• お問い合わせ

学情レポート【COMPASS】2016.01

ここが変わった!
雇用・労働に関する法律の改正について

2015年10月1日に「青少年の雇用の促進等に関する法律(勤労青少年福祉法から一部改正)」が、そして12月1日には「労働安全衛生法の一部を改正する法律」と、立て続けに雇用・労働に関連する法律が改正・施行された。後者は「50名以上の事業所において全従業員へのストレスチェックを義務化し、年に1回労働基準監督署に報告しなければならない」といった内容でマスコミ各社が取り上げており、その報道頻度の高さから認知度は高いと見られる。特に採用と労務を兼務している人事担当者にとっては気になる話題であろう。前者は注目を浴びているとは言い難いが、努力義務のみならず遵守項目があることを踏まえても、新卒学生をはじめとする若年者雇用をする上で押さえておくべき法律である。今号ではこの2つの法律を紹介する。

「青少年の雇用の促進等に関する法律」について

勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律の概要(「青少年の雇用の促進等に関する法律」)

適切な職業選択の支援に関する措置、職業能力の開発・向上に関する措置等を総合的に講ずることにより、青少年の雇用の促進等を図り、能力を有効に発揮できる環境を整備するため、関係法律についての所要の整備等を行う。

1.円滑な就職実現等に向けた取組の促進(勤労青少年福祉法等の一部改正)

⑴ 関係者の責務の明確化等

国、地方公共団体、事業主等の関係者の責務を明確化するとともに、関係者相互に連携を図ることとする。

⑵ 適職選択のための取組促進

①職場情報については、新卒者の募集を行う企業に対し、企業規模を問わず、
(ⅰ)幅広い情報提供を努力義務化、(ⅱ)応募者等から求めがあった場合は、3類型ごとに1つ以上の情報提供を義務化。
▶提供する情報:(ア)募集・採用に関する状況、(イ)労働時間等に関する状況、(ウ)職業能力の開発・向上に関する状況

②ハローワークは、一定の労働関係法令違反の求人者について、新卒者の求人申込みを受理しないことができることとする。
▶ハローワークは求人申込みをすべて受理しなければならないこととする職業安定法の特例

③青少年に係る雇用管理の状況が優良な中小企業について、厚生労働大臣による新たな認定制度を設ける。

⑶ 職業能力の開発・向上及び自立の支援

①国は、地方公共団体等と連携し、青少年に対し、ジョブ・カード(職務経歴等記録書)の活用や職業訓練等の措置を講ずる。

②国は、いわゆるニート等の青少年に対し、特性に応じた相談機会の提供、職業生活における自立支援のための施設(地域若者サポートステーション)の整備等の必要な措置を講ずる。

⑷ その他

①勤労青少年福祉法の題名を「青少年の雇用の促進等に関する法律」に改める。

②ハローワークが学校と連携して職業指導等を行う対象として、「中退者」を位置づける。(職業安定法改正)

2.職業能力の開発・向上の支援(職業能力開発促進法の一部改正)

⑴ ジョブ・カード(職務経歴等記録書)の普及・促進

国は、職務の経歴、職業能力等を明らかにする書面の様式を定め、その普及に努める。

⑵ キャリアコンサルタントの登録制の創設

キャリアコンサルタントを登録制とし、名称独占・守秘義務を規定する。

⑶ 対人サービス分野等を対象にした技能検定制度の整備

技能検定の実技試験について、厚生労働省令で定めるところにより検定職種ごと、実践的な能力評価の実施方法を規定する。

【施行期日】平成27年10月1日(ただし、1.⑵①及び②は平成28年3月1日、1.⑶②、2.⑵及び⑶は平成28年4月1日) 

出展:厚生労働省ホームページ「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律の概要」

「青少年の雇用の促進等に関する法律」は1970年に制定された「勤労青少年福祉法」が一部改正されて施行された法律だ。「勤労青少年福祉法」の下では、働く青少年への支援として福祉施設の設置や余暇活動の振興等の推進が図られてきた。しかし時代の流れとともに、年功序列型の賃金・昇進体制のもと一つの企業で定年まで勤め上げることが一般的ではなくなっていった。例えば非正規雇用者の増加。特に非正規雇用者に占める「不本意非正規雇用者」の割合は、全年齢では18.1%だが、25~34歳では28.4%に達し、この年代が最も多い(出展:総務省「労働力調査(平成26年平均)」)。このように青少年を取り巻く環境は大きく変化している。しかし日本の経済や社会を発展させる上で若手人材が職業能力を向上・発揮することが重要であることに異論はないだろう。

