
オンボーディングプログラムとは、新入社員が職場に早くなじみ、組織全体で配属から定着、戦力化までを長期的にサポートする一連の流れを指します。
本記事では、オンボーディングプログラムとは何か、また、プログラムを設計する手順や実施のポイントなどをまとめました。第二新卒向けのプログラムや、実際に企業で実施されている具体例も紹介します。
人材不足が深刻化する現在、社員の定着や早期戦力化はどの企業にとっても重要です。丁寧に設計・実行することで、より効果的なオンボーディングプログラムを実施できます。ぜひ参考にして、社員の戦力化と組織力の向上を実現してください。
オンボーディングプログラムとは?

オンボーディングプログラムとは、新入社員を対象に実施される研修プログラムのことです。企業が組織全体で新入社員の配属から定着、戦力化までをサポートできれば、早期に新しい環境に慣れてもらうだけでなく、社員一人ひとりが実力を発揮しやすくなります。
オンボーディングプログラムは、入社前から始まることもあります。例えば、選考過程で企業文化を具体的に紹介したり、内定後に何度かメールや電話でやりとりする機会も、オンボーディングプログラムの一環といえるでしょう。
また、オンボーディングプログラムは、船や飛行機に乗り込むことを意味する「on-board」に由来する言葉です。会社を乗り物に例え、会社に慣れるための準備を乗り物に乗り込むための準備になぞらえています。新入社員のサポートのために会社が内定後にすべき事柄については、こちらの資料からチェックしてください。
オンボーディングプログラムが注目されている背景
近年、オンボーディングプログラムの注目が高まってきました。その背景として、以下の4点が考えられます。
- 人材不足の深刻化
- 早期離職の増加
- 心理的安全性を重視する価値観の変化
- 通年採用の普及
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
人材不足の深刻化
人材不足は深刻化しています。少子化が進み、新卒で働く若い世代が不足し、必要な数の人材を確保できない企業も増えてきました。一人あたりの業務量が増え、ワーク・ライフ・バランスが崩れるケースも見受けられます。技術やノウハウを次世代に引き継げず、競争力が低下する企業が少なくありません。
早期離職の増加
早期離職が増加している点も企業が抱える課題の一つです。人材不足を解消するために採用や育成に従来以上の費用をかけても、戦力化の前に離職してしまえば無駄になりかねません。単に新入社員を育成するだけでなく、定着率を意識した施策が必要です。
心理的安全性を重視する価値観の変化
定着率を高めるには、新入社員が安心して働ける環境を構築することが欠かせません。自由に発言でき、何事にも安心して積極的に挑戦できる環境が社内に整っていれば、社員一人ひとりが居心地のよさを感じて長期的に働けるだけでなく、チーム全体のパフォーマンスも向上するでしょう。
いずれの課題も、新入社員を定着させて戦力化することで解決を目指せます。適切なオンボーディングプログラムを確立すれば、業務に必要な技術やノウハウを短期間で習得でき、心理的安全性が確保された空間で安心して働けるようになるでしょう。
通年採用の普及
オンボーディングプログラムが確立されていれば、通年採用にも対応しやすくなります。高い能力を有する経験者や海外大学の卒業者、留学生なども対象に採用活動を実施できるようになり、企業成長にもつながるでしょう。
さらに、入社時期やこれまでの経験に左右されず、一定の品質で育成・定着を支援できる体制が整えば、通年採用にも対応しやすくなります。その結果、新卒一括採用に限らず、第二新卒を中心とした若手人材や経験者など、幅広い層を対象にした採用が可能となり、人材確保の選択肢を広げることができます。
施策の目的
オンボーディングプログラムは、新入社員が持つ価値観やスキル、知識などを組織に加えることを目的として実施されます。組織の仕組みや決まりごとを新入社員に説明し、理解を促すのは大切ですが、新入社員を単に組織に取り込むだけでは、1+1=2以上の効果は期待できません。
オンボーディングプログラムでは、新入社員が組織本来の姿を理解したうえで、それぞれが固有の能力や特性を発揮できるようにサポートします。その結果、組織に新たな風が吹き、1+1=2以上の効果が生まれるようになるでしょう。
研修対象
オンボーディングプログラムは、すべての新入社員を対象として実施されます。新卒採用、キャリア(経験者)採用を問わず、新しく会社の戦力となる方全員が研修対象です。
オンボーディングプログラムを実施する際には、対象に合わせてプログラムの内容や期間を調整することが必要です。新卒者、キャリア採用者など、それぞれの立場や業務内容などに合わせたプログラムを準備しましょう。
研修期間
オンボーディングプログラムの一般的な研修期間は3か月程度です。入社前から始まる会社もありますが、入社後3か月程度、長くて6か月程度を目安に実施されます。
個人差はあるものの、入社後3か月程度でモチベーションが下がる新入社員も多いといわれています。慣れない環境で戸惑うことが多いとさらにモチベーションが低下し、早期離職につながる可能性もあるでしょう。
オンボーディングプログラムにより新入社員の戸惑いを払拭するようにサポートすれば、新入社員はモチベーションを維持しやすくなり、定着率の向上も期待できます。個々の新入社員に応じたプログラムを提供し、達成度や習得ペースに合わせて期間を調整しましょう。
第二新卒に向けたオンボーディングプログラム

