• お問い合わせ

学情レポート【COMPASS】2017.07

学情レポート【COMPASS】 2017.07

平成28年度 社会人基礎力育成グランプリ 受賞校インタビュー

今回で10回目を迎える「社会人基礎力育成グランプリ」。その決勝大会が2月20日に東京で開催された。「社会人基礎力育成グランプリ」は、ゼミ・研究・授業等における社会人基礎力の「育成・成長の事例」と「その成果」を指導担当教員+学生によるチームが発表するもので、社会人基礎力の礎となる3つの能力(「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」)がどれだけ成長したか、大学で学ぶ一般教養や専門知識をどれだけ深めることができたかという点で審査が行われる。今回は全70チームの中から地区予選を勝ち抜いた8チームが決勝大会に進んだ。地元企業とともに地域活性化を目指した取り組み、学生の視点での新商品開発に挑んだ取り組み、海外に出て現地の学生とともに行った取り組みなど、大学教育の枠を超えて様々なことにチャレンジした学生たちによる熱を帯びたプレゼンテーションが行われた。

今号ではその中から大賞(経済産業大臣賞)を受賞した拓殖大学、準大賞を受賞した東北公益文科大学および福岡大学、審査員特別賞を受賞した大阪工業大学の取り組みと学生の成長を、インタビューにより紹介する。

開催概要

開催日:2017年2月20日(月)
会 場:拓殖大学文京キャンパス
主 催:社会人基礎力協議会
共 催:経済産業省


決勝大会 結果

社会人基礎力大賞
(経済産業大臣賞)

  • 拓殖大学
    (関東地区代表)

準大賞

  • 東北公益文科大学
    (北海道・東北地区代表)
  • 福岡大学
    (九州・沖縄地区代表)

審査員特別賞

  • 大阪工業大学
    (近畿地区代表)

〈決勝大会出場大学一覧〉

【北海道・東北地区代表】
 東北公益文科大学 観光まちづくりコース
  「学生が多様な地域団体と協働して取り組む
  『酒田おもてなし隊』の観光を切り口とした地域活性化」

【関東地区代表】
 ①拓殖大学 商学部経営学科
  「瀬戸内海に浮かぶ、広島県呉市の三角島活性化を目的とした
     地方創生活動」

   ②横浜市立大学 国際総合科学部国際総合科学科
   経営科学系経営学コース
   「海外で挑む起業体験プログラム
      ~ぶつかり合う価値観の先に見えた可能性~」

【中部地区代表】
 皇學館大学 現代日本社会学部
  「大学生がケーブルテレビとYouTubeで地域の魅力を発信する」

【近畿地区代表】
 ①大阪工業大学 工学部機械工学科
  「アイディア対決NHK学生ロボットコンテストへの挑戦!
     ~新しいチームマネージメントでリベンジ~」

   ②同志社大学 商学部商学科
  「ソーシャルマーケティングで社会を変える!
     ギネス世界記録挑戦で臓器提供意思表示率向上!!」

【中国・四国地区代表】
 松山大学 経営学部経営学科
 「松山大学×のうみん株式会社
  ~一人一躍!販促活動と新商品開発までのストーリー~」

【九州・沖縄地区代表】
 福岡大学 経済学部ベンチャー起業論
 「すべて天然素材を使用した今までにない健康志向チョコレートの
     新商品開発」

 


<社会人基礎力の3つの能力(12の能力要素)>

前に踏み出す力(アクション)

~一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力~

主体性
 

物事に進んで取り組む力

働きかけ力
 

他人に働きかけ巻き込む力

実行力

目的を設定し確実に行動する力

考え抜く力(シンキング)

~疑問を持ち、考え抜く力~

課題発見力

現状を分析し目的や課題を明らかにする力

計画力

課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力

創造力

新しい価値を生み出す力

チームで働く力(チームワーク)

