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学情レポート【COMPASS】2016.09

2017年卒採用後半戦、大学の声から採用成功の糸口を探る

「3月採用広報解禁、6月選考解禁」という経団連の指針を受けて実施された2017年卒採用活動。「あさがくナビ」を始めとする主要就職情報サイトでの採用情報公開が3月1日からであったこともあり、多くの企業において3月広報解禁は守られたものの、それ以降は五月雨式に選考、内々定出しが行われていった。6月に入り、指針を遵守した大手企業の選考や内々定出しが一気に行われたが、それも一巡し、いわゆる採用第一クールは終わりを迎えた。大手企業を中心に一部の企業では採用終息というところもあるが、弊社が調査した「2017年卒採用活動アンケート(2016年6~7月調査)」によると、7月上旬段階で採用活動を「継続中」とする企業が84.2%と大半を占め、長期戦の様相を呈している。

一方、大学就職支援担当者へのアンケート(2016年6~7月調査)では、学生の内々定状況が「良い(良い+少し良い)」(57.5%)が「悪い(悪い+少し悪い)」(3.1%)を大きく上回り、各社の採用意欲の高さと相まって学生の内々定獲得は順調に進んだことがうかがえる。学生優位の売り手市場が進行し、企業としては採用難と言える状況だ。ただし、必ずしも多くの学生が内々定を獲得したり、就職活動を終えているというわけではない。大学へのアンケート結果によると、未調査の大学が4分の1を占めるものの、「内々定率50%以下」のところが6割に達する。すなわち、就職活動継続中、もしくはこれから活動を開始するという学生もまだまだいるということだ。

採用活動継続中の企業の今後の取り組みとしては、「キャリアセンター等就職部署への訪問・連絡を強化する」(55.4%)、「学内合同企業セミナーに参加する」(49.7%)、「大学等に求人票を送る」(41.2%)など、大学等の協力を得ながら学生との接点を作っていく活動が上位を占めている。大学との連携は採用成功への重要なポイントの一つと言えるだろう。ただし、売り手市場の環境下では大学に寄せられる求人は膨大であり、そこから選ばれる1社になるのは容易ではない。 

そこで大学就職支援担当者に対し今後予定されている就職支援内容や企業への要望等に関するアンケート調査を実施。今号ではその調査結果を掲載、大学側の声から2017年卒採用成功に向けた糸口を探る。

アンケート調査概要

●対象:全国の大学就職支援担当者
●調査期間:2016年8月3日~8月9日
●有効回答数:219件
調査方法:Web上のアンケートフォームより回答

 

[企業対象アンケート]
Q.7月上旬の採用活動状況は?


採用予定数の増減(17卒)

出所:学情「2017年卒採用活動アンケート(2016年6~7月調査)」

[大学対象アンケート]
Q.内々定状況(前年同時期比)は?


[大学対象アンケート]
Q.7月上旬時点の内々定率は?


出所:学情「大学就職支援担当者対象アンケート(2016年6~7月調査)」

[企業対象アンケート]
Q.今後の活動予定は?


出所:学情「2017年卒採用活動アンケート(2016年6~7月調査)」

Q.1 就職支援策として今後力を入れることは何ですか?

就職支援策として各大学が今後力を入れようと考えていることは、「個別相談」が最も多く、91.8%。次いで、半数以上の大学において「大学に寄せられた求人の紹介」(74.9%)、「教員との連携」(64.8%)が挙げられている。夏休み明け以降、各大学で頭を悩ませることが進路未決定の学生と連絡がつかなくなることである。そうした状況を少しでも改善するため、ゼミや研究室の教員とも連携を図りながら学生の状況を把握し、なんとかキャリアセンターに足を運んでもらう。そこで学生の希望を確認しながら、その学生のニーズや適性に合いそうな求人を紹介していく。そのようにして個々のマッチングに力を入れようという大学が大半のようだ。

大学に企業を招き、学生と直接の面談の場を設ける「学内合同企業説明会」(39.3%)は4番目に挙げられたが、前述の個別対応と比較すると差が開いた。その一方で企業説明に留まらず、学内で選考まで実施してしまおうという「学内選考会」は27.4%と、「学内合同企業説明会」とそこまで差をつけずに6番目に挙げられた。企業の説明を聞いてもその後の選考に進まない学生が多いといった理由で数年前から学内での選考会を実施する大学が広がり出し、この取り組みは一般化してきている。


またリーマンショック以降、民間企業やハローワーク等のスタッフが学内で学生対応を行うケースが増加したが「外部機関を招いての就活相談・求人紹介」は26.9%に留まる。求人をハローワーク等の外部に求めなくても、大学に寄せられる潤沢な求人があるため、より学生個々への対応に重きを置くという姿勢が読み取れる。

Q.就職支援として今後力を入れることは?

