HR関連法令・制度のご紹介

産業雇用安定助成金

人事の図書館 編集担当者

人が足りない企業、受け入れる企業双方が受けられる助成金

新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、今もなお衰えることはありません。総務省統計局より発表の「労働力調査(基本集計)」によると、本年1月の完全失業率は2.9%(昨年同時期;2.3%)と増加しており、働きたくても働けない、いわゆる“コロナ離職”の問題が社会問題となっています。

そのため、国や自治体は様々な方法で雇用の確保に努めています。直近では、新型コロナウイルスの影響により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業手当を支給して労働者を休ませた場合、その一部を保証する「雇用調整助成金」の特例措置が、4月末まで延長されました。また、大阪府では府民の雇用を創出する独自の取り組みとして、本年11月30日(火)までに民間人材サービス事業者の求人特集を通じて大阪府民を採用した事業主に最大25万円の支援金を支給する「緊急雇用対策事業」を実施しております。

そうした取り組みの一環として、本年2月5日(金)に新たに創設されたのが「産業雇用安定助成金」です。最大の特徴としては、従業員を休業させることが受給の前提となる「雇用調整助成金」とは異なり、出向により労働者の雇用維持を図る場合に出向元と出向先双方に対して助成金が支払われるものとなっております。事業活動をやむなく縮小した企業だけでなく、受け入れる企業にとってもメリットとなる制度となっており、一時的な雇用の確保だけでなく、人材を流動化することにより社会全体で雇用を守る動きが出てきているとも言えます。詳しく見ていきましょう。

労働者は、「出向元」「出向先」双方と雇用関係を結ぶのが特徴

出向とは、労働者が出向元企業と何らかの関係を保ちながら、出向先企業と新たな雇用契約関係を結び、一定期間継続して勤務することをいいます。労働者派遣との違いとして、在籍型出向とは出向元企業と出向先企業の間に出向契約が発生し、労働者が出向元企業と出向先企業の両方と雇用契約を結びます。(※労働者派遣では、労働者は派遣元事業主のみと雇用契約を結ぶことになっております。)
(出展:厚生労働省)

出向元企業にとっては、在籍型出向によりコロナ禍の中で労働者の雇用を維持することができます。また、労働者にとっても自社ではできない経験を積むことができるきっかけとなる等、出向解除後の業績にも貢献することが期待されます。受け入れ企業にとっても、出向者の能力発揮によって生産性向上・職場の活性化につながったり、多様な人材の活用方法を模索するきっかけになる等、様々なメリットがあると考えられます。

なお、在籍型出向は、労働者の個別同意、あるいは就業規則等の社内規定に基づき行われる必要があり、いうまでもなくこれらの規定は労働者の利益に配慮して整備されている必要があります。これらは労働者個人の判断で実施する副業・兼業との大きな違いとなっており、在籍型出向は書面上では会社による労働者への指揮命令という形となります。とはいえ、助成金を活用するにあたっては、出向労働者本人が出向することについて同意していることが必要となっておりますので、ご注意ください。

出向元企業と出向先企業間の契約、助成金の受給額について

出向元企業と出向先企業の間においては、個別出向契約を締結する必要があります。助成金の活用にあたっては、出向契約書に以下の事項を記載する必要があります。

(1)出向元事業所および出向先事業所の名称と所在地
(2)出向労働者ごとの出向実施時期・期間
(3)出向中の処遇/出向の形態と雇用関係/出向期間中の賃金/出向期間中のその他の労働条件/出向期間中の雇用保険の適用
(4)出向元事業主および出向先事業主の間の賃金の負担・補助
(5)出向期間終了後に出向元事業所に復帰する予定であること

また、出向期間中の労働条件等を明確化し、一部項目については労働者に対して書面の交付にて明示する必要があります。こちらは、原則出向先企業が明示することになりますが、出向元企業が出向先企業に代わって明示することも可能です。なお、助成金は、最大12,000円/日(出向元・先の合計)の範囲内で以下の金額が支給されます。

■出向元が労働者の解雇を行っていない場合
中小企業 9/10 中小企業以外 3/4
■出向元が労働者の解雇を行っている場合
中小企業 4/5 中小企業以外 2/3

他に、就業規則や出向契約書の整備費用、出向元企業が出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先企業が出向者を受け入れるための機器や備品等の整備等に対して、10万円(定額)が支給されます。
制度の活用にあたっては、お近くの都道府県労働局または公共職業安定書(ハローワーク)へお問合せください。

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