採用活動を進める上で、「良質な母集団が形成できない」「自社が求める条件に合う人材が見つからない」などの課題を抱えることもあるでしょう。課題を解決するためには、採用手法を見直すのも手段の一つです。
近年は課題の解決に向けて、ダイレクトソーシングと呼ばれる採用手法を導入する企業が増えています。
本記事ではダイレクトソーシングとはどのような採用手法なのか、企業にどのようなメリットがあるのかを解説します。活用する際の課題や効果を高めるポイントも解説するので、採用活動に関する課題を解決するためにぜひ役立ててください。
ダイレクトソーシングとは
「ダイレクトソーシング」とは自社で採用候補者を見つけ出し、直接アプローチする採用手法です。ダイレクトリクルーティングと呼ばれることもあります。
従来は求人メディアや自主応募など、求職者からの応募を待つ受動的な採用手法が一般的でした。しかし、少子高齢化による労働力不足やビジネス環境の変化の影響を受け、受動的な採用手法では人材の獲得が難しくなってきています。
変化する採用市場に対応するためには、能動的な採用手法を取り入れることが必要です。そこで注目されているのがダイレクトソーシングです。
求職者が企業にアプローチする従来の方法とは異なり、ダイレクトソーシングは企業が求職者にアプローチをかける採用手法となっています。
アメリカではすでに主流な採用手法として定着していますが、日本でも普及しつつあります。
企業がダイレクトソーシングを活用するメリット
ダイレクトソーシングは、企業側から求職者に直接アプローチする採用手法です。求人広告や人材紹介サービスの活用など、これまで活用されてきた多くの採用手法とは逆のスタイルになるため、ダイレクトソージングならではのメリットがいくつかあります。
狙ったターゲットにアプローチできる
ダイレクトソーシングを活用すると、特定のターゲットにダイレクトにアプローチできるため、自社が求める条件にマッチした人材を採用できる可能性が高まります。
求職者からの応募を待つスタイルでは、応募者のなかに自社が求める人材がどれだけ含まれているかわかりません。一方、ダイレクトソーシングは候補者の情報を把握し、自社の求める人材にアプローチできるため、良質な母集団の形成が期待できるでしょう。また、応募の段階で自社が求める条件に合う人材を集められると、採用ミスマッチの低減につながります。
とは言え、ダイレクトソーシングですべてのミスマッチを防げるわけではありません。より自社にマッチした人材を見極めるためには、求職者のニーズを把握しておくことも大切です。
あさがくナビの「2024年卒学生の就職意識調査(ミスマッチ)2023年3月版」では、採用ミスマッチを防止するために重視したい項目として、「仕事内容・配属先」「会社の雰囲気・カルチャー」「働き方(休日休暇・労働時間)」と回答した学生が60%以上だったことがわかっています。
ミスマッチを防止するために重視したい項目(複数回答可) |
割合 |
仕事内容・配属先 |
73.1% |
会社の雰囲気・カルチャー |
61.1% |
働き方(休日休暇・労働時間) |
60.9% |
勤務地・転勤の有無 |
40.9% |
福利厚生 |
40.0% |
キャリア形成に関する制度(異動・昇進など) |
26.9% |
その他 |
1.4% |
※出典元:「2024年卒学生の就職意識調査(ミスマッチ)2023年3月版」(あさがくナビ)
https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/230315
アプローチする際には「相手が知りたい情報」を積極的に共有するようにしましょう。自社に対するお互いの認識を一致させることで、ミスマッチの防止につながります。
潜在的な求職者に出会える可能性がある
ダイレクトソーシングは、自社に興味や関心を持つ求職者だけでなく、潜在的な求職者にもアプローチできます。応募を待つだけの採用手法だと、就職意欲または転職意欲が強い求職者としか出会えません。
ダイレクトソーシングは、今すぐの転職は考えていない層や転職を検討し始めた段階層、自社を認知していない層などの、いわゆる就職・転職の潜在層にもアプローチできます。潜在的な求職者にアプローチを仕掛けることで、より多くの母集団形成にもつながるでしょう。
外部コストの削減につながる
ダイレクトソーシングの活用の仕方によっては、採用コストのうち外部コストをおさえられます。採用コストは、内部コストと外部コストに分けられます。それぞれの内容は次のとおりです。
【内部コスト】
- 採用活動に携わる従業員の人件費
- 面接で来社する応募者に支払う交通費など
【外部コスト】
- 求人広告費
- 人材紹介料
