HR用語の基礎知識

RJP

人事の図書館 編集長 大西直樹

ありのままを伝える「ホンネ採用」

「RJP」とは、Realistic Job Preview(現実的な仕事情報の事前開示)の略で、企業が採用活動を行う際、求職者に仕事や組織の実態について良い部分も悪い部分も含め、ありのままの企業実態を求職者に情報提供することです。このため、「ホンネ採用」(Realistic Recruitment)と呼ばれることもあり、企業と求職者間のミスマッチを防ぎ、定着率を高めることが期待できるため、多くの企業で注目を集めています。

売り手市場で就職率や有効求人倍率が高まる中、採用費用や採用難易度はますます増加傾向にあります。しかし大卒者の3年未満の離職率は、30%前後の横ばいの状況が続いており、莫大な採用コストのムダにつながるだけでなく、新人を戦力として期待していた現場の士気にも悪影響を及ぼしかねません。

労働政策研究・研修機構(JILPT)の資料によると、日本の3年以内の離職理由で最も多いのは、「労働条件・休日・休暇の条件が良くなかった」というもの。「人間関係が良くなかった」という理由による退職だけでなく、労働条件に絡むものも上位に上がっています。
◆独立行政法人 労働政策研究研修機構「第6章 早期離職とその後の就業状況」より抜粋

労働条件は、選考段階や入社の意思確認の時点で、予め正しく伝えておけば、認識の相違は生まれにくいはずです。原因として考えられるのは、企業が採用活動を行う過程で個人である求職者と接する場合、お互いがお互いのために正確な情報を必要としているにもかかわらず、お互いがお互いを売り込もうという意識が働き、お互いがバイアスのかかった良い情報しか提供しない、というという状況があるのではないでしょうか。一方、アメリカではネガティブなことは隠さずに説明する、RJPに基づいた採用手法が、40年以上前から研究・実証されています。

入社後のギャップによる離職を防ぎ、定着率を向上。

「RJP」は1970年代にアメリカの産業心理学者ジョン・ワナウス氏によって提唱された理論です。当時のアメリカでは、伝統的な採用手法であった「求職者が良いイメージを抱く情報を中心に発信することで、多くの求職者を集め、優秀な人を選ぶ手法」のアンチテーゼとして提唱されました。RJP理論に基づく採用戦略では、自社の社風や仕事内容、職場環境などについて良い面だけでなく、悪い面もできるかぎり具体的に開示し、それに納得した“本気度”の高い良質な母集団の中で、企業と応募者がお互いに適合性を見極めて「選び合う」ことを重視します。その結果、入社後のギャップによる離職を防ぐだけでなく、入社後の従業員満足度の向上、ひいては定着率の向上も期待できるとされています。
RJP理論を採用手法に導入することで得られる、代表的な効果を4つご紹介します。

◆ワクチン効果
過剰な期待を事前に緩和し、入社後の失望感や幻滅感を軽減する効果です。従来の採用方法では、悪い情報を含めた実態が開示されないことによるミスマッチが、離職につながる大きな原因でした。

◆スクリーニング効果
充分な情報を得たうえで、求職者自らが選択した、すなわち「スクリーニング」という判断を強化する効果です。すべてを理解したうえで判断したという面が強化されることにより、入社後の責任感や納得感が大きくなります。

◆コミットメント効果
企業自らが悪い情報提供も行うことで、求職者が組織の誠実さを感じ、企業への愛着や帰属意識を高める効果です。これによって、たとえ困難な業務を遂行している企業だとしても、それに挑戦してみたいという欲求を高められます。

◆役割明確化効果
RJP採用では、求職者に対してすべてをありのままに伝えることが基本となるため、「入社後に何を期待しているのか」「どんな役割を果たしてほしいのか」も明確にします。これによって、求職者は入社後のイメージがつかみやすくなり、企業への適応と業務への満足度、モチベーションの維持という効果が期待できます。

第三者によるアドバイスを受け、的確な情報発信を。

RJP採用の成功のポイントは、以下の3点です。

◆何を伝えるべきか
RJP実施の難しさは、ありのままの会社情報を応募者に伝えることにあります。自社の強み・弱み、特徴を応募者に伝える際、自社内の検討だけでは先入観にとらわれてしまい、応募者の視点を無視した開示情報になってしまうことがあるため、第三者による検討やアドバイスを受けると良いでしょう。先入観を排除する方法として、「ここ数年の間に離職した社員の退職理由を探る」「在籍中の社員にヒアリングを実施する」なども有効です。

◆どこまで伝えるべきか
情報を「どこまでリアルに伝えるべきか」も難しい問題です。情報発信は採用広告が中心となるため、対話ができないばかりではなく、字数の制限などで十分な情報を提供できないこともあります。短い文章の中で的確にメッセージが伝わるよう、表現方法については十分に検討してください。

◆いつ伝えるべきか
また、メッセージを伝えるタイミングも重要なポイントです。認知度の低い企業が悪い情報ばかりを最初に伝えると逆効果になってしまいます。情報の種類や内容の細かさ等、どの採用ステップでどのようなメッセージを伝えるのか、事前に決めておくことが重要です。

RJP採用理論の考え方である「ありのまま」を伝えるためには、まず 企業の「ありのままの良さ」を全ての既存社員が再確認する必要があります。自社の強みを理解することは、意外と困難です。また自社で働くメリットを分かりやすく提示することは、社内だけでは難しく、外部の目がどうしても必要になります。でないと、よくある失敗事例のように、「ひとりよがり」な採用活動になりがちです。「何を」「どこまで」「いつ」伝えるべきか、お困りの際はぜひ人事の図書館までご相談ください。

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