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新卒採用における「職種別採用」という選択肢

「日本の長期にわたる雇用慣行となってきた新卒一括採用(メンバーシップ型採用)に加え、ジョブ型雇用を念頭に置いた採用も含め、学生個人の意志に応じた、複線的で多様な採用形態に、秩序をもって移行すべきである」

経団連が大学関係者との継続的な対話を目的に設置した「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」。その中間とりまとめとして2019年4月22日に公表された上記内容は、尾ひれはひれが付きつつマスコミ等で大きく取り上げられ、これまでの新卒採用の在り方に一石を投じることとなった。

新卒一括採用の問題点と若年層の意識とは?

新卒一括採用は、新卒学生の高い就職率の維持に貢献している一方、仕事に対する技能や経験よりもポテンシャルが重視されることで、入社後のミスマッチによる早期離職を生み出している面もある。厚生労働省が毎年発表している「新規学卒就職者の離職状況」でも、当調査で最新の対象となる2016年3月卒の大卒者の就職後3年以内離職率は32.0%であり、2009年3月卒を除くと、1995年3月卒以降、大卒者の3年以内離職率は30%以上で推移している(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(2019年10月公表))。

また新卒一括採用と一対になる存在が総合職採用である。大学卒業と同時にまとまった人数を総合職社員として受け入れ、勤務地・部署を転々としながら多様な業務を担う中で経験を積ませ、幹部人材へと育て上げる。これが日本型雇用システムの主流であった。しかし個々の職務が固定化されないことにより、業務過多や長時間残業が発生しているほか、プライベートを重視する傾向が強まっている学生の志向性にそぐわないシステムとなっている面も否めない。

例えば、弊社が2020年卒学生に対して行ったアンケート調査では、「転居を伴う転勤についてどう思うか」という質問に対し、「転勤したくない」との回答が52.6%と過半数を占めた。転勤を伴う総合職は必ずしも学生から受け入れられているわけではないことがわかる。また職歴3年以内の第二新卒者に対して2019年に行ったアンケートでは、「転職しようと思った理由」として「残業を減らしたい、休日を確保したい」が31.8%で1位に挙げられた。これら全てが総合職だけに当てはまることではないが、今までの日本型雇用の慣習が、学生や若手社会人から好ましく思われていないことの証しと言えるだろう。

「職種別採用」はミスマッチ解消の可能性を秘めている

そうした中、学生や若手社会人のニーズを満たし、働きやすい環境を生み出す取り組みとして期待されているのが、経団連も掲げている、新卒学生対象の「職種別(ジョブ型)採用」だ。欧米諸国では一般的な雇用スタイルであるが、職務や勤務地が固定されることで仕事と私生活のメリハリが付けやすく、働き手ファーストの働き方と言える。一方で求められるのは即戦力であり、ポテンシャルや人柄が重視される日本の新卒採用では導入の余地がほとんどなかった。弊社が2019年7月に企業の採用担当者に対して実施した「新卒採用におけるジョブ型採用の導入有無」に関する調査では、「ジョブ型採用を導入している」企業は7.7%に留まり、「導入の予定はない」が67.9%と大多数を占めている。

一方、教育界では変化が生じ始めている。2017年4月に日本で初めてデータサイエンス学部を設置した滋賀大学をはじめ、総合職型ではなく、専門的な技能や知識を兼ね備えた学生を育成する動きも広がってきた。学生からも「どのような仕事に携わるのか」を知りたいというニーズは強い。2020年卒学生を対象とする弊社調査において、「企業情報で知りたいこと」として最多となったのは「仕事内容について具体的に」(70.9%)であった。これは裏を返せば、仕事内容の詳細が学生に対してきちんと開示されてこなかったことの証左でもある。職種別採用の導入によって仕事内容を詳しく説明する必然性が生まれ、「どのような仕事に携わるのか」という学生の求めに応えることにも繋がるだろう。

仕事理解が不十分なまま入社することで生じていたミスマッチ。職種別採用にはそれを減らす可能性があると言える。しかし先に挙げた採用担当者へのアンケートの通り、職種別採用を取り入れる企業はまだ少ない。そこでここからは、既に新卒採用において職種別採用を実施している企業の、メリット・デメリットを含めた事例を紹介。職種別採用の有用性を探る。

新卒採用における「職種別採用」実施企業 事例紹介

Case1 三愛石油株式会社

【事業内容】
石油製品・LPガス・化学品・天然ガス・潤滑油などの生活に不可欠なエネルギーの全国への供給。羽田空港における航空燃料の給油施設の設計・管理。

募集職種1:総合職

■主な仕事内容
 ・営業職(石油製品、LPガス、化学品、天然ガス・潤滑油販売)
 ・研究開発職(化学品)

■応募条件
 学部・学科不問

他の職種との選考フローの違い
 特になし

他の職種と比較した待遇面や労働条件の違い
 全国転勤有り。販売手当有り。他の職種と比較して大学卒の基本給が12,100円高い。

 

募集職種2:地域限定空港関連職

主な仕事内容
 羽田空港における給油施設の設計、施工管理、運営、技術コンサルタント他

応募条件
 電気・機械・土木・建築系学生限定

他の職種との選考フローの違い
 特になし

他の職種と比較した待遇面や労働条件の違い
 勤務地は羽田空港限定。

 

募集職種3:地域限定管理部門

■主な仕事内容
事務職。人事、総務、経理、経営企画、法務、情報システム、CSR関連他

■応募条件
学部・学科不問

■他の職種との選考フローの違い
特になし

■他の職種と比較した待遇面や労働条件の違い
勤務地は東京圏内限定。地域が限定されているだけで、総合職と同様に主体的に働くことができる。

 


職種別に募集している理由は?

