決定する
採用計画の指標となる採用要件や人数などを検討します。まずは採用活動に関する現状把握や課題の洗い出しを行い、その上で、求める人物像、採用人数、採用時期の決定などを行います。
自社が求める人物像を明確化する
採用計画を立てる際には採用課題や今後の経営方針を踏まえ、自社が求める人物像を明確にしておきましょう。人物像は自社の魅力や強みにフィットするかを考慮し、できるだけ具体化することがポイントです。
自社が求める人物像を明確にしたら、採用要件を設定します。求める要件が少ないほどマッチする求職者が多く採用しやすい一方で、要件が多すぎると母集団がうまく形成できず採用が難しくなる側面もあります。労働人口が減少しているなか、要件にマッチする求職者が少ないことも想定し、Must要件とWant要件で優先順位をつけておくと良いでしょう。
採用人数を決定する
自社に必要な採用人数を決定する際には、要員計画を用いてみましょう。要員計画とは、企業の事業計画に基づいて必要な人材を採用し、配置することです。要員計画は人材を採用する場合だけでなく、不要な人材を整理する場合にも用いられます。
まずは自社の事業計画や人員構成を確認し、採用ニーズを調査しましょう。採用ニーズを精査した上で、自社全体で必要な人数や部署単位で必要な人数を割り出します。採用人数を割り出す際には短期的な視点ではなく、事業計画を遂行するために中長期的な視点で考えることがポイントです。
STEP2:採用予定人材の雇用形態を決定する
自社の求める人物像や採用人数が決まったら、次に採用予定人材の雇用形態を決定します。
近年は働き方に対する価値観が多様化しているため、すべての求職者が正社員を希望するとは限りません。求職者のニーズを反映できるよう、正規雇用と非正規雇用など複数の雇用形態で募集することも検討しましょう。
STEP3:採用手法を選定する
採用予定人材の雇用形態を決定したあとは、どのような採用手法を用いるかを検討しましょう。
従来、不特定多数の求職者に向けてアプローチする、求人広告のような公募型の採用手法が一般的でした。しかし、近年は人材紹介や企業がターゲットに直接アプローチを仕掛ける、ダイレクトリクルーティングなどの採用手法を採用する企業も多くあります。デジタル化や労働人口の減少によって採用手法が多様化しているため、ターゲット層に適した採用手法を選定する必要があります。
なお、若手採用を成功させるコツや適した採用手法などは、こちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
STEP4:採用スケジュールを決定する
次に採用スケジュールを立てましょう。まずは、採用活動の開始から入社までの大まかな流れを決め、その上で、どのような工程で採用活動を進めていくのかを決定します。
一部の工程で遅れが出ると、その後のスケジュールにも影響を及ぼしかねません。そのため、各工程を決定する際には対応期限を設けておきましょう。万が一のリスクを想定し、各工程のスケジュールに余裕を持たせておくと安心です。
また、キャリア(経験者)採用ですぐに人材を確保したいときでも、求人募集から入社までには最低でも2カ月程度はかかります。
人材の確保が急務の場合は、欠員や現場からの要請があった時点ですぐに動けるようにしておく必要があります。
採用計画の進捗は随時チェックすることが重要
採用計画は、必ずしもスケジュール通りに進むとは限りません。そのため、各工程が終了するタイミングで、採用活動が計画通りに進んでいるかを確認するようにしましょう。おもなチェック項目は次のとおりです。
- エントリー数
- 説明会参加者数
- 応募者数
- 面接設定数
- 面接通過者数
- 内定者数
- 選考辞退者数 など
採用計画の進捗状況は、具体的な数字を確認・管理することが重要です。早い段階で課題が発見できれば、改善策を講じられます。
採用計画を立てる際にあわせて見直したいポイント
自社の採用目標を達成するためにも、採用計画と同時に採用活動に関して見直しておきたいポイントがあります。採用活動に関する内容を見直すことで、自社の採用活動の質を高めることが可能です。
選考スピードの短縮化
採用計画を立てる際には、各工程のスピードを意識することも重要です。複数の企業の選考を同時に受けている求職者もいるため、選考から結果が出るまでに時間がかかれば、優秀な人材が先に内定が出た他社に流れるおそれがあります。
結果の連絡が遅いことに求職者が不安を感じ、選考辞退や内定辞退につながる可能性もあるため、選考スピードはできるだけ短縮するようにしましょう。
採用業務のオンライン化
計画的かつ効率的な採用活動を進めるためには、十分な人員を確保する必要があります。しかし、企業のなかには労働人口減少の影響を受け、人的リソースに余裕がないところもあります。
限られた人材で計画的かつ効率的な採用活動を進めるためには、採用工程の一部をオンライン化するのも手段の一つです。たとえば、求職者とのコミュニケーション手段や選考結果の通知などをオンライン化し、業務効率化を図る方法もあります。
近年は、採用活動をオンライン化する企業が増えています。採用活動のオンライン化によって解決できる課題をこちらのお役立ち資料でくわしく紹介しているので、ぜひダウンロードしてご覧ください。
RPOや採用コンサルティングの活用
応募者の受付や事務作業などの一部の採用業務は、RPOや採用コンサルティングを活用して担当者の業務負担を軽減する方法もあります。RPOとは、採用活動に関する業務を外部に委託できるサービスです。
一方の採用コンサルティングとは、採用活動に関する課題の解決をサポートするサービスです。RPOや採用コンサルティングにノンコア業務を任せることで、担当者はコア業務に専念できます。
採用計画を立てて効率的な採用活動を実現しよう
採用活動を取り巻く環境の変化により、近年は採用計画に対する重要性が高まっています。採用計画を立てると各工程の進行状況を把握できる、自社が求める人材をより多く採用できるなどのメリットがあります。
計画的かつ効率的な採用活動を実現するためには、採用計画を立てる前に十分な準備が必要です。また、新卒採用とキャリア(経験者)採用では、採用対象や採用要件などが異なるため、別々に採用計画を立てることも重要です。
自社の採用活動の質を高めるためには、採用活動のプロに相談するのも手段の一つです。株式会社学情では、新卒採用やキャリア(経験者)採用に向けたサービスをトータルでサポートしています。
自社が抱える採用課題の解決に向けて、さまざまなアドバイスや提案をさせていただきますので、まずは株式会社学情にご相談ください。
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