近年、理系学生の需要が高まる一方で、学生の数は減少の一途をたどっています。
母数の少ない理系学生を各企業が取り合うため、理系採用はさらに難しくなっています。
この記事では、理系採用について徹底解説し、理系採用成功のコツを伝授します。
理系採用市場の動向
理系の採用市場において人材不足が深刻化しています。とくに深刻なのがITエンジニアの採用市場でしょう。
現代社会において、急速に成長している分野の一つがテクノロジーです。ビッグデータやAIの導入、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進み、エンジニアの需要が急増している一方で、市場におけるエンジニアの不足が深刻な状況です。厚生労働省が発表した2023年7月の一般職業紹介状況によれば、ITエンジニア(情報処理・通信技術者)の新規求人倍率は3.50倍で、全体の倍率2.22倍を大きく上回っています。経済産業省の報告によると、2030年には最大で79万人のIT人材が不足するという試算もあり、エンジニア不足は今後も続く見込みです。
※出典:「一般職業紹介状況(令和5年7月分)」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001137391.pdf)
※出典:「- IT 人材需給に関する調査 - 調査報告書」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf)
理系学生の需要が増加
理系学生は、専門分野で研究を行っているため、テクノロジーに関する幅広い知識を有している学生が多いといえます。また、テクノロジー分野だけでなく、普段から研究を通して、データ分析等で数字に触れている学生も多く、データや数値を扱う様々な業種で必要不可欠になっています。
株式会社学情が2024年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に行った内々定率調査では、2023年9月時点の内定(内々定)率は、文系が88.2%(前年:84.7%)に対し、理系は95.2%(89.8%)と、前年同様に文系の内定率を上回ったことが報告されています。
※出典:「あさがくナビ2024年卒 内々定率調査(2023年9月度)」(株式会社学情)(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/24naiteiritsu0904/)
理系学生の人数が減少
2015(平成27)年3月に公表された文部科学省の「理工系人材育成戦略」によると、理・工・農学分野の学部学生は1999(平成11)年度の63.6万人をピークに、2013(平成25)年度には55.4万人に減少しています。全学生数に占める理・工・農学分野の学部学生の割合も年々減少し、2013年度には21.6%と、文系学生と比較して理系学生は著しく少なくなっています。
少子高齢化が進んでいることもあり、今後はさらに理系学生の人口は少なくなっていくことが予想されます。
※出典:文部科学省「理工系人材育成戦略」
理系学生の強み
この章では理系学生の強みについて解説します。
理系学生の能力や、優れている点を理解し、採用に役立てましょう。
ある分野での専門性を保持している
理系学生の魅力のひとつは、専門的な知識を備えていることです。専攻分野によって異なりますが、化学や工学など、文系では習得が難しい特殊な分野について深い知識を有しています。たとえばIT企業や研究職など、ある分野の知識が不可欠な企業や部署では、関連する分野に精通している理系学生は即戦力となります。
専門性を持つ人材ならポスドクの採用を検討するのも有効です。ポスドクについて詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
論理的思考力がある
理系学生の最大の強みは、社会人に不可欠な論理的思考力に優れている点だといえます。
理系学生は、研究を通じて「仮説立案→実行→学習→軌道修正」のPDCAサイクルを日常的に経験し、仮説が立証されないときには、どの段階に問題があるかを仮定し検証しています。
そのため、仕事において複雑な課題に直面しても、論理的思考力を発揮しPDCAを回すことができる傾向にあります。
数字に強い
理系学生は、主に専攻していた分野に関連する職種に就職する傾向があります。
しかし、学生時代から数値を扱う経験が豊富なことから、人事や労務、経営企画、マーケティングといった幅広い職種でも活躍できる可能性があります。
このように、理系学生を採用する際は特定の分野に限定するのではなく、データや数値を扱うさまざまな職種を検討し、適切なポジションに配置すると良いでしょう。
