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学情レポート【COMPASS】2019.01

大学における特徴的な就職支援の取り組み

 厚生労働省と文部科学省の共同調査によると、2018年10月時点で、2019年3月卒業予定者の大学生の就職内定率は77.0%となり、1997年3月卒の調査開始以降、10月1日時点の内定率では過去最高となった(厚生労働省・文部科学省「平成30年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(平成30年10月1日現在)」より)。学生としては内定を獲得しやすい環境にある。ただし、どの学生もスムーズに内定獲得に至ったかというとそうではない。独力で容易に内定を得た学生も一部にはいるが、多くの学生は何かしらのサポートがあったからこそ、こうした結果に繋がっている。その最前線で学生サポートを担っているのが大学のキャリアセンターだ。弊社の調査のよると、キャリアセンターへの「2019年卒学生の就職相談件数(前年度比)」は、「非常に増えた~少し増えた」(29.5%)が「減った~少し減った」(16.7%)を12.8ポイント上回っている(右グラフ参照)。

学生の内定率上昇は、個別相談によるテクニカルなサポート、あるいは精神面のフォローなどが奏功した結果と言える。もっとも、キャリアセンターの対学生の役割は個別相談に限らない。各大学では、「いかに学生の成長に繋がるか」「いかに学生のやる気を高めるか」「いかに低学年から自身のキャリアを考えさせるか」などを念頭に、試行錯誤しながら様々な取り組みが実施されている。内定率あるいは就職率の向上は、そうした取り組みの賜物だ。特に、それぞれの大学がもつ学部・学科、大学の所在地、その大学に属する学生の雰囲気といった要素なども加味した上で、特徴的な取り組みを実施する例もある。

そこで今号では、「特徴的な就職支援の取り組み」を実施している大学として、京都橘大学、久留米大学、札幌市立大学、千葉商科大学、山口大学の事例を紹介する。

京都橘大学
「自治体との就職協定・連携強化」および「学生主体の就職支援企画」

Q.1 この取り組みの詳細をお教えください。

■自治体との就職協定・連携強化について
23の府県庁・市と就職支援促進協定を締結または連携し、U・Iターン就職を希望する学生へ最新の求人情報が提供できるように取り組んでいます。「父母の会地区別懇談会」にも自治体担当者にお越しいただき、各自治体の就職支援に関する取り組みをご紹介いただいています。また、毎年1月には各自治体から担当者にお越しいただき、出身学生を対象にUターンの仕方や自治体の補助制度等を含め、地元企業の採用実績情報も提供いただいています。

学生主体の就職支援企画について
業界別講演会等の企画を学生たちで立案・実施しています。学生自らが企業に電話をしてアポイントを獲得し、今年度は夏季休暇中に43社を訪問。大学紹介を行いながら、各企画に参加いただけるよう誘致活動に励みます。また、学内での広報活動も学生たちが行います。

Q.2 この取り組みを実施した背景や目的をお教えください。

■自治体との就職協定・連携強化について
本学には関西圏以外の学生が多く在籍しています。保護者からは「就職は地元で考えてほしい」との希望が多い反面、「地元に帰っても働く企業がないのでは」「地元の採用情報をどうやって得ればいいのか分からない」等の声も多いため、自治体との連携を強化してU・Iターン情報の提供に努めています。

■学生主体の就職支援企画について
多くの事業所様から「京都橘大学生は、真面目で大人しい。もう少し積極的であれば」という評価をいただくため、その印象を変えたいと思い取り組んでいます。就職活動に有利であるといった目先の損得勘定を抜きに、社会人基礎力および社会人になった際の「気付き」になればという狙いもあります。

