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学情レポート【COMPASS】2016.07

学情レポート【COMPASS】 2016.07

『学生たちの挑戦と成長の軌跡』
~社会人基礎力育成グランプリ2016 受賞校インタビュー~

今回で9回目を迎える「社会人基礎力育成グランプリ」。その決勝大会が2月22日に東京で開催された。「社会人基礎力育成グランプリ」は、ゼミ・研究・授業等における社会人基礎力の「育成・成長の事例」と「その成果」を指導担当教員+学生によるチームが発表するもので、社会人基礎力の礎となる3つの能力(「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」)がどれだけ成長したか、大学で学ぶ一般教養や専門知識をどれだけ深めることができたかという点で審査が行われる。今回は全55チームの中から地区予選を勝ち抜いた8チームが決勝大会に進んだ。地元企業とともに地域活性化を目指した取り組み、日本の伝統文化を伝承していく取り組み、世界に目を向け、また世界に挑んだ取り組みなど、大学教育の枠を超えて様々なことにチャレンジした学生たちによる熱を帯びたプレゼンテーションが行われた。

今号ではその中から大賞(経済産業大臣賞)を受賞した大阪工業大学・工学部、準大賞を受賞した創価大学・経済学部および多摩大学・経営情報学部の取り組みと学生の成長を、インタビューにより紹介する。

開催概要

開催日:2016年2月22日(月)
会 場:拓殖大学文京キャンパス
主 催:社会人基礎力協議会
共 催:経済産業省


決勝大会 結果

社会人基礎力大賞
(経済産業大臣賞)

  • 大阪工業大学
    (近畿地区代表)

社会人基礎力準大賞

  • 創価大学
    (関東地区代表)
  • 多摩大学
    (関東地区代表)

〈決勝大会出場大学一覧〉

【北海道・東北地区代表】
 旭川大学 経済学部
 「地元愛を創造する“街の元気づくり”活動
 -地域と関わり続ける365日-」

【関東地区代表】
 ①創価大学  経済学部
 「幸せおすそわけプロジェクト
 ~Mottainaiを行動に 食品ロス削減を目指して~」

 ②多摩大学 経営情報学部
 「日本大好きプロジェクト」

【中部地区代表】
 愛知学泉短期大学 食物栄養学科
 「聞いて・見て・実行、地産食品促進の取組み
 -食品材料実験からはぐくむ社会人基礎力-」

【近畿地区代表】
 ①大阪工業大学 工学部
 「未来エネルギー機器開発で学生チームが世界の強豪に挑戦
 -社会に通用する開発部隊への成長-」

 ②京都産業大学 文化学部
 「1146年目の祇園祭を未来へつなぐ
 ~台風襲来の中、住民ゼロの鉾町を救った女子力~」

【中国・四国地区代表】
 高知工科大学 経済・マネジメント学群
 「『防災先進県、高知で取り組む学生による防災活動』
 ~教室から飛び出し、地域連携への働きかけを!~」

【九州・沖縄地区代表】
 福岡女学院大学 人文学部
 「私たちの革新と挑戦…綱引ベンチャーで女性が輝く社会に!」


<社会人基礎力の3つの能力(12の能力要素)>

前に踏み出す力(アクション)

~一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力~

主体性
 

物事に進んで取り組む力

働きかけ力
 

他人に働きかけ巻き込む力

実行力

目的を設定し確実に行動する力

考え抜く力(シンキング)

~疑問を持ち、考え抜く力~

課題発見力

現状を分析し目的や課題を明らかにする力

計画力

課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力

創造力

新しい価値を生み出す力

チームで働く力(チームワーク)

~多様な人々とともに、目標に向けて協力する力~

発信力
 

自分の意見をわかりやすく伝える力

傾聴力

相手の意見を丁寧に聴く力

柔軟性
 

意見の違いや立場の違いを理解する力

情況把握力

自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力

規律性

社会のルールや人との約束を守る力

ストレスコン 
トロール力

ストレスの発生源に対応する力

大賞(経済産業大臣賞)

