長時間労働とは?課題や原因について解説!減らす方法もご紹介!
2024.04.02
近年、社会では「長時間労働」が問題視され、労働環境の改善が急務となっています。過度な時間外労働は労働者の健康を阻害するだけでなく、企業にも悪影響をもたらします。
本記事では、長時間労働について、基準や原因、問題の解決方法についてご紹介いたします。
長時間労働とは?
長時間労働について、何時間以上働けば長時間労働に該当するかなどの明確な基準はありません。
しかし、長時間労働の指標となる目安がいくつか存在します。
下記の目安によると、月45時間以上の残業がある場合は長時間労働を疑うと良いかもしれません。
目安について紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
法定労働時間とは?
法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間の上限のことをいいます。労働基準法には下記が記されています。
・使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
・使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
※参考:厚生労働省「労働基準法 第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇 第三十二条」(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049)
もし、労働者に法定労働時間を超えて働かせる場合、使用者は労働者と36協定を結び、届出を所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。
36協定とは?
36協定とは、法定労働時間を超えて労働させることや法定休日に労働させることについて定められた協定です。
労働基準法の第36条に基づくことから36(サブロク)協定といわれており、正式名称は「時間外・休日労働に関する協定届」です。
36協定を締結し労働基準監督署に届け出をすることで、労働者に月45時間、年360時間までの時間外労働をさせることが可能になります。
過労死ラインとは?
過労死ラインとは、健康障害リスクが高まる時間外労働の目安時間のことで、労災認定の基準になっています。
厚生労働省では、脳・心臓疾患の場合、過労死ラインの基準を以下の通り定めています。
・発症前1ヵ月間に100時間以上の時間外労働がある
・発症前2~6ヵ月間に月平均で80時間以上の時間外労働がある
※参考:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準の改正概要」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21017.html)
過労死ラインを超えると、健康に悪影響を及ぼす可能性が大幅に高まります。
精神疾患の基準とは?
厚生労働省では、心理的負荷による精神障害の労災認定基準を以下の通り定めています。
・発症前1ヵ月間に160時間以上の時間外労働がある
・上記と同程度の(例えば3週間におおむね120時間以上の)時間外労働がある
精神疾患の基準が超えている場合は、長時間労働といえるでしょう。
※参考:厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/001140929.pdf)
長時間労働の現状
次に、長時間労働の現状について解説します。
長時間労働者の割合
長時間労働者の割合は年々減少しています。
厚生労働省が2024年2月に発表した労働経済分析レポートでは、「1990 年以降については、長時間労働者割合はほぼ一貫して低下している」とされています。
男性の1週60時間以上の長時間労働者の割合推移は、1973年から変動を伴いつつも長期的には低下し、2023年時点では約10%まで低下しています。つまり、2023年時点でも約10人に1人の男性が週に20時間以上の残業をしていると考えられます。
なお、女性については、1973~2023年で一貫して1週60時間以上労働する労働者は10%を切り続けています。
※参考:厚生労働省「No.4 わが国の過去50年間(1973年~2023年)の労働時間の推移についての考察」(https://www.mhlw.go.jp/content/001203082.pdf)
残業が多い仕事
以下に残業が多い仕事の一例をご紹介します。
なお、業界や企業によって残業時間が異なるため、あくまで一例です。
・営業職:お客様対応が中心のため、自身でスケジュールをコントロールしづらい。
・クリエイター職:需要が高まる一方で、専門職ということもあり人手が不足している。
・販売職(サービス業):スタッフの採用が追い付かず、人手が不足している場合が多い。
・人事職(採用担当者):業務が多岐にわたる場合が多い。
これらの職種は業務内容や環境によって残業が発生しやすい傾向にあるので、長時間労働が常態化しないように効率的な働き方を取り入れることが重要です。「長時間労働を解決するための具体的施策」章でくわしく解説するのでぜひご覧ください。
長時間労働が発生する原因
長時間労働が発生する原因についてご紹介します。自社の状況に当てはめて考えると、長時間労働を減らす糸口が見つかるでしょう。
人材不足
昨今、少子化により生産年齢人口が減少し、人材不足が深刻化しています。人材が不足すると1人あたりがこなす業務量が多くなり、長時間労働の可能性が高まります。
また、新型コロナウイルスの流行によって人材の流動化が進んだ影響で、優秀な人材を獲得するための競争が激化しています。
自社にあった手法で人材を採用し、人材不足を解消しましょう。
管理職のマネジメント不足
企業によっては、管理職クラスが長時間労働の実態を把握しながらも、具体的な対策がなされない場合もあります。
管理職のマネジメント不足は、管理職と部下間のコミュニケーションを増やし、信頼関係を構築することで解消される可能性が高いです。
管理職の方は積極的に部下とコミュニケーションをとり、部下の仕事量が偏らないよう、適切なマネジメントを心がけましょう。
