HR関連法令・制度のご紹介

雇用調整助成金

人事の図書館 編集担当者

雇用保険法に定められた、雇用安定事業の1つ

人事・労務に関わる皆様には、失業者・求職者等を支える雇用保険法の正しい理解が求められます。同法では、労働者の生活及び雇用の安定を図ること、求職活動を容易にする等その就職を促進すること、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発等を目的としており、その目的を達成するため、失業等給付、育児休業給付、雇用保険二事業(=雇用安定事業と能力開発事業)を行うと定められています。なお、労働者を1人でも雇用している事業主は原則すべて適用事業となります。

なかでも、雇用調整助成金とは、同法に定められた雇用安定事業の1つで、労働者の失業防止のために、事業主(企業)に対して給付される、政府による助成金です。景気の変動、産業構造の変化等といった経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主にとって、従業者の雇用を従前どおり維持することは困難ですが、リストラに踏み切ることも難しく、残業規制や配置転換等といった形で雇用調整を行うケースもございます。こうした措置のうち、「休業」「教育訓練」「出向」といった形で従業員の雇用の維持を図る事業主に対して助成をすることで、労働者の失業防止、雇用の安定を図ることを目的としています。

ここでのポイントは、事業主に対しての助成金制度ということです。労働者への金銭的援助や就労支援だけでなく、雇用調整を行いつつ従業員の雇用を守る企業を支援するための制度となっており、一定を満たした事業主であれば、全て本制度の対象となります。本特集では、同助成金の支給要件、そして新型コロナウイルスにまつわる特例について、現時点での最新情報をお伝えいたします。

雇用調整助成金の支給要件とは

雇用調整助成金の支給要件として、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

●雇用保険の適用事業主であること。
●売上高又は生産量などの事業活動を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること。
●従業員数(雇用保険被保険者数と派遣労働者数)の直近3か月間の月平均値が、前年同期に比べて、一定以上増加していないこと。
・中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上
・中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上
※同法で、中小企業の定義は、以下のいずれかを満たす企業です。
●実施する雇用調整が一定の基準を満たすものであること。
□「休業」の場合
・労使間の協定により実施されること
・休業の延べ日数が、所定労働延べ日数の20分の1(大企業:15分の1)以上であること
・所定労働日の全一日にわたること、あるいは、事業所の従業員全員について一斉に1時間以上実施されること
□「教育訓練」の場合
・「休業」と同様の基準を満たすこと
・教育訓練の内容が、職業に関する知識・技能・技術の習得や向上を目的とするものであり、その受講日において業務に就かないものであること
※受講者本人のレポート等の提出が必要
□「出向」の場合
・出向が雇用調整のために行われるものであること
(人事交流・経営戦略・業務提携など、その他の理由では不可)
・出向期間が3か月以上1年以内で、その後出向元事業所に復帰するものであること
●過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主は、直前の対象期間の満了の日の翌日から起算して1年を超えていること

要約すれば、雇用保険に加入していて、前年よりも売上高ないし生産量が大幅に減少、また、労働者数が著しく増加していない事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施した際に、助成金受給の対象となります。

また、支給金額は、以下の通り定められています。
□(中小企業)休業手当、訓練に対する賃金相当額、出向にかかる負担額の3分の2
□(中小企業以外)同額の、2分の1
※上限:労働者1人当たり8,330円(2020年3月1日現在)
□「教育訓練」を行った場合は、上記に1人1日あたり1,200円を追加

新型コロナウイルスに関する特例で、条件が大幅緩和に

3月17日現在、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主に対し、支給要件が大幅に緩和されています。

・雇用したばかりの方(雇用された期間が6か月未満の労働者)についても助成対象とする
・休業等計画届の事後提出を、2020年5月31日まで可能とする
・生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮する
・事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象とする(その際、生産指標は2019年12月と比較)
・最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象とする
・前回の受給対象期間の満了日から1年を経過していなくても助成対象とする

これらの特例は、休業等の初日が、2020年1月24日から2020年7月23日までの場合に適用されます。今後、追加の特例措置が実施される可能性もございます。最新情報は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
また、制度の活用にあたっては、お近くの都道府県労働局または公共職業安定書(ハローワーク)へお問合せください。

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