外資系の企業ではリファレンスチェックを行うのが一般的でしたが、最近では日本企業でも実施するところが増えています。「採用ミスマッチを防ぐため」という理由が大きいですが、リファレンスチェックにはほかのメリットもあります。
具体的な実施方法とともにリファレンスチェックでヒアリングする質問例も紹介していますので、導入するかお悩みの方はぜひご覧ください。
この記事の一部は生成AIを用いて執筆しています。
リファレンスチェックとは
リファレンスチェックとは、企業が応募者の人となりや今までの仕事ぶりなどを確認するために、応募者と一緒に働いたことがある第三者に対して行う調査のことを指します。具体的には、前職での関係者に、応募者の勤務態度や実績などについてヒアリング します。
応募者から聞いた内容が正しいか、第三者の情報から確認し、書類や面接だけではわからない情報を深く知ることで正確に合否の判断を下すのが目的です。
外資系の企業では一般的なリファレンスチェックですが、日本の企業でも徐々に実施するところが増え始めています。
前職調査とのちがい
同じく採用プロセスの一部として行われる調査に、前職調査があります。リファレンスチェックとのちがいは、調査する内容です。
リファレンスチェックは、応募者のスキルや制作、仕事に対する姿勢などをチェックします。
前職調査で調べるのは、応募者の学歴や職歴に偽りがないか、過去に不法行為を行った記録はないかなどです。
履歴書や職務経歴書に間違いがないかを確認する作業は「バックグラウンドチェック」とも呼ばれており、前職調査とは、一般的にこのバックグラウンドチェックを指すケースが多いようです。
ただし、個人情報保護法が厳しくなり、法的リスクが増えたことによって、近年では前職調査を実施する企業は減少傾向にあります。
リファレンスチェックを企業が行うメリット
リファレンスチェックは採用ミスマッチを防げるほか、書類や面接だけではわからない応募者の魅力を発見できたり、結果的に採用担当者の工数削減につながったりします。
採用ミスマッチを防げる
企業がリファレンスチェックを行うことで、応募者のスキルやコミュニケーションの取り方などを客観的に把握し、能力や価値観の採用ミスマッチを防ぐことができます。採用ミスマッチは早期離職の原因になり、採用コストが無駄になってしまいます。
株式会社学情が実施したアンケートでは、社会人経験3年未満の「第二新卒」が転職で実現したいことの上位3位は「希望する仕事に従事できること」「給与・年収が上がること」「良好な人間関係を築けること」でした。
業務内容や職場環境における入社後のギャップが大きいことから3年未満の離職が起きていることがわかります。
※参考:「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(転職理由)2023年8月版」(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/230802/)
さらに、応募者の適性を企業が正しく把握することで適切な人材配置ができ、入社後の成果につながる可能性が高まります。
書類や面接ではわからない部分を把握できる
30分~1時間ほどの短時間の面接や書類のみでは、応募者の人となりを深く理解するのはむずかしいです。場合によっては、選考に合格したい思いが先走って、応募者が大げさな表現をしているかもしれません。
リファレンスチェックでは、応募者が提供していない情報や、面接では確認できなかった点を調べられます。たとえば、在職中の休職や問題行動の有無、残業状況などです。応募者が積極的には言い出しにくいが、企業にとっては気になる項目を把握できます。
加えて、応募者が面接でアピールし切れなかった魅力もリファレンスチェックで発掘できる可能性があります。
採用担当者の負担軽減
面接官に経験やノウハウが足りない場合や人員不足の際は、リファレンスチェックが役立ちます。
面接に移行する前にリファレンスチェックを行い、その結果で応募者を絞り込んでおけば、面接官が実際に会うのは一定の基準に達している候補者のみです。面接官の負担を軽減でき、その分、面接に集中できるでしょう。
また、ミスマッチによる早期離職と再選考を防ぐ点でも、採用業務の工数削減に貢献します。
リファレンスチェックの実施方法
リファレンスチェックは具体的にどう実施するのか、「だれが」「どのように」「いつ」の3つのポイントに分けて説明します。
だれが
企業の採用担当者が直接リファレンス先を探すケースと、候補者を通じて前職の上司や同僚に依頼をする場合の2種類があります。第三者機関の調査会社を利用する方法もあります。
どのように
まずは、応募者とリファレンス先の両方に個人情報取得の同意を得るのを忘れないようにしましょう。
具体的なリファレンスチェックの実施方法には、書面や面談、電話のほかに、専用のサービスなどがあります。
書面や専用のサービスを用いる場合、アンケートのドキュメントやURLをヒアリング先に送付し、期日までに回答を返してもらいます。専用のリファレンスチェックサービスでは、回答のレポート化までをサービス内容に含めていることが多いようです。
オンライン会議ツールを用いた面談や電話でのヒアリングをする際は、会議の設定や電話番号の連絡といった、リファレンス先との事前準備が必要になるでしょう。
いつ
外資系企業では、内定前に最終確認の意味で実施するところが多いようです。しかし、リファレンスチェックを行うタイミングは企業によってさまざまで、選考途中や内定後の場合もあります。
