人事の図書館magazine2022年11月号

企業・大学アンケート結果に見る 2023年卒採用の状況、
そして2024年卒採用の見通しは?

弊社は2022年9月7日に「オンライン就職講演会」を開催。多くの企業採用担当者ならびに大学就職指導担当者に視聴いただいた。今号では視聴者を対象に実施した採用活動状況および就職指導状況に関するアンケートの集計結果をもとに、2023年卒採用の現状や2024年卒採用の見通しについてレポートする。

[調査概要]
調査対象:全国の企業採用担当者、大学就職指導担当者
有効回答数:企業担当者211件、大学担当者191件
調査方法:「オンライン就職講演会」視聴者へのWebアンケート
調査期間:2022年9月7日~9月8日
※レポート内の各項目は小数点第一位を有効桁数と表記しているため、択一式の回答の合計が100.0%にならない場合があります。

※オンライン就職講演会…株式会社学情が毎年開催している、新卒採用における旬なテーマを取り上げた講演会です。今年度は、企業採用担当者向けには関西学院大学・中央大学・南山大学の就職指導担当者様をパネリストにお迎えし、『大学キャリアセンターが23卒学生の動きから読み解く、今時の“学生の本質”と“就活パターン”』をテーマにパネルディスカッションを実施。また、大学就職指導担当者向けには大日本印刷株式会社・東京海上日動火災保険株式会社・ロート製薬株式会社の人事担当者様をパネリストにお迎えし、『激変する採用活動、23卒のトレンドから24卒の動きを主要企業が大胆予測!』をテーマにパネルディスカッションを実施いたしました。

1.企業アンケート結果

■2023年卒採用の状況について

採用予定数に達し採用活動を終えた企業は29.5%。昨年同時期を10ポイント以上下回る。

2023年卒採用の状況について、9月時点で「採用予定数に達し、既に終了」した企業は昨年同時期を10.9ポイント下回る29.5%に留まった。「継続中」が59.6%、「一旦終了したが秋採用計画(実施)中」が10.9%と、多くの企業が採用活動の継続を余儀なくされている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で一時冷え込んでいた企業の採用意欲も概ね回復し、人手不足が深刻化。2023年卒採用では学生優位の売り手市場が急拡大した。それに伴い、内々定辞退者が続出するなど思い通りに採用活動を進められず、終了に至れない企業が目立つ。

内定式は「リアル(対面)」での実施が6割を超え、昨年のおよそ2倍に。

新卒の採用活動において1つの区切りとなるのが、例年10月1日に開催される内定式だ(今年は10月最初の平日である10月3日(月)の開催が多かった)。一昨年、昨年と、コロナ禍のためオンラインでの実施が広がりを見せたほか、開催そのものを見送る動きも見られたが、今年はどうだったのか。

内定式の実施形式について聞いたところ、「コロナ前と同規模で、リアル(対面)で実施」が30.6%、「規模を縮小して、リアル(対面)で実施」が25.9%、「リアル(対面)で実施し、一部の学生にはオンラインで配信」が6.7%と、合わせて63.2%が「リアル(対面)で実施する」と回答。昨年の「リアル(対面)実施」(34.5%)と比べると約2倍となり、リアル開催が大きく盛り返した。セミナーや面接がオンライン中心だったこともあり、社員と内定者、そして内定者同士がようやく直接顔を合わせられる場として内定式を位置づける企業も多かったようだ。また、行動制限の緩和も進み、マスク着用など基本的な感染対策は取りつつもコロナ前の日常生活を取り戻す動きが社会全体で広がっていることも、対面実施を後押ししたと言えるだろう。

以下、各社がそれぞれの実施形式を選んだ理由について、主なものを紹介する。
【それぞれの実施形式を選んだ主な理由】
(1)コロナ前と同規模で、リアル(対面)で実施
・オンラインで内定者同士が交流する場は設けてきたが、繋がりが希薄であるという課題があった。せめて内定式はリアルでコミュニケーションを取ることで絆を深めてもらいたかった
・内定者同士で顔を合わせることで安心感が生まれ、その後の辞退防止にもなると考えた
・働く社員の様子や社内の雰囲気、建物の様子などを実際に見ることで、入社に向けた気持ちを高めてもらえると考えたため
・選考時には会えなかった社員とも交流できる場を設けたかった

(2)規模を縮小して、リアル(対面)で実施
・内定者同士で直接コミュニケーションを図る機会は設けたいが、感染対策を考慮すると規模は縮小せざるを得ない
・例年実施していた食事会は見送るものの、内定者同士の繋がりを深めてもらうためリアルで実施