Q.3 取り組みの成果や、この取り組みに参加した学生に見られた成長等がございましたらお教えください。

■自治体との就職協定・連携強化について
就職協定・連携府県における2018年3月卒者のUターン就職率は42.6%と、前年比+1.4ポイントでした。

■学生主体による就職支援企画について
周りと連携しながら取り組む協調性や、目標達成を目指し諦めずに臨む責任感、自らの意見を発する主体性や積極性を養えていると感じます。また活動において社会人と接する機会が多くあるため、ビジネスマナーの習得にもつながっています。

久留米大学
 「就職合宿」

Q.1 この取り組みの詳細をお教えください。

就職活動を3月に控えた文系学部の3年生を対象に「就職合宿」を開催しています。参加学生を4班に分け、1泊2日×4班で計5日間のスケジュールとなります。学生たちは初日の午前中から翌日夕方まで、マナーや面接、グループディスカッション等のトレーニングを受けます。合宿中は就職担当の教員や職員が全面的にバックアップするほか、4年生の学生アドバイザーも参加し、就職活動についてアドバイスや支援を行います。各企業の人事担当者も1泊して、学生と夕食等を共にし、社会人としての苦労話等、普段は聞けない話や本音を聞くことができる良い機会となっています。

Q.2 この取り組みを実施した背景や目的をお教えください。

就職氷河期と言われた時期に、本学では特に女子学生の就職状況が厳しく、特化した就職支援を模索するなかで、1999年度より面接指導を中心とした女子学生対象の「就職合宿」を開催しました。数年後には参加者も200名を超え好評だったため、2003年度より男女共通の支援行事として拡大し、現在は500名規模で開催しています。就職活動事前準備の総仕上げと位置づけ、お薦めの支援行事となっています。

Q.3 取り組みの成果や、この取り組みに参加した学生に見られた成長等がございましたらお教えください。

合宿中はこれまでの学生生活を一変させるような緊張感があり、本番さながらの面接指導等を経験した学生は、大きな成長を遂げた状態で本番に臨むことができます。参加学生と不参加学生では就職決定率に大きな差が生じており、参加学生のアンケート結果からも、就職活動に対する意識や行動に好影響を与えていることがうかがえます。

札幌市立大学
 「学生による学内企業セミナーの参加企業調整および運営」

Q.1 この取り組みの詳細をお教えください。

学内で実施する単独の企業セミナーについて、学生が参加企業との調整から当日の運営までを行っています。具体的には、
①学生が話を聞きたい企業を選出する。
②運営担当の学生を決め、当該学生が同学年・同コースのメンバーの出席希望を確認し、候補日をいくつか検討する。
③キャリア支援室で企業の担当者・連絡先を確認し、担当学生が学内セミナー招致に向けた連絡や日程調整を行う。その他、当日のスケジュールや使用備品などについても事前に確認する。
④日程が確定したら担当学生が再度学年全体に周知をし、参加者の増加に努める。
⑤当日はお迎えからセミナー開始の挨拶、終了後のお礼、お見送りまで行う。
という流れで実施しています。

Q.2 この取り組みを実施した背景や目的をお教えください。

学生と企業ご担当者様との直接的な関係を築くとともに、学生のビジネスマナー向上に直結する取り組みとして開催しています。また、学生数が少ない大学のため、学内企業セミナー実施時に学生の参加を確実に見込めるようにすることも目的としています。

Q.3 取り組みの成果や、この取り組みに参加した学生に見られた成長等がございましたらお教えください。

企業とのやり取りを通じてビジネスマナーを実践的に学ぶことができており、非常に貴重な経験になっているようです。また、ありがたいことに運営担当学生がセミナー参加企業から内定をいただくことがあります。セミナー開催までのやりとりの中で、面接では見えてこない「普段の人柄」なども見ていただけているのではと感じます。

