HR用語の基礎知識

リテンション

人事の図書館 編集長 大西直樹
リテンション(retention)とは、もともとは「維持、保持」といった意味の言葉で、そこから転じて、人事領域で使用されるときは「人材の維持(確保)」、マーケティング領域で使用されるときは「既存顧客維持」といった意味になります。

マーケティングにおけるリテンションとは、新規顧客の獲得に対し、既存顧客との関係を維持していくことで、CRMの上でも重要な考え方となっており、リテンションマーケティング、リテンション分析等というように使われています。

ここでは、人事領域で使用される「リテンション」について、詳しくご説明をしたいと思います。

優秀な社員を企業内に留めるための様々な施策。

人事でいうリテンションとは、企業にとって必要な人材や優秀な社員を企業内に留めるための様々な施策のことで、リテンション戦略、リテンションマネジメントというように用いられる言葉です。経営幹部候補や将来を有望視されている若手社員等、企業に必要な人材の確保や、社外流出を防ぐための人事戦略・経営戦略としても重視されています。

リテンション施策は、「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」を従業員に提供し、取り組まれるのが一般的です。金銭的報酬は給与・報奨金の保証などの短期的インセンティブ、ストックオプション制度(自社株式の購入権)等の長期的インセンティブが該当します。一方、非金銭的報酬は労働環境の整備・充実やワークライフバランスの実現、スキル・キャリア向上の支援といった、金銭以外の報酬が該当します。

日本経済の大きな懸念点として、雇用の安定化による転職市場の活況と人材の流動化、近年の団塊世代の大量退職、少子高齢化など、社会的要因による人材不足が挙げられます。2018年に生まれた子供が22歳(大学新卒)の年齢になるときには2040年ですので、2040年までの労働人口は国の調査等でも明らかになっていますので、少なくともまだ数十年は人材不足に悩まされるといっても過言ではないでしょう。

人材の新規獲得が難しくなる中で、既存人材の流出防止も必然的に重要性が高まっています。人材が流出することで、企業に残る社員の負担が増えることはもちろん、人材の補填や育成コストの増加、基幹業務の停滞、それらの結果、企業の利益の損失などにつながることが懸念されています。また、既存顧客や社員の情報、企業の機密情報といった重要な情報が流出するリスクも高まります。こういった状況を防ぐためにも、不用意な人材の流出を防止する=「リテンション」を活用することは、人事的観点はもちろん、経営的観点からも必要不可欠なことなのです。

最も重要なのは『非金銭的報酬』

「リテンション」において最も重要なのは『非金銭的報酬』と言われています。転職が当たり前で人材の移動も活発化している現在においては、すべての人材が「報酬第一」で転職するわけではありません。人によっては、仕事のやりがいやスキルの獲得を重視することもあるでしょうし、充実した福利厚生を求めるケース、ワークライフバランスが実現されている就業環境を好む人等、それぞれが働く価値を見つけることができる企業を求めています。

特に最近の若年層において、非金銭的報酬への重要性は高まっています。20代のための求人サイト「Re就活」の登録会員を対象とした調査レポートによると、新しい職場に求めることとして「良好な人間関係」「丁寧な教育・研修」「休日・休暇が増える」等が多く挙げられています。
出典元:Re就活登録会員対象「就職・転職活動に関するアンケート」調査レポート 2019年11月版

リテンション施策活用のメリット。

①離職率低下に伴う採用コストの引き下げ
1つ目は、離職率低下に伴った採用コストの引き下げです。社員の離職が続くと、企業は様々なコストを負担することになります。リテンション施策を導入すれば、離職率を低下できるだけでなく、人材に関するコストの引き下げも可能となります。また離職率の低下により、「働きやすい職場」であることを客観的な数値としてアピールできます。働き方改革が叫ばれ、良好な労働環境が重視される時代では、有効なアピールポイントとなるでしょう。

②社内のスキル管理、ノウハウ蓄積率の向上
2つ目は、社内のスキル管理やノウハウ蓄積率の向上です。離職により頻繁に社員が交代すれば、培ってきたノウハウやネットワークが流出しやすくなります。しかし離職がなければ、ノウハウやネットワークの構築・維持が安定するのです。

③安定的な長期的事業戦略の遂行
3つ目は、安定的な長期的事業戦略の遂行です。企業が採用した人材を長期的に観察し、適材適所に配置することで、企業としての長期的な人材戦略、事業戦略を可能にします。また、経営層・管理職・一般社員の間の信頼関係も構築でき、結果的に経営の安定にもつながるのです。

■リテンション活用の注意点について
「リテンション」を活用する場合は、仕事に対するやりがいや専門的なスキルな向上が見込める組織かどうか、自己成長を感じられる職場風土があるかどうか、また十分な福利厚生、ワークライフバランスのとれた職場環境があるか等、企業の状況を客観的かつ多方面から俯瞰する必要があることを忘れてはなりません。

多くのことが求められるため、長期的な戦略を立てる必要があります。まずは自社においてネックとなっている離職理由を解決するリテンション施策の優先順位を高め、1つずつ確実に行っていくことが大切です。

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