(3)リアル(対面)で実施し、一部の学生にはオンラインで配信
・一部、地方(海外)の内定者がいるため
・基本的には対面での実施を考えているが、学生の意向も聞き、希望者はオンラインで参加できるようハイブリッド型での実施を考えている

(4)オンラインで実施
・新型コロナウイルスの感染状況を踏まえて
・学生の安心・安全を優先することが会社の方針であるため
・遠方の内定者やそのご家族のことを配慮して

(5)実施予定はない
・元々実施していない(多数の企業が同様の回答)
なお、企業規模で比較すると、従業員数が少ない企業ほど、リアル(開催)での実施率が高い。企業規模が大きいほど拠点の数や内定者の人数も多く、それが内定式の実施形式にも影響していると言えるだろう。

また、リアル・オンラインの各実施形式で、「どのような工夫や対策を講じるか」も併せてヒアリングした。主なものについて列挙する。

■リアルで実施する際の工夫・対策
・アルコール消毒、マスク着用などの基本的な対策を講じた上で開催(多数の企業が同様の回答)
・会社負担で抗原検査を実施した上で参加してもらう
・参加者同士の密を避けるため、広い会場で実施
・飲食は行わない
・全員を一堂に集めるのではなく、拠点ごとに集まってもらい、オンラインで繋いで実施
・小グループに分けながらランチ会は実施
・社員も交え、自社の事業の一部を体験できるようなワークを行い、「この会社で良かった」と思ってもらえるような企画を実施したい
 
■オンラインで実施する際の工夫・対策
・内定者同士の懇談時間を設ける
・一方通行の式典にならないよう、社長講話だけでなく、社員との座談会も実施
・途中で社員によるメッセージ動画を挟むなど、メリハリをつけて実施
・食事やオンライン宅飲みセットを内定者の自宅に届け、オンライン懇親会を実施
・バーチャル空間で実施し、参加人数など規模感を実感できるようにする
・通信環境が不安定にならないよういつも以上に気を配る。バックアップ回線なども準備する
 

入社式・新入社員研修の実施形式は「リアル(対面)」が74.7%。

入社式・新入社員研修の実施形式に関しては、例年と同規模、あるいは規模を縮小して「リアル(対面)で実施」を予定している企業が74.7%で、昨年調査を6.7ポイント上回った。オンラインでの実施は同4.6ポイント減の3.1%に留まる。内定式同様リアルでの実施を予定する企業が多数を占めるが、内定式以上に、学生が新社会人、そして会社の一員になる記念すべき日を、やはり直接歓迎したいという企業が多いようだ。

■2024年卒採用の見通しについて

採用予定数は「増やす」が20.7%。「減らす」の3.6%を大きく上回る。

2024年卒の採用予定数は「増やす」が20.7%と、「減らす」の3.6%を17.1ポイント上回った。「前年並」が63.7%と大半を占めるが、2023年卒採用はコロナ禍で採用数を抑えていた企業が採用増に転じた年であり、それが先述の通り、9月時点で半数以上の企業が採用活動を継続する状況に繋がっている。さらにそれを超える採用人数を計画する企業が増えるとなると、いっそう売り手市場の拡大が進みそうだ。

採用予算を「増やす」企業が24.4%。「減らす」(8.8%)を15.6ポイント上回る。

採用予算(前年度比)については、「増やす(「101~120%」「121%以上」の合計)」が24.4%。「減らす(「80~99%」「51~79%」「50%以下」の合計)」(8.8%)を15.6ポイント上回った。採用活動のオンライン化によって、セミナー等の会場費や資料の印刷費、出張費などの経費が大幅に削減されたこともあり、弊社の過去2年の同調査では採用予算を減らす動きが見られたが、2024年卒採用ではそれが一転した。対面重視の採用活動への回帰や、オンラインであってもよりクオリティの高いコンテンツを制作するなど、企業により対応は様々であろうが、新卒採用が一段と難しくなる中でより多くの予算を掛けて臨もうとする企業が増加しそうだ。

インターンシップの実施形式は「リアル(対面)とオンライン両方を実施」が38.4%で最多。

インターンシップの実施形式について、「リアル(対面)とオンライン両方を実施」が昨年度調査と比べ5.2ポイント増の38.4%で最多に。学生の居住地やスケジュールなどを含め、希望に沿ったスタイルで参加できるよう、リアルとオンラインを併用する企業が増加している。また「リアル(対面)のみ」が同3.7ポイント増の12.8%である一方、「オンラインのみ」(19.0%)は同5.5ポイント減。弊社が学生に対し実施した調査でも、オンラインと比べるとリアル開催の方が満足度が高く、「企業の雰囲気を直に感じられた」「社員や他の参加学生と交流が持てた」といった点で評価を得ている。利便性を考慮するとオンラインに分があるが、コロナ禍も一定の落ち着きを見せる中、対面を選ぶ企業が増えているようだ。

