企業が採用活動を行うなかで、大きな課題となるのが内定辞退率をいかに下げるかでしょう。自社の採用プロセスに問題はないのか、不安に思っている人事担当の方もいるのではないでしょうか。
本記事では内定辞退率の目安や、人材を確保するためにできる対策を紹介します。内定辞退に関してよくある疑問も紹介するので、これから採用活用を始めようとしている人事担当の方は、ぜひ参考にしてください。
近年の内定辞退率は増加傾向にある
近年、内定辞退率は増加傾向にあります。学情の採用活動における企業・学生の動向に関するレポートでは、2023年卒採用は昨年より辞退者が多かったとの見解を示しています。想定以上に辞退者が出たため、急遽第二新卒採用を実施した企業もあります。
企業の人事担当者にとって、内定辞退率増加への対応や対策は大きな課題です。内定辞退の増加で必要な人員数を確保できないため、夏や秋にも採用を継続する企業が増えています。多くの企業が、内定辞退率を下げるための方法を模索しているのが現状です。
内定辞退率の改善は企業の重要課題
企業にとって、内定辞退率の改善は重要課題となっています。なぜ内定辞退率の改善が重要なのか具体的に解説します。
採用コストを削減するため
内定辞退率の改善は、採用に関わるコストの削減につながります。採用活動では、就活サイトや求人情報誌への掲載費、社内での採用に関する業務に費やす時間など、さまざまなコストがかかります。
採用コストを費用面で見ると、一人当たり数十万円が相場です。内定辞退されると再び応募から始める必要があるため、さらに費用がかかります。
内定辞退者が少なくなれば、再び募集する必要がなくなるため、採用活動に要する時間や手間のコストも削減可能です。内定辞退率を改善して、採用コストの削減を実現しましょう。
企業を成長させるため
企業を成長させるためにも、内定辞退率の改善は重要です。内定辞退が続いて人材を確保できなかった場合、人材不足で業務に支障をきたす可能性が高くなります。業務が円滑に回らない職場は、人間関係にも悪影響を及ぼしかねません。
内定辞退率を改善して、優秀な人材を確保することが、企業の成長につながります。慢性的な人材不足は、経営存続にも大きな影響を及ぼすため、内定辞退率の改善は、企業にとって取り組むべき大きな課題と言えるでしょう。
内定辞退される4つの理由
内定辞退率の改善に取り組むに当たって、なぜ辞退されるのか理由を知っておきましょう。内定辞退の理由は人それぞれですが、代表的な4つの理由を紹介します。
1.本命の企業ではなかった
内定辞退の理由として多いのが、応募者にとって自社が本命の企業ではなかったケースです。すべての応募者が自社を本命と考えているわけではありません。特に新卒の場合は滑り止めや面接の練習を目的として、本命以外の企業に応募する応募者もいます。
自社を本命と考えていない応募者は、第一希望の企業で内定を得た時点で辞退することがあります。企業側は滑り止め扱いされるのを避けたいのですが、応募者の立場から考えると、ある程度はやむを得ません。
面接で「第一希望」との回答を得ても、100%信用するのはリスクが高いでしょう。新卒の場合、面接で「第一志望」と答えていても、実際は第一志望ではなかったというケースも珍しく有りません。あさがくナビのアンケートによると、応募者の50.1%がどの企業に対しても「第一希望」だと答えるという結果が出ています。
※出典:「「選考」に 関する企業調査(2023年5月)」(あさがくナビ)(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/230509/)
2.企業の実態が希望に合わない
応募者が自分の希望に合わないと感じて、内定辞退する場合もあります。書類選考から面接と選考が進む過程で、社内の雰囲気や待遇など、求人情報だけではわからなかった実態を知り、自分に合わないと感じて内定辞退するケースです。
企業側が求人情報誌やホームページなどで、自社の良い面を大きくアピールしようとするのは当然ですが、過度に良い面ばかりをアピールしないように注意しましょう。
応募者が抱くイメージと現実に差が出てしまい、内定辞退の理由となってしまう可能性があります。実態とかけ離れたアピールで応募者を増やしても、最終的には内定辞退者を増やすだけでメリットがありません。
3.選考プロセスでの印象が悪い
選考プロセスでの印象は内定辞退率に大きく関わるため、応募者に接する態度は重要です。面接官の不適切な発言や、高圧的な態度は内定辞退の理由となるだけではなく、応募者がSNSで悪いイメージを広めてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
面接のときだけではなく、受付での応対や廊下でのすれ違いなど、応募者と接する機会があるときは悪い印象を持たれないように注意しましょう。
内定を出したあとの対応も重要です。内定を出したあとにコミュニケーションやフォローがないのが理由で、応募者が不安を抱いて内定辞退してしまうケースがあります。内定辞退率を改善するためには、内定を出したあとも適度なコミュニケーションやフォローを行いましょう。
