【2023年最新】早期離職とは?起きる原因と企業ができる対策を解説
2023.11.02
近年、労働人口の減少により、新しい人材を確保するのが難しくなっています。新入社員が入ってきても、早期に離職してしまうと、人材不足に陥るリスクがさらに高まります。
そこで従業員の定着率を向上させるには、早期離職防止のための対策を講じる必要があります。
本記事では、早期離職のおもな原因や企業におよぼす影響などを解説します。また、最新の早期離職率や企業ができる対策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
早期離職とは
早期離職とは、新しい会社に入社または転職してから3年以内に仕事を辞めることを指します。このような離職は、企業にさまざまな影響を与えます。
採用から教育・研修に至るまでの費用と時間が無駄となり、経済的損失が発生するでしょう。さらに、早期離職が繰り返されることで、会社のブランドイメージが低下してしまう恐れもあります。
そのため、企業は早期離職を未然に防ぐための取り組みが求められます。早期離職が企業におよぼす影響とその防止策の詳細は、記事の後半で取り上げます。
【2023年最新版】早期離職率
次に、早期離職率の現状を把握しておきましょう。ここでは厚生労働省が公表した、令和2年度における新規学卒就職者の離職状況を紹介します。現状を確認し、自社の早期離職率と比較してみてください。
新規大卒就職者の早期離職率は31.2%
厚生労働省が公表した資料によると、新規学卒就職者のうち、大卒就職者が就職後3年以内に離職した割合は平均で31.2%だったことがわかっています。
卒業区分 |
早期離職率 |
中学 |
55.0% |
高校 |
36.9% |
短大など |
41.4% |
大学 |
31.2% |
大卒就職者の割合は中卒や高卒、短大卒に比べると低いものの、およそ3人に一人が早期に離職していることがわかります。
また、事業所規模別では、従業員5人未満の企業が56.3%と最も高い割合でした。
事業所規模 |
新規大卒就職者の早期離職率 |
5人未満 |
56.3% |
5~29人 |
49.4% |
30~99人 |
39.1% |
100~499人 |
31.8% |
500~999人 |
28.9% |
1,000人以上 |
24.7% |
※出典元:「新規学卒就職者の離職状況を公表します」(厚生労働省ホームページ)
さらに就職後3年以内で大学就職者が離職したタイミングは次のとおりです。
年度 |
1年目 |
2年目 |
3年目 |
平成28年度 |
11.4% |
10.6% |
10.0% |
平成29年度 |
11.6% |
11.4% |
9.9% |
平成30年度 |
11.6% |
11.3% |
8.3% |
※出典元:「学歴別就職後3年以内離職率の推移」(厚生労働省ホームページ)
とくに入社後1年目の離職率が高いことがわかります。
極めて早期の離職が発生する場合、採用時に見逃された何らかのミスマッチ要因が存在する可能性が考えられます。それは、企業の選考プロセスや求職者へのアプローチに改善の余地があることを示唆しているかもしれません。この極めて早期の離職は、企業にとって大きな損失となるため、早めに対策を講じる必要があるでしょう。
早期離職率は業種によって異なる
新規大卒就職者の早期離職率を産業別で見ると、「宿泊業・飲食サービス業」が51.5%と最も高く、「生活関連サービス業・娯楽業」や「教育・学習支援業」も45%を超えている状態です。
産業 |
新規大卒就職者の早期離職率 |
宿泊業・飲食サービス業 |
51.5% |
生活関連サービス業・娯楽業 |
46.5% |
教育・学習支援業 |
45.6% |
医療・福祉 |
38.6% |
小売業 |
37.4% |
早期離職のおもな原因
従業員が早期離職に至るには、何らかの原因があります。企業は、早期離職を防止するために原因を把握しておくことが大切です。原因を把握することで、適切な対処法が見つかる可能性があります。
業務内容のミスマッチ
入社前に抱いていたイメージと実際の業務内容にギャップがあった場合、不満を感じ、早期離職につながる恐れがあります。
Re就活の「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(転職理由)2023年8月版」によると、社会人経験3年未満の第二新卒で早期離職を検討している、もしくは、すでに早期離職をした可能性のある求職者が転職で実現したいことは、「希望する仕事に従事できること」が44.5%と最も多かったことがわかっています。
転職・就職で実現したいこと(複数回答可) |
割合 |
希望する仕事に従事できること |
44.5% |
給与・年収が上がること |
42.5% |
良好な人間関係を築けること |
36.2% |
スキルを身につけて成長できること |
30.3% |
プライベートな時間を確保できること |
28.7% |
新しい仕事内容にチャレンジできること |
20.1% |
仕事内容にやりがいがあること |
15.0% |
尊敬できる上司や先輩がいること |
11.8% |
丁寧な教育・研修を受けられること |
9.1% |
前職の経験・スキルが活かせる仕事に従事できること |
7.5% |
残業時間を短縮できること |
6.3% |
自信をもって商品やサービスをおすすめできること |
4.3% |