大阪工業大学 工学部 電気電子システム工学科

「未来エネルギー機器開発で学生チームが世界の強豪に挑戦
  -社会に通用する開発部隊への成長-

指導教員:工学部 電気電子システム工学科 教授 大森 英樹 氏   

取り組み内容について

当研究室の学生チームが行ったのは、アメリカの電気学会(IEEE)主催の「未来エネルギー機器開発の国際コンテスト」への挑戦です。コンテストのテーマは「電気自動車の高効率ワイヤレス充電装置」の開発。企業が開発する実用製品にも課せられるような要求事項のある、非常に難易度の高いコンテストですが、大学で学んだ電気工学の知識を用いて、完成度の高い試作品の設計・製作をしていく経験は、社会人に求められる資質を体得できるチャンスだと思い、学生に参加を促しました。すると「面白そう」、「やります」と二つ返事で参加を決め、英語で提示されたコンテストの要求事項の解読に取り掛かりました。要求事項は効率、電力、コスト、信頼性、一般の人でも使える配慮といったもので、翻訳に苦労しながら解読していくうちに、学生たちの中に「とてもこれらの要求を満たし、世界の強豪を相手に戦えそうにない」という思いが強まっていきました。ついには学生から「やはり、やめたいです」という声が。そこで私は「世の中の役に立つ製品とは、どのようなものかを考えてみなさい」とアドバイスしました。この装置の製品化にあたり、一般消費者にとって大事なポイントは「小型」「低コスト」といった点です。それは普段学生たちが研究している技術と同じ視点。要求事項の多さから頭を抱えていた学生たちもこのことに気付き、製品の小型化、低コスト化の実現を目指すという方向性が戦略として固まり、やる気を取り戻していきました。しかし、そこからも苦労の連続でした。

機器の性能を要求されている水準まで高めるには、フェライトコアというコイルとコイルの間の磁気的な結びつきを強める部品が必要でした。しかし、これが非常に高価でした。一般家庭への普及を考えたときに100ドル以下で装置を製作する目標を掲げましたが、このフェライトコアだけで数万円もしてしまう。学生たちは当初は、国内製品だけを見ていましたが海外にも目を向けたところ、中国のメーカーで安く取り扱っている企業を見つけました。ところが、この企業は日本と取引したことがなく、意思疎通もままならない状態。何度も買い付け交渉を行った結果、破格とも言える数千円で仕入れることに成功しました。しかし、この装置全体の材料費を計算すると600ドルにもなることが判明。これを100ドル以下に抑えるためには、まず量産ベースのコストで計算する必要があり、学生たちはいくつかの企業に量産コストを出してもらえないか交渉しました。当初は渋い返事ばかりでしたが、「コンテストに参画することで企業イメージが上がりますよ」、「将来製品化が実現した際には御社の部品を推奨します」といった相手がメリットに感じる点を伝えながら交渉し、何とか協力を取り付けることができました。しかし、コンテストの準備に追われ、部品を提供いただいた、ある企業に対して実験の評価報告を怠ってしまい、「君たちには今後、部品も情報も提供しない!」と叱責を受ける事態に。信頼回復のために直ちに謝罪と評価報告を行い、どうにか事態は収まりましたが、学生たちは「企業と協力して物事を進める場合にも、結局は人と人との関係が重要であり、報告するまでが仕事」ということを身をもって感じてくれたようです。こうした苦労の末、99ドルまでコストを抑えることができました。また小型化については、通常なら3リットルは要する装置を1リットル以下のサイズにすることを目指しました。試行錯誤の末に画期的なアイデアが出たのですが、企業に相談しても取り合ってもらえません。そこで前述の反省を踏まえ、評価レポートの提出を続けたところ、相手の態度が軟化、専用の部品をつくっていただけ、小型化に成功しました。

いよいよアメリカでのコンテスト決勝戦。プレゼンテーションを無事に終え、その後90分間のデモンストレーションを行ったのですが、最初の10分間だけ順調に作動して、その後、誤作動を起こすというまさかのトラブルが発生しました。大きさ、重さ、コストの3点で他国チームを圧倒する装置に仕上がっていましたが、アメリカと日本における電源などの周辺機器の違いから、何らかの不具合が発生したようです。学生たちはこれまでの経験をもとに「制御用のICを外せば何とかなるのでは」と推測したものの、その読みが外れていれば、そこからの挽回は不可能という状況。決断が迫られる中、リーダーが発した言葉は「やってみよう!」の一言でした。ICを取り外したところ装置は無事に作動しましたが、審査員は既に審査を終えた後でした。再審査を学生たちは必死に交渉したところ、制限時間のラスト5分でようやく目標となる性能を発揮、審査の結果、世界3位に入賞することができました。

役割があるからこそ人は頑張れる

今回の取り組みで学生たちは様々な課題やトラブルに見舞われることになりましたが、学生たちにも問題がありました。最終試作品を作る段階になって、動かないメンバーが出てきたのです。全員が協力しないとコンテスト本番には到底間に合わない状況。リーダーの学生から「なぜ彼らは動いてくれないのか」と相談され、私は「君はなぜ一生懸命やっているのか」と逆に質問を投げ掛けました。リーダーが出した答えはこうでした。「自分は役割があるから楽しめている」と。そこでリーダーはメンバー一人ひとりに対し、各自の強みが生きるような役割を割り当て、毎日のミーティングで進捗報告をするという体制を築きました。それが契機となり、活発に動ける組織へと生まれ変わっていきました。

