HR関連法令・制度のご紹介

最低賃金引き上げに向けた支援事業

人事の図書館 編集長 大西直樹
最低賃金とは、1959(昭和34)年に制定された最低賃金法に基づいて国が賃金の最低限度を定めたもので、雇い主は労働者に対して最低賃金以上を労働者に支払わなければなりません。地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があり、地域別最低賃金は毎年、厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審査会から金額改定のための引き上げ額の目安が提示され、その目安を参考に地方最低地銀審議会が実態調査や参考人の意見等を踏まえて審議し、都道府県の労働局長が決定、公示を行います。

2021年度の引き上げ率は過去最高の約3%。

地域別最低賃金は、2015年に安倍総理が年3%の引き上げを目指すと表明して以降、引き上げが続いていましたが、2020年のコロナ禍により政府が「雇用を守ることが最優先」とし、全国平均の引上げ額が1円にとどまりました。しかし政府は2021年6月に策定した経済財政運営を改革の基本方針の中で「早期に1,000円とすることを目指し、引き上げに取り組む」としており、これを受けて7月14日に中央最低賃金審議会の目安小委員会は、最低賃金の全国加重平均902円から28円引き上げ、930円とする目安をまとめ、厚生労働大臣に答申しました。約3%の引き上げは過去最高で、実現すれば全都道府県で800円を超えることになります。

その後8月13日に厚生労働省により、地方最低賃金審議会が答申した2021年度の地域別最低賃金の改定額が取りまとめられました。

経済界からは雇用に深刻な影響が出るとのコメントも。

今回の引き上げの背景には、民需主導での経済回復を図るといった狙いのほか、日本の労働分配率が長年にわたり低下傾向にあること、コロナ禍により賃金格差が広がっていること等を考慮した取り組みとされています。しかし経済界からの反発は強く、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会の3団体は連名で「中小企業・小規模事業者の窮状、とりわけ困窮している飲食業や宿泊業などの事業者の実態や痛みを理解していない結論と言わざるを得ない。多くの経営者の心が折れ、廃業が更に増加し、雇用に深刻な影響が出ることを強く懸念する」とのコメントを出しています。

経済界からの懸念に対し、様々な支援策を用意。

そうした経済界からの懸念に対し、政府は様々な支援策を打ち出しています。

◆事業再構築補助金
新型コロナウイルスの影響を受けた社会変化に対応するため、中小企業の新規事業等の取り組みを支援する制度です。第3回の公募(公募期間:2021年9月21日18時まで)では最低賃金引き上げの影響が大きい企業に対して支援する制度が設けられています。

※中小企業庁  「事業再構築補助金」

◆業務改善助成金
中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金の引き上げを図るための制度です。生産性向上のための設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)等を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度で、2021年8月から対象人数の拡大や助成上限額の引き上げが行われています。
◆緊急雇用安定助成金
2021年1月8日以降、解雇を行っていない中小企業で、事業場内最低賃金を21年7月16日から12月までの間に30円以上引き上げた事業者を対象に、2021年10月から12月までの3か月間、休業規模に関係なく交付される助成金。
◆働き方改革推進支援助成金(団体支援コース)
中小企業事業主の団体や、その連合団体が、その傘下の事業主が労働条件の改善のために時間外労働の削減や賃金引き上げに向けた取り組みを実施した場合に、その事業主団体に対して助成する制度です。
この他、厚生労働省では生産性の向上などの経営改善に取り組む中小企業の労働条件管理などのご相談などについて、中小企業庁が実施する支援事業と連携して、ワン・ストップで対応する相談窓口を開設しています。上記で紹介した助成金の相談等にご利用ください。

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