4.内定や入社までの期間が長い
選考プロセスは、長くなり過ぎないように配慮が必要です。応募者が内定をもらえないままの期間が長くなると、「選考に落ちたのではないか」と心配する傾向があります。そのため、落ちたときの備えとして他社へ応募しようと考えてしまいます。
企業側には、時間をかけて慎重に選考したい意向があるかもしれませんが、応募者が不安を感じて他の企業に応募する流れを作らないようにしましょう。もし長くなってしまう場合は、適宜連絡を入れてフォローしましょう。
内定から入社までの期間も長くならないように設定することが必要です。内定から入社までの期間の長さが原因で、応募者がこの企業で本当に良いのかと不安に陥ってしまうケースがあります。不安が増大すると明確な理由がないにも関わらず、内定辞退されるケースもあるため注意しましょう。
内定辞退率を下げるためには、応募者が不安にならないようなスケジュールの制定や対応が必要です。
内定辞退率を下げる6つの対策
内定辞退率を下げるための対策を詳しく解説します。ここから解説する内容は、新卒と中途に共通するものです。ぜひ採用の参考にしてください。
1.採用プロセスを見直す
内定辞退率を下げるため、まず採用プロセスを見直しましょう。工数を減らして採用までの期間を短くすれば、採用担当者の負担を軽減できます。応募者から見ても、選考にかける期間を短縮してスムーズに進める企業は安心感があるため、内定辞退を防ぐ対策として効果的です。
従来の採用方法だけではなく、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用も検討する価値があります。
ダイレクトリクルーティングは、企業側から求職者に直接アプローチする方法です。自社に合った人材を見つけるための調査や実際にアプローチする作業が必要となりますが、直接のやり取りで自社の魅力や想いを伝えやすいメリットがあります。
リファラル採用は、信頼できる人物から自社にマッチした人材を紹介してもらう方法です。自社にマッチしやすい人材が集まりやすい傾向があります。自社の採用状況や必要としている人材などを考慮した上で相応しい方法を選択しましょう。
また、現在利用している就職・転職情報サイトの見直しも行いましょう。求職者の多くは、応募する企業を検討する際に就職・転職情報サイトを利用します。企業の第一印象に大きく影響するケースが多いため、利用するサイトの選定は重要です。
自社の業界や職種に合っているか、提供されているサービス内容は充実しているかなどを比較検討して、自社に適している就職・転職情報サイトを利用しましょう。
2.求人のアピール方法を工夫する
内定辞退率を下げるための対策として、求人のアピール方法を工夫するのも効果が期待できます。厚生労働省の調査によると、公共職業安定所における2023年1月の有効求人倍率は1.35倍で、売り手市場となっています。売り手市場のなかで優秀な人材を確保するためには、企業側がどのようにアピールするかが重要です。
※出典:「一般職業紹介状況(令和5年1月分)について」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31294.html)
応募者のニーズに合わせて、待遇や社風など自社の魅力をアピールする必要があります。数ある他社の広告に埋もれないようにするため、自社が求めているような人材にマッチした広告を制作して注目してもらえるようにしましょう。
仕組みやツールを活用して効果的なアピールを検討する余地があります。たとえば、優秀な人材に対して企業からスカウトメールを送れるプッシュ型ツールは、求職者と直接やり取りすることで応募数の増加を期待できます。
あさがくナビでは、スカウト機能により気になる学生に対して個別にアプローチすることが可能です。まず求職者に自社を知ってもらうことで、応募のきっかけを作り出せます。またスカウトメールに記載の自社サイトを見てもらうことにより、求人情報や企業情報を把握してもらいやすくなり、結果ミスマッチリスクの軽減も期待できるでしょう。
3.社内見学を活用する
社内見学を実施して、自社に対する理解を深めてもらうのも、内定辞退率を下げるために効果的な対策方法です。応募者には、オフィスの環境や職場の雰囲気、どのような社員が働いているのかなど、気になるポイントが多数あります。特に新卒者は、正社員としての経験がないため、不安を感じることが多いです。
社内見学で社内の雰囲気を実際に体験してもらうことで、応募者が持っているイメージとのギャップや不安を解消することが期待できます。
社内見学は、オンラインで実施することも可能です。コロナ禍の影響で、社内見学をオンラインで実施する企業も増えてきました。建物の外観や内観、オフィスの様子、実際に働いている方のインタビューなどを動画にして、オンラインで見てもらう方法も検討すると良いでしょう。