目標達成に向け、最後までやり遂げる力がある
理系学生の多くは、たくさんの講義と長時間の実験、そして複数のレポート課題等、忙しい学生生活を送っています。研究室に所属する学生もいて、夜遅くまで研究課題に取り組んでおり、粘り強いメンタルを備えている傾向にあります。これらの経験から、理系学生は目標に向かって継続的に努力し、最後までやり遂げる力が養われています。仕事においても、この能力は重要な強みになるでしょう。
理系採用に苦戦する理由
多くの強みがあり、魅力的な理系学生ですが、企業が「採用したい」と思う一方で、うまく採用ができないという企業も多数あります。
この章では、理系採用がうまくいかない理由について説明します。
研究やゼミで忙しく、就職活動に時間を割けない学生が多い
多くの学生は3年生から就職活動を始めます。その中でも、理系学生は3年生の後半から研究室に入ることも多いので、就職活動に費やす時間が少なく、企業説明会やインターンシップへの参加が難しいと考えられます。とくに大学3年生や4年生は研究やゼミに忙しく、研究室によってはコアタイムがある場合もあります。平日の面接や説明会、インターンシップに参加するのが難しいと言えるでしょう。
そのため、企業も理系学生も、それぞれに魅力をアピールする時間が限られてしまいます。理系採用においては、学生のスケジュールに合わせた柔軟な対応が求められます。
推薦で就職先が決まることがある
理系学生は、大学や研究室の教授からの推薦により企業に応募することができる場合があります。この推薦による応募では、通常の文系学生が行うような就職活動を行わずに内定を獲得できることがあり、理系学生は文系学生に比べて就職活動に消極的な傾向があります。大学や研究室と直接つながりがない企業は、理系学生にアプローチする機会が少なくなってしまいます。
「ジョブ型」に対応できていない
ジョブ型採用とは、必要な職務内容に適したスキルや経験を持つ人材を採用する方法です。近年、人的投資を強化するために評価制度を見直す企業が増加しています。成果に応じて評価をする「成果主義」と連動し、職務領域と求める成果を明確にしたジョブ型雇用の導入が加速しています。
株式会社学情が発表した、2024年3月卒業予定者採用動向調査レポートでは、ジョブ型採用について、「現時点で導入の予定はない」と答えた企業は72.7%と大半を占めたことが報告されています。
※出典:「2024年3月卒業予定者/採用動向調査レポート」(株式会社学情)(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/24saiyo-report/)
また、2026年卒学生を対象に行ったアンケート調査では、「ジョブ型」採用を実施している企業に、「プレエントリーしたい」と回答した学生が 37.7%に上りました。「どちらかと言えばプレエントリーしたい」を合わせると、8 割に迫る学生が「ジョブ型」採用を実施している企業にプレエントリーしたいとしています。
※出典:株式会社学情「2026年卒学生の就職意識調査(ジョブ型)2024年5月版」(https://service.gakujo.ne.jp/wp-content/uploads/2024/05/240513-navienq.pdf)
理系学生は自分の興味や関心に基づき入る研究室を選択することから、研究室に入る段階で、「将来何がやりたいか」がある程度定まっている学生が多いです。そのため、理系学生は自分の専攻分野に直接関連する職種につくのを好む傾向にあります。
理系採用成功のポイント
前章では、理系採用に苦戦する理由について説明しました。この章では、前章を踏まえた理系採用成功のポイントをご説明します。
学生に配慮した選考スケジュールを組む
理系学生は研究やゼミで忙しく、文系学生に比べて就職活動に時間を割けない学生が多いです。就職活動と研究を並行して行う必要があり、選考の日程を調整するのが難しいケースがあります。そのため、企業側は理系学生の就職活動のスケジュールに配慮して日程を調整する必要があるでしょう。
またコロナの影響を受け、オンラインで会社説明や選考を実施する企業も増えました。オンラインを導入することで、学生は移動時間、場所にとらわれず会社説明や選考を受けることができます。オンラインもうまく活用し、理系学生のスケジュールを考慮した方法で、学生にアプローチしましょう。
26卒学生の就職活動スケジュールについて詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
大学や研究室と連携する
