企業の動向

 2023年卒採用について、企業からは「内々定を出しても辞退もしくは保留となり、承諾率が例年よりも低い」という声をよく耳にする。それを裏付けるように、弊社調査による5月末時点の内々定率は67.8%と昨年同時期を上回る一方、就職活動終了の意思を示した学生は35.8%に留まる。東証プライム上場のある機械商社では50名に内々定を出したが、承諾は20%、辞退は10%であるのに対し、保留が70%を占め、学生の意思決定の不透明さに「売り手市場であることを痛感させられている」と話す。規模や業界を問わず、多くの企業が採用予定数に到達できないのではと不安視しており、いつまで採用活動を継続するかの判断が難しい局面となっている。
 一方、2024年卒学生への夏季インターンシップ広報は盛り上がりを見せている。6月に大阪で開催された弊社主催インターンシップ&業界研究イベント「スーパービジネスフォーラム」には、昨対比125%となる2,070名が来場し、賑わいを見せた。学生の来場が増加した要因としては、企業側のインターンシップの早期化が挙げられる。ある中堅IT企業では、昨年度は1月に実施していたが、2024年卒学生向けには夏場に実施。加えて参加規模も倍にする予定だ。全国にホテルを展開する企業でも、コロナ禍からの巻き返しで採用人数を1.5倍にする計画を立てており、夏季インターンシップで学生との接触に注力する意向だ。2025年卒以降、一定の要件を満たしたインターンシップ参加学生の情報は採用選考に利用できるようになることから、2024年卒学生対象のインターンシップで時期や内容のベースを構築したいという企業が多く、インターンシップへの関心はいっそう高まっている。
(フィールドセールス本部 片井 宏一)

学生の動向および学生を取り巻く就職環境について

 弊社が約2,000社を対象に実施した「2023年卒採用動向調査」では、全ての業界で新卒採用人数を増やす傾向が見られた。各社の採用意欲の高まりもあり、多くの大学では例年を上回るペースで内々定報告が寄せられているという。今年の特徴として、複数社から内々定を得る学生が例年よりも大幅に増加しているとのことで、キャリアセンターには「どの企業を選ぶべきか」といった相談が相次いでいる。しかし、全ての学生が順調に就職活動を進めているわけではない。2023年卒学生は2年以上にわたり、コロナ禍での大学生活を余儀なくされ、学内外の友人や教職員との対面でのコミュニケーションが、これまでの学生と比べても大幅に減少した学年である。弊社の調査でも「対面での面接がオンライン面接と比べ、苦手あるいは不安」という傾向が表れている。また周囲からの情報収集がうまくできず、就活のスタート時期が遅れた、あるいは就活をほとんどしてこなかったという学生も少なくない。一見、順調そうな学生の就活状況だが、コロナ禍で学生が受けた負の側面も大きく、各大学では2023年卒学生に対する支援が続けられている。
 また、6月から2024年卒学生向けのインターンシップサイトがオープンし、学生たちは情報収集に向け動き始めた。各大学からは「インターンシップ参加希望者は昨年よりも増加している」という話がよく聞かれ、積極的に活動しているようだ。インターンシップを通じて、学生の職業観の醸成や視野を広げた業界研究が進み、ひいては学生と企業双方にとってミスマッチのない就職・採用活動になることが望まれる。
(キャリアサポート部 岩本 和彦)