ミートアップ採用とは、交流会のようなイベントを通じて企業の魅力を発信し、企業のファンとなった人材を獲得する採用手法の一つです。
近年はミートアップ採用を活用する企業が増えており、その背景には、採用市場の変化や仕事に対する価値観の多様化などが深く関係しています。
この記事では、ミートアップ採用を活用するメリットや課題などを解説します。採用課題でお悩みの企業の人事担当者は、ぜひ参考にしてください。
ミートアップとは
「ミートアップ(meetup)」とは、近年においては、人が集まる交流会全般を指します。もともとは、アメリカのミートアップ社が提供する同名のプラットフォームサービスのことを指していました。
一般的にはインターネットを通じて参加者を募り、カジュアルな雰囲気のなかで親睦を深めるのが特徴です。ミートアップが参加者同士での新たなコミュニティを形成するきっかけにもなっています。
ミートアップ採用とは
ミートアップを活用した「ミートアップ採用」を導入する企業が2015年頃から増えてきました。
ここでは、ミートアップ採用の定義についてわかりやすく解説します。
ミートアップを活用した採用手法の一つ
ミートアップ採用とは、求職者との直接の交流を通じて企業の魅力を伝えながら人材を獲得する採用手法のことです。自社の認知度向上やブランディングを目的とする側面もあるため、必ずしも採用を前提としているわけではありません。
一般的な求人募集では、テキスト情報がおもな伝達手段となるため、社風や職場の雰囲気など言語化が難しい情報は伝わりにくいというデメリットがあります。一方で、ミートアップ採用では、企業と参加者が対面して交流できるため、参加者が企業理解を深めやすくなるというメリットがあります。自社への興味関心が高まることで、実際の応募につながることも期待できるでしょう。
ミートアップ採用には複数の形式がある
ミートアップ採用の形式には、おもに交流会型・勉強会型・説明会型の3つの種類があります。また、特定の職種やスキルなど属性で参加者を絞り込んで開催するケースがあるのも特徴的です。それぞれ解説します。
交流会型
交流会型は、企業と参加者がカジュアルな雰囲気のなかで交流する形式です。企業側は参加者との雑談や質問を重ねることで、相互理解を深められます。参加者は従業員と軽食をとりながら、企業のリアルな社風を体感します。参加者同士の自然なコミュニケーションも促進されるでしょう。
交流会型の場合、基本的に参加者の属性は限定されません。幅広い層の求職者に参加してもらうことを目的としているため、企業の認知度を高めたい場合にも役立ちます。
勉強会型
勉強会型では、特定のテーマに関する勉強会を通じて、企業の専門性や技術力をアピールします。おもに企業の専門分野に興味がある求職者に向けて、具体的な知識や技術を共有する場となるため、エンジニアやデザイナーのように、特定スキルを持つ人や職種経験がある人にターゲットを絞るのが一般的です。
勉強会のテーマは、参加者が「自社に応募したくなる」内容にすることがポイントです。たとえば最新のトレンド技術に関する勉強会を実施し、自社でもトレンドの技術を身につけられることを伝えれば、参加者の応募意欲が高まるかもしれません。
説明会型
説明会型は、参加者に企業のビジョンやパーパス(存在意義)などを伝える形式です。企業への関心が高い求職者に向けて、会社概要を紹介できるため、面接で行う会社説明を省略しながら採用選考を進められます。
また、企業の具体的な事業内容や将来の展望などのクローズドな情報も直接伝えられるため、より具体的に自社への就職をイメージしてもらいやすくなります。
ミートアップ採用が注目されている背景
近年、採用手法の一つとしてミートアップ採用を活用する企業が増えています。その背景には、人材市場や働く人の価値観の変化などが深く関係しています。ミートアップ採用が注目されている理由をそれぞれ見てみましょう。
新たな人材獲得が難しくなっているため
企業がミートアップ採用に注目する理由の一つは、従来よりも新たな人材の獲得が難しいことです。少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により、多くの企業で人手不足が深刻化しています。
