

人材獲得競争の激化により、自社の採用要件に適した人材を獲得するのが困難な状況です。
その影響を受け、採用コストも増加傾向にあり、採用コストの最適化が急務となっています。
この記事では、新卒採用にかかるコストの内訳や増加の要因を解説します。自社に最適な採用戦略を見つけ、採用成功へとつなげましょう。
採用コストとは
採用コストとは、企業が新しい人材を募集してから採用するまでにかかる費用のことです。
これは求人広告の掲載費だけでなく、採用活動に関わるすべての費用を指します。
採用コストを正確に把握することは、採用活動を戦略的に進めるうえで非常に重要です。
内訳を詳しく分析すれば、それぞれの採用チャネルがどれくらいの費用対効果を生んでいるのかを算出できます。
採用コストと採用単価の違い
「採用コスト」と「採用単価」はどちらも採用活動にかかる費用を表す言葉ですが、それぞれ意味が異なります。
採用コストと採用単価の違いは次の通りです。
- 採用コスト:人材の募集から採用するまでにかかる費用の総額
- 採用単価:1人採用するためにかかった費用
たとえば、採用コストが高額でも、多くの人材を採用できていれば、採用単価は抑えられます。
一方で、採用コストを安く抑えても、採用人数が少なければ、1人あたりの採用単価は高くなってしまいます。
そのため、採用活動を効率的に進めるには、全体的な採用コストだけでなく、1人あたりの採用単価をしっかり分析することが大切です。
採用コストの計算方法
採用コストは、「内部コスト」と「外部コスト」の2つに分けられます。これらを合計したものが、採用活動にかかる費用の総額です。
それぞれの詳細は後ほど詳しく説明します。
採用単価の計算方法
採用単価の計算方法は次の通りです。
- 採用コストからの計算方法:採用コスト総額÷採用人数=一人あたりの採用コスト
- 求人広告費からの計算方法:求人広告総額÷採用人数=一人あたりの採用コスト
新卒採用単価の相場と動向
リクルート就職みらい研究所の調査によると、2019年度新卒採用における一人あたりの平均採用コストは93.6万円に達し、前年から増加しました。
採用コストの増加傾向は現在も続いており、2026年卒採用では、前年と比べて採用コストが増えると予想する企業が41.4%に達しています。
※参考:リクルート 就職みらい研究所「就職白書2020」
リクルート就職みらい研究所「就職白書2025 データ集」
内部コストの内訳

内部コストとは、採用活動を行う際に、社内で発生するコストの総称です。
内部コストには次のようなものがあります。
- 採用担当者・面接官の人件費
- 応募学生の交通費・宿泊費
- 内定者フォロー費用
- リファラル採用のインセンティブ
- 採用活動に関連する備品の購入費
それぞれの項目について、詳しく解説します。
採用担当者・面接官の人件費
採用活動における内部コストには、人事担当者だけでなく、面接官を務める上司や役員といった社員の人件費も含まれます。
特に新卒採用では、会社説明会やグループディスカッションなど、中途採用に比べて選考プロセスが多い傾向にあります。
そのため、より多くの人員が採用活動に携わることになり、結果として人件費が内部コストの大きな割合を占めることになるでしょう。
応募学生の交通費・宿泊費
応募学生の交通費や宿泊費とは、選考のために学生に来社してもらう際、企業が支給する移動費や宿泊費のことです。
これらの費用の支給は企業の義務ではありません。ただし、支給しない場合、遠方の優秀な学生が選考を辞退してしまう可能性もあります。
支給する際は、事前に支給範囲や対象、申請方法などのルールを定めておくことが大切です。
内定者フォロー費用
新卒採用は選考の早期化が進み内定から入社までの期間が長くなっており、他社の内定獲得や自身の心境の変化などで、学生が内定辞退に至る可能性が以前より高まっています。
そのため、企業は内定者懇親会や社内報の送付などを通じて、社員との親睦を深めたり、企業理解を促したりする施策が重要です。
これらの施策にかかる費用が内定者フォロー費用にあたります。