~多様な人々とともに、目標に向けて協力する力~

発信力
 

自分の意見をわかりやすく伝える力

傾聴力

相手の意見を丁寧に聴く力

柔軟性
 

意見の違いや立場の違いを理解する力

情況把握力

自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力

規律性

社会のルールや人との約束を守る力

ストレスコン 
トロール力

ストレスの発生源に対応する力

大賞(経済産業大臣賞)

拓殖大学 商学部経営学科

「瀬戸内海に浮かぶ、広島県呉市の三角島活性化を目的とした
   地方創生活動

指導教員:商学部長 / 教授 潜道 文子 氏   

取り組み内容について

当ゼミの学生たちが取り組んだのは、三角島(みかどしま)という瀬戸内海に浮かぶ人口25人、島民の平均年齢75歳という島の活性化です。この活動に取り組むことになった経緯ですが、私のゼミではCSR(企業の社会的責任)や社会的企業の研究を行っており、私自身が何年にもわたり、全国の社会起業家の方々の活動に関する調査を行っています。その過程で出会ったのが、ナオライ株式会社の社長、三宅紘一郎さんでした。親族が酒蔵を経営している三宅さんは、若者の日本酒離れなどを背景に減少の一途をたどっている酒蔵の現状に変化を与えるべく、日本各地にある日本酒の酒蔵と共に、日本酒を世界で販売して業界を盛り上げていこうとナオライの事業をスタートさせました。三宅さんは広島県呉市出身。ナオライの第一号案件は、日本一のレモンの産地である広島県の瀬戸内のレモンを使って、新しい日本酒であるスパークリングレモン酒を造ろうというもの。本社を三角島に置き、そこで育てた無農薬レモンを使った日本酒造りを始めました。その話を聞き、面白そうと思って私も三角島を訪問しました。そこは宿泊施設も店もない島。でも、とてもリラックスできる不思議な魅力がありました。ナオライは事業をスタートしたばかり。三宅さんも忙しく、島民の方との関係構築がなかなか進められない状況でした。そこでゼミ生をインターン生として受け入れてもらい、三宅さんに代わって学生が島民の方との交流窓口を担いました。その中で、インターンとして参加した学生の一人が当ゼミで学んでいるCSV(Creating Social Value/共通価値の創造)という考えを用いて、ナオライへ事業の提案ができないかという思いに至りました。すなわち、島の利益とナオライの利益が両立するCSV事業の提案です。三角島の課題は島民の方の高齢化と収入の少なさです。そこで、雇用を創出し、かつ島民の方とナオライのコミュニケーションの創出を図ることができれば両者にメリットがある。そうした思いから学生たちのプロジェクトがスタートしました。

瀬戸内海にはサイクリングを楽しむために多くの外国人旅行客が訪れる有数のスポットである「しまなみ海道」や「とびしま海道」などがあり、三角島のすぐ近くがそのルートになっていることから、三角島にも世界中のサイクリストに来てもらおうという意見が出ました。ただ三角島はまさに何もない島。そこにどうやって観光客を呼んだらいいのか。学生たちが考えついたのは、サイクリスト向けの2階建ての宿泊施設です。1階には食事やコミュニケーションがとれるスペースを、2階には宿泊スペースを設ける。さらにナオライのお酒の販売も行う。それによって島民、ナオライ、観光客の間に交流が生まれ、さらに施設運営や地元でとれる農作物や海産物などの提供による島民の方の雇用にも繋がります。ところが、島民の方にこのプランへの意見をうかがったところ、「景観が変わってしまうのは好ましくない」といったネガティブな声が多く寄せられました。それだけでなく、島民の方の多くが「今の状態を変えなくて良い」と思っていることが分かりました。学生たちがいくら良かれと思ってプランを練っても、島民の方が「この島をこうしたい」、「そこで働いてみよう」という思いに至らなければ意味がありません。さらに、宿泊施設の建設資金調達のための助成金申請も通過せず、このプランは頓挫してしまいました。それほど予算がかからず、景観も変えず、島の産物が活用できて、かつ雇用も生み出せるもの…。学生たちにはそんな無理難題が突き付けられました。