受け入れ日数

出所:学情「大学就職支援担当者対象アンケート(2016年8月調査)」

以下、Q.2~5については自由記述形式で回答いただいた。それぞれ様々な意見が上げられたが、その中からより多くの大学から寄せられた意見を中心に紹介していく。

Q.2 企業採用担当者がキャリアセンター等の就職支援部署を訪問する際に
 「こうした情報を伝えてもらえると学生へ求人を紹介しやすくなる」というものはありますか?

(1)「求める人物像」について具体的に

どのような学生を採用したいかについて、より具体的な情報(スキルや学業成績など)を提示してほしい。例えば「コミュニケーション能力がある学生」と一言でいっても、どの程度の能力を求めているかがを分からず、その求人を案内したい学生と合致しているかが判断しづらい。

(2)「仕事内容」について具体的に

募集職種について、例えば「総合職」「一般職」とだけ紹介されても企業によって業務内容は異なるため、その企業においてどのような業務に携わるのかを具体的に提示してほしい。また「営業」であれば「既存顧客を定期的に訪問し新製品を紹介する」、「事務」なら「クライアントからの発注を受けて、配送センターへ出荷指示をする」など、イメージしやすいところまで落とし込んで紹介してほしい。

(3)OBOG(卒業生)の状況

OBOGについて、携わっている業務内容や活躍している様子、どこで勤務しているか、どのようなキャリアパスを歩んでいるかなどについて教えてほしい。学生にとって親近感がわきやすいOBOGの情報があると、その企業のことを学生に伝える際に興味を持つきっかけになりやすい。

4)労働環境面

離職率、勤務地(転勤の有無)、平均残業時間、5年後の平均年収、賞与(年何回かではなく昨年の実績など具体的な金額)など。外部に出したくない情報もあるかもしれないが、将来のミスマッチを防ぐためにもこうした実情の部分を提示いただきたい。

(5)会社の売り

他社と差別化できるポイントや強みなど。就職活動を継続しているのは、これまで志望していた企業の選考から漏れてしまった学生が多く、新たに企業探しをしたときに興味を持つきっかけが必要。それを提示してほしい。

(6)選考内容や選考スケジュール

筆記試験の有無や種類、選考の種類(グループディスカッション、グループワーク、面接等)や面接実施回数、採用終了見込み時期などを提示してほしい。また求人票を受け取ってからある程度経過した求人については、採用継続中なのか終了しているのかが分からないため、継続中であれば繰り返し求人情報をいただきたい。

さらに、上記の内容について可能な限り求人票やチラシに落とし込んで持参していただきたいという意見が多数上げられた。口頭で「この分野でシェア○%」「過去3年間の離職者は0名です」などと伝えてもらっても、その情報の全てを学生に伝えるには限界があるため、実際に学生が目にするペーパー上で明示してほしいということである。特に近日開催する説明会等のスケジュールが記載されていれば掲示板等で周知しやすいとのことで、そうしたツールを持参するのも得策だろう。

Q.3 選考において「学生のこういった点も評価してほしい」というところはありますか?

(1)コミュニケーションの上手・下手ではなく学生の本質を

口下手・話下手であったり内気であったりする学生は、どうしても面接において低い評価が下されやすい。そうした学生は一生懸命さ、まじめさ、誠実さ、働く意思等は持ち合わせているが、面接時にうまくアピールできないだけ。じっくりと学生と向き合い、良さを引き出しながら学生の本質を見極めていただきたい。面接の手法も、早々と内々定を獲得するような学生とは変える必要があるかもしれない。対面型の面接だけではなく、気軽に話ができる面談形式などにして緊張しない雰囲気で学生を見てほしい。

(2)学業について

学生の本分である学業について、成績や取り組む姿勢も評価してほしい。学業に注いだ時間も人間的成長に繋がっている。また高い成績を収めている学生は、責任感が強く与えられた仕事はしっかりこなせる場合が多いため、成績表からも「こつこつ努力できる」といったことを推測してほしい。まじめでよく勉強している学生は地頭の良さもあり、働き始めればしっかり仕事ができる素養は十分にあるので、今後の伸びしろも見ていってほしい。