求人数に対して求職者が少ない売り手市場が続いていることもあり、採用予定人数を採用できない企業が増えています。特に認知度の低い中小企業では、十分な応募者が集まらないケースも珍しくありません。
効率良く人材を獲得するためには、求職者に自社を認知してもらい、魅力を感じてもらった上で応募につなげることが重要です。そこで、自社への興味関心を高めるため、採用ブランディングの一環としてミートアップ採用の活用が注目されるようになりました。
企業と求職者の相互理解を深めるため
仕事に対する価値観が多様化するなか、勤務時間や休日などの労働条件のほかに、企業のビジョンやパーパスを重視する求職者が増えています。
あさがくナビのアンケートでは、就職活動において企業のビジョンやパーパスを「重視する/どちらかと言えば重視する」学生が8割近くを占めました。
※出典:「あさがくナビ2023登録会員対象 2023年卒学生の就職意識調査(企業のビジョン・パーパス(存在意義))2021年12月版」(あさがくナビ)(https://service.gakujo.ne.jp/wp-content/uploads/2023/11/211223-navienq.pdf)
この点、ミートアップ採用は、求職者に企業のビジョンやパーパスを伝えるのに適していると言えるでしょう。
また、ミートアップ採用はカジュアルな雰囲気で開催されるため、求職者に過度な緊張感を与えることなく企業の魅力をダイレクトに感じてもらえます。そのため、求職者は本音を話しやすくなり、自身の率直な意見やキャリアについて企業側に伝えられるようになります。これにより、企業と求職者の相互理解を深めることができるのです。
企業がミートアップ採用を活用するメリット
ミートアップ採用を活用すると、採用に対するさまざまな効果が期待できます。おもなメリットを紹介します。
自社のファンを増やせる
ミートアップ採用は企業説明会よりも少人数で開催するのが一般的なため、参加者と密度の濃い交流が実現できます。参加者に企業のカルチャーを直接伝えられるため、採用に関係なく自社のファンが増えることを期待できます。
また、参加者が企業の魅力に関する情報をSNSで発信する機会が増えれば、さらなるファンの拡大や企業ブランドの向上が見込めるでしょう。
母集団の形成につながる
ミートアップ採用では求人情報だけでは伝えきれない企業の魅力を伝えられるため、自社に興味を持つ母集団の形成がしやすくなります。
最近の採用活動においては、インターネット媒体での採用手法が主流となりつつあり、テキストや動画を用いて自社の特徴を発信している企業が多いです。ミートアップを用いた採用手法では参加者と直接対面で話ができるため、テキストや動画より多くの情報を伝えられます。
企業の魅力を参加者が直に感じることで、自社に興味を持つ母集団の形成が容易になれば、必要な人材をより獲得しやすくなるでしょう。
採用ミスマッチを低減できる
企業がミートアップ採用を活用すると、参加者はより企業への理解を深められるため、採用ミスマッチの低減が期待できます。
求職者はより良い環境や条件の職場を求めているため、内定を出しても入社するとは限りません。また、入社後にギャップが生じた場合、早期離職につながる恐れもあります。
このような採用ミスマッチを避けるには、求職者が求めている情報を企業が積極的に提供することが重要です。
あさがくナビのアンケートでは、学生が採用ミスマッチを防ぐために「仕事内容・配属先」「会社の雰囲気・カルチャー」を重視していることがわかっています。
※出典元:「2024年卒学生の就職意識調査(ミスマッチ)2023年3月版」(あさがくナビ)(https://service.gakujo.ne.jp/wp-content/uploads/2023/10/230315-navenq.pdf)
ミートアップ採用により、事前に先輩から仕事の進め方に関する話を聞いたり、従業員間の雰囲気を体験したりすることで、内定辞退や早期離職の可能性を減らせるでしょう。
低コストで開催できる