三角島の雰囲気を存分に味わえる、新たなアイディアを創出

瀬戸内サイクリングの関連組織や島民の方への度重なるヒアリング、さらに学生同士でも議論に議論を重ね、出てきた答えは「キャンプ」でした。キャンプであれば固定の施設がいらず、初期投資がそこまでかからない。またテントであればたたんでしまえば景観も変えずに済む。しかしサイクリストの宿泊施設として、「キャンプだと疲れが取れないのではないか」、また「キャンプ初心者にはハードルが高いのではないか」という意見も出ました。そこから派生して、近年注目が高まっている「グランピング(グラマラスとキャンピングを掛け合わせた造語。自然の中で宿泊ができ、かつホテルのようなサービスが受けられる)」はどうだろうという意見も出ました。ただ、「日本ではにぎやかなパーティのイメージの強いグランピングは三角島の雰囲気を壊す恐れがあるのでは」という懸念も学生の中から出ました。

意見を交わしあう中で学生たちは一つの答えにたどり着きました。それが「SANGHA(サンガ)」です。「SANGHA(僧伽)」とは、仏教の言葉で「僧侶の集団」を意味します。キャンプの静けさ、グランピングの快適さという2つの要素を取り入れ、そこに参加することで心が洗われ、安らぎが得られるというものです。ナオライのスパークリングレモン酒で乾杯し、島でとれた魚や野菜を堪能、火を囲みながらゆったりと語りあい、島の雰囲気を存分に味わってもらう。さらに宿泊客にレモンの木を植えて帰ってもらうことで、三角島に対し、「いつでも帰れる場所」という愛着を持ってもらう、そのようなアイディアです。ナオライもこのプランを受け入れてくださり、現在は実現に向けナオライと共に様々な準備を進めているところです。

多国籍チームだからこそ培われた、言語や価値観の壁を乗り越える「議論力」

このプロジェクトに挑んだのは、日本人1人、中国人2人、インドネシア人1人で構成された多国籍チームです。言葉による意思疎通の難しさに加え、出身国による文化や価値観の違いにより何度も衝突がありました。学生たちもこの取り組みの一番の壁は「多国籍チームだったこと」と述べています。異なる価値観を持つ学生同士ですから、意見のぶつかり合いは日常茶飯事。それでもプロジェクトを前進させるため、その壁を乗り越える必要がありました。学生たちがしたことは、まず相手の意見の理解に努めること。次に相手の意見と自分の意見を編集すること。そしてそれを相手に伝えることです。その繰り返しにより相互理解が生まれ、合わせて意見をぶつけ合っていただけの時には存在しなかった新たなアイディアを生み出す契機にもなりました。例えば、三角島でキャンプを行ったらどうかというアイディアが上がった際に、「火を見ながら話すことは人を幸せな気分にさせ、心を開かせる効果があり、またどこか神聖な雰囲気がある」という各国共通の感覚があることが分かりました。世界中の旅行者に来てもらうにあたり、自国以外でも通用するアイディアを見出せたことは学生たちの自信となり、それがやがて「SANGHA」という発想に繋がっていきました。

▲三角島の新年会にて島民の方々と意見交換

グローバル人材の育成というと英語力に焦点が行きがちです。英語をはじめとする外国語を話せることは確かに大事ですが、グローバルスタンダードが求める最も重要な能力は、前述のような新たなアイディアの創出を可能にする「議論する力」だと思います。今回の取り組みを通じて、学生たちはその「議論力」を身に付けられたのではないかと思っています。