▲試行錯誤の連続の中、進められた装置開発

人は役割があるからこそ、その責任を果たそうと頑張れるもの。でも学生は個人プレーに陥りがち。社会に出て組織で働くには、各自の強みや多様性を活かすことが求められます。たとえどんなに癖があったり、組織に馴染まないような人であっても、その人の力を発揮できる役割が与えられれば、組織の力は何倍にも強くなる。学生たちはそんなことを学んだのではないでしょうか。学生たちは今回の取り組みで製品づくりというものを突き詰めて考えました。技術者の喜びとは、社会に役に立つ製品を作ることで、自分が生きた証を残すこと。学生たちはそれを成し得るために十分な力を備えてくれたと思います。

準大賞

創価大学 経済学部


「幸せおすそわけプロジェクト
 ~Mottainaiを行動に 食品ロス削減を目指して~

指導教員:教務部長・学士課程教育機構 教授 西浦 昭雄 氏   

取り組み内容について

当ゼミでは授業外で学生が集まり、社会貢献プロジェクトを進めています。本年度は飲食店でのアルバイトにて、大量の食べ残しが廃棄されている現状を目にした学生の発案により、「日本の食品ロス削減」をテーマにプロジェクトが進められていくことになりました。この課題解決策として、飲食店で食べ残したものを持ち帰るための容器であるドギーバッグの普及が挙げられました。しかし単に「日本の食品ロス削減」を目指すだけでなく、この取り組みが誰かの手助けになるものにできないかという思いが学生たちにはありました。当ゼミでは開発途上国に対して寄付ではなく自立を促すような支援の在り方を考える開発経済学を学んでいます。また学生たちは実際に開発途上国への留学を通して現地の状況を見ており、そうした国の役に立つ何かをしたいと常々考えていました。ただ「日本の食品ロス削減」と「開発途上国の支援」を直接結びつけることは簡単ではなく、ようやく解決策を見出したのはプロジェクトを立ち上げた3ヵ月後でした。

解決の糸口となったものがケニアに留学した学生のアイデアです。それはケニアの子どもたちにドギーバッグに絵を描いてもらうというものでした。食べ残しを持ち帰ることに恥ずかしさや抵抗感をもつ日本人が多い中、子どもたちの絵が描かれることでドギーバッグ自体にプラスのイメージを持ってもらうことができる。そして対価として子どもが通う施設にデザイン料を送ることで、単なる寄付ではない援助という形になる。そんなウィンウィンの仕組みの考案に至ったのです。この過程で「考え抜く力」が大いに養われていったと思います。結果的にこのドギーバッグは2016年2月時点で、ホテルや飲食店などで計2,200個導入され、ケニアの子どもたちの4,400食分の給食資金として使われています。

アイデアと行動力が大人をも動かす

ケニアの子どもたちの絵をドギーバッグにプリントするというアイデアが出てから、すんなりプロジェクトが進行したかと言うと、そうではありませんでした。発生したのがコストの問題です。絵をドギーバッグにプリントすると単価470円が掛かり、導入したいと手を挙げるところはありませんでした。また鮮やかな色を再現できないという問題もありました。再び試行錯誤の日々が続きます。その中で、絵をプリントするのではなく、シールにして貼っていってはどうかというアイデアが出てきました。これであれば色の再現性も高く、何よりも単価を30円まで下げることができます。学生たちがサンプルを作って私に見せに来たときに「これはいける」という感触がありました。飲食店での導入に当たっては、ドギーバッグの普及を推進しているドギーバッグ普及委員会とも交渉していましたが、なかなか良い返事がいただけませんでした。ただ、このサンプルを持って愛知県の理事長のもとに協力依頼に訪れたところ「これはいいね」と仰っていただけ、協力を取り付けることができました。これが契機となり、立川グランドホテルを始め4軒での導入が決まりました。学生が大人を乗り気にさせ動かした、その実行力は本当に大したものだと感じます。

