
採用を成功させるには、ペルソナの設定が重要です。特に新卒採用では、学生のポテンシャルやパーソナリティーを重視する傾向があるため、ペルソナの設定が欠かせません。
本記事では、ペルソナの作り方や具体例、設定する際のポイントなどを詳しく解説します。
ペルソナとは
ペルソナとは、企業が採用したい理想の候補者像を、あたかも実在する一人の人物のように具体的に設定したものです。採用ミスマッチの軽減、採用効率と定着率の向上を目的としています。
ペルソナを作成する際は、求めるスキルや学歴だけでなく、年齢、性別、人柄、価値観といったパーソナリティーに関する要素まで詳細に設定することが重要です。
これにより、求める人物像をより明確化し、その思考や行動パターンまで深く理解できるようになります。
ペルソナと採用ターゲットの違い
採用活動において、「採用ターゲット」と「ペルソナ」はどちらも求める人材像を設定する際に用いられますが、その具体性の度合いが大きく異なります。
それぞれの違いは次のとおりです。
| ペルソナ | 採用ターゲット | |
| 目的 |
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| 具体性 |
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| 項目例 |
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| 共有方法 |
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新卒採用と中途採用のペルソナの違い
新卒採用と中途採用では、求める人材の背景やキャリアフェーズが大きく異なるため、設定するペルソナもその特性に合わせて変える必要があります。
それぞれの主な設定項目は次のとおりです。
| 新卒採用 | 中途採用 |
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新卒採用においてペルソナが必要な理由
株式会社学情の調査によると、2026年卒採用では、4年生の5月末時点で「内々定率」が8割を超えるなど、学生優位の売り手市場の度合いが強まっています。
この売り手市場が続くなか、従来の「広く門戸を開いて母集団を形成する」新卒採用は困難です。
実際に、2026年卒採用について、企業の8割以上が「難しい(51.0%)」または「やや難しい(32.1%)」と感じています。
こうした状況で求める人材を採用するには、ペルソナを設定し、採用活動を効率的に進めることが重要です。
※参考:株式会社学情「2026年卒 内々定率調査」
株式会社学情「2026年卒採用、8割超が“難化”を実感。売り手市場×早期化のリアルと通年採用への転換(2025年7月)」
新卒採用でペルソナを作るメリット

ペルソナを設定することは、単に求める人材像を明確にするだけでなく、採用活動の効率と質の向上にも効果的です。
具体的なメリットについて解説します。
潜在能力やカルチャーフィットを見極められる
新卒採用では、実務経験が少ないため、スキルよりも潜在能力や人柄が重視されます。
ペルソナを設定することで、「自社で成長できる素養があるか」「カルチャーフィットするか」といった抽象的な要素を具体化できます。
これにより、採用担当者間で共通認識が生まれ、求める人物像を見極められるようになるでしょう。
育成計画を立てやすい
採用ペルソナを設定することで、理想の新卒社員がどのような学び方や成長を望んでいるかを具体的にイメージできます。
これにより、画一的な研修ではなく、個々の特性に合わせた育成計画やOJT(On-the-Job Training)を事前に立てることが可能です。
こうした個別化された育成計画は、新卒社員の早期戦力化や早期退職の防止にもつながります。
企業の魅力を効果的に発信できる
ペルソナを設定し、学生の志向性や興味を深く理解することで、説明会や採用サイト、SNSといったチャネルを通じ、企業の魅力を効果的に発信できます。
学生の心に響くメッセージは、採用ブランディングにも役立つため、漠然と応募する学生ではなく、企業に強い興味を持つ学生からの応募を促すことができるでしょう。
採用活動を効率的に進められる
ペルソナを設定すると、ターゲットとなる学生像が明確になります。これにより、最適な就職サイトやイベント、学校などを選定でき、採用活動を効率的に進められるでしょう。
採用チャネルの最適化は、採用コストの削減にもつながります。
さらに、面接での質問内容や選考ステップをペルソナに合わせて調整することで、効率的に学生を見極め、選考にかかる時間や労力を削減できます。
新卒採用のペルソナの作り方
新卒採用では、潜在能力や将来性を見極めることが重要です。採用ペルソナを具体的に設定し、効果的なアプローチと入社後の定着を目指しましょう。
新卒採用におけるペルソナの作り方について詳しく解説します。
用目的を決める
採用目的では、どのような人材を迎え入れ、会社にどんな影響をもたらしたいのかを具体的に決めます。目的を定めることで、ミスマッチのない採用と効率的な活動を実現できるでしょう。
新卒採用における採用目的の例は次のとおりです。
- 組織の若返り・活性化
- 次世代リーダー・幹部の育成
- 専門スキル・知識の醸成
- 企業文化の継承・育成
- 多様性の推進(ダイバーシティ)
情報収集と現状分析
企業全体の方向性や現場の具体的なニーズ、既存社員のデータなどを深く掘り下げて理解するプロセスです。
社内ヒアリングやコンピテンシーを活用し、自社で活躍できる人物像を明確に設定します。
こうして設定した人物像と採用目的を照らし合わせ、矛盾がないか確認してください。
「自社で活躍できる人物像」について情報収集を行う際は、次の内容を参考にすると良いでしょう。
| 経営層 |
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| 現場社員・マネージャー |