準大賞

東北公益文科大学 観光まちづくりコース


「学生が多様な地域団体と協働して取り組む
 『酒田おもてなし隊』の観光を切り口とした地域活性化

指導教員:公益学部   観光まちづくりコース 助教兼特任講師 中原 浩子 氏

取り組み内容について

「酒田おもてなし隊」は2014年6~9月にJR東日本により開催された、山形県を舞台にした大型観光キャンペーンである「山形デスティネーションキャンペーン」(以下DC)を盛り上げることを目的として、学生有志とともに設立した団体です。「酒田おもてなし隊」の立ち上げは、2014年4月にJR酒田駅長より受けた「6月から始まるDCに向けて、酒田駅と大学とで何か一緒に取り組めないでしょうか」という一本の電話がきっかけでした。6月にはDCが始まるということで時間がなく、学生を集めると同時にプロジェクトを次々に立ち上げていくという、企画より先に実行があったような時期でした。2014年の主な取り組みは、毎週末の土日に行った酒田駅での観光客の送迎や構内ブースでの地域観光案内です。また、庄内一円の住民400人に対して取材・撮影を行った皆さんの笑顔による庄内PR動画を制作。授業で駅に行けない平日には駅やジョイフルトレイン「きらきらうえつ号」の中で上映しました。急ごしらえのプロジェクトということもあり、学生たちの観光知識の習得は不十分で、観光客から叱責を受ける場面もありました。2015年はそうした反省を踏まえ、地域を知るための研修体制も整えました。また駅での案内活動も継続しつつ、港や市のイベントにも協力しながら、活動の幅を広げていきました。

そして2016年は活動の幅がいっそう広がり、プレッシャーのかかる取り組みに数多く挑戦した年となりました。例えばJR東日本主催の「駅からハイキング」が挙げられます。これは、駅を起点に街の名所や歴史遺産、さらには映画のロケ地といった場所を歩いて回る日帰りイベントです。この1日のために半年前からコース選定や現地調査、地域団体との会議、地域研究や文献調査、さらには当日のガイドのための原稿作成やシミュレーション、小道具作成などを行います。これだけ手のかかるイベントを7コース8回実施、学生主体の「駅からハイキング」を1年間で8回実施したのは史上初であり、参加者からも高い評価をいただきました。また、天皇皇后両陛下ご臨席のもと実施された山形県の一大イベント「全国豊かな海づくり大会」においては、県外招待客を乗せて式典会場に移動するバスの中で、学生が山形の紹介を一人で堂々と行い、ここでも乗客からお褒めの言葉をいただけました。

当初は観光のことも、そしてほとんどが県外出身者だったため酒田や山形のことも知らなかった学生たちでしたが、試行錯誤を繰り返す中、自分の言葉で地域のことを堂々と語れるようになっていきました。

観光に関わる取り組みを通して、チーム、そして自分の大切さに気付く

「酒田おもてなし隊」の活動は多岐に渡ることもあり、プロジェクトごとにリーダーを立てる方針を2年目から取りました。狙いはリーダーという役割を一人でも多くの学生に経験させたかったからです。役割を与えられたことにより学生たちはいっそう意欲的に取り組み始めました。しかしプロジェクトによってはかなりプレッシャーがかかるものもあり学生たちはそれぞれ葛藤を抱えながらの活動となりました。ある学生は1年生でリーダーを務めましたが、他者への指示がうまく出せず、活動が停滞してしまうことに。一度立ち止まり、メンバーで顔を合わせ、本音をぶつけ合う時間を設けたことでチームとしての強固な関係を築けたと言います。またある学生は、チームメンバーを「きちんと自分の言葉でガイドをする」ところまで引き上げようと懸命に頑張りますが、熱を持って活動してくれないメンバーに不信感を募らせていきました。他人に頼らず、自分で全てをこなそうとする責任感の強い学生ではありましたが、学業やアルバイトが忙しくなり、最終的にリーダーを降りることになりました。そこには様々な葛藤があったようですが、リーダーを降りたことで仲間を頼る勇気の必要性に気付いたと言います。特に東北地方の学生は都市圏と比べその土地柄もあってか、固定した人間関係の中、言わないでも分かり合える環境で育ったことによるコミュニケーション能力の低さが目立ちます。「観光」に関わるプロジェクトは様々な役割分担が必要となり、チームワークは必要不可欠。その中で、リーダーを引き受けた学生もそうでない学生も、メンバーを信じて頼るという「信頼関係」を構築しながら、チームワークやコミュニケーション能力を磨いていけたのではと思います。

