HR用語の基礎知識

アンコンシャス・バイアス

人事の図書館 編集長 大西直樹
アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)とは、直訳すると「無意識の偏見」の意味で、先入観や思い込みによって偏った見方をしてしまうことを指します。誰もが何らかのアンコンシャス・バイアスをもっており、それ自体が直ちに関係性に悪影響を与えるわけではありません。しかしそのまま放置すると、社員のモチベーション低下やハラスメントの増加、職場のコミュニケーション不全、ひいては組織や個人のパフォーマンス低下等、様々な弊害を生むことになりかねません。

そのためアンコンシャス・バイアスの知識や対処法を身につけることは、多様な社員をマネジメントする上での必須要件として位置づけられ、すでに様々な企業がトレーニングを実施しています。Googleやフェイスブック、マイクロソフトなどの大手外資系企業が先陣を切って導入し、現在では金融・証券、IT、製薬、流通、土木、製造等、あらゆる業種の企業がアンコンシャス・バイアスの研修を導入しています。

「思い込み」や「きめつけ」がないか、自己認識を深めることが重要。

アンコンシャス・バイアスには様々なものがあり、例えば年齢、性別、出身地、役職、経歴といった情報から「きっと○○なはずだ」「なんとなく○○な気がする」というイメージをもってしまう等が挙げられます。具体的には以下のようなものです。

■最近の若手社員とは世代間ギャップで話が合わなそう
■女性は育休を長期間取得し、男性は育休をあまり取得しない
■男性は左脳で、女性は右脳で思考する
■体格に恵まれたひとは心身ともにタフそうに見える
■日本人は真面目で礼儀を重んじる

自分の先入観や思い込み、勝手な解釈で無意識に発した言葉や態度が、否定的なメッセージとなり、相手を傷つけることがあります。いつでも、どこでも、誰にでも起こりうるものだからこそ、自分自身に「思い込み」や「決めつけ」がないか、自己認識を深めることが重要です。

職場でのアンコンシャス・バイアスの代表的な事例。

多様な属性や価値観を持つ人が集まる職場において、アンコンシャス・バイアスを意識することはダイバーシティの推進やハラスメントの防止に効果的です。従業員がストレスなく安心して能力を発揮できる職場は個々のモチベーションを高め、企業の業績向上や持続的な成長につながっていきます。

職場でのアンコンシャス・バイアスの代表的な事例をご紹介します。

【組織におけるアンコンシャス・バイアス】
◆正常性バイアス
危機的状況になっても、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりする
例)うちの会社は大丈夫/たまたま今回起こっただけ

◆集団同調性バイアス
集団に所属することで、同調傾向・圧力が強まり周囲に合わせてしまう
例)ハラスメント的な指導が常態化しているが、誰も意見しない

◆アインシュテルング効果
過去の経験やなじみ深いものに固執し、ほかの選択肢や考え方を無視してしまう
例)過去に前例のないプロジェクトは認められない

◆コミットメントのエスカレーション
過去の自分の意思決定を正当化し、自分の立場に固執してしまう
例)多額の投資をした不採算プロジェクトが撤退できない

力を持っている人ほど自分自身のもつ「力」を意識的に取り扱う必要がある。

【個人におけるアンコンシャス・バイアス】

◆ハロー効果
ひとつの目立つ特徴に引きずられてほかの特徴も同じように評価してしまう
例)有名大学や大企業の出身者は優秀である

◆ステレオタイプバイアス
人の属性やグループに対し特定の特徴があると決めつける
例)高齢者にITは向いていない/外国人は自己主張が強い

◆慈悲的差別
女性や少数派に対する好意的ではあるが勝手な思い込み
例)子どもがいる女性には負荷の高い業務を任せない

◆インポスター症候群
自分自身能力や実績を過小評価し、可能性を閉ざしてしまう思い込み
例)自分の力ではなくまわりのサポートのおかげで成功した

アンコンシャス・バイアスは、誰もが持っているものですが、とりわけ組織のリーダーや管理職は注意が必要です。部下の発言に対し、眉をひそめる、腕組みをする、パソコンに目を向けながら話を聞く態度をとる。このような小さなしぐさ、言動をマイクロメッセージ(小さなメッセージ)やマイクロインイクイティ(小さな不公平)といいますが、このような行動を上司が行った時、部下はどのように思うでしょうか。管理職は部下の評価や育成、仕事をアサインする役割を担っています。役割がもつ「ポジションパワー」に無自覚なまま発する何気ないひとことや些細な行動に、立場の弱い人たちは恐れや不安をいだき、ストレスや無力感を感じることがあります。力を持っている人ほど、自分自身のもつ「力」を自覚し、意識的に取り扱う必要があります。

労働人口減少に伴って人材獲得競争が激化し、さらにはビジネスのグローバル化と多様性あふれる組織作りが当然となった今、アンコンシャス・バイアスの排除は、企業マネジメントにおける必須要件といえます。ぜひこの機会に職場内のアンコンシャス・バイアスに目を向けていただき、ダイバーシティの実現、組織全体のパフォーマンスの向上につなげていきましょう。

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