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| 既存新卒社員 |
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採用要件を設定する
情報収集や現状分析した内容をもとに、採用要件を設定します。
その人が持つべきスキルや経験、特性を明確にすることで、選考の軸がぶれず、ミスマッチのない採用につながります。
採用要件を設定する際は、次の項目を参考にしてください。
- 学生の基本情報:学歴・専攻、性別、居住地など
- 経験・保有資格:部活・サークル、アルバイト、ボランティアなど
- パーソナリティ:性格、長所・短所、キャリア志向、キャリアビジョンなど
採用要件に優先順位をつける
採用要件を設定したら、次に優先順位をつけましょう。
すべての要件を満たす学生は希少なため、優先順位付けは本当に必要な人材を見極めるための重要なポイントです。
優先順位を付ける際は、次の3段階に分類しましょう。
- 必須要件(Must-have):業務を遂行するうえで絶対に欠かせない最低限の条件
- 歓迎要件(Nice-to-have):「あればなお良い」という会社に付加価値をもたらす条件
- 除外要件(Must-not-have):「あてはまる場合は採用しない」という明確なNG条件
採用市場の動向と採用要件が適切か確認する
採用活動を成功させるには、まず自社の採用計画が現在の市場動向と乖離していないかを確認することが大切です。
売り手市場のトレンドや競合他社の採用条件(給与、福利厚生、求めるスキルレベルなど)を定期的に分析し、採用要件が市場のニーズに適合しているか見直しましょう。
新卒採用では、企業の魅力や成長できる環境が重要視される傾向にあります。
学生が求める要素と提示する条件が市場の現実に見合っているかを正確に見極めることが、採用活動を成功させる鍵となるでしょう。
ペルソナを作る
これまでの情報をもとにペルソナを作ります。単なる属性だけでなく、人となりが分かる情報まで細かく設定しましょう。
ペルソナを作る際は、次の項目を参考にしてください。
| 基本情報 |
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| 学生時代の経験 |
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| 人柄・性格 |
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| 基礎能力 |
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| 仕事への価値観・志向性 |
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| 就職活動の進め方 |
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ペルソナの具体例
ペルソナの具体例を紹介します。自社のペルソナを設定する際の参考にしてください。
| 基本情報 |
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| 学生時代の経験 |
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| 人柄・性格 |
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| 基礎能力 |
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| 仕事への価値観・志向性 |
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| 就職活動の進め方 |
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ペルソナを共有する
採用活動に関わるすべての関係者とペルソナを共有し、求める人物像についての共通認識を醸成することが重要です。
特に、配属先の上司や同僚にも確認してもらうことで、現場のニーズとのズレを防ぐことができます。
このようなペルソナの共有は、採用基準の統一や採用活動の効率化にもつながります。
ペルソナをブラッシュアップする
採用ペルソナは、一度作成したら終わりではありません。
採用市場や自社の状況は常に変化するため、定期的に見直し、ブラッシュアップすることが大切です。
この継続的な改善プロセスによって、採用活動の精度の維持や向上につながります。
ブラッシュアップする際は、次の項目を参考に見直してください。
| 応募者の増減と質 |
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| 選考通過率と辞退率 |
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| 競合他社の採用状況 |
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| 学生のニーズの変化 |
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| 自社の状況変化 |
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| 企業文化の変化 |
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ペルソナを設定する際のポイント

新卒採用におけるペルソナ設計は、企業の未来を担う人材を効率的・効果的に獲得する羅針盤です。
実際に機能するペルソナを作るためのポイントを紹介します。
学生のニーズを把握する
