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学情レポート【COMPASS】2018.11

企業・大学アンケート結果に見る
『2019~20年卒採用の状況と展望、そして2021年卒採用は?』

2018年8~9月に東京・名古屋・大阪・福岡の4都市で開催された弊社主催「就職講演会・名刺交換会」には、多くの企業採用担当者ならびに大学就職指導担当者が来場した。各地区の来場者を対象に、採用活動状況や就職指導状況に関するアンケートを実施。今号ではその調査結果をもとに、2019年卒採用の現状や2020年卒採用の展望についてレポートする。さらに、就活ルール撤廃で話題となっている2021年卒採用についてもレポートする。

※レポート内の各項目は小数点第一位を有効桁数と表記しているため、択一式の回答の合計が100.0%にならない場合があります。またインターンシップ実施の有無別のグラフについては、「Q.2019年卒学生を主対象とするインターンシップの実施の有無は?」に対する無回答の数値を除いて算出しています。そのため、「インターンシップ未実施企業の割合<全体の割合<インターンシップ実施企業の割合」(あるいはその逆)にならない場合があります。

調査概要

●調査対象:全国の企業採用担当者、
                  大学就職指導担当者
●有効回答数:企業担当者1,533件
       大学担当者328件
●調査方法:「就職講演会・名刺交換会」来場者
      へのアンケート
配布・回収
●調査期間:東 京/2018年9月4日~9月7日
      名古屋/2018年9月10日~9月13日
      大 阪/2018年8月28日~8月31日
      福 岡/2018年9月7日~9月11日

1.企業アンケート結果

■2019年卒採用の状況について

採用活動のプレ期に各社が注力しているインターンシップ。実施企業は年々増加しており、さらに経団連の「採用選考に関する指針」において「5日間以上」と明記されていた日数要件が削除されたこともあり、今回の調査では実施企業が前年同時期比9.3ポイント増の61.8%となった。インターンシップはその後の本採用に向けた自社理解度向上や母集団形成を期待して実施されることも多いため、以降についてはインターンシップ実施企業と未実施企業でアンケート結果を比較し、インターンシップ実施が採用活動にどのような影響を及ぼしたのかを見てみる。

まず採用予定数に占める「内々定を出した人数」の割合であるが、採用予定数に対して「101%以上」の内々定を出した企業は、インターンシップ実施企業では62.6%に達しているのに対し、インターンシップ未実施企業は35.3%と、30ポイント近く差が開いている。採用予定数に占める「内々定承諾者数」の割合についても概ね同様の傾向が見られ、インターンシップを通じての学生との早期接触が採用活動に寄与していることがうかがえる。なお、全体で見ると、採用予定数に対して「101%以上」内々定を出した企業は53.7%であるのに対し、内々定承諾者数が「101%以上」の企業はわずか7.0%、承諾者数を「81%以上」まで広げても28.4%に留まる。内々定辞退を見越して多めに内々定を出すものの、想定を超える辞退が発生したり、結論を保留にする学生がいたりと、一筋縄ではいかない採用状況であると言える。

Q. 2019年卒学生を主対象とするインターンシップの
     実施の有無は?

現時点(8月下旬~9月上旬)の活動状況は?

■参考:前年度調査結果

Q.2018年卒学生を主対象とするインターンシップ
      実施の有無は?

02.png

Q. 採用予定数に占める「内々定を出した人数」の割合
    は?

内々定を出した人数の割合

【インターンシップ実施別】
Q. 採用予定数に占める「内々定を出した人数」の割合

    は?


内々定承諾者数の割合

 
Q. 採用予定数に占める「内々定承諾者数」の割合は?

Q. 2017年卒学生を主対象とするインターンシップの実施の有無は?

【インターンシップ実施別】
Q. 採用予定数に占める「内々定承諾者数」の割合
    は?


Q. インターンシップ実施における課題は?(複数回答)

 

6月の選考解禁から3ヵ月ほど経った時点での今回の調査では、各社の活動状況は、「既に終了」は3割弱の29.3%に留まり、64.2%が「継続中」である。インターンシップの実施別で見ると、「既に終了」はインターンシップ実施企業が32.4%と、未実施企業(20.3%)を12.1ポイント上回っており、ここからも本採用に対してインターンシップ実施が奏功したことが読み取れる。

2018年卒採用と比較した活動の進捗については、「苦戦+やや苦戦」(54.9%)が「順調+やや順調」(24.2%)を30.7ポイント上回っており、前年度以上に苦戦を強いられる企業が多い。インターンシップ実施別で見ると、「順調+やや順調」はインターンシップ実施企業(26.1%)が未実施企業(20.6%)を5.5ポイント上回る一方で、「苦戦+やや苦戦」は未実施企業(59.3%)が実施企業(51.8%)を7.5ポイント上回っている。インターンシップ実施の有無によらず順調よりも苦戦と回答した企業が多いものの、インターンシップ実施がその後の採用活動を後押ししていることがわかる。それぞれの進捗状況に至った理由も聞いたところ、順調という企業からは「インターンシップ実施が効果的だった」「早期の活動に力を割いたことがその後に繋がった」といった声が目立つ。一方で苦戦した企業からは「母集団形成がうまくいかなかった」という声が多く挙げられた。超売り手市場とも言われる中、採用広報スタートから内々定出しまでが駆け足で進められ、学生のエントリー数も大きく減少。母集団形成に苦戦することは必至とも言える環境下で、インターンシップが多少なりともそれを補う役割を果たすこととなった。

