「タイパ」とは「タイムパフォーマンス」の略で、かけた時間に対する満足度を表す言葉です。「コストパフォーマンス」の時間版といえます。
Z世代発祥の言葉で、この世代はとくに強くタイパを意識する傾向があります。
この記事では、タイパを意識した行動傾向の事例や、Z世代に響く採用活動例をご紹介します。
「タイパ(タイムパフォーマンス)」とは
「タイパ」とは「タイムパフォーマンス」の略で、時間対効果のことです。かかった時間に対する満足度をあらわします。
少ない時間で満足度の高い経験が得られたと感じられるとき、その行動は「タイパがよい」と表現できます。タイパは「効率」や「生産性」という言葉に言い換えることもできるでしょう。
とくに、1990年代半ばから2000年代に生まれたZ世代(現在の10代~20代)がタイパを意識する傾向が強いといわれています。たとえば、動画の倍速視聴や「ながら見」などはZ世代発祥の行動です。
「タイパ」は、今後の辞書に載るかもしれない新語として、「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2022』」大賞に選ばれたことがきっかけで注目を集めました。
タイパと似ている言葉
聞きなじみのある「コストパフォーマンス」に加えて、「○○パフォーマンス」という言葉が次々と生まれています。
「コスパ(コストパフォーマンス)」
「コスパ(コストパフォーマンス)」は費用対効果のことで、かかった費用に対してどれだけの効果が得られたかをあらわす言葉です。タイパは時間について、コスパは費用について考えるのがちがいです。
「コスパ」のほうがより広く浸透している言葉で、「タイパ」は「コスパ」の派生語とも考えられます。
「スぺパ(スペースパフォーマンス)」
「スぺパ(スペースパフォーマンス)」は空間対効果のことで、限られた空間をいかに効率的に活用できるかをあらわす言葉です。たとえば、ワンルームの狭い部屋でもソファベッドを使えば1台2役の役割を果たすので、家具を減らしながら生活の質を上げられます。
スぺパが注目を集める理由には、テレワークの普及や都心部の住宅面積の縮小化があります。
「カロパ(カロリーパフォーマンス)」
「カロパ(カロリーパフォーマンス)」は、摂取カロリーに対して、どれだけ栄養素もしくは満足感が得られたかをあらわします。1食あたりの必要な栄養素をすべて含んでいる「完全栄養食」がその例です。
完全栄養食は1食で必須栄養素をまかなえる点から、タイパの良さも持ち合わせています。
タイパが注目される背景
タイムパフォーマンスが注目された背景には、デジタルツールの発達があります。そんなデジタルツールと関わりが深いZ世代間での流行が「タイパ」の発祥といわれています。
デジタルツール・IT技術の進化
近年、急速なデジタルツール・IT技術の進化により、たくさんの情報を一度に処理することが一般的になりました。
たとえば何か調べものをする際、ユーザーは検索エンジンでキーワード検索をかけるだけで数多くのwebページを目にします。
次に各ページの説明文やタイトルを見て、自分が欲しい情報が載っているかどうか、取捨選択を行うでしょう。
求める情報が載っているページにたどり着いても、場合によっては、そのほかのページを見比べて情報の正確さを判断するかもしれません。
このように、ひとつひとつの情報にかけられる時間が短くなったことが、タイパが流行した理由のひとつといえるでしょう。
なぜならインターネットを中心に今後も情報は増え続けるばかりですが、人々が情報収集にかけられる時間はあまり変わらないのです。世間の流れでは、より少ない時間で効率的に情報を得られることに重きを置くようになりました。
また、スマートフォンの普及により、動画投稿サイトやSNSへのアクセスが手軽にできるようになり、移動時間や信号待ちの時間などの細切れの可処分時間にもコンテンツ消費が可能になりました。それに伴って、tiktokやYouTube Shorts、Instagramのリールなど、短い時間で消費できるコンテンツの人気が高まりました。
これらショート動画の人気には、「より効率的に情報収集をしたい」というユーザー側の需要があると考えられます。
「デジタルネイティブ」と呼ばれるZ世代間での流行
Z世代とは、1990年代後半~2012年に生まれた世代のことをいいます。
初代iPhoneが発売されたのが2007年ですから、Z世代が生まれ育った環境には既に発達したデジタルツールやIT技術が身近に存在していたといえるでしょう。
そのため、Z世代はたくさんの情報の中から信頼がおける情報、または、自分にとって有益な情報を選び取ることに慣れ親しんでいます。Z世代が「デジタルネイティブ」と呼ばれる所以はそこにあります。
数ある情報の中からひとつを選び取るためには、より効率の良い情報収集の方法を選ぶ必要があり、結果としてZ世代にはタイパを意識する傾向が表れたのではないかと考えられます。
Z世代のタイムパフォーマンスを意識した行動傾向の事例
Z世代のタイムパフォーマンスを意識した行動傾向の事例を紹介します。
倍速視聴や「ながら見」、ショート動画や切り抜き動画
