中途採用とは?企業のメリット・デメリットや流れ、適しているケース
2024.07.19
働き手の転職への意識がポジティブに変わるとともに、中途採用市場が盛り上がりを見せています。新卒採用の補てんとして、戦略的に中途採用にシフトする企業も増えてきました。
この記事では、中途採用に困っている企業の採用担当者に向けて、競争の激しい市場で自社の採用を成功させるポイントを20代専門転職サイト「Re就活」 を運営する学情社員がくわしく解説します。
中途採用とは
中途採用とは、すでに就業経験のある人材を採用する手法です。急な欠員補充や、事業拡大に伴って即戦力を求める場合に適しています。
中途採用の対象は、スキルや経験が豊富なキャリア人材だけではありません。社会人経験があり職務未経験の第二新卒者や、就業経験がない既卒者も含まれます。
新卒採用と異なり、採用活動に決まった時期はなく、ニーズが発生したタイミングで募集を行います。
なお、厚生労働省「正規雇用労働者の中途採用比率の公表の概要」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000737262.pdf)には、『「中途採用」とは「新規学卒等採用者以外」の雇入れを指します。』と記載されています。
新卒採用とのちがい
新卒採用とは、卒業予定の学生を採用する手法です。一般的には、学生の卒業の予定に合わせて、決まった時期に行われます。
中途採用の目的はさまざまですが、新卒採用は、企業が安定して事業を継続していくための後継者の育成を目指しています。正社員としての就業経験がない新卒者が対象であり、スキルや経験より自社とのカルチャーフィットやポテンシャルが重視される傾向があります。
キャリア採用とのちがい
キャリア採用は、募集職種に対する経験やスキルをすでにもっている人材を採用する、即戦力採用です。それに対して、中途採用は未経験者も対象とするポテンシャル採用の場合もあります。よって、キャリア採用は中途採用の一部といえるでしょう。
中途採用のトレンド
中途採用は拡大傾向にあります。
株式会社学情が全国の企業および団体におこなった調査では、中途採用の人数については「前年度よりも増やす予定」と回答した企業が32.2%に上りました。「前年度と特に変更なし」を合わせると、約8割の企業が2023年度の採用人数と同程度~それ以上の採用を予定しています。
また、採用人数を増やす年齢層は、「20代(26~29歳)」が70.2%で最多となり、20代を中心に若い世代の採用を増やしたいという意向がうかがえます。
※参考:株式会社学情:「キャリア採用動向調査2024」
(経団連が転職者などの採用において使用されることが多い「中途採用」の呼称を「経験者採用」に改め、「経験者採用」の表記を使用することを会員企業に呼び掛けていることを受け、当社では転職者の採用を「キャリア採用(経験者採用)」と表記しています。)
中途採用市場が活況な理由
テレビや電車、街中で、転職サイトの広告をよく見かけませんか。実際に、ここ数年の中途採用市場は非常に活況といえます。なぜ中途採用市場が盛り上がっているのか、理由を3つ説明します。
1.少子化に伴う新卒採用の難易度の上昇
まず、少子化に伴い、新卒採用がむずかしくなっている点が挙げられます。日本経済新聞の2024年4月8日の記事によると、2024年度の採用計画に占める中途採用比率は過去最高の43.0%と5割に迫る水準になりました。
※出典:日本経済新聞「中途採用5割迫る、24年度「新卒中心」転換点 日経調査」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC3041Y0Q4A330C2000000/)
業界を問わず、日本全体が慢性的な人手不足に陥っており、いままで臨時的な意味合いの強かった中途採用を主軸に置き替える企業が増えています。
2.DX人材のニーズの高まり
また、グローバル化によって一層重要になったDX化を各企業が推し進める中、DX人材のニーズが高まっていることも理由のひとつです。経済産業省は、2018年のDXレポート内で、IT 人材の引退やサポート終了等による経済損失は、2025 年以降、最大12兆円にのぼる可能性があると指摘しました。
※出典:経済産業省「DXレポート 2.6.2 既存ITシステムの崖(2025年の崖)」(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf)
現在の基幹システムをメンテナンスできる人材が、2025年に一斉に定年を迎えるといわれており、人材不足が懸念されているのです。