また、内定者向けの研修費用や教材費も、この内定者フォロー費用に含まれます。
リファラル採用のインセンティブ
リファラル採用におけるインセンティブとは、自社の社員からの紹介で人材を採用した場合に、その紹介者へ支払う報酬のことです。
インセンティブの支払いは企業の任意ですが、支給することで社員の紹介意欲が高まり、リファラル採用制度自体の認知と活用を促進できます。
一般的な相場は1万円から50万円程度でしょう。
なお、職業安定法では労働者の募集にあたり報酬を与えることを原則禁止しているため、インセンティブは賃金として支払うようにしてください。
採用活動に関連する備品の購入費
採用活動にかかる備品費用には、求人票や会社説明会の資料だけでなく、文房具やファイル、マーカーといった日常的なオフィス消耗品も含まれます。
これら一つひとつの単価は小さいですが、数量が多くなると費用がかさむ可能性があります。
無駄な出費を抑えるためにも、購入する際はそれぞれの備品を採用活動にどう活用するのか、目的を明確にしておきましょう。
外部コストの内訳
外部コストは、採用活動を行う際に、社外のサービスや媒体、業者を利用することで発生するコストの総称です。
外部コストには次のようなものがあります。
- 求人広告費
- 人材紹介手数料
- 合同企業セミナー費用
- 採用ツール制作費
- 採用管理システムの利用料
- 採用代行(RPO)サービス費用
それぞれの項目について、詳しく解説します。
求人広告費
求人広告費には、就職情報サイトの掲載費だけでなく、検索に連動して表示されるリスティング広告やSNS広告の費用も含まれます。
これらは新卒採用における主要な外部コストの一つです。
新卒採用は通年掲載が主流のため、中途採用よりもコスト高くなりやすい傾向にあります。
ただし、この費用は企業の採用戦略によって大きく変動することを押さえておきましょう。
人材紹介手数料
人材紹介手数料とは、人材紹介会社を通じて学生を採用した場合に、その会社へ支払う費用を指します。この人材紹介の費用は、採用が成功した際にのみ発生する成果報酬型が主流です。
手数料の主な算出方法は次の通りです。
理論年収から計算する方法:理論年収の一定割合(相場:30〜50%)を手数料として支払う
固定報酬型:採用する学生の人数に応じて、一律の料金を支払う(相場:1人あたり50万円〜100万円)
理系学生や専門スキルを持つ学生の採用では、手数料が高くなる傾向にあります。
合同企業説明会(合同企業セミナー)費用
合同企業説明会(合同企業セミナー)とは、複数の企業が一つの会場に集まって、多くの学生に自社の説明や採用情報を提供するイベントのことです。出展料はイベントの規模やブースの仕様によって変わります。
首都圏開催のイベントの場合、出展料の相場は次の通りです。
- 大規模イベント:70万円〜
- 小中規模イベント:45万円〜
採用ツール制作費
採用ツール制作費とは、自社の魅力を伝え、学生からの応募を促すために制作するツールにかかる費用です。
具体的には、次のようなものがあります。
採用サイト
企業パンフレット
採用動画
イベントブースの装飾品
イベント設備のレンタル費用
合同企業セミナーで使用するタペストリーや椅子カバー、といった装飾品、イベント来場者に渡す社名入りボールペンなどのノベルティも採用ツール制作費に含まれます。
採用管理システムの利用料
採用管理システムは、採用活動の効率化と管理を一元的に行うためのツールです。
特に新卒採用では、一度に数百から数千人もの学生が応募するため、応募者の詳細な情報を手動で管理するのは非常に困難です。
採用管理システムを導入すれば、応募者情報の管理から選考プロセスの進捗把握までを一元化でき、採用活動を効率化できるでしょう。
システムの利用料には、初期費用や月々の運用費用、必要な機能に応じたオプション料金などが含まれます。
採用代行(RPO)サービス費用
採用代行(RPO:Recruitment Process Outsourcing)サービス費用とは、企業が採用業務の一部またはすべてを、外部の業者に委託する際に発生する費用です。