外部の人材データベースを利用する場合は、外部コストが発生します。しかし、SNSや従業員の交友関係を中心に人材を探せば、外部コストをおさえて採用活動を行えます。
自社の採用力を高められる
自社でダイレクトソーシングを継続していけば、採用ノウハウが蓄積され、採用力の強化が期待できます。外部のダイレクトソーシングサービスを利用する場合、社外の担当者に任せた業務に関しては、自社に採用ノウハウが蓄積されにくい側面があります。
ダイレクトソーシングは、自社が主体となって採用活動を進めていく採用手法です。実際に活動した内容を分析し、次に活かせれば、効率的な採用活動を実現できるでしょう。
企業がダイレクトソーシングを活用する際の課題
ダイレクトソーシングは企業にとって大きなメリットがある一方で、いくつかの課題もあります。導入後に課題に直面するとスムーズに運用できなくなる可能性もあるため、事前に対策を検討しておきましょう。
採用工数が増える可能性がある
ダイレクトソーシングは求人広告や人材紹介などの採用手法に比べ、採用工数が増えることがあります。特に応募までの工数は多く、人材データベースを使った候補者検索や、スカウトメールの作成などの手間がかかります。
開封率や返信率を上げるために、ターゲットごとにメールの内容を変える工夫も必要です。また、企業が求める人材を採用するためには、適切な手段を主体的に考える手間もあります。
候補者から返信があったあとは、それぞれとやり取りする必要があるため、一人当たりにかける時間も増えるでしょう。
すぐに効果が出るとは限らない
特定のターゲットへ効果的にアプローチするためには、スカウト経験やノウハウが必要とされるため、期待した効果がすぐに出るとは限りません。
転職意欲が高い求職者を対象とする一般的な採用手法に対し、ダイレクトソーシングは潜在的な求職者にもアプローチする採用手法です。就職・転職意欲が低い、あるいは自社を認知していない求職者に興味にアプローチする場合は、とくに十分な効果が得られるまでに時間がかかりやすい側面があります。
大量採用には向いていない
一度に多くの人材を採用する予定がある場合は、ダイレクトソーシング以外の採用手法を活用したほうがよいでしょう。ダイレクトソーシングは候補者一人ひとりにかける時間が長いため、短期間で多くの人材を採用するのは難しい側面があります。
採用スケジュールに余裕があれば、ダイレクトソーシングでも最終的な目標人数を達成できる可能性はあります。しかし、急な欠員で多くの人材を補充したい場合は、ダイレクトソーシングではなく、広く応募者を募れる求人サイトや転職イベントなどの採用手法の方が適しているでしょう。
ダイレクトソーシングを活用する際の基本的な流れ
ダイレクトソーシングは多くの採用手法とスタイルが異なるため、初めて導入する際には手順を把握しておく必要があります。ダイレクトソーシングを活用する際の基本的な流れを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1.採用ターゲットの決定と採用手段の選定
まずは自社が求める条件を整理し、採用ターゲットを明確にしましょう。採用ターゲットが曖昧な場合、自社の条件にマッチしない求職者へアプローチしてしまい、採用効率が上がりません。
次に自社で決定した採用ターゲットに向けた、効果的な媒体を選定しましょう。たとえば、ITスキルの高い人材を探している場合はIT業界に特化した求人サイト、高い専門スキルを持ち合わせている人材を探している場合はハイクラス層に特化した求人サイトなどです。
2.候補者を探す
採用ターゲットを決定したあとは、自社が求める条件にマッチする候補者を探しましょう。外部の媒体を利用する場合は、データベースから候補者をピックアップします。
候補者は、外部の媒体を利用しなくても探せます。たとえば、SNSを活用するのも手段の一つです。SNSにはダイレクトメッセージ機能があるため、直接スカウトメールを送信できます。
そのほか、従業員の友人や知人、元従業員を頼りに候補者を探す方法(「リファラル採用」)もあります。
3.スカウトメールの作成・送信
アプローチをかける候補者を絞ったらスカウトメールを作成し、送信しましょう。求職者は多くのスカウトメールを受け取っている可能性があるため、自社のメールが埋もれてしまわないよう工夫する必要があります。
あさがくナビの「2023年卒学生の就職意識調査(スカウトメール)2021年11月版」では、企業選びにスカウトメールを活用している学生が50%以上だったことがわかっています。
インターンシップなどの企業選びにおいて、活用しているもの(複数回答可) |
割合 |
インターンシップ情報サイトからのお知らせメール |
60.6% |