選考開始時期は「早める予定」が41.5%と、早期化が一段と進む見込み。

2023年卒採用と比較した選考開始時期の予定について、最多は「変更予定はない」(43.0%)であるが、「早める予定」が41.5%と僅差で続く。年々早まる選考の開始時期が、一段と早まりそうだ。

(1)「早める予定」「変更予定はない」「遅くする予定」と回答した企業全体、(2)「早める予定」と回答した企業、の2つの企業群に分け、想定している選考開始時期を見ると、(1)企業全体の最多は「2023年2月頃」(21.8%)で、前後1か月を含めた2023年1~3月が選考開始のピークになりそうだ。一方、(2)「早める予定」の企業については、「2023年1月頃」が26.3%で最多。「2022年11~12月」も21.3%と2割を超える。選考の対象はインターンシップ参加者にはなるだろうが、2022年の暮れには早くも選考が本格化する。いずれにせよ、少なくない数の企業で、政府が要請する【採用広報】開始日の3月1日よりも早く【採用選考】が実施される見込みだ。

2.大学アンケート結果

■2023年卒学生の状況について

内々定状況は「非常に良い~少し良い」が45.1%。「少し悪い~悪い」(5.2%)を大きく上回る。

各大学に調査した、2023年卒学生の内々定状況(前年同時期比)は「非常に良い~少し良い」が45.1%。「少し悪い~悪い」(5.2%)を大きく上回り、総じて順調に内々定獲得に至っている様子がうかがえる。

■2024年卒学生の状況について

前期就職ガイダンスの実施形式は「全てオンラインで実施」(29.1%)が最多。
参加状況は想定よりも「悪かった」が「良かった」を20ポイント以上上回る。

2024年卒学生対象の前期就職ガイダンスの実施形式は「全てオンラインで実施」が29.1%で最多。「オンラインを中心に、一部対面で実施」(26.3%)がそれに次ぎ、オンラインでの実施が主流となっている。

参加状況は「想定通り」が40.3%で最多だが、「想定よりも悪かった」(33.5%)が「想定よりも良かった」(13.1%)を20.4ポイント上回り、学生集客に苦労した大学が多かったようだ。夏季インターンシップに対する学生の関心は年々高まっており、前期就職ガイダンスも夏季インターンシップに関する内容を主要テーマに実施されることが多く、前年度の同調査では想定よりも「良かった」が「悪かった」を上回っていた。それが逆転したことになるが、理由はいくつか考えられる。オンライン形式の就職ガイダンスではリアルタイムで配信した内容を、後日アーカイブ配信するケースも少なくない。そのため、ガイダンス当日ではなく、後から好きなタイミングで視聴できるアーカイブ配信を選ぶ学生が増えている、という話がよく聞かれる。特にアーカイブであれば倍速視聴や飛ばし見などを駆使して、自分の知りたい情報を取捨選択できるため、好まれている部分もあるようだ。また文部科学省の調査によると、2022年の前期授業を「全面対面」または「ほとんど対面」で実施する大学等は87.8%に達し、学生生活の対面回帰が本格化している(出所:文部科学省『令和4年度前期の大学等における授業の実施方針等に関する調査の結果について(令和4年6月3日)』)。大学のキャンパスに足を運ぶ機会の増加とともに、授業やアルバイト、友人と過ごす時間など、就職活動関連以外のことに目が向きやすくなり、就職ガイダンス参加の優先度が下がっていることも理由として挙げられそうだ。

■就職支援における課題について

就職支援の課題は、「キャリアセンター・就職課の発信する情報が学生にリーチしていない」が78.0%で最多。

各大学が抱える就職支援の課題は、「キャリアセンター・就職課の発信する情報が学生にリーチしていない(学生が確認していない)」が78.0%で最多に。コロナ禍も一定の落ち着きを見せたこともあってか、コロナ禍の影響により学生の支援がしづらいことよりも、そもそも学生に情報が届かない、あるいは学生がそうした情報を見ていなかったり興味を示さなかったりすることに課題を感じる大学が多数を占める。なお、10%弱を占める「その他」については、「就職への意識の低い学生のやる気をどう引き出すか」といった声が目立った。

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