経済産業省は2016年、「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」の中で、2030年までに最大約79万人のIT人材の不足が予想されるとしています。
※出典:経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」(https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_s02_00.pdf)
3.働き手の意識の変化
さらに、高度経済成長期の労働力不足によって確立した終身雇用や年功序列制度は、昨今の日本では崩壊しつつあります。代わりに、キャリアは自分で設計するものという意識が働き手の中で強まってきました。キャリアアップや新しい仕事への挑戦、ワークライフバランスの実現など、前向きな転職理由が増えています。
株式会社学情が28歳以上のビジネスパーソンを対象に実施したアンケート調査では、「転職で重視すること」で多かった回答のトップ5は上から「給与・年収アップ」「仕事のやりがい」「仕事内容」「残照の削減、休日の確保」「勤務地」でした。
※出典:株式会社学情「30代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(30歳前後での転職)2024年6月版」(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/240625/)
このようなポジティブな意識の変化によって、以前と比べて転職へのハードルが下がり、中途採用市場に優秀な人材が現れたといえます。
中途採用のメリット・デメリット
企業が中途採用を行なうメリット・デメリットを、特徴にもとづいて紹介します。自社の採用ニーズに合った手法を選ぶのが重要です。
【中途採用と新卒採用の特徴比較表】
|
中途採用 |
新卒採用 |
即戦力が採用できる |
○ |
× |
ピンポイントで人員を補充できる |
○ |
× |
一度にたくさん採用できる |
△ |
○ |
自社にない知識やノウハウを得られる |
○ |
△ |
採用にかかる費用を抑えられる |
× |
○ |
採用にかかる時間を抑えられる |
○ |
× |
教育にかかる費用を抑えられる |
○ |
× |
企業文化を継承しやすい |
△ |
○ |
中途採用のメリット
中途採用のメリットは大きく3つに分けられます。
- 即戦力を採用できる
- 人材が不足したタイミングでピンポイントに活動できる
- 自社にない価値観やノウハウを取り入れられる
3点目に限っては新卒採用でも可能といえます。しかし、中途採用では、さらに業務に即した知識や考え方を取り入れられるでしょう。
即戦力を採用できる
中途採用で経験やスキルをすでにもっている人材を対象とすれば、企業に定着させるためのオンボーディングは必要ですが、即戦力としての活躍が期待できます。
職務未経験者でも社会人としてのビジネススキルやマナーは身についているため、新卒者と同じ教育は不要でしょう。中途採用では、研修にかかる時間だけでなく、費用も抑えられるのがメリットです。
人材が不足したタイミングでピンポイントに活動できる
中長期の計画を立てて将来の幹部候補を確保する新卒採用と異なり、中途採用の目的は採用ニーズの充足です。新卒採用では内定者の卒業を待つ必要がある関係からもほとんどが4月入社ですが、中途採用は企業の状況に合わせて入社時期を調整でき、柔軟な計画が可能です。
内定から入社までの時間が長い新卒採用と比べて、採用ニーズが発生したタイミングから時間をそれほど空けずにポジションを埋められます。
自社にない知識やノウハウを取り入れられる
同業種からの転職者は、前職での経験から、新たな仕事の進め方や知識をもたらしてくれるでしょう。
たとえば、新規事業で新しいスキルや資格が必要になったとき、既存社員を一から育成しようとすると多くの時間や費用がかかります。しかし、それらをすでにもった人材を採用すれば一気に解決できます。
それだけでなく、他社で活躍していた頃の人脈も持ち込んでもらえる可能性があり、自社にとって新規のビジネスチャンスにもつながるかもしれません。
また、新卒採用で長く働いている社員ばかりだと、似た価値観や考え方に偏ってしまう傾向があります。他社で経験を積んだ人材を内部に入れることで新しい風を吹き込ませられるでしょう。
ただし、競合他社の人材は、競業避止義務について現職(前職)の企業と合意書や契約書を締結している場合があるので注意が必要です。
中途採用のデメリット
前職での経験がある人材ならではのデメリットもあります。