▲ケニアの子どもたちの絵で彩られたドギーバッグ

ドギーバッグ普及の一番の壁は、食べ残しを食べた消費者が仮に食中毒になった場合、責任を問われることをお店側が過度に恐れている点です。ドギーバッグが普及しているアメリカではこれについては「自己責任」という考えが定着しています。日本はまだまだ道半ば。それでも「学生がこういう取り組みをしているんだから大人もやりましょう」と一人ひとりが思うことで、食べ残しの持ち帰りを後ろ向きに捉えるのではなく、「もったいない」、「無駄をなくしていこう」という意識へと変わっていくのではと思います。そして、その先にある開発途上国へ少しでも思いを馳せてもらえれば、それが学生たちの願いでもあります。

準大賞

多摩大学 経営情報学部


「日本大好きプロジェクト」


指導教員:経営情報学部 教授 村山 貞幸 氏   

取り組み内容について

当ゼミでは、イベントを通じて日本の伝統文化を伝承していく「日本大好きプロジェクト」を行っています。このプロジェクトは、(1)幼稚園、保育園、児童館などの施設を訪問し、武道・茶道・紙すき・藍染・影絵など20分野を超える活動を子どもたちに体験してもらう訪問型イベントと、(2)神社仏閣・商業施設で行う大型イベントの2つに分かれます。イベントの数は年間250に及び、ゼミメンバーは膨大な作業量に忙殺されながらも互いに協力しながらプロジェクトを進める中で社会人基礎力を養っていくことになります。イベントの多さもさることながら、この活動で掲げていることが「プロに挑戦すること」。東京ミッドタウンや浄土宗大本山である増上寺で行った大型イベントはイベント会社というプロを相手に学生が考えた企画で受注に挑むもので、より高いレベルの提案が求められました。また広報のチームはイベント動員を図るべく、電話やFAX、飛び込み訪問など900回を超えるメディアへのアプローチを行い、最終的に当ゼミの取り組みを取り上げていただいたメディアの数は76に及びました。このようにメンバーが各々の役割に対し妥協せずに取り組んだことで、例えば増上寺のイベントでは3,000名の目標に対し3,557名の集客を実現したりと、高い成果を上げることができました。

プロ意識や責任感が「絶対に諦めない精神」を生み出す

今回特に成長が見られたのが、7月7日に増上寺で行われた七夕イベントでリーダーを務めた学生です。このイベントを取り仕切るのは、例年なら3名ほどの3年生ですが、今年度はリーダーの3年生1名のみ。しかも2年生のときにゼミ活動に途中から来なくなってしまった学生です。他のメンバーが入れ代わり立ち代わり根気強く誘い続け、3年生に進級する直前の春休みからようやく少しずつ顔を出すようになりました。七夕イベントのチームはこのリーダーの他、4名の2年生で構成されました。ただしリーダーはどちらかと言えばアーティストタイプ。自分の感性で創りたいものを創り上げる力は長けているのですが、リーダーシップを発揮しチームをまとめるのは苦手なタイプでした。しかも2年生もリーダーをフォローしながら活動を行うタイプではなく、4名のうち2名がゼミを辞めたいと言い出す事態にもなりました。2年生のモチベーションが低下していくのをリーダーは幾度となくフォローし、一方で自身の作品作りもしなければならず、そこでは私からの厳しいダメ出しを何度も浴びる・・・。まさに精も根も尽き果てそうな状態だったでしょう。それでも彼は諦めずにこの企画を前進させました。そして最終的に創り上げたのが「悲しみの和紙キャンドル」という作品です。不慣れなリーダーという立場でもがき苦しむ自身の状況と、織姫と彦星が出会えない364日の悲しみや苦しみをリンクさせ、その心境を、キャンドルを崩すデザインで表現したものでした。「七夕」から想像される再会の喜びではなく、悲しみを表現したという斬新さ、繊細さは多くの来場者やアーティストからも大きな反響を呼びました。

▲苦しみの果てに完成した 「悲しみの和紙キャンドル」

当ゼミは日本の伝統文化の衰退を防ぐという、社会的責任を伴う活動をしています。そのため、普段は「ゼミ」や「学生」という言葉は使いません。お互いを「メンバー」と呼び、プロとしてやっているんだという意識で活動に臨むよう繰り返し言い続けています。もちろんそれは一要素かもしれませんが、そうした意識が責任感を生み、どんなに苦しい状況下でも諦めない気持ちで活動に臨めているのだと思います。また当ゼミは例えるなら「成長期のベンチャー企業」。膨大な作業量の中、自分の仕事も他人の仕事もごちゃ混ぜになりながら、もうとにかく一丸となって前進する。目の前の課題に対し周囲を支え、そして周囲に支えられながら、その都度その都度解決策を考え、実行に移していく。まさに社会人基礎力のあらゆる要素が学べる活動であると思います。

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