企業の動向

2022年卒採用について、各社の母集団形成は比較的順調に進んでおり、「3月で既に目標数に達した」(中堅IT企業)、「プレエントリー数は前年同時期比20%増」(大手スーパーマーケット)といった声をよく耳にする。多くがオンライン開催になり、心理的ハードルや距離的ハードルも下がったことで個社セミナーの集客が好調だ。ただその分、学生の心のグリップが難しく、面接や適性テストへの移行率が課題となっている。「例年なら100%に近い学生が次の段階に進むが、オンラインセミナーにした今年度の移行率は60~70%ほど」(中小メーカー)といった声をよく耳にする。そのため、例年よりも選考中の学生のフォローに時間を費やし、辞退の回避とともに志望度向上を目指す動きが活発化している。また、弊社が1月に実施した採用動向アンケートによると、「前年よりも採用基準を厳しくする」企業が前年比11.0ポイント増の27.1%となった。数よりも質を求め、採用ターゲットに近しい学生とどう接触するかも各社の課題となっている。そのため、社員の知人を採用に結び付けるリファラル採用や、企業側から採用ターゲットに合致しそうな学生へアプローチするダイレクトリクルーティングなどの手法を導入する企業も増加傾向にある。

並行して、2023年卒採用の計画立ても佳境を迎えている。前年度はオンライン対応への切り替えが間に合わず、夏期インターンシップについては実施を取り止める企業も見られたが、オンライン環境が整った今年度は夏から精力的に取り組む企業が増えそうだ。前述の採用動向アンケートでも、2023年卒対象のインターンシップの実施予定時期として最多となったのは「7~9月」(40.9%)であった。 (後藤 千博)


学生の動向および学生を取り巻く就職環境について

弊社が3月末に実施した2022年卒学生対象の調査によると、内々定率は33.8%。前年同時期比5.1ポイント増で、早期の内々定獲得が進む。ただ、そのまま就職活動を終える学生は10.1%に留まり、多くの学生は活動を続ける意向だ。各大学に寄せられる学生からの相談内容も「内定承諾書の提出に関するものが増加傾向」だという。いずれにせよ、順調に内々定獲得に至る学生がいる一方で、最近になって活動を始めたという学生も少なくない。弊社が実施しているオンライン形式の就職支援セミナー「あさがくナビ就活チャンネルLIVE」には、4月に実施した初歩的な内容の回であっても500名以上のエントリーがあった。コロナ禍で周囲の就活生の動きを把握しづらくなり、例年以上に就職活動の開始時期は分散した。ただ、後発組の学生に加えて、早期から活動していた学生も選考結果次第で再度企業探しに臨むとみられ、5~6月に活動の山場が訪れそうだ。

2023年卒学生に関しては、各大学において早い所では3月からインターンシップ・就職準備ガイダンスが実施されており、4~5月が開催のピークとなりそうだ。前年同時期は1回目の緊急事態宣言が発出されたタイミングでありガイダンス実施を見合わせる大学も多かった。一方、今年度は対面型の授業を再開する動きも広がり、ガイダンスも対面とオンラインを併用して実施されている。「参加状況は例年よりも良い」という大学が多く、2023年卒学生の就活意欲やインターンシップへの関心の高さがうかがえる。年々前倒しになる企業の採用の動きに合わせ、学生も夏のインターンシップの準備に積極的だ。(豊田 侑輝)