企業の動向

新卒採用において、10月と言えば内定式が一斉に執り行われる時期であるが、2021年卒採用では例年とは異なる動きが見られた。9月上旬に弊社が実施した「内定式の実施形式」に関する調査では、「オンラインで実施」が34.1%で最多に。リアルで実施するにしても「例年と同規模で実施」は9.9%に留まり、「規模を縮小して実施」が20.7%と、内定者が一堂に会するのを避ける傾向が見られた。また「実施予定はない」は9.0%であった。いずれにしても新型コロナウイルス感染症対策が第一に考えられ、企業により対応が分かれることとなった。企業の声も様々だ。ある企業では「オンラインであれば内定式の掛け持ちも可能だ。当社もオンラインで実施したが、もし内定を複数保持している学生がいたら他社の内定式にも参加していたかもしれない。今後の内定者フォローが一層重要となる」と気を引き締めていた。他にも「オンラインで企業側から一方的に話すだけの味気ないコンテンツになってしまった。内定者同士の一体感も生み出せず、今後が不安」といった声もあり、手応えを感じられずにいる人事担当者も少なくない。また、一次から最終まで選考活動が全てオンラインだった企業では自社理解度を引き上げきれず、内定式の案内直後に内定辞退の連絡が相次ぎ、慌てて採用計画を見直すケースも見られた。そうした事情もあり、10月開催予定の弊社主催合同企業セミナー「就職博」では、急遽出展を検討する企業からの問い合わせが増加している。(石谷 博基)

学生の動向および学生を取り巻く就職環境について

各大学では9月中旬頃から後期授業が開始されている。多くがオンライン授業であった前期とは異なり、十分な感染対策を施した上で対面授業を再開させる動きが見られる。もっとも、大学の規模や学部、学年等で違いはあるものの、対面での授業はまだ一部であり、以前と同じ状況に戻るのには相当の時間を要しそうだ。
2021年卒学生の内定状況は夏以降改善されてきてはいるが、前年に比べると低調で、弊社が9月初旬に実施した内々定率調査では前年同月比11.5ポイント減の76.2%。前年7月調査時に近い水準であり、就職活動を継続している学生はまだ多い。
一方、2022年卒学生を対象に8月に実施した調査では、71.4%がインターンシップに参加したと回答。そのうち約8割はオンラインのインターンシップに参加している。オンライン形式での実施が広がったことで、場所や時間に対する制約が緩和され、遠方の企業のインターンシップにも容易に参加できる環境となった。ただ、前年同時期調査でのインターンシップ参加率は82.1%で、前年を下回っている。例年以上に意欲的な学生がいる一方で、活動中の学生の絶対数は前年と比べ減少。活動している学生とそうでない学生の差が広がっている印象だ。学生生活の中心がオンライン授業になったことで他学生の状況が掴めず、「何から始めればいいのか」と不安を抱える学生も多い。10月以降、各大学で後期の就職ガイダンスが広く展開されている。キャリアセンター主催の就活支援行事の増加に後押しされ、就活準備を本格的に開始する学生も増えてくると予想される。(井口 和久)