通勤時間を短縮できること |
3.9% |
顧客に喜ばれる仕事ができること |
3.5% |
大手企業に就職・転職できること |
2.8% |
会社や経営層のビジョンに共感できること |
2.8% |
上京して就職・転職できること |
1.6% |
地方都市にU・Iターンできること |
0.8% |
その他 |
0.4% |
上記アンケート結果より、今の会社や前職で希望する仕事に就けなかったことが理由で、早期離職を検討している、もしくは、すでに早期離職をした可能性があると予想できます。
仕事内容が自分の希望や理想に合わない場合、仕事に対するモチベーションが下がりやすくなります。企業は、採用の段階で就活生と業務内容についての認識を合わせられるように努めるとよいでしょう。
人間関係の不和
入社後に上司や同僚との間で生じる人間関係の不和が原因となり、早期離職を決断する人も少なくありません。
前出のアンケート結果でも、社会人経験3年未満の第二新卒で早期離職を検討している求職者が転職で実現したいことは「良好な人間関係を築けること」が36.2%で3位でした。
業務を円滑に進めるためには、良好な人間関係が不可欠です。企業は、従業員が良好な人間関係を構築できるよう、サポートする必要があります。
労働条件の悪さ
早期離職者のなかには、勤務時間や休日などの労働条件の悪さを理由に、離職を決断した人も少なくありません。
Re就活の「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(転職理由)2023年8月版」では、社会人経験3年未満の第二新卒で早期離職を検討している求職者の転職しようと思う理由の3位は「残業を減らしたい、休日を確保したい」となっています。
転職しようと思う理由(複数回答可) |
割合 |
給与・年収をアップさせたい |
35.8% |
もっとやりがい・達成感のある仕事がしたい |
36.2% |
残業を減らしたい、休日を確保したい |
26.8% |
より会社の風土や考え方が合う企業で働きたい |
23.6% |
幅広い経験・知識を積みたい |
10.6% |
自身の市場価値を高めたい、ステップアップしたい |
15.0% |
もっと頑張りが評価される環境で働きたい |
9.4% |
ほかにやりたい仕事ができた |
13.8% |
ライフステージの変化によるため |
3.1% |
希望の勤務地で働きたい |
12.2% |
専門知識・技術を習得したい |
6.3% |
テレワーク可の企業で働きたい |
4.7% |
業界の先行きに不安があった |
9.8% |
倒産・リストラなどのやむを得ない理由で |
3.5% |
U・Iターンしたい |
1.6% |
感染症対策などの対応に不満や不安があった |
0.0% |
その他 |
9.1% |
近年は価値観の多様化により、ワーク・ライフ・バランスを重視したいと考える人が増えています。また、働き方改革によって長時間労働の是正や有給休暇の取得が推進されているため、企業には働きやすい環境の整備が求められています。
キャリアパスが見えない
価値観の多様化が進むなか、人々の働き方に対する考え方も変化しています。
従来の日本型雇用では終身雇用や年功序列を前提にしていたため、定年まで一つの企業で勤め上げるのが一般的でした。しかし、近年は企業に頼らず、自身でキャリアを築きたいと考える人が増加しています。もし、入社後3年以内の従業員が、現在働いている職場にキャリアパスが見えないと感じる場合、早期離職につながる可能性があります。
前出のアンケート結果からも、社会人経験3年未満の第二新卒で早期離職を検討している求職者の転職しようと思った理由として「もっとやりがい・達成感のある仕事がしたい」が1位で最多、「自身の市場価値を高めたい、ステップアップしたい」が5位だったことがわかっています。
従業員の早期離職を防ぐには、従業員が経験やスキルを積める環境をつくり、キャリアパスを描きやすくなるような工夫が必要だと言えるでしょう。
早期離職が企業におよぼす影響
早期離職者が増えると、企業にはさまざまな影響が及ぶ可能性があります。
採用・育成コストが増大する
早期離職者が増えると新たな人材を補充しなければなりません。
企業が新たな人材を獲得するには、求人広告費などの採用コストや、選考プロセスに関わる従業員の給与などが必要になります。また、新卒採用の場合は、新入社員を育成するためのコストもかかります。
早期離職が増えると、これまでかけたコストが無駄になるだけでなく、新たな人材を獲得し育成する必要があり、さらにコストが増大するでしょう。
企業イメージが低下する
企業イメージは消費者の購買意欲を左右し、売上に大きく影響するため、企業にとって非常に重要です。離職率が高くなると、企業イメージの低下につながりかねません。
特に昨今は、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の利用者が増えており、企業に関する評判がSNSを通じて簡単に拡散されてしまう時代です。SNSを通じて「職場環境が良くない」「ハラスメントに遭った」といったネガティブな情報が広まれば、企業の評判を傷つける原因になるかもしれません。
リーダーとなり得る人材が育たない
優秀な人材を獲得しても、早期離職が続くと、次世代のリーダーの育成に影響を及ぼす可能性があります。
