HR用語の基礎知識

オンボーディング

人事の図書館 編集長 大西直樹
「オンボーディング(on-boarding)」とは、『機内』や『乗船』という意味を持つ言葉から派生して作られた造語であり、直訳すると、「飛行機や船に乗っている」という意味になります。本来は船や飛行機に新しく乗り込んできたクルーや乗客に対して、必要なサポートを行い、慣れてもらうプロセスのことを指します。人事用語として使われる際には、企業が新たに受け入れる新入社員に対して行う研修の事を指し、配属から定着化、そして戦力化までのサポートの一連の流れのことを指し、そのためのプログラムを「オンボーディングプログラム」と呼んでいます。

新卒者はもちろん、即戦力と見込んで採用した転職者でさえ、最初から自分の力だけでスムーズにパフォーマンスを発揮し、組織内で活躍していくことは容易ではありません。新規採用人材の受け入れというと、従来は入社後の限られた期間に、集中的に実施されるオリエンテーション、すなわち新人研修が一般的でしたが、それだけでは早期離職防止の効果は薄く、離脱は避けられたとしても戦力化までに時間がかかります。そこで、より継続的に行われる教育・訓練の取り組みとして、オンボーディングの重要性が浮上してきたのです。

オンボーディング導入のメリット。

◆新入社員の早期戦力化
平均的な新入社員研修では、戦力として成果を上げるようになるには、半年から1年ほどかかると言われてます。オンボーディングプログラムでは、新しく入ってきた人が仕事をいち早く覚え、自分のスキルとして活かせるようになるまでのプロセスを明確にするための手段であり、早期戦力化を目指す企業にとって、とても効果的なものです。従来の育成方法よりも短い所要時間で組織に新しく入ってきた新入社員の早期戦力化が可能になります。

◆組織の結束力の向上
採用されたあとオンボーディングによって交流を深めたり、メンターが指導してくれたりすることで、企業が自分に期待していることを肌で感じモチベーションアップもつながるでしょう。また、組織内での活発な情報共有がおこなわれることで、社員同士がお互いに助け合うことができ、組織における結束力の向上も期待できます。

◆業務の効率化
新入社員への育成を仕組化させることで、通年採用を活用している企業でも現場の社員の負担を減らすことが出来ます。また、マニュアル化させたり制度を整えることで、まだ分からないことが多い新入社員でもすぐに、答えに辿りつくことができるので、とても効率的に仕事が進むようになります。

オンボーディング導入の際の取るべき5つの行動。

◆「準備」の徹底
Googleの社内調査によると、入社初日に受け入れ態勢を整え準備しておくと、入社から3か月以内のパフォーマンスが30%上がるという結果があるそうです。例えば、新入社員の出社初日に育成担当者が知らされる、などが起きている状況では、十分な準備が出来ずに受け入れることになってしまいます。新入社員を受け入れる部署、チーム、上司がしっかりと受け入れる準備をしているかがとても重要です。

◆「人間関係」を良好にする
20代のための求人サイト「Re就活」の登録会員を対象とした調査レポートによると、新しい職場に求めることの1位は「良好な人間関係」という結果となっています。特に後からチームや組織に入る人にとって、人間関係は大きな不安要素になります。そこで、組織から積極的にフォローをしようという雰囲気を出して、人間関係に対する不安を和らげましょう。具体的には、組織には誰がいて、それぞれがどのような役割を果たしているか、この分野で困ったときにはこの人に聞けばよいか等を予め紹介しておくのも効果的です。また、「必要に応じてメンター制度を設ける」「定期的なランチや社内会食をおこなう」といった行動も取ることが可能です。

◆「期待値」を合わせる
期待値というのは、その組織内でのミッションや業務内容、期待されている成果のことです。この期待値は、新しく入ったメンバーと人事の方や上司の間でずれているケースが少なくありません。例えば、口頭で聞く仕事内容と、実際に自分がやってみる仕事では、その人の解釈の違いや感覚の違いで「想像と違った」等のズレが生じやすいものです。適材適所という言葉のように、その人材が最大限能力を発揮できるようチームとして期待値をシェアすることも有効です。

◆「教育体制」を整える
担当業務内容やそれに必要な能力やスキルだけでなく、直接的に業務に関わらなくても、企業の仕組みやルール、企業文化など、業務を遂行していく上で新入社員が学ばなくてはいけないことは沢山あります。そのために、マニュアル等の準備をしておき、効率的に学べるように教育体制を整備しましょう。仕事は、Off-JT(職場から離れ、セミナーや研修等をおこなう)で学んだことをOJT(職場で実際の実務をさせながら職業教育をおこなう)で実践していくことが一般的です。しかし、Off-JTの教育担当者とOJTの教育担当者の教え方や伝え方に違いがあることも多いです。新しく入ったメンバーが混乱しないようOff-JT・OJTの教育担当者はしっかりと連携をして事前にすり合わせをしておきましょう。

◆「目標設定」を明確に
自己評価を自分自身だけで的確に行うことが難しいのは、新入社員の成長の妨げになる障害の1つです。メンバーが出した結果に対して人事やマネージャーは、きちんとフィードバックをしましょう。また、いきなり大きなミッションを掲げてしまうと、最終的な成果がでるまで時間がかかります。また、その前に新しく入ったメンバーが目標を見失ってしまう可能性もあります。そこで、ミッションを細かくわけ、小さな目標を達成する体験を積み重ねながら、最終目標を目指していく(スモールステップ法)等の工夫をしましょう。

オンボーディングのよりよい活用のために。

◆全従業員に理解を
新規採用者に手厚いプランを用意しても、迎える側にその準備が整っていなければ、オンボーディングは機能しません。既存社員がオンボーディングの重要性を認識して連携、協力しないと、新入社員は戸惑ってしまい、逆に疎外感を覚える原因になりかねません。会社がオンボーディングを導入する際には、その必要性を全社員に理解してもらい、一人ひとりが関わり方や役割を確認しておくのが大切です。

◆組織の課題を明確にする
オンボーディングプログラムを作る際は、組織課題を明確にし、課題を解決するためのプログラムも取り入れていくのがよいでしょう。たとえば社風が合わないという理由で離職者が続いていれば、社長や経営陣が会社の歴史や事業を説明したり、社員同士の交流会などに多くの時間を割くのも、オンボーディングの有効性を高めていくでしょう。

◆評価検証の実施
オンボーディングプログラムを一通り実行したら評価検証を行います。一定の期間で見直すタイミングをあらかじめ決めておくことも重要です。効果検証は、入社者本人からヒアリングしたりアンケートをとること、受け入れた現場からの意見を聞きながら進めましょう。会社や事業のフェーズによって、オンボーディングプログラムの内容は随時変わっていくものですので、計画→実行→修正を繰り返していきましょう。

新しく入ったメンバーが能力を発揮し、安心してもらえる職場環境にするためにも、オンボーディングの活用は重要です。活用のためには、人事の方だけではなく全社員の協力が必要になりますので、全てをすぐに実践できる取り組みではないかもしれません。しかし、組織の結束力が向上することで企業のさらなる成果につながるともいえます。貴社でもできるオンボーディング施策から、1つずつ進めてみてはいかがでしょうか。

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