ミートアップ採用では、目的に応じて開催場所や方法を自由に決められるため、コストをおさえながら実施できます。
たとえば、小規模な勉強会やカジュアルな交流会であれば、社内の会議室やカフェ、レンタルスペースを利用することで、コストがかかる場所を用意する必要がなくなります。また、遠方からの参加者や忙しい参加者を想定し、オンラインで開催することも可能です。
このようにミートアップ採用は、企業の文化や参加者のニーズに合わせた形式を選べるため、効果的かつ効率的な採用活動が行えるのです。
企業がミートアップ採用を活用する際の課題
自社でミートアップ採用を活用する際には、担当者の業務負担の増加や集客方法の工夫などさまざまな課題があります。ミートアップ採用の効果を最大限に引き出すために、事前に課題を把握し対策を検討しておきましょう。
担当者の業務負担が増える
ミートアップ採用は企画から開催までのすべてを自社で担うため、担当者の業務負担が増える可能性があります。
ミートアップ採用の効果を高めるためには、継続して開催することが重要です。同じ求職者が何度も参加することも想定されるため、都度異なる企画を考える必要もあるでしょう。特に勉強会型の場合、毎回別のテーマを設定しなければ、複数回参加する求職者の知識を深められません。
また、ミートアップ採用のイベント開催ペースが早いとその分負担もかかります。企業によっては月に複数回のペースで開催しているケースもありますが、その分業務負担は増えてしまいます。半年や1年に複数回実施するなど、開催頻度を減らすことを検討したほうがよい場合もあります。
集客方法を工夫する必要がある
予定人数のイベント参加者を期間内に集めるためには、ミートアップ採用の集客方法を工夫する必要があります。
具体的には、自社のホームページに加えて、SNSでの告知が有効です。近年はSNSを活用して就職活動を進めている求職者も多いため、知名度のあるSNSで告知すると、より多くの人に情報が伝わるでしょう。
集客に効果的なツール「あさがくナビコミュニケーター」
SNSでの開催告知を行う際には、「あさがくナビコミュニケーター」の活用をご検討ください。あさがくナビコミュニケーターとは、学生情報を一元管理できる採用管理システムです。
学生が慣れ親しんでいるLINEを活用してコミュニケーションを取るため、メッセージの高い開封率と返信率が期待できます。求職者の基本情報や仕事に対する興味関心などを指定し、対象グループ別に限定した情報配信を行うことも可能です。
すぐに人材が獲得できるとは限らない
ミートアップ採用でイベントを開催しても、すぐに採用につながるとは限りません。そもそもミートアップ採用の目的は、参加者から自社へ興味を持ってもらうことであり、応募や選考を前提としているわけではないためです。
参加者も、ミートアップ採用を気軽に参加できるイベントとして捉えています。ミートアップ採用を実施する際、企業側の採用ニーズに適した手法かを再確認しておく必要があるでしょう。
ミートアップ採用を開催するまでの手順
ミートアップ採用でイベントを開催するまでの基本的な手順は、次のとおりです。
- イベントの目的とテーマ、ターゲットを設定する
- インターネット上で集客を始める
- 開催に向けて準備をする
- ミートアップを開催する
- 振り返りを行う
各手順を詳しく解説します。
1.イベントの目的とテーマ、ターゲットを設定する
まずは、自社がどのような目的やテーマでミートアップ採用のためのイベントを開催するかを決めましょう。イベントの目的を設定する際のポイントは、採用活動に関する課題を解決に導けるかどうかです。
たとえば、次のような例があります。
- 自社の魅力をより多くの求職者に伝えたい
- 応募者を増やしたい
- 自社の知名度を高めたい など
加えて、どのような層に参加して欲しいかも検討しましょう。ターゲットを絞ることで、テーマを設定しやすくなります。
2.インターネット上で集客を始める
次に、求人サービスや自社のホームページなどを利用してイベントを告知し集客を図りましょう。