社内的に可能であれば、一定期間、応募者に実際に働いてもらう体験入社の実施も効果的です。体験入社は、社内見学よりも理解を深めてもらいたいときに有効な方法です。
4.面接官の対応マナーを適時見直す
会社全体で応募者に対するマナーを見直しましょう。内定辞退率を下げるためには、応募者への対応、態度が重要です。たとえば、面接官の口調が威圧的に感じられると、内定辞退の原因になってしまうケースがあります。面接官は、応募者に悪い印象を与えないように注意が必要です。
面接だけではなく、受付での応対や廊下ですれ違う際なども注意が必要です。応募者は面接のときだけではなく、会社を訪れてから面接が終わって帰るまで、社内でさまざまなものを見ています。経営層や人事、一般社員など社内での立場に関わらず、応募者が会社を訪れている際は、常に見られている意識を持ちましょう。
応募者が訪れた際にうまく対応すれば、良い印象を持ってもらえます。「笑顔で挨拶をしてくれた」「待ち時間に声をかけてくれた」など、内定受諾の決め手になるケースもあります。全社一丸となって、適切なマナー対応で内定辞退率を下げましょう。
5.自社が抱える課題を選考段階で伝える
企業と応募者の間で生じるイメージのズレが、内定辞退につながるケースもあります。イメージのミスマッチを防ぐためには、自社が抱える課題も選考段階で伝えるのが効果的です。
企業の立場から考えると、自社の課題を応募者に伝えるのは抵抗があるかもしれません。しかし、ポジティブな面だけではなく、敢えてネガティブな面も伝えることで、お互いの理解を深めてミスマッチのリスクを下げられます。内定辞退率を下げるためには、応募者に自社のネガティブな部分も選考段階で把握してもらうのが重要です。
6.入社するまで丁寧なフォローを心がける
採用担当者には、内定決定から入社するまでの間も丁寧なフォローが求められます。内定者は、内定決定後に何も連絡がないと不安になってしまう傾向があります。何も連絡がない期間が長引くと、応募者の不安が増して内定辞退につながりかねません。企業側から定期的に連絡をすることで、内定者の不安を解消しましょう。
内定者の懇親会や、社員との交流会を行うのも効果的です。懇親会は、内定者同士の親睦を深めることができるだけではなく、同期の存在が安心感を与えて、入社に前向きな気持を持ってもらうことも期待できます。
内定後面談の実施も検討するとよいでしょう。こちらの記事では、内定後面談を実施する目的や具体的な手順をくわしく説明しています。内定者に聞くべき質問例や、内定者からの想定質問、成功のポイントも紹介していますのでぜひご覧ください。
内定辞退に関してよくある疑問
内定辞退に関して、よくある疑問を紹介します。人事担当の方は、ぜひ採用活動の参考にしてください。
新卒と中途採用でどちらの内定辞退が多い?
新卒採用と中途採用を比較した場合、内定辞退が多いのは新卒採用です。新卒は一人で多数の企業に応募しているケースが多いため、内定辞退も多くなります。自社に対する応募者の志望度が低い場合は、内定を出しても辞退されてしまうからです。
内定承諾書が提出済みでも辞退される?
法的には、内定承諾書を提出してから二週間以内であれば内定辞退できます。民法627条1項では、「期間の定めのない雇用契約は、いつでも解約の申し入れができ、申し入れの日から二週間を経過すれば契約が終了する」と規定されており、内定辞退から二週間経過すれば契約解除されると解釈できるからです。
民法627条1項があるため、企業側は内定承諾書が提出されても、まだ安心はできません。内定承諾書が提出されたあとも、内定者が不安になって心変わりしないよう入社日を迎えるまで適宜フォローしましょう。
内定辞退の説得でNGな行為は?
内定辞退の申し入れがあった際に説得を試みることもあるかもしれませんが、長時間の説得は、「オワハラ」ととられる可能性があるため避けましょう。オワハラとは、「就活終われハラスメント」の略です。
内定を出した相手に他社の選考を辞退させることや、自社への入社を強要する行為を指します。いかなる場合も脅迫や強要をしてはいけません。
「オワハラ」をしてくる会社というイメージが広まると、求職者から敬遠されてしまうため、人材の確保が難しくなります。会社のイメージダウンを避けるためにも、長時間の説得や脅迫、強要ととられかねない対応はNGです。
内定辞退率を下げて必要な人材を確保しよう
近年、内定辞退率は増加傾向にあるため、企業の人事担当者は内定辞退率をいかに下げるかを考えなければなりません。内定辞退は人材を確保できないだけではなく、採用コストの増大にもつながるため、内定辞退率の改善は企業にとって重要な課題です。
内定辞退率を下げるためには、内定辞退につながる理由を知り、対策を実施する必要があります。本記事で紹介した6つの対策をぜひ参考にしてください。内定辞退率を下げるための対策を適切に実施して、採用コストを削減した上で、自社に必要な人材を確保しましょう。
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