HR関連法令・制度のご紹介

改正電子帳簿保存法

人事の図書館 編集長 大西直樹
電子帳簿保存法は、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿の保存方法等の特例に関する法律」と言います。会社法や法人税法等で保存が義務づけられている帳簿や決算書、請求書等の国税関係帳簿・書類について、法令上は「紙での保存」が原則となっています。しかし、紙で保存する方法は、用紙や印刷、保存用ファイル等にかかる費用が嵩むほか、保管スペースの確保や整理にかかる作業負担が増えること等から、経理業務の長年の課題となっていました。電子帳簿保存法は、こうした帳簿や書類を「一定の要件を満たせばデータで保存・管理することを特例として認める」というものです。

多くの企業で導入が進む、電子帳簿保存。

電子帳簿保存法の適用を受けると、紙の原本が不要になるため、ファイリング等の整理作業や保管のためのスペースを確保・管理する必要がなくなります。紙の原本を保管するためのファイルや什器などの設備も必要なくなり、コスト削減にもつながります。また、セキュリティが万全の環境下でデータを保存すれば、誤って廃棄したり火災・水害などで紛失する心配もなくなります。さらにデータで保存することにより、ファイル名等で検索すれば欲しい情報がすぐ見つかる、という利点もあります。当初は運用ルールの厳しさから「企業の負担が大きい」と敬遠されてきた電子帳簿保存法ですが、これまでに何度となく要件が緩和され、今では多くの企業で導入が進んでいます。

電子帳簿保存法に基づいて、電子データを保存するには以下の3種類があります。

◆電磁的記録での保存方法
PCを使って作成したデータを保存する方法を電磁的記録での保存といいます。DVDやハードディスクといったメディアでの保管だけではなく、クラウドサービスを利用してサーバーに保管したデータもあてはまります。データの作成者がPCを使って、一貫して作業を行う必要があります。クラウドサービスを利用すればデータの保存だけでなく、関係部署とのデータ共有もスムーズに行えるので便利です。

◆紙データをスキャナで保存する方法
紙の書類をスキャンすることで電子データに変換し、電子文書として保存する方法も認められています。ただ、スキャナでの保存は紙の書類を改ざんされてしまえば、データの書き換えが行われてしまう難点があります。そのため、タイムスタンプの付与など一定の要件を満たさなければ、エビデンスとして認められません。

◆電子取引データの保存方法
請求書・領収書等のうち、電子データで受領する書類や電子明細は、利用者がデータを改ざんできないクラウドサービスを利用していれば、税務署長承認やタイムスタンプは不要で保存可能です。

法改正の4つのポイントについて。

では2022年1月から施行予定の改正について、4つのポイントを改正前と改正後とを比較した上で解説します。

ポイント1:承認制度の廃止
電子帳簿保存法の最大の課題として挙げられていたのが、導入企業の少なさでした。より多くの企業に活用してもらうためにも、今回の法改正で足枷となっていた承認制度の廃止に踏み切っています。事前準備に関する労力や時間を削減できることは、電子データ保存を進めようとしていた企業の担当者にとっても追い風となるでしょう。

【改正前】
導入を希望する時期の3ヶ月前までに税務署まで申請書の届け出を実施。申請が承認されるまでの期間は待機が必要で、認められない場合は却下通知が届く。社内で電子化する要件を決定してから半年から1年程度の準備期間が必要。
【改正後】
国が求める基準を満たし、さらに電子帳簿保存法に対応した機能を備えているスキャナや会計ソフト等を準備し、社内ルールの策定と周知ができ次第、速やかに電子帳簿保存への対応が可能に。

ポイント2:タイムスタンプ要件の緩和
電子的な時刻証明書であるタイムスタンプは、電子データが作成された日時を確定します。つまり、タイムスタンプが付与された電子データは、それ以降に改ざんがなされていないことの証左だと言えるでしょう。従来まではタイムスタンプの付与を受領(署名)後の3日以内に行う必要がありましたが、最長2ヶ月以内に延長したことで、担当者の対応の余裕が生まれました。