青少年と雇用の関係を見たときに問題視されるものがミスマッチである。厚生労働省はミスマッチの発生要因として、「若者は人生経験や就業経験が少ない中でこうした経験から得られる情報が乏しい存在であり、自らの適性を理解した上で適職を選択し、数ある中から希望する企業を見つけて就職活動を行うことは、他の年齢と比べて未熟な面があること」としている。つまり、企業側には雇用・労働条件等に関する情報開示を積極的に行うとともに職業能力の開発や向上に向けた取り組みを行うことが求められている。その具体的措置が示されたものが「青少年の雇用の促進等に関する法律」である。

具体的措置とある通り、本法律では新たに義務化された事項が複数ある。そのうち弊社の事業分野や、若手人材の採用活動・就職支援に従事される方にとって関心の高いであろうものをピックアップして紹介する。

※青少年の定義・・・厚生労働省によると、「具体的な定義は設けられていないが、おおむね35歳未満の者。ただし、個々の施策・事業の運用状況等に応じて、おおむね45歳未満の者についても、その対象とすることを妨げないものとすること」とされている。また文部科学省によると、「法令上の定義はないが、一般的には我が国の将来を担う若い世代で、人間形成の途上にある人たち」とされている。

新卒者の募集を行う企業の情報提供について(上記1-(2)-①)

新卒者に提示する求人情報として、例えば職場の人間関係や雰囲気がわかるといった定性的な情報はもちろんのこと、(ア)~(ウ)で示された定量的な情報についても積極的な提供が求められることとなった。(ア)~(ウ)について厚生労働省からは下記の例が示されている。

(ア) 募集・採用に関する状況

…過去3年間の採用者数及び離職者数、平均勤続数、過去3年の採用者数の男女別人数 等

(イ) 労働時間等に関する状況

…所定外労働時間の実績、前年度の育児休業、有給休暇、管理職の男女比 等

(ウ) 職業能力の開発・向上に関する状況

…導入研修の有無、自己啓発補助制度の有無 等

若手求職者が企業選択をする上でこれらの情報を判断軸の一つとしてもらい、ミスマッチを減らす考えだ。もちろんこれらの情報提示がマイナスに働くことを懸念する企業もあるだろう。そこでこれらの情報提供は努力義務としている。その代わりに応募者から求めがあった場合は、(ア)~(ウ)の各項目から一つずつ以上情報提供することは義務化されることとなった。本項は2016年3月1日、すなわち2017年3月卒採用の広報解禁日より施行となる。

ハローワークでの求人不受理について(上記1-(2)-②)

現在ハローワークでは、求人申込み内容が違法である場合を除いてはすべての求人を受理しなければならないとされている。しかしこの度の法律改正により、残業代の不払いや男女雇用機会均等法・育児介護休業法に違反したことで公表の対象となった場合は、ハローワークにおいて求人申込みを一定期間受理しないことができるようになった。不受理期間は6か月~1年間という案が示されているが、法令違反の対象を含め、詳細は政令・省令で定められるとされている。目的は法令違反を繰り返す企業に就職することで新卒者が社会の入り口でつまずき、その後のキャリア形成に影響を及ぼすことを防ぐためである。

キャリアコンサルタントの国家資格化について(上記2-(2))

キャリアコンサルタントの資格としては「CDA(=Career Development Adviser)」や「GCDF-Japanキャリアカウンセラー(GCDF=Global Career Development Facilitator)」などの民間資格が有名であり、これらの資格を有する人事担当者や就職指導担当者も少なくない。ただ現状では無資格であっても意図せずとも「キャリアコンサルタント」を名乗れてしまうなど、その資質の担保が課題として掲げられ、キャリアコンサルタントを国家資格化することとなった。新制度により名称独占(有資格者のみ「キャリアコンサルタント」を名乗れる)のほか、業務上知り得たクライエント等の秘密を漏えい、盗用しないという守秘義務が規定された。

キャリアコンサルタントの資格は3つのレベルに分かれ、上から指導者レベル、熟練レベル、標準レベルである。CDA等の民間資格は標準レベルに位置し、新設される国家資格も標準レベルと同等とされ、2016年4月より民間資格との統一が図られることとなる。なお、CDA等の民間資格は新設する国家資格に移行可能だ。また、キャリアコンサルタントの国家資格は既に「キャリア・コンサルティング技能士」がある。この資格の1級が指導者レベル、2級が熟練レベルに位置し、キャリア・コンサルティング技能士は2016年4月以降も存続となる。

青少年の雇用の促進等に関する新たな指針について

「青少年の雇用の促進等に関する法律」と合わせて、求人を行う企業や弊社などの就職情報会社をはじめとする関係者に対する指針も定められた。その中で、関係者間で話題となっているものが、事業主などが青少年の募集や採用に当たって講じるべき措置において遵守項目として示された「固定残業代の計算方法」等の明示である。一定時間分の時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金(固定残業代)に係る計算方法、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業時間を超える時間外労働、休日労働及び深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うこと等を明示することとされている。