採用代行サービスの料金体系と相場は次の通りです。
料金体系 | 特徴 | 相場 |
月額固定費型 | 毎月一定の費用を支払う | 5万〜80万円 |
成果報酬型 | 採用が成功した場合のみ支払う | 想定年収の25〜40% |
複合型(月額+成果報酬) | 月額固定費に加え、採用人数に応じた成果報酬を支払う | 月額固定費を抑え、成果報酬が加わることでバランスを取る |
単価型(業務単位課金型) | 特定の業務に対して費用を支払う | 業務内容によって大きく異なる |
新卒採用コストが増えている原因
近年、新卒採用にかかるコストは増加傾向にあります。この傾向は今後も継続すると予想されており、多くの企業が採用コストの高騰という課題に直面しています。
こうした状況で効果的な採用を実現するためには、その原因を把握し、今後の対策に活かすことが大切です。
人材獲得競争の激化
リクルートワークス研究所の調査によると、2026年卒の大卒求人倍率は1.66倍と、前年よりわずかに低下したものの、依然として高水準を維持しています。
企業の業績は比較的堅調に推移しており、人材を求める企業の数は横ばいか、増える傾向にあります。
このような厳しい採用環境では、企業が求める人材を確保するために、より多くのコストをかける必要があり、結果として採用コストは増加傾向にあるといえるでしょう。
※参考:リクルート研究所「第42回 ワークス大卒求人倍率調査(2026年卒)」
情報発信手段の多様化
現代の学生はインターネットやSNSを通じて情報を得るため、企業も複数のチャネルで情報発信を行う必要があります。
これまでは就職情報サイト求人サイトが主流でしたが、現在は採用動画や採用サイト、SNSなども活用した多角的な情報発信が求められています。
これらのコンテンツ制作には外部コストがかかるだけでなく、運用担当者の人件費や社員インタビューに出演する社員の人件費も増加する傾向にあるでしょう。
採用期間の長期化
従来の採用活動では、就職ルールに則った「一括採用」が主流でした。しかし近年では、多様な人材を確保するため、時期を限定せず採用を行う「通年採用」を導入する企業が増えています。
加えて、インターンシップやオープン・カンパニーなどを通じて、学生と早期に接点を持つ動きも活発化しているのが現状です。
こうした変化により採用期間は長期化し、それに伴って就職情報サイトの掲載料や人件費といったコストが増加する傾向にあります。
新卒採用コストを削減する7つの方法

新卒採用コストの高騰は多くの企業が直面する課題ですが、戦略的なアプローチと工夫で、費用対効果の高い採用を実現することは可能です。
そこで、新卒採用コストを削減するための具体的な方法を解説します。
採用要件を明確にする
採用要件が曖昧だと、非効率な採用活動につながり、結果的にコストがかさんでしまいます。
採用要件の明確化がコスト削減につながる理由は次の通りです。
- 無駄な応募の削減と選考効率化が期待できる
- 適切な採用手法や媒体の選定ができる
- 学生に響く情報を提供できる
- ミスマッチによる早期離職の防止につながる
採用要件を明確にすることは、採用活動の効率化だけでなく、入社後の定着や活躍にも直結します。これにより、長期的な視点でのコスト削減につながるでしょう。
採用戦略に適した媒体を選ぶ
自社が求める学生に効率的にアプローチできる媒体を選ぶことで、無駄なコストを大幅に削減できます。
自社が求める人物像と媒体の特性を照らし合わせ、最適な媒体を選ぶことが非常に重要です。
採用戦略に適した媒体を選ぶためのステップは次の通りです。
- 採用要件を明確にする
- 各媒体の特徴と費用対効果を把握する
- 過去の採用データを分析する
- 採用目標(KGI)と中間指標(KPI)を設定する
- 採用戦略に沿って複数の媒体を選定する
採用のミスマッチを防ぐ
新卒社員が早期退職すると、それまでに投じた採用コストは無駄になります。
そのうえ、欠員補充のために新たな費用を投じて再募集しなければなりません。
採用のミスマッチを防ぐには、カジュアル面談の実施がおすすめです。