将来のリーダーを育てるには、優秀な人材の定着率を高めることが重要です。次世代のリーダー候補者には、企業でさまざまな経験を積んでもらう必要があります。
しかし、優秀な人材が早期離職するとリーダーとなり得る人材が育たず、結果として企業の将来的な安定性が損なわれることになるでしょう。
早期離職を防止するために企業ができる対策
早期離職者が増えると企業にさまざまな影響をもたらすため、早めの対策が求められます。ここからは早期離職を防止するために企業ができる対策を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
採用ミスマッチを減らす
早期離職を防止するために企業ができる対策の一つは、採用ミスマッチを減らすことです。早期離職者のなかには、採用ミスマッチによって離職を決断した人もいます。就職活動の段階で、すでに採用ミスマッチに不安を抱えているケースも少なくありません。
あさがくナビの「2024年卒学生の就職意識調査(ミスマッチ)2023年3月版」では、採用ミスマッチに不安を感じている求職者の割合が8割程度だったこともわかっています。
就職において、ミスマッチへの不安はありますか? |
割合 |
とても不安がある |
36.9% |
やや不安がある |
39.7% |
どちらとも言えない |
12.9% |
あまり不安はない |
7.1% |
不安はない |
3.4% |
また、求職者の不安を取り除くには、求人情報や面接を通じて、誤解を与えない正確な情報をできるだけ多く発信することが大切です。
求職者がミスマッチを防止するために重視したい項目は、「仕事内容・配属先」「会社の雰囲気・カルチャー」「働き方(休日休暇・労働時間)」が60%以上でした。
ミスマッチを防ぐために重視したい項目(複数回答可) |
割合 |
仕事内容・配属先 |
73.1% |
会社の雰囲気・カルチャー |
61.1% |
働き方(休日休暇・労働時間) |
60.9% |
勤務地・転勤の有無 |
40.9% |
福利厚生 |
40.0% |
キャリア形成に関する制度(異動・昇進など) |
26.9% |
その他 |
1.4% |
自社の雰囲気や従業員が働いている様子を発信する際には、動画を活用する方法もあります。
あさがくナビの「JobTube」は、デジタルを通して企業のリアルを知りたい求職者のニーズから誕生した動画サービスです。求職者が企業の現状を知り、視覚的に理解を深められるため、採用ミスマッチの防止に効果的です。
動画発信以外の方法としては、リアル対面イベントやインターンシップで学生とのカルチャーマッチを図るのも手段の一つです。あさがくナビでは、さまざまな規模のリアルイベントとオンラインイベントを開催しています。
イベントを通じて企業のポジティブな部分だけでなく、ネガティブな部分も伝えることで、採用ミスマッチの防止が期待できます。
ワーク・ライフ・バランスを見直す
自社の労働条件を見直すのも、早期離職率を減少させる手段の一つです。
近年は多様な価値観が広がり、ワーク・ライフ・バランスを重視する人が増えています。ワーク・ライフ・バランスを整えるには、適切なプライベートの時間を確保しなければなりません。
長時間労働が常態化している場合や有給休暇が取得しにくい場合、従業員は仕事中心の生活になってしまい、結果として早期離職につながる恐れがあります。まずは自社の現状を把握し、必要に応じて労働条件を見直してみましょう。
評価制度を見直す
従業員が自分の仕事が正しく評価されていないと感じると、早期離職のリスクが高まることがあります。そのため、評価制度の見直しを検討することが求められます。
企業の人事評価は、一人ひとりの従業員に対して公平な視点で行うことが重要視されています。しかしそのプロセスにおいて、担当者個人の主観に基づく評価ばかり取り入れてしまうと、公平性に欠けた評価内容につながるため注意が必要です。
公平な評価を実現させる一つの方法として、上司に加えて同僚や部下など異なる立場の人々が関わる「360度評価」の導入を検討してみましょう。多角的な視点で評価を行えるため、より従業員の納得度を得られやすくなり、早期離職の防止につなげられます。
社内コミュニケーションを活性化させる
早期離職を防止するために、社内コミュニケーションを活性化させるのもおすすめです。
上司や先輩に悩みを相談できず、一人で抱えた結果、早期離職につながる可能性もあるため、企業は社内コミュニケーションを促進し、従業員が相談しやすい環境を整備することが重要です。
具体的な方法には、「メンター制度」や「1on1ミーティング(記事リンク)」などがあげられます。上司や先輩と定期的にコミュニケーションを取る時間が確保されるため、信頼感が強まり、相談しやすい環境を構築できるでしょう。
早期離職の防止は早めの対策が重要
労働環境やメンター制度の見直しを通じて、早期離職への対策を行えます。しかし、入社後1年以内の離職者が多いため、早い段階から対策を講じておく必要があります。
早期離職を防止するためには、人材を募集する段階で質の高い母集団を形成することやミスマッチを防ぐことが大切です。
Re就活のスカウト機能は自社の条件にマッチする人材を絞ってアプローチできるため、質の高い母集団の形成が期待できます。活用することで、早い段階から採用ミスマッチを防ぐための対策が講じられ、早期離職の削減につながるでしょう。
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