スカウトメール |
52.3% |
条件を選択しての検索 |
48.0% |
おすすめなどのピックアップ |
25.5% |
フリーワード検索 |
17.1% |
SNSでの情報 |
15.1% |
ハッシュタグを使用しての検索 |
5.4% |
※出典:「2023年卒学生の就職意識調査(スカウトメール) 2021年11月版」(あさがくナビ)
https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/211126/
また、スカウトメールを送信する際には、「企業がそのターゲットにスカウトメールを送信したいと思った理由」を記載するとプラスの効果を期待できます。こちらについては、「求職者に「興味を持った理由」を伝える」の章で詳しく解説します。
ダイレクトソーシングは、相手がメールを開封しなければ次のステップに進めません。SNSを活用する学生も多いため、まずは開封率を上げることを目指しましょう。
4.選考
スカウトメールを送信した候補者から返信があったら、相手の意思を確認しながらやり取りを行いましょう。候補者から応募があれば、面接に進みます。ダイレクトソーシングの場合、一般的な採用プロセスのような面接ではなく、カジュアル面談がおすすめです。
緊張感が緩み、気負わず話せるスタイルなら、候補者の本音を引き出しやすくなります。面談場所はオフィスではなく、カフェを利用するのもよいでしょう。採用予定人数に達するまで、スカウトメールの送信と選考を繰り返します。
ダイレクトソーシングの効果を高めるためのポイント
採用手法を見直してダイレクトソーシングを活用したからといって、必ず効果が出るとは限りません。効果を高めるためには、いくつかのポイントをおさえておく必要があります。
専用の担当者を確保する
ダイレクトソーシングの効果を高めるためには、専用の担当者を配置することも大切です。一般的な採用手法に比べると、ダイレクトソーシングの工程数は多い傾向にあります。
スカウトメールは、候補者一人ひとりのプロフィールを見て個別にメールを送信するほか、一斉送信も可能です。しかし、送信後のやり取りは個別に対応しなければならず、候補者一人当たりに多くの手間がかかります。また、コミュニケーションが途切れると応募につながらなくなる可能性もあるため、候補者一人ひとりに丁寧に対応できるよう、専用の担当者を確保したほうがよいでしょう。
株式会社学情の「あさがくナビ」は、企業が求める条件で絞り込んでスカウトメールを一斉送信でき、担当者の負担軽減に貢献します。ダイレクトスカウトのメール開封率は、平均で46.9%です。AIエンジニアに関しては77.0%と、高い開封率が期待できます。
自社の魅力を積極的にアピールする
潜在的な求職者にもアプローチするためには、まず自社に興味を持ってもらうことが大切です。自社への関心を高めるためには、企業の魅力を積極的にアピールする必要があります。
魅力をアピールする際には、動画の活用を検討してみましょう。あさがくナビの「2024年卒学生の就職意識調査(動画での情報収集)2022年8月版」では、インターンシップに応募する前後で動画を視聴したら「志望度が上がる」と回答した学生が7割を超えたことがわかっています。
また、動画で見たいものは、「仕事内容」や「1日の流れ」「事業内容」が多い傾向にあります。
動画で見たいもの(複数回答可) |
割合 |
仕事内容の紹介 |
73.0% |
1日の流れ紹介 |
59.5% |
事業内容の紹介 |
47.3%% |
第三者から、社員や採用担当へのインタビュー |
38.0 |
インターンシップコンテンツの紹介 |
36.0% |
オフィス紹介 |
30.0% |
先輩社員からのメッセージ |
25.4% |
人事担当者からのメッセージ |
22.3% |
工場や研究施設の紹介 |
14.1% |
※出典元:「2024年卒学生の就職意識調査(動画での情報収集)2022年8月版」(あさがくナビ)(
https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/220802)
学生のニーズに対応した内容の動画を活用することで、志望度アップが期待できるでしょう。
株式会社学情では、動画ならではの強みで企業の魅力をアピールできる「JobTubeシリーズ」を展開しています。SNSやアプリで日常的に動画に慣れ親しんでいる世代向けに、企業の雰囲気をリアルに伝えられる職場体験型の動画を作成できます。求人掲載に特化した動画や企業の魅力を伝えるパンフレット動画なども制作できるので、採用活動での活用を検討してみてください。
MVVやパーパスを伝える