オンボーディングプログラムはすべての新入社員を対象としたプログラムです。第二新卒を積極的に採用する企業が増える中、第二新卒に向けたオンボーディングプログラムにも注目が高まってきています。
以下のような理由から、第二新卒に対してポジティブなイメージを持つ企業が増えてきています。
- 基礎的なビジネスマナーをすでに習得している
- 新卒者と比べ、即戦力になることが期待できる
- 特定の企業文化に染まっているわけではないため、高い適応力を期待できる
- 成長ポテンシャルが高い
- 仕事に対するモチベーションが高い
第二新卒のスムーズな定着と戦力化を実現するためにも、第二新卒向けオンボーディングプログラムについての理解を深めておきましょう。
第二新卒に対してオンボーディングプログラムを実施する意義
第二新卒に対して適切なオンボーディングプログラムを実施することには、以下のような意義があります。
- 今まで経験した企業との違いを埋める
- 組織への適応をサポートする
- アンラーニング(これまでのやり方や考え方を見直すこと)をサポートする
第二新卒はある程度の社会人経験があり、新卒と比べて即戦力になりますが、新しい職場で今までとは異なる経験をするとギャップに戸惑うこともあるかもしれません。今まで経験した企業との違いを埋めるプログラムを実施すると、第二新卒者の戸惑いを軽減し、混乱せずに新しい企業文化に馴染めるようにサポートできます。
また、今までに習得した知識やスキルが、現在の職場での成長を阻害する可能性もあります。過去の体験を一度手放し、新しい知識・スキルを学ぶ「アンラーニング」をオンボーディングプログラムで体系的に実施すれば、第二新卒者の組織社会化・戦力化を早期に実現できるでしょう。
第二新卒に効果的なオンボーディングプログラム例
第二新卒へのオンボーディングプログラムをより効果的に実践するためにも、人事部・現場・第二新卒者本人の3者の連携が欠かせません。また、3者それぞれが以下のポイントに注目することが必要です。
- 人事部:適切な研修と交流の機会を提供
- 現場:1on1ミーティングやOJT
- 第二新卒者:主体的に学ぶ姿勢
ある程度の業務経験がある第二新卒者には、1on1ミーティングやOJTによる具体的な指導が効果的な成長を促す原動力となり得ます。第二新卒者本人が主体的に学ぶ意欲を持つと、より大きな成長につながるでしょう。
第二新卒のオンボーディングプログラムを成功させるポイント
第二新卒のオンボーディングプログラムを成功させるポイントとしては、以下が挙げられます。
- 同期ネットワーキング
- 経験学習
- キャリアパスの明示
第二新卒者は新卒者と比べて、横のつながりが希薄になる傾向にあります。疎外感による早期離職を防ぐためにも、同時期に入社した第二新卒者の交流会を定期的に開催し、横のつながりを構築することも大切です。
また、短期間で企業文化に馴染み、戦力となるようにサポートするのも、第二新卒者の定着に不可欠な要素です。OJTを通して具体的な業務経験を積み、都度、上司などからフィードバックを提供する「経験学習」を進めていくことも大切でしょう。
離職を経験している第二新卒者の場合、自身のキャリアに不安を抱いている可能性もあります。本人の志向や適性に応じた具体的なキャリアパスを明示できれば、その後の不安軽減と日々の業務に対するモチベーションの向上を図れるでしょう。
オンボーディングプログラムの設計手順

