HR用語の基礎知識

コンピテンシー

人事の図書館 編集長 大西直樹
「コンピテンシー」とは、優秀な成果を発揮しているハイパフォーマーの行動特性のことです。アメリカのハーバード大学で心理学者たちが行った研究によると、優れた成果を発揮している人には特定の行動特性があり、その特性を把握し、他の従業員の人材育成や人事評価、採用活動に活用していこうという企業の試みがあります。そこでは、備わっている能力ではなく、能力を発揮した結果や、表れている事柄に注目しています。例えば、営業で高い成果を上げている社員のターゲティング手法、メール作成方法、事務作業のやり方等を分析し、その行動特性が把握できれば、営業戦略に基づいて他の社員が個々の業績を上げるためにとる行動が明確になります。ハイパフォーマーの行動特性の型は何かを把握し、その型を他の社員に当てはめていく手法の元になるものともいえるでしょう。

企業の問題を解決する糸口として、力を発揮。

コンピテンシーが注目されるのには、大きく分けて2つの理由があります。1つ目は、企業が成果主義へと移行したことです。成果主義の導入により、個人の業績や成果を判断する基準に加えて、能力を客観的に評価する基準が必要になってきました。そこで、能力を評価する基準としてコンピテンシーを使った人事評価制度へと見直す企業が増えていきました。

2つ目は、企業としての生産性を向上させるためです。競争が激化する社会の中で生き残るには、組織や企業全体の生産性を高めていく必要があり、社員一人ひとりの能力向上が欠かせません。そのためには、コンピテンシーを分かりやすくまとめ、見本となるような指針を作り、社員へと浸透させていくことが有効となります。このように、コンピテンシーは企業の問題を解決する糸口として力を発揮します。なお、コンピテンシーと似た経営用語に「コアコンピタンス」があります。コアコンピタンスは「自社の強み」を示す言葉です。また、他社や顧客から見た企業全体の能力を示し、客観的な評価の基準として用いられます。

3つの「コンピテンシーモデル」を設計することが必要。

コンピテンシーは概念なので、人材育成や人事評価、採用活動に活用するには、具体的な「コンピテンシーモデル」を設計することが必要です。コンピテンシーモデルには以下のように3つのパターンがあります。

1:理想型モデル:企業が求める人物像に基づいて設計
まず「理想型モデル」についてですが、企業がホームページの「求める人材像」で掲げているような、理想の人物像を基に設計するものを指します。実在の人物がいるわけではありませんが、その企業にとって適した人物像を作り上げて設定します。このときに注意しなければいけないのが、あまりにも高い目標を掲げすぎず、現実的に達成可能な理想型モデルを設定することです。

2:実在型モデル:実在するハイパフォーマーに基づいて設計
次に「実在型モデル型」ですが、これは企業に実際にいるハイパフォーマーに基づいて設計されます。社内でも一目置かれているような存在なので、「あの人がこんなにも成果を出しているのだから、もっと工夫して仕事ができるのではないか」というように、成果を上げる姿がイメージしやすいため、社員の納得感を得やすいでしょう。

3:ハイブリッド型モデル:理想型と実在型の融合
最後に、「ハイブリッド型モデル」ですが、これは理想型モデルと実在型モデルの融合になります。設計方法としては、実在型モデルでコンピテンシーを一度設計して、それにプラスアルファとして企業の理想像を足す形になります。その際は、あまりにも経営ビジョンとかけ離れたものにならないようにするために、経営者によるチェックを行います。

人はつい、目に見えやすいものに注目しがちですが、高い業績を上げる行動には個人の価値観や経験といった見えづらいものも大きく関係しています。このため、コンピテンシーモデルを設計する際は、目に見えないものに注目する必要があります。そのためには、ハイパフォーマーである社員に「なぜ、そのように行動したのか」という質問を投げかけ、その行動をとった背景に目を向け、コンピテンシーを明確にし、コンピテンシーモデルを設計していく必要があります。そのあとに、「理想的なコンピテンシーモデルを設計したものの、自社が目指すところはかけ離れていた」ということがないように、経営ビジョンに照らし合わせてのチェックを必ず行いましょう。

受験者の「本質を見抜くことができる」採用面接。

では、コンピテンシーは主にどのようなシーンで活用できるのでしょうか。ここからは、採用面接での具体的な活用方法について解説していきます。

【採用面接】
コンピテンシーを意識した面接のメリットは、受験者の「本質を見抜くことができる」部分にあります。例えば受験者が採用面接で「学生時代に仲間と起業して、マスコミの取材を受けました」とプレゼンしたとします。面接官が受験者の行動や成果に注目してしまうと、その受験者がどの程度の貢献していたのか、なかなか見抜くことができません。

しかしコンピテンシー面接を意識している面接官は、受験者の「思考」に注目した質問をするので、その起業が「受験者のオリジナルのアイデアだったのか?」といった事が分かります。また、コンピテンシー面接では個々の面接官の判断の偏りも軽減できます。

【面接での対話時】
コンピテンシー面接での具体例をいくつか紹介します。

「それを行うと決めた理由はどこにありましたか?」(意思決定の背景を確認する)
「なぜそうしようと思ったのですか?」(動機を聞く)
「なぜそれをしなければならなかったのですか?」(目的を尋ねる)
「その経験をビジネスシーンでどのように活かしますか」(将来の行動を確かめる)

こうした質問項目は面接マニュアルに記しておき、すべての面接官が同じ質問をできるようにすることで偏った判断を軽減することができます。

【コンピテンシーテスト】
コンピテンシー面接の導入効果を高めるには、一緒にコンピテンシーテストを行うことも有効です。これは選択式のペーパーテストで、採用面接前に受験者全員に受けさせるのが一般的です。更に、コンピテンシーテストは採用の際だけでなく、自社の社員たちに行っても効果があります。社内でテストを継続すると、人材の基礎能力を定量的に把握できるようになります。コンピテンシーテストはネットで購入できるものも多く、自社向けにカスタマイズすることも可能になってきています。

コンピテンシーが活用され成果を上げている企業は「コンピテンシーを活用できる環境」があるということです。それは「正当な評価基準」が整備され「風通しの良い職場風土」であり、そして「みんなで成果を上げること」が当たり前という環境です。一人ひとりの能力を最大限に活かすのが「人材マネジメント」であり経営者・リーダーの使命なのであればぜひ「コンピテンシー」を活かしてください。

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