【改正前】
国税関係書類をスキャナ読み取りした際に、受領者が自署したうえで3営業日以内のタイムスタンプ付与が不可欠。
【改正後】
スキャナ読み取りの際の受領者の署名が不要に。また、タイムスタンプの付与期間が3日から最長2ヶ月以内と大幅変更された。さらに、電子データの訂正又は削除を行った場合に、その事実及び内容をログとして残すシステムであれば、タイムスタンプの付与自体が不要となった。

ポイント3:適正事務処理要件の廃止
電子帳簿保存法では、不正防止を目的とした内部統制として社内規程を整備する必要がありました。要するに電子データの事務処理に関しても、厳重なチェック体制と定期的な確認が不可欠でした。さらに、そのチェックのためには紙原本が必要であり、破棄せずに保存することが求められていたのです。この厳しい内部統制の要件に関しても、企業側にとって電子データ保存を導入するうえでのボトルネックとなっていただけに、事務におけるチェック体制の緩和・原本の即時破棄はペーパーレス化を推進する大きな後押しとなるでしょう。

【改正前】
内部統制の一環として定期検査と相互けん制の適正事務処理要件の対応が必須。定期検査では原本とデータの突合作業を行うため、検査実施日まで原本の破棄ができなかった。また、事務処理担当者を相互チェックする意味合いから、2名以上での対応が求められた。
【改正後】
相互けん制、定期的な検査および再発防止策の社内規程整備を行う適正事務処理要件が廃止に。定期検査まで保存が必要だった原本は、スキャナ後にすぐに破棄が可能に。また、事務処理における相互けん制に関しても廃止され、1名での対応が認められた。

ポイント4:検索要件の緩和
電子データを保存する際には、必要なタイミングで内容を閲覧したり、データ管理ができたりするように検索機能を確保する必要があります。しかし、検索要件が非常に細かいとその登録や管理業務が煩雑になりがちです。特に従来までは範囲指定や項目を組み合わせて設定できる機能の確保が不可欠であり、要件が複雑なことでハードルが高くなっていたことが課題でした。

【改正前】
取引年月日、勘定科目、取引金額やその帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索条件として設定できることが必須。日付や金額に係る記録項目に関しては、その範囲を指定して条件を設定することが求められた。また、2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することも要件に含まれていた。
【改正後】
検索要件が年月日・金額・取引先のみになる等の簡素化を実現。保存義務者が国税庁等の要求によって電子データのダウンロードに応じることとする場合は、範囲指定や項目を組み合わせて設定する機能の確保が不要になった。

電子化を進める上でのメリット、注意点は?

2022年の改正で大幅に規制が緩和される電子帳簿保存法ですが、企業が電子化を進める上でどのようなメリットが考えられるのでしょうか。

◆テレワークの浸透
新型コロナウイルスの流行によって、「テレワーク」が当たり前の働き方になりました。電子化を進めることで書類の印刷や捺印のための出社は不要となるため、全社的なテレワークの浸透に繋がるでしょう。
◆管理コストの削減
紙を使用することでかかっていた用紙代、インク代が必要なくなり、またそれらを置く管理スペースも不要となります。また、年度別に書類を管理する手間も省くことができます。
◆セキュリティ強化に繋がる
これまで紙で管理していた書類は、紛失・破損のリスクがありました。しかし、電子化してクラウド上にアップすることでそのようなリスクを回避し、安全に管理することが可能です。
◆経理部門の負担を軽減
電子帳簿保存法適用のために書類や帳票を電子化すれば、税務調査時は調査官がデータ検索を行うことになります。これまで経理担当者が行っていた事前準備の手間や時間を削減し、負担を軽減することができます。

メリットも多い2022年の法改正ですが、1つだけ注意すべき点があります。それは、不正行為を行ったときのペナルティとして、重加算税が10%となる点です。導入しやすい環境を整えるために各種要件の緩和が行われる一方で、不正を行ったときにはペナルティが課されることに気をつけましょう。
改正電子帳簿保存法の施行は2022年1月です。これまでの電子データ保存の制度が大幅に緩和されるだけに、これを機会に今のうちから自社における電子データの導入を検討し始めてみてはいかがでしょうか。

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