同調圧力による不必要な残業
同調圧力とは、集団内で起こる心理的圧力を指し、個人が他人と意見を合わせるように誘導させられることをいいます。
社内で同調圧力が広がると、不必要な残業が増加し、長時間労働が生じる可能性が高まります。
そのような状況下では、自身の仕事が終わっても他の人が残業をしていると、定時に帰ることが難しいと感じる人もいるでしょう。この問題を放置すると、余分な残業が増え、社内で残業が当たり前になる恐れがあります。
個人を尊重する社風を築き、同調圧力を防止しましょう。
長時間労働が引き起こす問題
長時間労働が引き起こす問題は、労働者だけでなく企業にとっても大きな損失につながります。
企業はこの問題を理解し、長時間労働の是正に向けて取り組みましょう。
労働生産性の低下
かつて、日本の企業は、長時間労働によって生産性を向上させてきました。働けば働くほど成果が上がるという時代もありました。しかし、現代では、生産性は単に長時間働くことで確保されるものではなくなっています。
長時間労働が続くことによって労働者は疲弊し、集中力や創造力が低下します。これによって、業務の効率が低下し、同じ時間枠内での作業量が減少する可能性が高まります。
さらに、長時間労働は企業にとって経済的損失をもたらします。
労働者の健康と生産性の両方を守るために、労働時間の適切な管理が重要です。
企業イメージの悪化
長時間労働が常態化している企業は、世間に労働者の健康や福祉を考慮していない企業の印象を与える可能性があります。社会的責任に対する評価が低下し、一般人や投資家からの批判を招くことにもつながりかねません。
労働時間のバランスを保ち、企業イメージの悪化を防ぎましょう。
離職率の増加
長時間労働によるストレスや疲労が蓄積し、働くことへのモチベーションが低下すると、労働者はより良い条件の職場環境を求めて離職してしまうかもしれません。
離職率の上昇は、企業にとって採用に関する費用が増加するだけでなく、上記で挙げたような労働生産性の低下や企業イメージの悪化にも直結します。
企業は、労働時間を適切に管理し、労働者の健康や福祉を考慮した働き方を促しましょう。
長時間労働削減のための法改正
これまで、建設事業・自動車運転の業務・医師などは、労働基準法による時間外労働の上限規制の適用外でした。しかし、2024年4月から取り扱いが変わります。
事業・業務 |
2024年4月以降の時間外労働の取り扱い |
建設業務 |
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自動車運転の業務 |
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医師 |
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※出典:「【2023年版】人事が知っておくべき法律を徹底解説|最新の法改正も紹介」(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/roumu/00002/)
こちらのお役立ち資料では、雇用に関する法律など人事業務のために知っておくべき法律をくわしく解説しています。ぜひダウンロードして参考にしてください。
長時間労働を解決するための具体的施策
長時間労働をなくすための施策として以下があげられます。
- 効果的な採用手法を導入する
- 管理職を対象としたマネジメント研修を実施する
- フレックスタイム制を導入する
それぞれ具体的に紹介します。
効率的な採用手法を導入する
長時間労働発生する原因には、人材不足があります。
人材不足を解消するには新たに人材を採用する必要があります。しかし、新たな人材を採用するとなると採用工数がかかります。そのため、十分に人員を割けない企業では採用担当者自身が長時間労働に陥ってしまうこともあります。
採用工数を削減するには、外部のサービスを利用することも一つの手段です。
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管理職を対象としたマネジメント研修を実施する
マネジメント研修は、基礎的なマネジメント力や組織運営能力、人材育成力などを身に着ける研修です。
長時間労働が発生する原因の一つは、管理職が労働者の能力や全体の業務量を把握できていないことです。そのため、自身のキャバシティを超える業務量を抱えた労働者は長時間労働せざるを得なくなります。
管理職のマネジメントスキルを向上させることで、上記のような原因を解決できるでしょう。
フレックスタイム制を導入する
長時間労働を改善するためには、従来の働き方を柔軟に変えていくことが重要です。その方法として、フレックスタイム制の導入は効果的な手段としてあげられます。
フレックスタイム制は毎日の始業・終業時間を労働者が自由に決められる制度です。
一般的な労働時間制度で1日の所定労働時間を8時間と決められている場合、業務の忙しさに関係なく、労働者は常に8時間以上は働く必要があります。しかし、フレックスタイム制を導入していると、閑散期は勤務時間を短縮して働くことができるため、無駄な労働時間を削減できます。
株式会社学情が20代のビジネスパーソンを対象に実施した調査では、「フレックスタイム制を導入する企業は魅力を感じますか?」の設問に対し、「魅力を感じる」「どちらかと言えば魅力を感じる」と回答した割合が合わせて8割を超えました。
※参考:「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(フレックスタイム制)2023年7月版」(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/230714/)
フレックスタイムタイム制は、労働者個人の忙しさやスケジュールに合わせて効率的に仕事ができ、長時間労働の実態がある場合は改善できます。
まとめ
長時間労働について、基準や原因、問題の解決方法を紹介しました。
長時間労働は労働者だけでなく企業にとっても解決すべき問題です。自社の現状や原因を把握し、長時間労働是正に向けて動きましょう。
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