企業の動向

新型コロナウイルス感染拡大の影響が採用活動に暗い影を落としている。4月7日に特別措置法に基づく緊急事態宣言が7都府県に発出され、5月6日までの1ヵ月間、不要不急の外出自粛が要請された。2021年卒採用に関して、宣言の翌日4月8日から4月15日にかけ弊社が実施した企業対象のアンケートでは、採用活動を「一時的に中断する」企業が34.6%に及んだ。本来4月は、大手企業ではエントリーシート通過者向けのセミナーやリクルーター面談等を実施。中堅・中小企業では選考~内々定出しのピークを迎える時期であるが、多くの企業で計画に狂いが生じている。一方で、「これまで同様に進行する」が15.1%、「Web等を活用して継続する」が34.2%と、半数の企業は新たなツール等も活用しながら採用活動を継続している。「Webセミナー」や「Web面接」を導入する企業はここにきて一気に増加したが、中には会場に学生を呼んで会社説明会を実施する企業もある。ある採用担当者は「WebセミナーやWeb面接では自社の良さが伝わらない。一度も会うことなく内々定を出しても承諾してくれるかは疑問なので説明会を開催している。ただし、緊急事態宣言発出後は学生の集まりが悪い」と話す。この企業に限らず、学生と直接会って話したいというのが多くの企業の本音であろう。
こうした状況下ではあるが、企業の採用意欲が衰えたわけではない。上記アンケートでは、66.1%の企業が採用計画数を「当初の計画通り」としている。また、採用活動終了予定時期は58.9%が「9月以降」と回答。業種によっては採用縮小や中止を余儀なくされているが、コロナ後を見据え、長期戦を視野に活動を続ける企業が多い状況だ。
※本文上で取り上げたアンケート調査結果は、当サイト「緊急事態宣言による新卒・中途採用への影響」(https://service.gakujo.ne.jp/data/jobmarket/emergency202004)で公開しています。(清水田 遼太)

学生の動向および学生を取り巻く就職環境について

政府の緊急事態宣言を受け、4月中旬以降、ほとんどの大学で学生は入構禁止となった。そのため、大学の就職関連部署は学生の状況を掴みづらくなっている。弊社の調査では、4月上旬の内々定率は前年同時期比7.9ポイント増の28.7%。「インターンシップに参加した企業のWeb面接は進んでいます」という学生も多く、この状況下でもある程度の進捗はあるようだ。一方で、同調査によると、1割弱の学生はまだ就職活動をスタートできていない。学生の二極化が叫ばれて久しいが、今年は新型コロナウイルスの影響による企業の採用活動の変化が、それに輪をかけているといえるだろう。
また、大学では2022年卒学生のインターンシップや就活を不安視し始めている。第一に「景気の悪化により採用縮小という環境にならないか」という不安。また、特に首都圏では、前期(8月まで)の授業をオンライン実施に切り替える大学が増加し、インターンシップや就職のガイダンスも同様にWeb実施に切り替えるよう計画が進んでいる。そのため、就職指導担当者からは「リアルな場でのコミュニケーション力が低下する懸念が拭えない」という不安もよく耳にする。他にも、「一部の学生は『就活ってWebで動画を見ていればいいんですよね』と勘違いしそう」「Webだけの活動だと、偶然の出会いが激減し、視野の狭い就活をする学生がますます増えそう」といった声も多い。
いずれにせよ、従来と違う環境下で、学生は就活を、大学は就活支援をせざるを得ず、試行錯誤しつつも、早め早めの対応が求められている。(東 修三)