ダイレクトソーシングを活用する際には、候補者に自社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やパーパスを伝えるよう心がけましょう。あさがくナビの「2024年卒学生の就職意識調査(パーパス)2022年11月版」では、パーパスを知ると「志望度が上がる」「どちらかと言えば志望度が上がる」と回答した学生が6割を超えていることがわかっています。
志望度が上がると回答した学生からは、「ただ単にお金を稼ぎたいわけではない」「パーパスを通して、企業が事業を展開する目的を知りたい」「企業が目指す方向性と、自身の関心が一致していると志望度が上がる」といった声もありました。
※出典元:「2024年卒学生の就職意識調査(パーパス)2022年11月版」(あさがくナビ)(
https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/221129)
ダイレクトソーシングでターゲットとコンタクトを取る際には、自社の存在意義や将来の展望などを発信することも大切です。
求職者に「興味を持った理由」を伝える
求職者と個別にコンタクトを取る際には、「なぜアプローチしたのか」について具体的な理由を添えると、より自社への興味を引くことが可能です。
あさがくナビの「2023年卒学生の就職意識調査(スカウトメール)2021年11月版」では、メールに記載されているとうれしいこととして、「自分にスカウトを送ろうと思った理由」が最も多かったことがわかっています。
スカウトメールに記載されているとうれしいこと(複数回答可) |
割合 |
自分にスカウトを送ろうと思った理由 |
71.8% |
具体的な仕事内容 |
61.3% |
参加可能なインターンシップ日程 |
56.0% |
希望の業種や職種、条件と合致するか |
46.7% |
出身大学の先輩情報 |
19.9% |
専攻内容や大学時代の取り組みが活かせるか |
17.5% |
※出典元:「2023年卒学生の就職意識調査(スカウトメール)2021年11月版」(あさがくナビ)(
https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/211126/)
テンプレートを使用すると求職者に見透かされてしまうリスクもあるので、スカウトを送信しようと思った理由は送る相手に合った内容にカスタマイズするのがおすすめです。
外部サービスの導入も検討する
ダイレクトソーシングは、外部サービスに依頼することも可能です。一般的な採用手法に比べて工程数が多いため、自社で必要な人員を確保できない場合は、外部サービスの導入も検討しましょう。
外部サービスは採用のプロなので、ダイレクトソーシングのノウハウを持ち合わせています。採用業務の一部をプロに任せることで、効率的な採用活動が期待できます。外部コストはかかりますが、採用担当者の負担も軽減できるでしょう。
ダイレクトソーシングの活用が向いているケース
最後に、ダイレクトソーシングはどのような企業に向いているのかを紹介します。
採用活動が停滞している
これまでの採用手法では「採用予定人数を確保できない」、「自社が求める条件に合う人材からの応募が少ない」などの課題を抱えている企業には、ダイレクトソーシングがおすすめです。
ダイレクトソーシングは自社の条件に合う人材にアプローチする採用手法なので、ターゲットから応募があれば、良質な母集団を形成できます。狙ったターゲットにダイレクトにアプローチできるため、採用活動の停滞に課題を感じている企業にとっては、解決策として有用な手段となるでしょう。
専門性が高い職種の人材を探している
ダイレクトソーシングは、一般的な採用手法では見つけにくいとされている専門性が高い職種の人材を探している企業におすすめです。専門性の高い職種の人材は他社も手放したくないため、現職場で好待遇を受けているケースも多く、転職市場に現れにくい側面があります。
ダイレクトソーシングは、SNSを通じて求職者に直接アプローチできるため、専門性が高い職種の人材を見つけられる可能性が高まります。
ノウハウが蓄積されるまでは外部サービスの利用がおすすめ
ダイレクトソーシングは一般的な採用手法とはスタイルが異なるため、スカウト経験やノウハウが必要です。経験やノウハウがない状態で導入しても、思うような効果が出るまでに時間がかかる可能性もあります。
自社で初めて導入する際には、外部サービスの利用を検討しましょう。外部サービスは採用活動の実績や経験、知識が豊富なので、効率的に採用活動を進められます。
就職・転職・採用を筆頭に、調査データ、コラムをはじめとした担当者の「知りたい」「わからない」にお応えする、株式会社学情が運営するオウンドメディアです。