HR関連法令・制度のご紹介

労働施策総合推進法(パワハラ防止法)

人事の図書館 編集担当者

雇用対策法から改称。より働き方改革を推し進める法律に。

「労働施策総合推進法」は、その正式名称を「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」といい、1966年に設立した「雇用対策法」が2018年に改正することで成立した法律です。前身の「雇用対策法」は、名前からもわかるように「雇用」に関する施策を講じ、労働者の雇用と企業の採用ニーズの需給バランスを保つために成立した法律です。改正した「労働施策総合推進法」は、「労働」に関する政策を講じることで、(1)労働者の多様な事情に応じた雇用の安定(2)職業生活の充実(3)労働生産性の向上を促進することが明記されており、働き方改革をより推進することが目的となっています。

2019年には、パワーハラスメント(以下:パワハラ)の防止措置が事業主に義務づけられるよう定められ、この新たな規定は通称「パワハラ防止法」といわれています。この法律で規定されるパワハラの定義とは、

(1)優越的な関係を背景とした言動
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
(3)労働者の就業環境が害されるもの

の全てを満たすものとされています。本稿では、2020年6月より施行されるパワハラ防止法の内容を中心に、その他のハラスメント対策や企業が実施すべき対策についてお伝えいたします。

パワハラにあたりうる6類型が示されています。

では、どのような例がパワーハラスメントにあたるのでしょうか。厚生労働省は、パワハラに当たりうる6類型と、その具体例を発表しています。

■身体的な攻撃
叩く、殴る、蹴るといった暴行であったり、物を投げつけたりする等

■精神的な攻撃
同僚の前で人格を否定するような言動を浴びせたり、必要以上に執拗な𠮟責、あえて他の従業員を含めたメールで罵倒する等

■人間関係からの切り離し
気に入らないからと言って本人を孤立させたり会話をしない、あるいは部署全体での飲み会に誘わない等

■過大な要求
明らかに達成不可能なノルマを課したり、無理だとわかっている仕事を押しつけて自分は先に帰る、終業間際、膨大な仕事を恒常的に押し付ける等

■過小な要求
長年働き経験豊富な社員に、雑用や受付業務、草むしりをさせるなど、経験・能力とかけ離れた程度の低い仕事ばかり押し付ける等

■個の侵害
交際相手の情報などプライベートに過干渉する、信条を理由に他の社員から孤立させる等

厚生労働省作成の「あかるい職場応援団」というハラスメント対策の総合情報サイトには、パワハラにあたる例を動画付きで解説しています。
この発表では、パワハラにあたらないと考えられる例も示されていたことから、「具体例があることで、事業主がパワハラではないと主張する裏付けになってしまわないか」といった批判の声も多くあがりました。また、今回の法改正では、事業主に防止策の設定を義務付ける措置義務にとどまり、現状罰則規定はありません。しかし、パワハラが常態化して改善が見られない企業は企業名が公表されることとなっており、また、将来的には罰則規定が盛り込まれることも検討されているため、適切に対応する必要があります。

「ハラスメント」が一種の社会現象に。

ここ数年は、ハラスメントという言葉を耳にすることも多くなったかと思いますが、様々なハラスメント防止に関する法整備が進んでいます。例えば、2017年には、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法が改正され、妊娠・出産等、並びに育児休業に関するハラスメント、並びにセクシュアルハラスメントに関し、以下の防止対策を講じることが義務付けられました。

■事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
セクハラについての方針を明確化し、就業規則等に規定することで、従業員に周知する
■相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
セクハラや他のハラスメントに関する相談窓口を設け、従業員が気軽に相談をできる環境をつくる
■事後の迅速かつ適切な対応
相談を受けた際に、すぐに事実確認し、被害者に対する配慮とケア、再発防止に努める
■上記の措置と併せて講ずべき措置
相談者のプライバシーを守り、相談したことで、被害者が不利益な扱いを受けないように配慮する

また、法制化はされていませんが、宴会への参加や飲酒を強要するアルハラや、良識のない行為や態度による嫌がらせをさすモラハラ(=モラルハラスメント)、内定を出した学生に対し就職活動を終えることを強要するオワハラ(=就活終われハラスメント)等、様々な「ハラスメント」が言葉として話題となり、一種の社会現象ともなっています。言葉が独り歩きし、いささか過剰反応ともいえる状況ではありますが、今後、ダイバーシティ社会で生き残っていくためにも、多様な価値観を受け入れられるような風土づくりは、企業の発展に欠かせないこととなります。とはいえ、それらすべてに共通することは、相手が嫌がるような行為・言動をしないことで防ぐことができます。パワハラ防止法の改正を機に、今一度職場環境を見直し、誰もが働きやすい制度・仕組みになっているか見直してみてはいかがでしょうか。

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