新卒採用では、企業が描く「欲しい人材像」だけでなく、「学生が企業に何を求めているか」というニーズの把握も重要です。
どれほど魅力的な企業でも、学生が求めるものとズレていれば、共感を得ることは難しく、結果として応募につながりません。
株式会社学情の調査によると、学生が企業に魅力を感じる点のトップは「休日・休暇がしっかり取れる企業(62.7%)」でした。次いで「安定していそうな企業(56.4%)」「給与の高い企業(53.3%)」が上位を占めています。
このような学生のニーズをペルソナに反映することで、質の高い母集団形成や採用のミスマッチの防止などにつながります。
※参考:株式会社学情「2026年3月卒業予定者/就職戦線中間総括」
中長期的な視点で考える
新卒採用は未来への投資です。だからこそ、5年後、10年後の会社のありたい姿から逆算し、どのような人材が必要か具体的に考えることが重要です。
こうした中長期的な視点を持つことで、経営層のビジョンをペルソナに反映させることができます。
たとえば、「〇〇事業の課題を解決できる論理的思考力と粘り強さを持つ人」のように、具体的な事業貢献につながる特性を明確にすることで、採用の軸がぶれなくなるでしょう。
見極めと訴求の軸を明確にする
新卒採用では、スキルよりもポテンシャルや人柄が重視されるため、必須・歓迎・除外要件の優先順位を明確にし、採用の軸がぶれないようにすることが重要です。
就活生が魅力を感じる点を特定し、採用メッセージに最大限反映させましょう。
これにより、自社に強い興味を持つ学生からの応募を促し、応募の質を高めることができます。
客観的な視点を保つ
ペルソナ作成では、過去の成功体験や無意識の偏見が入り込むことで、特定の属性に偏った人物像を生み出すことがあります。
たとえば、「特定の大学出身者でなければ優秀ではない」「営業職は男性の方が向いている」といった偏見は、多様性を阻害し、学生の本質的な能力を見誤るリスクにつながるでしょう。
そのため、ペルソナを設定する際は「仕事で活躍するために必要な特性や行動原理」に焦点を当て、客観的なデータと多角的な視点を取り入れることが重要です。
ペルソナを浸透させて活用する
採用ペルソナは、採用チーム全体の共通認識として定着させることが重要です。
単に資料を配布するだけでなく、面接官や現場の社員を交えたワークショップを実施し、ペルソナへの共感を深めましょう。
採用活動を通じて「ペルソナどおりか」「入社後に活躍しているか」を定期的に検証し、市場や自社の変化に合わせてペルソナをブラッシュアップしていくことが大切です。
ペルソナの活用方法
ペルソナは面接以外にもさまざまなシーンで活用できます。
採用活動全体でペルソナを効果的に活用し、新卒採用を成功させましょう。
ペルソナの具体的な活用方法について解説します。
採用手法の最適化
ペルソナの行動特性や志向性を参考にすることで、採用手法を最適化できます。
具体的には、採用チャネルの選定に加え、求人情報、掲載写真、採用コンテンツの内容を決める際にも役立ちます。
たとえば、ターゲットの志向性に合わせ、「入社3年目にはリーダーとして◯◯を経験できる」といった具体的な情報を掲載することで、抽象的な表現よりも学生の心に響くでしょう。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、企業が求職者に直接アプローチする採用手法です。
登録者データから、採用基準に合致する学生の情報を抽出し、スカウトメールでアプローチします。
ペルソナをもとに学生を検索することで、マッチング精度の高い出会いが期待できるでしょう。
また、ペルソナの興味や志向性に合わせたメッセージを送ることで、効果的に応募を促せます。
新卒採用でダイレクトリクルーティングを導入するなら、スカウト型就職情報サイト「Re就活キャンパス」がおすすめです。
アバター、学生が自己診断した性格タイプ、就職活動の進捗度から、採用基準に合致する学生を検索できます。
面接官のトレーニング
採用ペルソナは、面接官が候補者を評価する際の重要な指針となります。
そのため、すべての面接官がペルソナを深く理解し、共通の評価基準で学生を見極められるようトレーニングすることが大切です。
面接官のトレーニングには次のような方法があります。
- 面接官と学生役に分かれ、実践的なロールプレイングを行う
- ワークショップ形式で、ペルソナの意図や必要性を共有する
- ペルソナの項目をもとに、評価シートを作成する
入社後のオンボーディング・育成計画
ペルソナを活用することで、入社後の配属や育成計画を最適化できます。
具体的には、ペルソナの特性や志向に合わせ、本人が最も活躍できる部署への配属を検討することが重要です。
また、事前に強みや弱みを把握し、個々の特性に合わせたOJTや研修プログラムを立案することで、早期戦力化やエンゲージメント向上につながります。
さらに、ペルソナに寄り添えるメンターやOJT担当者を選定するのも効果的です。
新卒採用のペルソナを設定し、採用活動を成功させよう!
新卒採用におけるペルソナ設計は、自社の成長に欠かせない人材を獲得するための羅針盤です。
明確な採用目的を設定し、多角的な情報収集からリアルなペルソナを作り上げましょう。
変化する市場動向や学生のニーズと照らし合わせながら、常にペルソナをブラッシュアップしていくことが重要です。
明確なペルソナは、ダイレクトリクルーティングで特に威力を発揮します。
会員数60万人を誇る「Re就活キャンパス」では、ペルソナで設定した詳細な条件を活用し、ターゲット学生に直接アプローチすることが可能です。
新卒採用でお悩みの方は、株式会社学情へご相談ください。
採用戦略の立案から選考、入社後のフォローまで、貴社の新卒採用を一貫してサポートいたします。

株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ(現在のRe就活キャンパス)」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。