自分の希望する働き方に合わせて、職種を選択できるようにするため。

職種別採用におけるメリットやデメリットは?

■ メリット
自分自身の希望する職種を限定することで、入社後のギャップが少ない。

■ デメリット
地元志向が強まっている中、地域限定職があるために女性の総合職割合が低い。


Case2 株式会社テクノネット

【事業内容】
放送局向けリアルタイムテロップシステムの開発

募集職種1:開発職

■ 主な仕事内容
テレビ放送や場内大型ビジョンに表示するための文字情報(テロップ)送出システムやデータ処理システムの開発。社内外の担当者と打ち合わせを重ね、クライアントの求めるデータ処理、表示システムを開発します。

■ 応募条件
ものづくりに興味関心のある方。学部・学科は不問

■ 他の職種との選考フローの違い
特になし

■ 他の職種と比較した待遇面や労働条件の違い
特になし

募集職種2:制作職

■ 主な仕事内容
当社開発のハードウェア、ソフトウェアを使いテロップの制作、システム運用(放送対応)を行います。外に出ての業務が多いため、クライアントからの相談を直に受けることになり、会社のフロントマン的な役割を担います。

■ 応募条件
スポーツへの興味関心が高い方。学部・学科は不問

■ 他の職種との選考フローの違い
特になし

■ 他の職種と比較した待遇面や労働条件の違い
特になし

 


職種別に募集している理由は?

専門性の高い職種の採用となるため、入口の段階で適性を見極め、ミスマッチを防ぐ狙いがあります。

職種別採用におけるメリットやデメリットは?

■ メリット
仕事内容を明確に示せるため、ある程度はミスマッチが防げる。

■ デメリット
専門職として入社するため、壁にぶつかると退職に意識が向かいやすい傾向がある。仕事内容が明確なだけに「この仕事は違う」と判断されやすい。


Case3 トランスコスモス株式会社

【事業内容】
情報通信・サービス

募集職種1:グローバルビジネス

■ 主な仕事内容
海外営業(海外拠点と連携し、課題解決への最適なソリューションを提案する)、新規事業開発(事業戦略策定:海外事業における事業拡大可能性の調査・検討・情報収集、M&A/業務提携:投資・買収・アライアンス先企業の開拓、交渉、契約締結)、海外関連会社運営(事業会社立ち上げ:事業計画策定、営業・オペレーション、体制の構築)

■ 応募条件
学部・学科不問

■ 他の職種との選考フローの違い
※部門面接あり
説明会⇒1次面接⇒2次面接⇒部門面接⇒適性検査⇒最終面接⇒意思確認面接⇒内定

■ 他の職種と比較した待遇面や労働条件の違い
事業理解を深めるために国内のサービス部門で実務経験を積んだ上で、海外部門に着任させる育成方法を採っている。

 

募集職種2:データサイエンティスト

■主な仕事内容
顧客データベース分析やWEBの効果測定、導線分析、消費者との対応におけるVOC(※)分析、SNS上の顧客の行動分析など、リアル~デジタルにおける消費者とのさまざまな接点を検証し、最適な戦略を立案。

※ VOC…voice of customer。顧客の声を分析し、企業に届け、商品開発やサービス向上に繋げる

■応募条件
学部・学科不問

■他の職種との選考フローの違い
この職種限定の能力検査を実施。

■他の職種と比較した待遇面や労働条件の違い
原則ジョブローテーションは行わず、この職種のプロフェッショナルを目指してもらっている。

 

募集職種3:建築設計エンジニア

■ 主な仕事内容
大手住宅メーカーを中心に建築業界・社会インフラ業界向けのコンサルティングを実施。設計・開発支援、生産・施工支援、営業資料の作成支援、CADシステム導入展開支援など、幅広く支援できる体制が特徴。

■ 応募条件
建築学部及びそれに準ずるライフデザインやインテリアデザインなどの専攻の方

■ 他の職種との選考フローの違い
特になし

■ 他の職種と比較した待遇面や労働条件の違い
原則ジョブローテーションは行わず、この職種のプロフェッショナルを目指してもらっている。


 その他の募集職種
営業、WEBサイト企画制作、インターネット広告運用、EC企画運用、エンジニア(WEB/AI/機械/組込/建築)、コンタクトセンターマネジメント、ITサポートデスク、バックオフィスサービス、ほか計43職種。

 


職種別に募集している理由は?

職種別に求める人物像やスキルが異なることから、学生一人ひとりが最も自分らしく活躍でき、かつ会社とともに成長できるフィールドを選択できるようにするために完全職種別採用を実施している。

職種別採用におけるメリットやデメリットは?

■メリット
仕事を通じてやりたいことを明確化した上で、学生一人ひとりが目的意識を持って入社できる。専門的な知識やスキルを有する人材の入社を期待できる。

■デメリット
職種によってはジョブローテーションを通じて人材を育成しているが、それに戸惑う社員もいる。
自分のやりたいこと以外はやらないという考え方がスタンダードになると、事業に支障をきたす恐れがあり、そこが課題。

※ 各社の掲載情報は2020年卒採用に関する募集内容です。

 

ここでは3社の事例を挙げたが、トランスコスモスのように職種を細分化したうえで募集するケースもあれば、三愛石油のように「総合職」に加えて地域限定の専門性の高い職種を募集するケースもあり、採用形態は一様ではない。ただ各社とも「ミスマッチを防ぐ」「学生が主体的に職種を選択できるようにする」という意図で職種別採用を行っており、企業と学生、双方にとってメリットのある採用方式と言えるだろう。

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