オンボーディングプログラムは、以下の手順で設計します。
- 目標を設定する
- 課題と解決方法をまとめる
- オンボーディングプログラムを完成させる
- オンボーディングプログラムを実行する
- 施策を評価し、改善策を提案する
- 改善策を実行し、再評価・再提案を繰り返す
各手順について見ていきましょう。
1.目標を設定する
まずはオンボーディングプログラムの目標を設定します。目標は一つに絞る必要はありません。「企業文化の理解を深める」「報告書の作成フローをマスターする」など、細かく目標を定めてリストアップしておきましょう。
また、効率よくプログラムを推進するためにも、いつまでに、どのようなスキルを習得させるか決めておくことも大切です。
2.課題と解決方法をまとめる
新入社員に想定される課題をリストアップし、各課題の解決方法をまとめておきます。新入社員が持つ課題を見極め、適切な解決方法を提示すれば、早期解決を図れるだけでなく、新入社員のモチベーション低下も回避しやすくなるでしょう。
3.オンボーディングプログラムを完成させる
目標と課題を整理し、オンボーディングプログラムの骨組みを構成します。求めるスキルや実務能力を過不足なく習得できるように、「実行しやすさ」に注目して具体的なプログラムとして完成させていきます。
4.オンボーディングプログラムを実行する
オンボーディングプログラムを実行していきます。ただし、同じプログラムを同じタイミング・同じ時間で実施しても、すべての新入社員に同様の効果が得られるとは限りません。新入社員各個人が目標を実現できるよう、きめ細かなサポートが必要になります。
5.施策を評価し、改善策を提案する
オンボーディングプログラムの実行後、実施前に立てた目標を達成できたのか評価します。達成できていない目標や課題がある場合は、それぞれに応じた改善策を提案します。
6.改善策を実行し、再評価・再提案を繰り返す
オンボーディングプログラムがより効果的なものとなるように、実行と評価、改善策の提案を繰り返すことが必要です。ブラッシュアップを続けて、自社に合うプログラムとして完成させていきましょう。
オンボーディングプログラムを成功させる設計・実施のポイント

オンボーディングプログラムによる新入社員教育を成功させるために、こちらのポイントに注目してみましょう。
- メンター制度を導入する
- 新入社員が受け身にならないように注意する
- 新入社員に合ったペースでプログラムを実施する
いずれも効果的なプログラム構築に不可欠なポイントです。各ポイントを解説します。
メンター制度を導入する
新入社員が誰にも頼れない状況が生まれると、結果的に早期離職につながる場合があります。特に第二新卒は横のつながりが希薄になり、疎外感を覚える可能性があります。
このような懸念がある際は、メンター制度を導入して気軽に悩みを話せる相手を決めておき、新入社員が組織に馴染めるようにサポートしましょう。ただし、メンターによって差が生じるため、任命やペアリングには細心の注意が必要です。
新入社員が受け身にならないように注意する
オンボーディングプログラムにより効率的な新入社員教育を進めていくことは大切ですが、新入社員が「教えてもらうのが当たり前」と感じるような状況にしないことも大切です。
プログラムはあくまでもきっかけであり、プログラムで習得したスキルや能力をベースとして、個々が成長していかなくてはいけません。新入社員が自分で考え、ある程度自主的に取り組めるようなプログラムとして完成させましょう。
新入社員に合ったペースでプログラムを実施する
「早く覚えてもらいたい」という気持ちが強すぎて、新入社員に提供する情報が過多にならないように注意が必要です。新入社員個々の習得ペースに合わせて、プログラムを実施するように心がけましょう。
小さな目標を定めて少しずつ確実に習得する「スモールステップ」を意識すると、個々の習得ペースに合わせた教育を実施しやすくなります。また、定期的に新入社員に「学びのペースが適切か」尋ねてみるのも一つの方法です。
オンボーディングプログラムの具体例

オンボーディングプログラムを効率的かつ効果的に実施するためにも、入社前からプログラムを開始することが大切です。選考過程からプログラムを開始し、採用・定着で成果を収めた具体例を紹介します。
選考過程から始まるオンボーディングプログラム
オフィス関連の総合商社である株式会社エイコーでは、面談や選考過程でオフィスツアーを実施しています。入社前に社内の様子を見て実際の働き方を体験することで応募者自身が入社後の姿を描きやすくなり、結果としてスムーズな定着につながっています。
研修体制の見直しにより採用対象拡大と定着率向上を実現
クラウドサービスを提供する株式会社シナプスイノベーションでは、社内教育をオンライン化することにより、いつでも充実した環境下で受講できる仕組みを構築しました。これらの研修体制の見直しにより、経験者中心の採用活動をポテンシャルのある第二新卒にも拡大。また、定着率の向上も実現しています。
第二新卒が新卒をリードするオンボーディングプログラムを設計
株式会社ダンロップタイヤでは、将来の組織バランスを考慮して第二新卒の採用に注目。また、同期の横のつながりを意識し、4月入社の第二新卒と新卒が合同でオンボーディングプログラムを受ける構造を構築しました。結果として、第二新卒が自然と新卒をリードする流れが生まれ、チームの早期立ち上がりにも貢献しています。
キャリア(経験者)採用はRe就活にご相談ください


株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。