2022年に出版され話題となった書籍に「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形 (光文社新書)」がありました。この本のタイトルからもわかるように、Z世代は映画などの動画コンテンツを1.25倍速~2倍速で視聴することがあります。
同じ情報量でもより短い時間で得ようとするところに、タイパ重視の意識を読み取れます。空いた時間でもう一本べつの映画が見られると考えると、その分満足度が高まるのでしょう。
それだけでなく、動画を見ながらスマートフォンで調べ物をする、家事などの他の作業と並行して映像を見る「ながら見」など、Z世代はコンテンツの並行消費を好む傾向があるようです。
10~20秒に内容を詰め込んだショート動画や、長時間配信の「切り抜き」文化の台頭などからも、タイパ重視の傾向が見て取れます。忙しいなか、少ない時間でもできる限り楽しみたいというユーザー側の気持ちがあるのではないでしょうか。
冷食宅配や完全栄養食などの「タイパ飯」
昨今、冷食宅配や完全栄養食が人気を集めています。
冷食宅配とは、冷凍弁当が定期的に届く宅配サービスのことです。管理栄養士によって糖質・塩分・たんぱく質が管理されており、電子レンジで解凍するだけで手軽に一食分をまかなうことができます。
完全栄養食とは、一食で、一日で摂取すべき栄養素の1/3以上を含むようなパンやドリンクのことです。
ファストフードやインスタントは、一見タイパのいい食事にみえますが、栄養素が考えられていないので「時間対効果」の「効果」が良いとはいえないでしょう。
その点、調理の手間を省きつつも、時間と栄養バランスを両立させるという点で、冷食宅配や完全栄養食などが「タイパ飯」と呼ばれています。
リモートでの活動
Z世代はコロナ渦でのオンライン授業に慣れており、就職活動などにおいてもweb面接を一般的と捉えています。
リモートでの活動は移動時間を削減できます。逆に、デジタルで知れることを知るためにわざわざ足を運ばなければならないケースは、Z世代にとってはタイパが悪いと感じられてしまうかもしれません。
また、オンライン授業についても、Z世代はオンデマンド形式であれば移動時間などに視聴することや倍速視聴をすることで、タイパの良い学習を図っているようです。
「失敗して時間を無駄にしたくない」キャリア観
就職活動においても、Z世代は「自身が希望するキャリアを実現できるか」を重視して企業選びを行う傾向が強いです。これは、Z世代は自身のキャリア形成において「失敗したくない」「時間を無駄にしたくない」と考える傾向が強いためと考えられます。
また、会社が向いている方向と自身の目指すゴールが合致するか、事前に知りたいというニーズもあります。実際に業種・仕事内容や、社員との相性を肌で感じて、自分と合っているかどうか、吟味したい気持ちが強い傾向にあるようです。
Z世代を採用するにはどんな採用活動をすべき?
そんなZ世代に訴求するには、タイムパフォーマンスの良い情報提供方法が必要です。
web媒体・動画コンテンツの活用
web上に最新の情報を常に開示しておく体制を整えましょう。見る側も、企業のことが気になったときにすぐにアクセスできる正しい情報があれば、無駄な情報の取捨選択をせずに済んで時間の削減になります。
また、動画コンテンツを活用すれば、わざわざ足を運ばなくてもオフィスの雰囲気やどんな社員が働いているのかを知ることができます。
さらに、タイムパフォーマンスの良い動画コンテンツを制作するためには、倍速視聴を視野に入れた内容にする、移動時間中に無音でも見られるようにテロップを入れるなど、ターゲットの傾向を押さえることが効果的です。
動画制作のノウハウがない場合には外注を利用することもあわせて検討できるとよいでしょう。
ダイレクトリクルーティング
膨大な量の求人情報をすべて見るのは求職者にとってタイパが悪く、かつ、企業にとっても自社を見つけてもらいづらいといえます。
そのため企業側からアプローチをすることで、自社のことを知ってもらえる確立が上がります。「あなたのどこに魅力を感じたか」を個別に伝えることでミスマッチを減らすことも可能です。
また、Z世代は個性を大事にするため、親和性が高い方法です。
SNSの活用
リアルタイムに更新できるため、常に最新情報を提供できます。
見る側も「このアカウントを見れば最新の情報を得られる」と一度認識すれば、その後はリアルタイムで情報を追いかけることができ、改めて検索する手間を省けます。
高頻度では更新できないHPの補助として活用するのがおすすめです。
タイパのよいアプローチ方法でZ世代に効果的に訴求しましょう
タイムパフォーマンスは「コストパフォーマンス」の時間版で、かけた時間に対する満足度を表します。注目されている背景には、IT技術の進化と「デジタルネイティブ」であるZ世代の存在がありました。今後Z世代を対象にした採用では、よりタイパがよい情報提供方法が求められるでしょう。
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