千葉商科大学「スカウト型合同会社説明会」

Q.1 この取り組みの詳細をお教えください。

学内合同会社説明会において、参加企業が事前に学生情報をチェックする「スカウト型合同会社説明会」を実施しています。これは、
①合同会社説明会開催前に学生が自分の履歴書をキャリア支援センターに提出する。
②合同会社説明会参加企業がその履歴書(氏名・連絡先は削除したもの)を事前にチェックし、興味を持った学生を1社20名までリストアップする。
③学生はリストアップされた学籍番号を学内ポータル上と説明会当日の会場ロビーのボードでチェックでき、それを見ることで当日のブース訪問に役立ててもらう。
というものです。

Q.2 この取り組みを実施した背景や目的をお教えください。

この取り組みの目的は2点です。1点目は、学内合同会社説明会への学生参加数が減少傾向にあったため、その集客策として。もう1点は、学生の参加意欲を高めることで、学生と企業の効率的なマッチングを推進し、結果として学生の就活に対するモチベーションアップに繋げることです。

Q.3 取り組みの成果や、この取り組みに参加した学生に見られた成長等がございましたらお教えください。

この取り組みの成果は主に以下の3点です。

①学生集客率が上がったこと
②参加企業にも好評だったこと
③オファーをもらった学生の就活へのモチベーションが上がったこと(なかなか内定が得られなかった学生が、オファーをきっかけに複数社から内定を得た、など)

このうち、例えば「①学生集客率が上がったこと」については、2017年度は5月、7月、9月、10月に実施しましたが、いずれも学生集客率において前年同時期を上回りました。特に5月は初回ということもあり、学部4年の未決定者のうち、50.6%が参加しました。これは前年比+13.6ポイントに当たり、集客に大きな効果があったと考えています。

山口大学「キャリア学習」

Q.1 この取り組みの詳細をお教えください。

キャリア学習とは、自らキャリアを学ぶということ。山口大学では、学生たち一人ひとりが自分で考え選択する力を高める学習機会の創出に取り組んでいます。3年次必修科目の「キャリア教育」で基本を学び、様々な正課外の学習機会につなげます。学ぶ方法は、大きく二つ。「人」から学ぶと「本」から学ぶ、です。授業で作成するレポートのひとつ「キャリアインタビュー」では、身近な社会人に仕事の経験や困難、転機などをインタビューします。秋から冬にかけては700社ほどの企業・官公庁の方に来ていただく学習機会として学内業界・企業研究会を実施。学生たちの生活圏のなかで、彼らが就職するであろう会社の方々と出会うことはあまりありません。そこで、第一線で働く人たちとの出会いを演出しています。また、就職支援室には、約2,800冊の書籍を備え、本との出会いをつくっています。著名な経営者の自伝や、ビジネス小説などを通じて、様々な働き方を学びます。学生たちが積極的に本を手にとるように、年間数回のキャリア学習キャンペーンも実施し、本が大切な学習ツールであるとの認識の浸透に努めています。

Q.2 この取り組みを実施した背景や目的をお教えください。

山口大学では2011年4月に「キャリア教育の基本方針」を定め、全学的キャリア教育の推進を宣言しました。キャリア学習はこの方針に基づいた具体的な取り組みの一つです。学生たちの志向や能力は一様ではありません。歩むキャリアも人それぞれです。だから、自分に必要なことは、自ら学ぶ。大学の役割はこの基盤をつくることだと認識しています。

Q.3 取り組みの成果や、この取り組みに参加した学生に見られた成長等がございましたらお教えください。

前述のキャリアインタビューでは親に話を聞く学生が多いのですが、一人の社会人の想いに触れることで、身に染みるものがあるようです。過去の学生へのアンケートでも、キャリアインタビューが自らのキャリア形成に役立ったと答えた学生が多かったです。また、就職支援室の本を100冊読んだ学生もいます。普段会えない方々との本を通じた出会いは、視野を大きくひろげる効果があったと語ってくれました。少し前の記事ですが、2013年6月17日の日本経済新聞に掲載された就業力ランキングで、「就業観」の分野で山口大学は全国トップになりました。在学生への調査によるものです。学生からもキャリア学習を評価してもらえているのだと思います。

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