▲酒田駅を拠点に様々な活動を展開

学生たちは活動を通して様々な面で成長を遂げていったと思いますが、特に成長したと感じる点は自己肯定感、自己有用感、自尊心の向上です。以下、活動に臨んだある学生のレポートの一節です。「わたしにとっておもてなし隊とは人生の転機である。大学に入る前の私は人見知りで、他人と関わることに消極的であり、観光案内は絶対に向いていない、やりたくないと思っていた。最初、先輩からおもてなし隊に誘われ、不安ながらも活動を続けていくうちに人と話すことが楽しいと思えるようになった。また、周りの方から支えられている事を感じ、常に感謝の気持ちを持ちながら活動することができた。おもてなし隊で培ったスキルは他では得られない強みであるが、それだけでなく、自分に自信を持つことができた」参加した学生たちからはこうした感想が多く寄せられました。活動を通して、自分が周りに活かされていることに気付き、自分を受け入れられたのだと思います。社会に出て困難な場面に直面しても、感謝と謙虚さ、そして自尊心を忘れず自分を生き生きと成長させていって欲しいと期待しています。

準大賞

福岡大学   経済学部ベンチャー起業論


「すべて天然素材を使用した今までにない健康志向チョコレートの新商品開発

指導教員:経済学部 産業経済学科 教授 阿比留 正弘 氏

取り組み内容について

この取り組みは、当大学の講座の一つである「ベンチャー起業論」受講学生による、健康志向チョコレート開発に向けた挑戦です。「ベンチャー起業論」は起業家育成を目的とした講座で、学生による講義運営と企業とともに行うプロジェクト活動が主な内容です。プロジェクト活動では毎年300名以上が20程のチームに分かれ活動をしますが、その中の「チョコっとプロジェクトチーム」が社会人基礎力育成グランプリの準大賞受賞に至りました。通常は企業からのオファーでプロジェクトが立ち上がるケースが多いのですが、今回のチームは学生発信のプロジェクトでしたので協力会社探しから自分たちで行うことになりました。他のプロジェクトよりも乗り越えるべきハードルが高かったプロジェクトだったと言えるかもしれません。

「チョコっとプロジェクトチーム」は、リーダーを務めた学生の「チョコレートが好き」という思いがきっかけで立ち上がりました。このチームが目指したのは、学生ならではの魅力的なチョコレート作りです。学生たちがまず行ったのはチョコレートのテーマ設定です。スーパーやコンビニ、大手菓子メーカーへの訪問や調査の末、「健康志向の若い女性の増加および健康的なお菓子への需要増」という結論に至りました。学生たちはさらに福岡市内で20~30代の女性1,340名にインタビュー調査を実施。健康志向チョコレートが求められていることに確信を得て、「保存料等一切不使用、すべて天然素材を使用した健康志向チョコレート」の開発に挑むことにしました。

次に行ったのが素材調査です。先の調査により(1)糖類・糖質抑制、(2)腸内環境改善が求められていることが分かり、これを実現できる素材探しが始まりました。文系学生の集まりであるこのチームは門外漢でしたが、どうにか専門家を見つけ出し、糖類・糖質抑制には「マルチトール」が、腸内環境改善には「ビフィズス菌BB536株」がそれぞれ適しているという情報を得るに至りました。