Q. 現時点(8月下旬~9月上旬)の活動状況は?

Q. 2018年卒の採用予定数の見通し(前年度比)は?

Q. 現時点(8月下旬~9月上旬)の活動状況は?

Q.  2018年卒の採用予算(前年度比)は?

Q. 採用活動の進捗(前年度比)
     は?

Q. 採用活動の進捗(前年度比)は?

 

採用活動を優位に進める上で欠かせないインターンシップだが、実施には課題もある。どのような課題があるか聞いたところ、インターンシップ実施の有無を問わず、1位に挙げられたのが「マンパワー不足」だ。学生募集から応募者管理、選考、当日の運営、実施後のフォローまで、相応の労力が必要となる。まして本採用と実施時期が並行する場合、少人数の人事担当者だけで対応するのは至難の技だろう。特に未実施企業の3分の2は「マンパワー不足」を課題としており、インターンシップに人を割けないことが大きな障壁となっている。インターンシップ実施企業では、続いて「学生が集まらない」(43.1%)が僅差で2位となった。前年同時期調査の35.8%から7.3ポイント増加しており、インターンシップの日数要件削除等も相まって実施企業が増加した結果、学生募集に苦労するケースも出てきたと言える。

Q. インターンシップ実施における課題は?
   (複数回答可)

Q. 2017年卒学生の就職相談件数(前年度比)は?

■2020年卒採用の展望について

2020年卒採用に関するアンケート結果を見ると、各社の採用意欲には一層の高まりが見られる。採用予定数の見通し(前年度比)については、「並」が64.8%と過半数を占めるものの、「増やす」(21.4%)が「減らす」(3.1%)を18.3ポイント上回り、増加基調にある。採用予算(前年度比)についても、「増やす(「101~119%」「120%以上」の合計)」(30.4%)が「減らす(「80~99%」「51~79%」「50%以下」の合計)」(7.2%)を23.2ポイント上回る。採用予定数、採用予算の両側面から次年度の新卒採用に向けた各社の積極的な姿勢がうかがえる。

インターンシップの実施意欲も旺盛だ。2020年卒学生を主対象とするインターンシップの実施(予定)の有無について、「実施している・実施予定あり」が74.1%と、4社中3社に達している。前述の2019年卒学生を主対象とするインターンシップ実施企業=61.8%を12.3ポイント上回り、実施企業の増加が見込まれる。実施(予定)時期については「2018年12月~2019年1月」が64.6%で最多となり、「2019年2月」(55.7%)、「2018年7~9月」(54.9%)と続く。前年度調査でも見られた傾向であるが、夏期よりも冬期に実施する企業が多く、その後の採用を意識した時期設定が行われている。

Q. 2020年卒の採用予定数の見通し(前年度比)は? 


■企業回答

Q. 2020年卒の採用予算(前年度比)は?


■大学回答

Q. 2020年卒学生を主対象とする
   インターンシップの実施(予定)の有無は?


Q. 2020年卒学生を主対象とするインターンシップの
       実施(予定)時期は?(複数回答可)


2. 大学アンケート結果

■2019年卒および2020年卒学生の状況について

企業の採用意欲の高まりを受け、2019年卒学生の就職活動環境は売り手市場にいっそうの拍車が掛かった。各大学へ調査した内々定状況(前年度比)は「非常に良い~少し良い」が64.3%と、「悪い~少し悪い」(2.5%)を大幅に上回った。今年度は例年にも増して内々定を獲得しやすい環境であったと言える。一方で、就職相談件数についても「非常に増えた~少し増えた」(29.5%)が「減った~少し減った」(16.7%)を12.8ポイント上回っている。相談内容としては、前年度同様、「内々定辞退の仕方」「複数の内々定先の絞り込み方」「内々定先から就活終了を求められた際の対応」など、内々定獲得後のものが目立った。大学キャリアセンターからは「自分で決められない学生が増えた」という声も多く聞かれ、容易に内々定を得られてしまう状況が、かえって学生を悩ませることに繋がっている。

学生たちが就職活動スタート前にインターンシップに参加することは既に一般化しているが、2020年卒学生の参加意欲は一層高まっている。各大学で前期に実施された「インターンシップに関する就職ガイダンス」の参加学生数(前年度比)は、「増えた~少し増えた」が53.3%。半数以上の大学で参加者が増加している。「インターンシップ以外の就職ガイダンス」については、「減った~少し減った」(23.1%)が「増えた~少し増えた」(21.8%)を上回っており、インターンシップへの関心は高まるものの、それ以外のテーマに対する必要性をなかなか感じられないという状況も生じている。

