VUCA(ブーカ)とは、
の頭文字を取った言葉で、先行きが不透明で変化の激しい現代を表した言葉です。将来の予測がむずかしい状況でも最善の意思決定をおこない、ビジネスを成功に導くために重要な考え方として注目されています。
BANIは、Brittle(脆い)、Anxious(不安な)、Nonlinear(非線形の)、Incomprehensible(不可解な)の頭文字からなります。
この言葉は、「IFTF(Institute For The Future:未来研究所)」のジャメイ・キャッシォ(Jamais Cascio)氏が作りました。VUCAが現代の課題と、それに対する適応の必要性を表すのに対し、BANIは実現すべき未来のために何が必要かを表現したものです。
RUPTとは、Rapid(急速な)、Unpredictable(予測不可能な)、Paradoxial(逆説的な)、Tangled(もつれた)の頭文字です。RapidやTangledの語からは、VUCAよりもさらに速く、より複雑に 物事が進展していくことを強調しているようにも感じられます。
TUNAは、Turbulent(激動の)、Uncertain(不確かな)、Novel(新しい・奇抜な)、Ambiguous(曖昧な)の頭文字で、Forbesの記事によると、オックスフォード大学ではVUCAより身近な用語として使われているようです。本質的には似ていますが、VUCAよりそれぞれの言葉に強い印象を受けます。
Volatility(変動性)に対応するには以下のようなスキルが求められます。
VUCA時代では、たとえばスマートフォンの登場など、テクノロジーの進化によって人々の価値観をおおきく転換する急激な変化が起こります。既存の成功事例が正しいと思いこまずに、 状況にあった対応を模索する力が必要です。
それには、普段からアンテナを張り続け新しい技術の情報を常に吸収する習慣、その情報を正しく理解したうえで適切に取捨選択をするスキルが求められます。DXへの適応力も必要です。
Uncertainty(不確実性)に対応するには以下のようなスキルが求められます。
VUCA時代では、たとえその業界で長年の経験をもっている人材でも、明確な答えを導き出すのは至難の業です。なぜなら、それまでのセオリーが成り立たない可能性が高いからです。
このような環境では、市場を十分に観察して理解し、それに沿った仮説を立ててアプローチできる人材がキーを握ります。たとえまったく新しいやり方であっても 迅速に実行を決定し、失敗しても要因を見つけてトライアンドエラーしていける人材が、物事を成功に導くでしょう。
OODA(ウーダ)ループもVUCAと同じく元は軍事用語なので、相性がいいとされています。
OODA(ウーダ)ループとは、
をくり返すフレームワークです。よく知られているPDCAサイクルに替わり、VUCA時代に対応する手法として注目を浴びています。
計画(Plan)からはじまるPDCAサイクルとは異なり、OODAループは観察からはじまります。
先行きが不透明な現代では、初めに立てた計画どおりに物事を完遂できる可能性は低いです。複雑な市場ニーズを観察して状況を理解し、迅速な決定・実行をする、このフレームワークは、VUCA時代により適切といえるでしょう。
Complexity(複雑性)に対応するには以下のようなスキルが求められます。
VUCA時代では多くの人がそれぞれの価値観にしたがって動くため、市場全体を一括で把握することは困難です。そんな複雑な要素をひとつひとつ分解して、本当はなにが求められているのかを理解する人材がいれば、市場で優位に立てるでしょう。
企業には、多様な価値観を受け入れるコミュニケーションスキルも必要です。
Ambiguity(曖昧性)に対応するには以下のようなスキルが求められます。
曖昧性に満ちた世界では、他人の解釈に惑わされずに冷静に情報を収集し 、問題の本質を見抜く力が求められます。言い換えれば「自分の頭で考える力」が必要です。
また、近年ではAI技術がめざましい発展を遂げており、「AIに人間の仕事が奪われる」というような話を耳にします。しかし、AIは過去のデータに基づいて判断 しますから、前例のない課題や感性に即した仕事は不得意です。
この点においても、これからの人材には「自分の頭で考える力」が必須といえるでしょう。
業務内容や時代背景に影響されない「ポータブルスキル」も重要です。「ビジネス基礎力」とも捉えられます。高いレベルでポータブルスキルを身につけた人材は、どのような会社や業界でも必要とされるのです。
VUCA時代を企業が生き抜くには、前章で紹介したスキルをもった人材が必要です。以下のふたつの方法を紹介します。
①既存社員を育成する
②新しく人材を採用する
まずは既存社員を育成する方法があります。
研修等をおこない、自ら考える力やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に貢献するスキルを育てます。
具体的な方法には、ロジカルシンキング研修やデジタルスキルを再開発する「リスキリング」があります。
[リスキリングとは?リカレント教育との違いや注目され始めた背景を詳しく解説]
迅速に意思決定し行動に移すマネージャーの効率的な育成も、VUCA時代の企業には必要です。
企業によるエンパワーメント(権限委譲)とは、一般的に、指示→合意→援助→委任の4段階を踏んで部下を育成することを指します。ステップを踏みながら徐々にマネージャーの権限を部下に委譲していき、新たなマネージャーに育て上げます。
また、問題解決能力やプレゼンスキル、コミュニケーション能力などを含んだ汎用性の高いスキル、つまり、ポータブルスキル(=持ち運びできるスキル)も重要な要素です。
ポータブルスキルを育てるには、厚生労働省の研修資料の活用や、外部の研修サービスの利用がおすすめです。
(参考:ポータブルスキル見える化ツール(職業能力診断ツール)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23112.html)
VUCA時代を生き抜く組織づくりには、外から新しく人材を採用する方法もあります。
経験者(中途)採用を行い、上の章で紹介したスキルをすでにもった人材を採用できれば、即戦力の増加が期待できます。既存社員にもよい影響をあたえ、メンバーを引っ張ってくれる頼もしい存在となるでしょう。
ほかには、VUCA時代に適応する価値観をもった人材のポテンシャル採用もひとつの手です。
業界や時代に影響されないほど高いレベルでスキルを身につけた人材は、市場価値が高く、激しい採用競争が予想されます。
自社の採用リソースに限界がある際や、即戦力人材を勝ち取れない場合には、ポテンシャル採用がおすすめです。
ポテンシャル採用では、即戦力人材と比較してスキルや経験が少ない一方、VUCA時代に適応する価値観をもっている人材を採用します。入社後は、計画的な研修によって、VUCA時代に必要なスキルを身につけた人材に育成します。
VUCA時代に生まれ育ったZ世代は、この時代に即した価値観をもっています。次の章で特徴を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
Z世代を効果的に採用するには、彼ら・彼女らの価値観に合わせた採用方法がおすすめです。