そしていよいよ協力会社探しです。チョコレート製造会社に必死で掛け合うものの協力は得られず、ようやく話を聞いてくれたのが博多の洋菓子製造会社『チョコレートショップ』でした。チョコレートショップは保存料不使用、全て手作りにこだわる洋菓子店。天然素材である「マルチトール」「ビフィズス菌BB536株」を用いた新商品開発という提案がうまくマッチし、協力を漕ぎ着けることができました。学生たちはスーパーやコンビニでの販売を想定していましたが、チョコレートショップのオーナー、佐野さんから「どうせやるなら世界に挑戦しようよ」という思わぬ一言をいただきました。学生たちは想定外の発想に驚きつつも胸を躍らせ、フランス・パリで開催される世界最大級のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」に出展することとなりました。パッケージデザイン制作や広告表示方法などでも、様々な人の協力を得ながら進行し、遂に砂糖不使用ビフィズス菌チョコレート「KALON(カロン)」が完成しました。「サロン・デュ・ショコラ」では大きな注目を浴び、最終日を待たずに完売。現在「KALON」はチョコレートショップの福岡本店とパリ店で販売されています。

周囲の力無くしては成し得なかった世界進出

「チョコレートが好き」という思いが世界進出にまで繋がった理由は、すべて専門家との出会いのおかげだと思います。今回の取り組みで学生たちが最も苦労したことは、学生たちの能力を超えた問題の解決です。例えばチョコレートの素材となった「マルチトール」と「ビフィズス菌BB536株」の存在は、それぞれ福岡大学・薬学部、九州大学・医学部の教授の協力無しには知り得なかったことです。また、フランスで売り出すためにはEUの規制にも適合した表示やフランス語による表記などが必須。これも法律関係者やフランス語圏の学生の協力を得て、どうにか前進させることができました。

▲チョコレートショップオーナーへの 企画提案

独力で専門家を探し出すケースもありましたが、メンバーが自身のネットワークを駆使したり、「ベンチャー起業論」で講演をいただく経営者や専門家の方々に手助けいただくなど、周囲の協力無しにはここまで漕ぎ着けることはできなかったでしょう。「ベンチャー起業論」は学生が運営に携わる講座のため、ゲスト講師と学生との関係性が強固になります。先述の九州大学・医学部の教授も「ベンチャー起業論」で講師をしていただいており、「困ったことがあればいつでも相談してほしい」とおっしゃっていただけるまで関係構築できています。そしてこの教授との接点が今回のプロジェクトの突破口の一つになったわけです。学生たちには最低限の礼儀作法、お礼状作成といったコミュニケーションの重要性を学ばせています。協力いただいたことに心からの感謝の気持ちを伝える、それによって学生たちにまた力を貸そうという思いが生まれる。この繰り返しが、社会人基礎力でいうところの「働きかけ力」に繋がり、プロジェクト成功に結びついたのだと思います。

審査員特別賞

大阪工業大学 工学部機械工学科

「アイディア対決NHK学生ロボットコンテストへの挑戦!
~新しいチームマネージメントでリベンジ~」

指導教員:工学部 機械工学科 准教授 牛田 俊 氏

取り組み内容について

当大学の取り組みは、日本全国の大学や高等専門学校が参加するロボットコンテスト「NHK学生ロボコン」における、上位入賞に向けた挑戦です。当大学で行っている「モノラボロボットプロジェクト」という課外活動において、ものづくりが好きな1~2年生、約30人でチームが構成されました。今回リーダーを務めた学生や主力メンバーとなった2年生は、前年度もロボコン出場を目指しました。ただ、彼らが1年生だった当時、自分たちのアイディアと先輩達のアイディアが食い違うなど先輩と後輩の関係はぎくしゃくしており、チームはまさに崩壊状態に。結局、事前審査落ちという苦い経験を味わうことになりました。大会出場は果たせなかったものの、1年生たちは東京の本大会会場へ観戦に行きました。そこで彼らが目にしたのは、他大学の学生たちが必死に競技に挑み、勝敗に一喜一憂し涙を流す姿でした。その場に立てなかったことに惨めさを感じ、「来年は絶対に自分たちが出場する」と心に決めたそうです。

