HR関連法令・制度のご紹介

裁量労働制

人事の図書館 編集担当者

「裁量労働制」と他の制度の違いとは。

新型コロナウイルスによるテレワークの急速な広がりは、労働時間を会社が一律に定める労務管理の見直しを推進しました。しかし、オフィスに出社しないことによる見えざる残業や従業員のモチベーションをどう管理するか等、多くの課題が残っています。そんななか、実労働時間に関わらず、あらかじめ労使間で定めた「1日あたり働いたものとする時間」を労働したものとみなす「裁量労働制」に注目が集まりました。しかし、裁量労働制には一定の制約があり、テレワークを導入しているからといって安易に導入できるものではありません。

似たような制度に「変形労働時間制」「フレックスタイム制」や「高度プロフェッショナル制度」がありますが、これらとは明確な違いがあります。まず、「変形労働時間制」とは、労働時間を月単位、年単位で調整することで、繁忙期等には所定労働時間を増やし、閑散期には減らすということができる制度です。例えば、月末が比較的忙しく月初めが比較的業務が落ち着いている場合や、冬に繁忙期を迎えるといった場合に、1日8時間/週40時間の法定労働時間を上回る労働を認める制度となります。「フレックスタイム制」は、この「変形労働時間制」の1つではありますが、1日あたりの労働時間に日々の始業時間・終業時間を自分で決めて労働することができる制度です。1日あたりの労働時間に規定はなく、3か月以内の一定期間を清算期間と定め、その期間を平均して40時間/週を超えない範囲で労働します。

「裁量労働制」と「高度プロフェッショナル制度」は、労働者の裁量によって労働時間が決まる点が共有していますが、「高度プロフェッショナル制度」は高年収(年収1,075万円以上が目安)で職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者(証券アナリスト、コンサルタント、研究開発職等)が対象となり、労働基準法の定める法定労働時間や休日等の規制が一切適用されません。対する「裁量労働制」は、労働基準法の適用の範囲内で制度が運用されるため、休日や深夜労働があれば割増賃金を支払う必要があります。本稿では、「裁量労働制」の中身について解説するとともに、導入する際の注意点をお伝えします。

「裁量労働制」には「専門業務型」と「企画業務型」がある。

改めてになりますが、「裁量労働制」とはあらかじめ労使間で定めた「1日あたり働いたものとする時間」を労働したものとみなす制度です。その名の通り、業務の進め方や時間配分等については原則労働者の裁量に委ねるものとなっており、これらについて使用者が労働者に対して具体的な指示出しをしないことが前提となります。また、裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

「専門業務型裁量労働制」はその名の通り、業務の性質上その遂行の手段や方法、時間配分等をある程度労働者に委ねる必要がある者のみに適用される制度です。対象業務は【新商品・新技術の研究開発】【デザイン業務】【コピーライター業務】【公認会計士・弁護士等の業務】等19業務に限られています。

「企画業務型裁量労働制」とは、事業運営の企画、立案、調査及び分析を行う労働者に限定して適用される制度です。専門業務型のように具体的な業務が列挙されているわけではありませんが、以下の対象業務が存在する事業場のみが適用となります。

1.本社・本店
2.事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場
3.本社・本店の指示を受けず、独自に事業運営に大きな影響を及ぼす事業計画・営業計画の決定を行っている支社・支店等

つまり、他の事業場の具体的な指示のもと、個別営業活動を行っている事業場は、導入することができません。

これら2つの制度に共通していえることは、労働時間が必ずしも成果に直結するとは限らない、クリエイティブな能力が求められる業務であることです。

どういった企業が「裁量労働制」を導入すべきか。

テレワークにより労働時間が管理しづらくなっている状況で、「裁量労働制」の導入は企業にとってメリットばかりなのでしょうか。まず前提として、「専門業務型」「企画業務型」いずれの導入においても労使間での合意が必要となっており、導入におけるハードルは非常に高いといえます。容易に導入できないだけでなく、労働基準法の適用範囲内での制度ですので、22時以降から翌5時までの間に働いた場合や法定休日に働いた場合には、深夜・休日出勤での割増賃金が適用されることとなっています。

また、「裁量労働制」をうまく機能させるためには、企業が求める「成果」を明確に定義することが重要です。クリエイティブな仕事を任せると、当事者の極めたい、質を高めたいという気持ちは強くなりますが、成果の定義が定められないまま業務が進むと就業する時間が長くなってしまう傾向にあるためです。労使合意のもとであっても、労働基準法が適用されることに留意が必要です。つまり、「裁量労働制」を導入すべき企業は従業員に求める「成果」が明確なクリエイティブな業務で、これらはテレワークであろうがオフィスに出社義務があろうが関係ありません。

もちろん、導入におけるメリットもあります。企業側のメリットとしては、勤怠等の労務管理にかかるコストを削減できること、人件費の想定をしやすいことが挙げられます。また、労働者にとっても労働時間をコントロールできるため、自分のペースで仕事に向き合うことができます。少ない時間で成果を挙げることができればみなし労働時間と同等の給与をもらうことができ、モチベーションのアップにも繋がることでしょう。

テレワークが定着することで、これまで以上に「成果」を求められる働き方へとシフトし始めています。その意味では社内に、求める「成果」を明確に定義することができるクリエイティブな業務に従事する社員がいるのであれば、「裁量労働制」の導入を検討してもいいかもしれません。

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