理系学生は、研究室と企業のつながりを利用し、先輩が勤めている企業に就職する場合も多くあります。その場合は、現役社員にリクルーターとして出身大学や研究室を訪問してもらい、後輩学生とコンタクトをとるなど、大学や研究室と連携していくことも理系採用の有効な手段のひとつと言えます。
ジョブ型採用を導入する
理系学生等の専門知識を持つ学生を中心に、就職活動で「配属先」や「経験できる仕事」を重視する傾向が強まっています。
株式会社学情がリリースしている2025年卒対象の「就職人気企業ランキング<理系部門>」で1位に入った味の素は、「R&D」「生産」「Sales/Business」など職種別での採用を実施しています。2位のソニーグループもコース別の採用を実施しており、初期配属を明確にしています。とくに理系や専門スキルを持つ学生は、「ジョブ型」を意識している傾向があります。専門スキルを持つ優秀な学生を採用するためには、「ジョブ型」の導入・活用が不可欠になっています。
※出典:「2025年卒「就職人気企業ランキング」を発表! トップは6年連続のあの企業!」(株式会社学情)(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/saiyo/00085/)
理系に特化した採用サービスを利用する
理系学生は文系学生と比べて就職活動が特殊なため、理系専用のナビサイトや合同企業セミナーが存在します。これらのサービスを利用することで、企業側は初めから理系学生という明確なターゲットにアプローチできます。たとえば、株式会社学情では、理系学生向けの合同企業セミナーが開催しています。理系の人材を求めている企業にとって、これは非常に効果的な手段といえます。
ダイレクトリクルーティングを活用する
ダイレクトリクルーティングは「攻めの採用」とも呼ばれ、求人を出して学生からの応募を待つ従来の方法とは異なり、企業が求める学生に直接アプローチできます。
ダイレクトリクルーティングでは通常、学生が登録しているデータベースから自社に合う人材を見つけ、スカウトメールなどでアプローチをするのが一般的です。
企業側からアプローチができるので、メールの送り方を工夫すれば、知名度の低い企業でも自社の魅力をアピールできる手法と言えます。
理系採用を強化するなら、新卒向けダイレクトリクルーティングサービス「あさがくナビ」がおすすめです。
会員数は40万人で、新卒学生対象のダイレクトリクルーティングサイトNo.1を誇ります。多くの登録学生の中から、自社にマッチする理系学生にアプローチできます。
また、AIスカウトや豊富なテンプレート、ナビゲーション機能を活用すれば、スカウト配信の工数削減も可能です。
人材紹介サービスを利用する
人材紹介は、企業と求職者の間に入り、企業のニーズに合った候補者を紹介するサービスです。
採用工数が削減できる、初期費用が発生しない成功報酬型のサービスが多い、などのメリットがあります。その反面、採用が成功した場合は、採用単価が高くなること等が特徴です。
理系専門ナビサイトに掲載する
理系学生の採用に特化したナビサイトに求人情報を掲載するのもひとつの手です。
一般的なナビサイトと比較して理系学生の登録者が多く、理系学生に絞って採用を行う場合は効率よく母集団を形成することができます。しかし、知名度が低い企業は求人が埋もれてしまう可能性もあるので、他のサービスとの併用なども検討するとよいでしょう。
理系対象イベントに参加する
短期間で多くの学生と出会いたい場合、イベントに参加するのもひとつの手段です。
とくに理系学生向けのイベントは参加者のほとんどが理系なので、効率良くターゲットの学生に出会うことができます。
しかし、イベントの参加経験がない企業は学生にうまく自社の魅力を伝えることができず、自社の採用ターゲットに沿った人材と出会うのが難しい可能性もあることに注意が必要です。
株式会社学情が主催する就職博では、学情の社員がターゲット学生をブースへ案内するスカウトサービスがあり、ニーズに合った学生と出会うことができます。
また、理系学生を対象とした就職博(Super Business Forum)を毎年実施しています。
まとめ
いかがでしたか?理系採用成功のコツはつかめたでしょうか。
理系学生の需要は増す一方で、理系学生の数は今後も減少していくことが予想されます。理系採用を成功させるには、企業は理系学生の動きを把握し、柔軟に対応していくことが必要不可欠です。
理系採用に特化したサービス等もうまく活用し、自社ニーズに合った理系学生の採用につなげてください。
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