そして彼らが2年生となった2016年。ロボコン上位入賞に向け、2年生が考案したのが1年生チームと2年生チームによる「コンペ方式」でした。これは2つのチームで違うアイディアのロボットを開発、コンペを行い、優れている方のロボットを出場させようというものです。コンペというと敵味方に分かれ競い合うというイメージを持たれそうですが、そうではありません。同学年だけのチームであれば先輩に気を遣うこともなく、また2つのアイディアを試せるので挑戦的なロボット開発にも取り組めます。1年生も「自分たちを信頼して1年生だけのチームにしてくれたんだ」ということに感謝の念を持ち、チーム間の信頼関係の高まりが感じられました。それはまさに前年の反省を踏まえた新しいチーム運営のあり方でした。一方でこのやり方はリスクもはらんでいました。2チームに分かれるということは戦力が二分され、ロボット開発費も製作時間も倍かかることになります。教員たちへ経過報告するタイミングがあったのですが、案の定、まだロボットが1台も動いていない状況でした。「これで本当に2台作れるの?」という教員からのダメ出しに対し、リーダーは「明日までに動かします」と返答。この発言に、他のメンバーは「そんなの無理だ」と思いながらも、徹夜の作業に突入することになります。しかし、結局ロボットは動かず仕舞い。リーダーは自らの軽はずみな発言で周りを巻き込み、課題をクリアーできなかったことに強い責任感を感じ、もうリーダーを辞めたい、そう感じたそうです。それでも前年の悔しい思いや後輩からの期待などもあり、彼は何とか気持ちを奮い立たせました。そしてメンバーに「軽はずみな発言をして申し訳なかった。力を貸してほしい」と頭を下げました。メンバーもリーダーの本気さに気付き、いったんコンペ方式ではなく、1年生と2年生が協力し合ってまずは1台作ろうということになりました。そして1台目のロボットが完成。再び学年ごとにチームに分かれての開発・改良が進められます。2台目も完成し、コンペの末、互いのロボットの機能を上手く取り入れたロボットの開発に至りました。この過程でリーダーは大きなストレスを抱えることになりましたが、それをうまくコントロールする力を学んだと思います。

前年の悔しさから生み出されたコンペ方式が高い評価へと繋がる

ロボコンの事前審査も無事通過し、前年のリベンジとなる大会出場が決まりました。しかし大会当日、チームは大きなトラブルに見舞われました。試合開始直前に今まで動いていたロボットが動かなくなったのです。NHKスタッフから「棄権しますか」と促される中、ピットで必死に原因を探す学生たち。「もう待てません」と言われたタイミングで、はんだのひび割れを発見。応急処置を施し、どうにか試合に臨むことができました。結果、全国ベスト8に輝き、さらにアイデア賞を受賞することができました。

▲NHK学生ロボコンで奮闘する学生たち

このアイデア賞受賞に至った経緯は、実はコンペ方式にあります。今回のロボコンのテーマは「2台のロボットによる障害物競走」。1台のロボットからエネルギーをもらい、もう1台を走らせるというものです。2年生チームは安定性を重視した風力ロボを開発した一方で、1年生チームは「非接触給電」という革新的なエネルギー供給方法を取り入れたロボットを開発しました。最終的には安定走行できる風力ロボの足回りを用いた非接触給電ロボでの出場となりましたが、この「非接触給電」という発想が高く評価され、アイデア賞受賞に至りました。チーム全員で1台のロボットのアイディアを考えていたらこの結果にはならなかったでしょう。コンペ方式は数々の苦労やリスクを伴うやり方ではありましたが、その分彼らの発想力や技術力が磨かれていくことになりました。そしてチームが一丸となって課題を乗り越えたことが彼らにとって大きな財産になったと思います。

レポートダウンロード