近年はSNSの利用者も多いため、SNSでの集客も検討します。集客を始める段階では、参加者にイベントの概要を伝えるメールのテンプレートも用意しておきましょう。テンプレートがあると、参加者から問い合わせがあった際にスムーズに対応できます。
3.開催に向けて準備をする
集客を始めたら、イベントの開催に向けて準備をしましょう。必要な準備はミートアップ採用の形式によります。たとえば、勉強会型や説明会型の場合は、投影資料や企業説明会資料が必要です。交流会型の場合は、ランチや軽食などの食事の準備を行います。
また、資料数の不足や機材のトラブルなどで当日の進行に支障が出ると、参加者に不安や不満などマイナスのイメージを与えてしまう可能性があります。オンラインで開催する場合は、通信トラブルを想定した対策も検討しておくとよいでしょう。
当日はスムーズに進行できるよう、どのプログラムにどのくらいの時間をかけるかをスケジューリングしておきましょう。
そのほかにも、参加者に配布するアンケート書類を用意しておくと、次回の開催に活かせます。
4.ミートアップを開催する
当日は事前に立てたスケジュールに沿って、プログラムを進行していきます。ミートアップ採用では社風や従業員の雰囲気など、参加者がイベントに参加することでしか得られない情報をより多く伝えることがポイントです。
参加者の疑問や不安を解消するために、質疑応答の時間を設けるのもよいでしょう。質疑応答の際には参加者の不安を解消できるよう、気軽に質問できる雰囲気作りを心がけることも大切です。
5.振り返りを行う
イベント開催後は、参加者から回収したアンケートをもとに振り返りを行いましょう。アンケートの内容を分析すると、今後の開催に対する新たな課題が見つかることもあります。
課題の解決策を検討し、次回からはより良質なイベントを開催できるようにしましょう。ミートアップ採用は一度限りではなく、継続して開催することが重要です。すぐに期待する効果が現れるわけではないため、長期的に取り組める体制作りをしていきましょう。
ミートアップ採用を成功させるためのポイント
最後に、ミートアップ採用を成功させるためのポイントを解説します。ミートアップ採用を成功させるためには定期的にイベントを開催し、参加者へのフォローを心がけることが重要です。
小規模かつ定期的な開催を意識する
ミートアップ採用は、カフェでのミーティングのような小規模でカジュアルな雰囲気での開催を意識するようにしましょう。参加者の人数が少ないほうが密度の高い交流ができるため、より企業の魅力を伝えやすくなります。
また、ミートアップ採用では定期的なイベント開催が重要です。最初の参加で自社に興味を持った求職者は、イベントに複数回参加する可能性もあります。自社と交流する機会や時間が増えるほど、応募や人材の獲得につなげやすくなります。
フォローとアフターフォローを徹底する
イベントの開催時と開催後は、参加者へのフォローを徹底しましょう。
たとえば、イベントで扱ったテーマや自社の情報に関連する資料を共有するのも有効です。業界のトレンドに関するレポートや企業情報を提供することで、参加者の関心を維持させることができます。また、次回のミートアップへの参加の動機づけにもなるでしょう。自社に興味を持った参加者からの応募を促すためには、開催後にカジュアル面談を呼びかけるのも効果的です。
また、ミートアップの開催後は、参加者と定期的にコミュニケーションを取るようにします。参加者と接点を持ち続け、自社への関心を維持できれば、人材獲得に向けた次のステップに移行できる可能性があります。
ミートアップ採用を活用して自社の魅力を伝えよう
企業はミートアップ採用にてイベントを定期的に開催することにより、自社に興味を持つ母集団を形成できます。採用に関わらず自社へのファンが増えることも期待できます。また、企業と参加者の相互理解を深められるため、採用ミスマッチの低減にもつながるでしょう。
人材の獲得が激化している現代において、ミートアップ採用を上手く活用しながら、効果的かつ効率的に採用活動を進めていきましょう。
株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。