採用コストが高い
新卒採用は一括で大量に採用するのが慣例となっており、採用広報から選考、研修までをまとめて同じ時期に行なうことでコストを抑えられます。中途採用は採用ニーズが発生する度に活動するので、その都度費用が発生します。
とくに高いスキルをもった人材を採用しようとすると、採用競合より良い条件を提示しなければなりません。中途採用では前職での年収も考慮する必要があり、新卒採用と比べて給与水準が高くなる傾向があります。
採用ニーズに適した採用手法を選ぶことが重要です。
価値観のミスマッチが発生する可能性がある
社内システムやルール、社員の雰囲気などは、企業によって多種多様です。企業文化や価値観は、選考を通してもなかなか伝わりにくい部分であり、入社後に前職とのギャップで中途社員が悩んでしまうケースがあります。
新卒入社したIT企業から人材会社に転職した筆者が感じたギャップは、勤怠の打刻方法からファイル共有のしかた、情報セキュリティに関する意識やリモートワークの頻度まで、さまざまです。個人単位でのタスクからチームで目標を追う仕事に変わったので、業務に取り組む姿勢自体を変える必要性に迫られました。
このような理由で、企業風土を吸収しやすい新卒者と比べて中途採用では価値観のミスマッチが起きる可能性が高いです。スキルや経験を重視するキャリア採用や経験者採用では、企業側がカルチャーマッチを軽視してしまう傾向があるのも、理由のひとつとして挙げられます。
中途社員が対象の研修やフォローがなく、採用ミスマッチに気付かず放置してしまうと、早期離職につながります。採用したあとも、1on1ミーティングやランチ会などのオンボーディングに取り組むとよいでしょう。
中途採用の流れ
ここでは、中途採用にはじめて取り組む採用担当者に向けて、中途採用の流れを説明します。
- 採用計画を立てる
まずは採用計画を立てる必要があります。目標を見失うと、活動を進めるにつれてどんな人材を求めていたのかがわからなくなる可能性が高いからです。採用を行なうことでどんな課題を解決したいのかを明確にし、関わる社員すべてに共有しておきましょう。
- 何の目的で
- どの部署に
- いつまでに
- 何人
- どのような人材を
- どのような方法で採用するか
- 実際に求人への応募を募り、母集団形成を行なう
ターゲットに合った採用手法で、求職者からの応募を集めて母集団形成を行います。中途採用でおもに使われる手法は次の通りです。
- 求人広告(求人サイト)
- 人材紹介サービス
- 採用サイト(自社HP)
- 転職フェア(合同企業セミナー)
- ハローワーク
- 求人検索エンジン
求人を出す期間は、学情が運営するRe就活では4~8か月程度が一般的です。期間内で応募者からの反応を見て求人原稿の改善を行ない、PDCAを回しましょう。
- 選考
中途採用では、書類選考のあとに2~3回程度の面接を実施する企業が最も多いようです。ポテンシャル採用でも最低限の能力を測る目的で適性検査やWebテストなどを挟む場合もあります。
- 内定者フォロー(オファー面談など)
- 入社後フォロー(研修や1on1ミーティングなど)
中途採用を成功させるには
昨今の採用市場では、ただ求人を出すだけでは応募が集まりません。中途採用を成功させるために気をつけるべきポイントをお伝えします。
ターゲットに合った採用手法を選ぶ
中途採用を成功させるには、ターゲットに合った採用手法を選び、質の良い母集団形成を行なうことが何よりも重要です。
【ターゲットに合った採用手法の例】
ターゲット |
採用手法 |
カルチャーマッチする人材 |
|
経歴や実績を評価できる人材 |
ヘッドハンティングサービス |
第二新卒や既卒などのZ世代 |
|
40~50代も含む幅広い世代 |
|
重要視する点がカルチャーマッチなら、第三者視点で自社との適合性を判断してもらえる人材紹介サービスや、ファンづくりを意識した自社採用サイトやSNSを用いたが適しています。
スキルや資格、経験を評価するなら、ヘッドハンティングサービスがおすすめです。
第二新卒などのZ世代を採るなら、個別にアプローチできるダイレクトリクルーティングや、動画を用いた求人広告の効果が高いでしょう。
求人サイトひとつ取っても、幅広い世代にアピールできる大規模な求人サイトから、職種や性別、世代などに特化したものまで数多くあります。効率よくターゲットにアプローチできるサービスを吟味することが必要です。
選考スピードを速くする
質の良い母集団形成を行なったうえで、選考スピードも採用の成否にかかわります。