リファレンスチェックを実施する際の注意点
リファレンスチェックは、対応を間違えると法令違反になる可能性があります。
個人情報保護法:必ず本人に同意を得る
個人情報保護法第二十七条では、「個人情報取扱事業者は、(中略)あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」とされています。
※出典:e-gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=415AC0000000057)
リファレンスチェックでヒアリングする内容はほとんど個人情報に該当するため、必ず本人の合意を得る必要があります。なお、この法律はリファレンスチェックを実施する企業ではなく、ヒアリング先の企業に適用されるので注意が必要です。
職業安定法:聞いてはいけない個人情報に注意する
職業安定法第五条の五では、すべての人が公正な選考を受ける上で、企業は採用に関わる範囲外の応募者の個人情報を収集してはならないとされています。
※参考:e-gov法令検索「職業安定法」(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000141_20221001_504AC0000000012)
採用に関わる範囲外の個人情報とは、厚生労働省の「採用選考の基本的な考え方」で言うところの、応募者の適性・能力とは関係のない事項です。
※出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本」(https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm)
つまり、収集が認められていない個人情報は、大きく分けると三つです。
- 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
- 思想及び信条
- 労働組合への加入状況
※出典:厚生労働省「1. 公正な採用選考とは?」(https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/library/kouseisaiyou.pdf)
これらの情報は、リファレンスチェックだけでなく、書類選考や面接でも聞いてはいけません。くわしくはこちらの記事をご覧ください。
労働契約法:リファレンスチェックの結果による内定取り消しはできない
リファレンスチェックの結果を理由に内定を取り消すと、経歴詐称などの重大な違反がない限り、労働契約法16条に基づき「解雇権の濫用」とされる恐れがあります。
※参考:e-gov法令検索「労働契約法」(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128)
過去の判例から、企業は内定を出した時点で雇用契約を結んだとみなされる可能性が高いです。リファレンスチェックの結果は、選考の合否を判断するための参考程度に受け取るとよいでしょう。
リファレンスチェックの質問内容例
リファレンスチェックで具体的に何を聞けばよいか、例を紹介します。
これらの質問をもとにリファレンスチェックを行うことで、応募者の勤務態度やスキル、人物像をよりくわしく把握することができます。
なお、これらすべてを聞く必要はありません。あくまでも例として参考にしてください。
勤務状況や仕事に取り組む姿勢について
- 応募者の勤務期間はいつからいつまででしたか?
- 役職や職務内容は、応募書類や職務経歴書と間違いありませんか?
- 以前の勤務先をご存じですか?
- 勤務態度や休暇の取得率はどうでしたか?
- 遅刻や欠勤が目立つことはありませんでしたか?
- 応募者の普段の労働時間や残業への取り組み方について教えてください。
スキルや職務能力について
- 応募者の具体的な実績を教えてください。
- 問題やトラブルが生じたとき、応募者はどのように解決しようとしていましたか?
- 周りにいい影響を与えたエピソードはありますか?
- 応募者とはどのように業務を進めていましたか?
- 改善すべきと感じる点はありましたか?
- リーダーシップを感じる人物でしたか?
- 業務の中で何が得意だと感じましたか?
人物像やコミュニケーション方法について
- 一緒に仕事をして受けた印象はどうでしたか?
- コミュニケーションの取り方の特徴は何ですか?
- 上司・同僚・部下への接し方はどうでしたか?
- 周囲への影響力はどうでしたか?
- 行動の意図がつかめないことはありましたか?
- 周囲との人間関係は良好でしたか? 社内での評価はどのようなものでしたか?
- 応募者とまた一緒に働きたいと思いますか?
- ひと言でいうと、どのような人物ですか?
リファレンスチェックで採用ミスマッチを防ごう
リファレンスチェックは、採用ミスマッチの防止や魅力の発掘、採用担当者の負担軽減に役立ちます。「書類や面接だけでは応募者のことを深く知れない」「面接官のスキルや人員不足に悩んでいる」といった課題があれば、導入を検討するのもよいでしょう。
採用ミスマッチを防ぐためにカルチャーマッチを重視するなら、カジュアル面談の導入もおすすめです。
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