<固定残業代の計算方法の記載例> 東京配属・営業職の場合

■総支給額:231,300円

【内訳】
基本給:160,000円、営業職手当:15,000円、地域手当:10,000円、固定時間外手当:46,300円(計算時間外手当46,275円+調整給25円)

【固定時間外手当算出式】
(基本給+営業職手当+地域手当+役職手当+転勤手当+単身赴任手当+資格手当)÷20日(所定労働日数)÷7.5時間(9:00~17:30)×1.25(25%の割り増し分)×30時間(みなし残業時間)

※7.5時間は、1日の労働時間(9:00~17:30)から休憩時間(1時間)を除いた時間です。
※7.5時間で割った段階で端数を切り上げて計算しています。

 本紙で取り上げなかった各項目等の詳細については、厚生労働省ホームページ「青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)などが10月から順次施行されます!」をご確認ください。(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000097679.html

「労働安全衛生法の一部を改正する法律」について

2015年12月1日、「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が施行された。この法律は化学物質管理のあり方や受動喫煙防止対策など、労働者が安全・健康に働くための取り組みについて規定したものであるが、本章ではその中から「ストレスチェック制度」について取り上げる。この制度導入により、従業員50人以上の事業所は年1回ストレスチェックの実施が義務付けられた(50人未満の事業所は努力義務)。ストレスチェックは、選択形式のストレスに関する質問票を作成し、それを従業員に回答してもらい集計・分析することでストレス状態を調べる検査である。質問票には①ストレスの原因に関する項目、②ストレスによる心身の自覚症状に関する項目、③労働者に対する周囲のサポートに関する項目、の3項目を盛り込むこととされている。なお、質問票は事業所単位での作成が難しい場合は国が推奨する質問票を利用することも可能だ。

時代の要請もあって誕生したとも言えるストレスチェック制度。その義務化の背景や検査結果の活かし方、さらにはプラスαのメンタルヘルス対策等について、メンタルヘルス事業の第一人者である株式会社アドバンテッジ リスク マネジメントより解説・紹介いただく。

株式会社アドバンテッジ リスク マネジメントに聞く、メンタルヘルス対策のポイント

「ストレスチェック」が義務化された背景とその目的とは

労働安全衛生法が改正され、12月1日から従業員50人以上の事業所はストレスチェックを実施することが義務付けられました。

ストレスチェック制度は高止まりする自殺者数や精神疾患による労災認定の増加が背景にあります。当社の調べでは、何らかの傷病で30日以上休職する従業員のうち、メンタル不調を原因とする割合は直近10年間で約3割から約7割に急増しています。また、精神疾患を原因とした労災認定の件数も10年間で4倍近くになっており、メンタルヘルスに起因するリスクが経営問題に発展しかねない状況になっています。こうしたメンタルヘルスの問題は他の身体の疾病と比べても職場や業務との関連性が高く、環境も含めて変えていかなければ根本的な解決にはならないといえます。

こうした背景から成立したストレスチェック制度は、精神疾患の発見が主目的ではありません。高いストレス反応を示す従業員への早期サポートによる「メンタル不調の未然予防」に重きを置いており、最終的にはストレス要因となっている職場環境を変え、組織を健全にすることを目指しています。

「ストレスチェック」で何を測るのか

従業員は1年に1度ストレスチェックを受検し、イライラや落ち込み、不眠など客観的に把握しやすい心身のストレス反応などを測ります。自身がどのような状態にあるのかを捉え、ストレス状態への“気づき”を得る機会となってほしい、というのがストレスチェックのねらいの一つです。ストレスチェックと一般的な健康診断の大きな違いは、検査結果が企業に直接報告されるかどうかです。一般的な健康診断は検査結果が直接企業側に通知されますが、ストレスチェックでは受検者のみに通知されます。これは、受検者が企業に結果をさらされることを意識し事実と異なる回答をしてしまうことがないようにするための措置です。受検結果については受検者が同意した場合に限り企業側に通知されますので、本人の明確な同意なく企業に共有されることはない旨を従業員にしっかりと周知させることで、正直に回答してもらいやすくなります。また受検者は検査結果を踏まえ、企業に対し「医師による面接指導の申出」ができ、面接指導を受けることができます。企業はこの面接指導の申出や面接結果を受け、不当な配置換えをする、退職を促すといった受検者にとって不利益な取り扱いをすることが禁止されています。(下図参照)