学生は企業への不安や疑問を解消でき、企業側も学生の価値観や志向性をより深く把握できるようになります。
これにより、入社後のギャップを減らし、早期退職のリスクを低減する効果が期待できるでしょう。
ダイレクトリクルーティングを活用する
ダイレクトリクルーティングとは、企業が採用要件に合う人材を直接探し、スカウトメールを送る採用手法です。
従来の「待つ採用」とは異なり、企業が学生へ積極的にアプローチすることで、費用対効果の高い採用が期待できます。
Re就活キャンパス(旧あさがくナビ)は、新卒採用向けのダイレクトリクルーティングサイトです。
国内最大級の学生データを保有しており、企業の採用要件に合わせてピンポイントで学生を検索し、直接スカウトメールが送れます。
さらに、定額制で利用できるため、一人あたりの採用コストの削減につながるでしょう。
リファラル採用を導入する
リファラル採用とは、自社の社員や内定者から採用要件に合った人材を紹介してもらう採用手法です。
新卒採用では、学部やサークルの後輩、内定者の友人などを紹介してもらうケースも多くあります。
求人広告の掲載費や人材紹介会社への成功報酬といった外部コストがかかりません。
紹介してくれた社員にインセンティブを支払う場合でも、その費用は求人広告や人材紹介のコストと比べて低く抑えられます。
また、自社の企業文化や仕事内容をよく知る社員からの紹介なので、ミスマッチが少なく、早期退職のリスク軽減できるのもメリットの一つです。
インターンシップやオープン・カンパニーを実施する
新卒採用コストを削減するうえで、インターンシップやオープン・カンパニーの実施は非常に効果的な戦略です。
単に学生を集めるだけでなく、ミスマッチを防ぎ、質の高い採用が期待できます。
Re就活キャンパス(旧あさがくナビ)は、全学年を対象にしたスカウト型新卒就職サイトにリニューアルしました。
これまでは卒業年度ごとに分かれていたサービスが「通年採用型サービス」として統合され、一つのサービスで全ての学年にアプローチできるようになっています。
これにより、大学1・2年生のキャリア形成支援からインターンシップ、そして採用までを一貫して対応できるため、無駄な外部コストの削減にもつながるでしょう。
合同企業説明会(合同企業セミナー)に出展する
合同企業説明会(合同企業セミナー)は、学生と直接出会えるため、マッチング精度の高い採用が期待できます。
出展費用がかかることでコストが増加すると考えられがちですが、戦略的に活用すれば費用対効果を高め、結果として採用コストを抑えることも可能です。
特に、中小規模や特定の分野に特化したイベントを選ぶことで、出展費用を抑えられます。
たとえば、株式会社学情が運営する大規模な合同企業セミナー「就職博」には、中小・ベンチャー志向の学生も多く来場します。
そのため、採用ターゲットが合えば効率的な採用活動が期待できるでしょう。
また、「就職博」は新卒採用向けダイレクトリクルーティングサイト「Re就活キャンパス(旧あさがくナビ)」とも連携しており、イベント来場学生のデータを活用したダイレクトリクルーティングなど、オンラインでのフォローアップも行えます。
採用活動を効率的に進め、新卒採用コストの最適化を目指そう!
新卒採用コストの増加は、多くの企業が直面している課題です。
しかし、戦略的なアプローチによって、費用対効果の高い採用を実現できます。
コストの増加にお悩みの方は、採用要件を明確にし、自社に合う採用手法や媒体を見極めることから始めてみてください。
ダイレクトリクルーティングやリファラル採用、そして効果的なインターンシップや合同企業セミナーを通じて、無駄を省き、ミスマッチのない採用を目指しましょう。
マッチング精度の高い採用は、短期的なコスト削減だけでなく、早期離職防止や定着率向上といった長期的なコスト削減にもつながります。
新卒採用コストにお困りの方は、株式会社学情へご相談ください。

株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。