Q. 2019年卒学生の内々定状況(前年度比)は?


Q. 2019年卒学生の就職相談件数(前年度比)は?


Q. 2020年卒学生向けに前期に実施した
      「インターンシップに
関する就職
       ガイダンス」の参加学生数(前年度比)は?


Q. 2020年卒学生向けに前期に実施した
     「インターンシップ以外の就職
      ガイダンス」の参加学生数(前年度比)は?


 

3.2021年卒採用に関する企業・大学の声

東京で「就職講演会・名刺交換会」が開催された9月4日の前日、経団連の中西会長は記者会見で「経団連が採用の日程に関して采配すること自体に極めて違和感がある」と発言。経団連がこれまで行ってきた採用ルールの規定について、2021年卒以降は取り止める意向を伝えた。東京の「就職講演会・名刺交換会」会場は奇しくも経団連会館であり、当日行われた企業と大学によるパネルディスカッションでも、当初予定していなかった「2021年卒就活に関する採用ルール指針撤廃」について話題が及んだ。そこで、採用ルール撤廃に関して、パネリストや来場者アンケートから挙げられた声を一部紹介したい。

企業採用担当者および 大学就職指導担当者の声

●現行のルール(3月広報開始、6月選考開始)では、学生と企業がじっくりと接する期間が短く、ミスマッチが生じるのは必至。もう少し長いスパンで学生と企業が接する時間があっても良いと思う。(企業)

●経団連の指針廃止について、さらなる採用一極化(大手企業集中)が進むのではと、危機感を持った。(企業)

●「(パネルディスカッションで提言された)長期休みの時期に就職活動に専念できるようにする」という意見には賛成。3月開始だとロスが多い。ただし、大企業やBtoC企業に有利になりそうなのが懸念点。(企業)

●今のスケジュールでもそうでなくても、「学生を学業に専念させたい」という大学側の意向と、「優秀な学生を早期に獲得したい」という企業側の意向のせめぎ合いが生じるので、いずれにしても大学と企業での話し合いが必要。(企業)

●現行ルールだと海外留学した学生が帰国後の就活となり苦労するが、ルールがなくなれば留学前に内定を得ることもでき、落ち着いて留学できるという利点もある。(企業)

●ルールが撤廃されたとしても、暫くは横並びの状態が続くのではないだろうか。(企業)

●経団連の指針が廃止された場合、企業の方々から「学年問わず採用を行いたい」との意見があったが、その場合、大卒の資格は不要で、大学入学資格さえあればいいことになる。大学の教育の機会は尊重して欲しい。(大学)

●現在の状況で急にルールを撤廃すると、デメリットの方が多いように思う。完全撤廃をするならば、大学だけでなく高校教育の見直し(高校でのキャリア教育の推進など)含めて検討する必要がある。(大学)

●ルールがあっても守られない、あるいは抜け駆けが横行するのであればルールなど無いほうが良い。「(パネルディスカッションで)長期休暇中に採用活動を本格実施すれば」との話があったが、大学により休暇期間が異なるので困難な部分もある。(大学)

●個人的にはルールは無くて良いと思う。ただし、企業には修学機会の確保は求めたい。現在の大学教育ではアクティブラーニングなど実践的な取り組みも増えており、修学によって人間的な成長も見込まれる。それは企業側にもメリットがあることではないだろうか。(大学)

採用指針の廃止についてその後の経過であるが、経団連の中西会長は10月9日、「2021年度以降に入社する学生を対象とする採用選考に関する指針を策定しない」ことを正式に発表した。10月15日には、政府による就活ルールを検討する会議が開かれた。各種報道機関によると、文部科学省や厚生労働省、経済産業省などの関係省庁、大学関係者、経団連らが参加したこの会議では、「当面は何らかのルールが必要」であり、特に大学から「ルール変更は混乱をきたす」という意見が挙がったことなどを受け、「2021年卒については、3月説明会解禁、6月面接解禁」という現行ルールを維持することで大筋一致したとされる。そして10月29日の会議にて、政府は「現行ルールを維持する」と結論付けた。

ただこのルールがどこまで守られるかは不明だ。また前述したように、大学においてもルール撤廃に賛同する声もある。

就職活動を終えた学生の感想としてよく聞くのは、「様々な企業から話を聞く中で『社会がどのような仕組みで動いているのか』を多少なりとも知ることができた」というものだ。大学での学びの延長上に社会があり、「社会の仕組み」が分かると「大学で学んでいることにどのような意味があるのか」、さらには「大学の講義の面白さ」にも気付くきっかけになるだろう。それは就職活動の一つの効用であり、またそれは時期や学年を問わない。一方で、一定のルールがあることで就職活動をどう進めるかといった予測が立てやすく、仮に周りに促されてであったとしても、就職活動に出遅れてしまう学生を減らすことができる。大事なことは、就職活動の中心である学生のためになることは何かという視点を見失わないことであろう。

今後「新卒一括採用」だけが若手人材採用のスタンダードではなくなっていくという流れは加速すると見られる。経団連が投じた一石は就職活動や採用活動に留まらず、日本の高等教育とキャリアのあり様を問い直し、改めて構築していく1つの機会となりそうだ。

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