中途採用では、求職者は短期間で複数社にエントリーしていることが一般的です。合否の判断に迷って連絡が滞ると、その間に他社に内定を出されてしまう可能性が高まります。
企業が求職者を選ぶのと同様に、「企業も選ばれている」意識を忘れないようにしましょう。
1to1のアプローチを心がける
採用ターゲットにマッチする求職者には寄り添った対応を心がけましょう。
たとえば、スカウトメールでは、求職者のプロフィールを見て「あなたのどこに魅力を感じたのか」を一人ひとり具体的に記載できるのが理想です。受け手側の気持ちになって考えれば、明らかにテンプレートだとわかるメールには興味を惹かれないことがわかります。
選考過程においても、求職者が求める情報を積極的に提供したり、面接にこだわらないステップ(カジュアル面談やランチミーティング、オフィス見学など)を柔軟に用意したりすることでさらに志望度を上げられるでしょう。
中途採用が適しているケース
中途採用のメリットは、採用ニーズを満たす人材を時期にこだわらずに獲得できることでした。これを踏まえて、中途採用が適しているケースを紹介します。
専門職の採用
高度な専門資格が必要だったり専門性の高い業務が多かったりするケースに向いています。たとえば、士業(弁護士や司法書士、税理士といった「士」がつく職業の総称)やシステムエンジニア、データアナリストや研究職などです。
未経験者を教育できる体力が企業にない場合も有効です。
急な人員補充
中途採用はふつう、1~2か月程度の短期スパンで採用が決まるので、急を要する人員補充にもマッチします。
ただし、大人数の採用には向かないので注意が必要です。中途採用ではスキルや前職での経験に焦点を当て、一人ひとりの選考に時間を要します。
新卒補てん
少子化の影響で学生数が右肩下がりです。文部科学省によると、18歳人口は平成4年度の205万人から、令和22年には約88万人まで減少することが予測されています。
※出典:文部科学省「Ⅰ.18歳人口及び高等教育機関への入学者・進学率等の推移」(https://www.mext.go.jp/content/20201209-mxt_daigakuc02-100014554_2.pdf)
いままでのやり方では新卒採用で目標人数を集められず、その補てんとして既卒・第二新卒採用を行なう企業が増えています。
20代通年採用に取り組むならRe就活
第二新卒とは一般的に、新卒入社から3年以内に離職し(または離職の予定があり)、再び就職先を探している人材を指します。
採用活動の時期が決まっている新卒採用では、卒業前年度の6月ごろから学生の活動量が徐々に落ちてきますが、第二新卒の活動量は年間を通して一定を保つ傾向です。そのため、6月以降に新卒採用で目標に到達しなかった人数を第二新卒から採用し、4月から新卒者に合流してもらう一連の採用戦略を学情は「20代通年採用」と呼び提唱しています。
20代通年採用にはすでに多くの企業が取り組んでいます。
株式会社学情が2024年7月に発表した「キャリア採用動向調査2024」では、「新卒採用だけでは、若手採用を充足できないから」との理由で20代を対象とした中途採用を実施している企業が半数以上でした。
※出典:株式会社学情「キャリア採用動向調査2024」(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/career-saiyo-report2407/)
また、別のアンケート調査では、既卒や第二新卒などの20代を対象にした「20代通年採用」を「既に実施している」と回答した企業が6割に迫りました。
※出典:株式会社学情「「2025年卒採用」に関する企業調査(2024年6月)」(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/240617/)
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まとめ
中途採用は短期間で即戦力を確保するのに適した採用手法です。ただし、大人数の採用には向かない点や、価値観のミスマッチに注意する必要があります。
働き手の意識の変化などの影響で多くの人材が採用市場に流れこんでいるにもかかわらず、売り手市場により企業が人材を採用するのはむずかしくなっています。ターゲットを見据えた取り組みが求められるでしょう。
中途採用を成功させるポイントやベスト時期、最近のトレンドについて、さらにくわしく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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