ストレスチェック制度の概要

出展:厚生労働省ホームページ「労働安全衛生法の一部を改正する法律の概要」

ストレスチェックでは、①ストレスによって引き起こされる「心身のストレス反応」、②“たくさんの仕事をしなくてはならない”“仕事にやりがいを感じない”といった「ストレス反応に影響を与える要因」、③ストレス反応を緩和するような「周囲のサポート」を受けられるかどうか、といった3領域を含むように各社の衛生委員会で調査・審議のうえ決めることとされています。

さらに、ストレス状態を網羅的に把握するためには、個人がストレスにどう対処しているかといった、認知の〝癖〟を測る「ストレス耐性」の観点を盛りこむことも有用です。例えば、重要な仕事の局面において、ある人はやりがいを感じ、“成長のチャンスだ”と前向きに捉えるのに対し、ある人は、“失敗したらどうしよう”と後ろ向きに捉え、最悪の場合は欠席するなど回避的な行動を起こしたりするケースがあります。この場合、困難を前向きに捉えることのできる前者の方がストレスを感じにくい、「ストレス耐性」があるということになるのです。こうした「ストレス耐性」の項目を盛り込むことにより、個人のストレス状態をより網羅的に把握することが可能になるのです。

法令遵守プラスαの対策をうつポイント

こうして「ストレスチェック義務化」が施行されましたが、果たして、この法令を遵守するだけでメンタルヘルス対策は十分といえるのでしょうか。自身の不調に気づいても改善に向けたアクションを行わないことで、問題が何も解決されないということも想定されます。そこで、大きくは2つのパターンに分けてプラスαの対策をうつことが有効です。あてはまる箇所がありましたら、ぜひ参考になさってください。

メンタルヘルス不調を原因とした早期離職が多い

<課題>

  • 新入社員が研修中、メンタル的にまいってしまった。
  • 新入社員を叱ったら、翌日から会社に来なくなってしまった。

<対策のポイント>

  • 入社前に適性検査でメンタルヘルス不調のリスクとストレス耐性を把握しておく。
  • 個人の特性に沿った「叱り方・悩みの引き出し方・アドバイスのポイント」を配属先の上司に理解してもらい、指導させる。

<例えばこんなケース>

入社前の適性検査の検査結果から、新入社員Aさんは、「人前で叱られることが苦手」であるということが分かった。以前も同様のタイプの新入社員がいたが、配属先への共有が不十分であり、結果として厳しい叱責を理由に会社に来なくなるという事態に繋がった。今回は適性検査の結果を踏まえ、新入社員の接し方マニュアルを作成し配属先に共有したところ、やる気を維持しながら働いているという報告を受けた。

 上司・部下間など人間関係のトラブルが多い

<課題>

  • ES(従業員満足度)調査やストレスチェックで「職場の人間関係」に関する課題が上位に上がる。
  • 管理職の指導が原因となるメンタル不調問題がよく起きている。そして管理職自身はコミュニケーション力に課題はないと認識しているが周りの人間は本人に課題があると感じている。

<対策のポイント>

  • 部下との間の意思疎通がうまくできるようにするために管理職に感情マネジメント向上研修を実施する。

<例えばこんなケース>

部下が言うとおり仕事をしてくれないと感じ、厳しく指導をした結果メンタル不調者が発生してしまった管理職のケース。メンタル不調を発生させないためには厳しく指摘をしてはいけないのか、そんなことで仕事がうまくいかなくなってしまうのかと疑問を感じていた。そこで管理職向け感情マネジメント力向上研修に参加し、自分が仕事において指示・命令はしているものの部下の気持ちに関心を持っていないことがわかった。感情面を大切にする行動を多くとることで、部下から相談を受けることが増え、自分の指示がきちんと部下に伝わるようになった。

会社によってメンタルヘルス対策のあり方は異なります。会社は病院ではありません。今回の法制化を“義務”としてとらえて終わりにするのではなく、会社が成長するための対策を改めて考え、何が必要であるかを考えることが重要といえます。

株式会社 アドバンテッジ リスク マネジメント

■設立年月:1999年3月
■資本金:283,944,500円(2015年3月末時点)
■事業内容:1.メンタリティマネジメント事業 2.就業障がい者支援事業 3.リスクファイナンシング事業


メンタルヘルス対策、就業障がい者支援制度など、先進的な人事戦略ソリューションを提案。1995年に日本で初となるGLTD(傷病による就業不能時の所得補償保険制度)を提供して以来、メンタルヘルスケア分野と共に国内トップシェアの導入実績を有する。人材採用・教育分野ではEQを軸に展開しており、企業の人材を支えるトータルソリューションを展開。メンタルヘルス業界における唯一の上場企業。

レポートダウンロード