HR関連法令・制度のご紹介

障害者雇用促進法

人事の図書館 編集担当者

障害者の雇用数は17年連続過去最高を記録。

障害者雇用促進法は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、職業リハビリテーションの措置を通じて、障害者の職業の安定を図るための法律です。1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」から、名称の変更や幾度かの改正を経て現在に至っています。この法律には、「障害に関係なく、希望や能力に応じて、誰もが職業を通じた社会参加のできる『共生社会』実現の理念の下、すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務がある。」と規定されています。

2021年1月15日に発表された「令和2年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業に雇用されている障害者の数は578,292人と、17年連続で過去最高を更新しています。この背景には、事業主に定められている法定雇用率を満たすだけの障害者を採用する義務が課せられていることや、障害者を多く雇用している事業主に対する給付金制度の存在がありますが、企業にとっては今後ますます人口が減少していく状況において、障害者を含めた多様な人材が活躍できる土壌を整えることが求められることは確実です。本稿では、障害者雇用促進法の詳細や、報奨金・助成金や納付金の制度等について解説いたします。

3月以降、「法定雇用率」が引き上げられます。

■法定雇用率
先述の通り、事業主には法定雇用率を満たすだけの障害者を採用する義務が課せられていますが、その割合が3月1日以降引き上げられます。

(令和3年2月28日まで)
○民間企業: 2.2%
○国、地方公共団体:2.5%
○都道府県等の教育委員会:2.4%

(令和3年3月1日以降)
○民間企業: 2.3%
○国、地方公共団体:2.6%
○都道府県等の教育委員会:2.5%

法定雇用率に応じて雇用しなければならない障害者を計算する際、小数点以下の数字は切り捨てとなります。例えば、常時雇用する従業員が120名の民間企業の場合は、以下の通り計算されます。
120名×2.3%=2.76名 → 2名

法定雇用率が2.3%と定められている民間企業の場合は、従業員43.5人以上を雇用する場合必ず障害者を雇用しなければなりません。

■雇用義務の対象となる障害者
同法に「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」と定められています。具体的には、以下の方が該当となります。

・身体障害者
・知的障害者
・精神障害者(※精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者に限る)

精神障害者においては、統合失調症や躁うつ病等においても、精神障害者保健福祉手帳を所持していない方や上記に該当しない障害(発達障害者等)をお持ちの方は、雇用義務の対象外となります。

■パート等、短時間労働者や重度障害者の扱い
労働者数を計算する際に、パート等短時間労働者(1週間の所定労働時間が、当該事業主の事業所に雇用する通常の労働者の1週間の所定労働時間よりも短く、20時間から30時間未満である労働者)については、1人あたり0.5人としてカウントします。

また、以下のいずれかに当てはまる障害者については、重度障害者としてみなされ、1人雇用するごとに2人とみなして計算します。

・身体障害者
○等級が1級、2級の障害者
○等級が3級で重複の障害がある人

・知的障害者
○療育手帳が「A」の人
○上記に相当する判定書がある人
○障害者職業センターにより「重度知的障害者」と判定されている人

報奨金・助成金や納付金制度をご紹介します。

障害者を多く雇用している事業主の経済的負担を軽減し、事業主間の負担の公平を図りつつ、障害者雇用の水準を高めることを目的として 「障害者雇用納付金制度」が設けられています。法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合は、さらに超えて雇用する障害者数に応じて1人につき月額27,000円の調整金が支給されます。また、従業員100名以下の会社では、障害者を4%または6人のいずれか多い人数を超えて雇用する場合に、超過1人当たり月額2.1万円の報奨金を受けることができます。

他にも、これまで障害者雇用の経験がない中小企業が初めて雇用することで法定雇用率を達成する場合、120万円を受給することができる「特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース)」、障害者を一定期間雇用することで受給することができる「トライアル雇用助成金」等といった助成金制度もあります。

一方で、法定雇用率未達成の企業のうち、従業員数100名を超える事業主には、法定雇用率に満たない障害者数1人につき月額50,000円の納付金を納付しなければなりません。

また、従業員43.5人以上を雇用する民間企業は、毎年6月1日現在の障害者雇用に関する状況を、「障害者雇用状況報告書」にてハローワークに届出する義務があります。法定雇用率を達成しておらず、改善努力も見られないと判断された場合には、

・障害者の雇い入れ計画の提出や、ハローワークからの指導
・それでも改善されない場合は、企業名の公表

といった行政指導を受けることになります。企業名の公表は、いうまでもなく企業にとってマイナスイメージになりますので、避けたいところです。

もちろんこういった罰則・行政指導を避けたいという動機も働くことと思いますが、障害者雇用が企業に対してポジティブな効果を生み出すことは間違いありません。様々なバックグラインドをお持ちの方が集まることで、これまでにない斬新なアイデアをもたらす可能性がありますし、これまでの業務内容の可視化や見直しのきっかけとなり、より生産性を高めるきっかけにもなります。今後の採用・人材活用戦略に、障害者雇用を検討してみてはいかがでしょうか。

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