(3)志望動機以外の部分

就職活動を続けている学生にとって、気になる企業が見つかっても、大手著名企業でない限り企業情報を得る手段が乏しく他社との違いを明確に示せるような志望動機形成が難しくなる。「志望動機以外の質問をする」「初回の面接で課題を出し、次の選考時に課題へ取り組んだ姿勢で評価する」といったことをして、その学生のポテンシャルや資質を見ていってほしい。

さらに、選考においてどのような点が評価され、どのような点が足りなかったのか、本人や大学にフィードバックしてほしいという意見も上げられた。それによって学生本人が今後の選考で何に気を付けるべきかを把握できることはもちろん、その企業が求める学生像が見えてくるため大学側もマッチングを図りやすくなるということである。

Q.4 中小企業の探し方や見方について、学生にどのようにアドバイスしていますか?

(1)シェアなど特長的な部分に着目する

シェアNo.1の製品やサービスがあるかなど、他社と比較したときに強みとして映る部分があるかチェックするように伝えている(高いシェアを誇る企業は学生に薦めやすい)。またグループ企業や取引先を見れば、その企業の立ち位置や業務内容が推察しやすいため、そうした点も着目するように伝えている。

(2)採用実績の有無

中小企業を学生に紹介する際は採用実績の有無を考慮するケースが多い。特にOBOGの勤続年数が長い企業は優先的に案内している。

(3)業務体制が適当か

業務量から見た従業員数が適当そうか、従業員数に対して募集人数が多すぎないか(教育体制が不十分である可能性があるため)など、極端に従業員に負荷がかかるような業務体制になっていないかは意識させている。

(4)公的機関等の外部情報の提供

経済産業省「グローバルニッチトップ企業100選」に選定された企業の紹介、ハローワークと連携しての求人紹介、地元の商工会議所が主催する合同企業セミナーの案内、『就職四季報 優良・中堅企業版』の活用、中小企業家同友会が運営するサイト(Jobway)や「あさがくナビ」等を用いた企業紹介、など。

また中小企業についてはそこまで多くの情報が公開されているわけでなく、学生からすると情報収集しにくい面がある。そのため、直接企業訪問をさせてもらうよう学生にはたらきかけているという声も複数上げられた。自治体等が地元企業を訪問するバスツアーを組むといった取り組みもなされているが、自主的に職場や工場の見学会を実施するといった取り組みをすれば、学生の企業理解促進とともに大学との関係づくりにも一役買いそうだ。

Q.5 「企業が学生に求めるもの」と「学生が企業に求めるもの」において、
 ギャップを感じる点はありますか?

(1)企業は“仕事”に対する「意欲」「挑戦」「変化」を、
 学生は“仕事を取り巻く労働環境・生活環境”に対する「安定」「安心」を求める

企業は「仕事を通してこれだけの成長ができるから、様々なことに果敢にチャレンジしてほしい」といったことを学生に求める。一方の学生は休日休暇がしっかり取れるか、教育制度が充実しているか、安心して働ける労働環境が整っているかといった点を気にしており、大きなギャップが生じている。企業によっては待遇面や労働環境についてあまり説明したがらないところもあり、学生としては就職先として選んでよいか不安に感じ悩むケースも多い。

(2)企業は「即戦力」を、学生は「育成」を求める

企業は学生に対して「社会人ならこれくらいのことはできてほしい」というレベルのものを要求しているように思えるが、就業経験のない学生にとっては高い水準の要求である。一方の学生は、研修や教育などをしっかりと受け、仕事の基礎を学んだ上で本格的な業務に挑みたいという思いがある。そのため研修内容を気にする学生は多い。企業としては自社の説明をする際に、入社後にはどのような研修をどれくらいの期間行い、そこでどのような力を身に付けてほしいかを説明、それをもとにこういう仕事に臨んでもらい、3年後には振り返りとスキルアップの研修を行って・・・といった研修を交えたキャリアアッププランを提示していくことで学生に安心感を与えることができるのではないか。また学生は自分のことについて大切に、期待感を持って接してくれていると感じればその期待に応えたいという思いは強く持っている。ある程度の時間や労力がかかることは覚悟したうえで、今後の成長に期待して長い目で見ながら育てていってほしい。

その他、「コミュニケーション力」について企業と学生で認識が異なるなど様々な点でギャップがあるという意見が上げられた。企業(採用担当者)と学生ではキャリアや知識量に差があり、育ってきた時代背景も異なるため、そこにギャップがあるのは当然とも言える。そうした点も念頭に置いた上で学生と向き合う必要があるだろう。

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