HR用語の基礎知識

エンゲージメント

人事の図書館 編集長 大西直樹
「エンゲージメント(engagement)」とは、一般的に「約束」「雇用(契約)」「婚約」等を意味する言葉ですが、人事領域では従業員が組織に抱く「愛社精神」「愛着心」「思い入れの強さ」といった意味の「従業員エンゲージメント」と、「熱意をもって仕事に取り組める」「仕事から活力を得ている」といった「ワーク・エンゲージメント」という2つの意味で使われています。

◆ワーク・エンゲージメント
「ワーク・エンゲージメントとは仕事に関連するポジティブな心理状態で、活力、熱意、没頭によって特徴づけられるものを示している。そのエンゲージメントとは、特定の対象や一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知のこと」と、オランダの心理学者であるシャウフェリらは定義しています。ワーク・エンゲージメントの高い人は、仕事にやりがい(誇り)を感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て活き活きとしている状態であるといわれています。

◆従業員エンゲージメント
「従業員エンゲージメントとは、会社と従業員との間の信頼関係が構築され、従業員が会社に対して貢献したいと思い、相互での愛着心があること」とアメリカの心理学者、ウィリアム・カーンが提唱したといわれています。近年米国のHRや人事開発業界などでも「エンゲージメント」という言葉が注目されており、そこでも従業員が企業との関係について、どのくらい愛情を持っているか、という意味で使用されています。

これまで日本では、終身雇用という仕組みが一般的だったため、働いていく中で従業員エンゲージメントが自然と高まっていくことが期待できました。しかし終身雇用が崩壊した現在では転職することも一般的になっており、優秀な社員が好待遇で引き抜かれる、より良い待遇を求めて転職していくということが日常的に発生しています。さらに、労働人口の減少により採用環境はさらに厳しくなっています。「人が出ていきやすく、人を採用しづらい」環境が加速している中で、金銭的な側面だけではない企業と従業員との関係性づくり=「エンゲージメント」の向上が重要視されているのです。

日本のエンゲージメントスコアは世界最下位レベル。

エンゲージメントを分解すると、主に下記3つの要素に分かれます。

◆貢献感 従業員が組織に貢献できていると感じるかどうか。
◆適合感 組織のカルチャーに自分がフィットしていると感じるかどうか。
◆仲間意識 メンバーと協調性を持って仕事ができているかどうか。

従業員は、これらの要素を満たしてくれると感じると、組織に対し高いエンゲージメントを持つようになります。著名なグローバルコンサルティングファームであるタワーズワトソン(現ウイリス・タワーズワトソン)の調査によると、「エンゲージメントが高水準を維持している企業は、低い企業と比べて1年後の営業利益率の伸びが3倍」になるという結果が出ました。またエンゲージメントの高い人は離職率が低く、メンタルヘルス不調にもなりにくいという報告もされています。

人材不足が深刻化する日本企業は、エンゲージメントレベルを向上させ、人材育成、業績貢献に結び付けていくことが急務です。しかし、日本のエンゲージメントスコアは世界最下位レベルと言われています。米ギャラップ社が2017年に発表した調査「State of the Global Workplace 2017:GALLUP」によると、日本のエンゲージメントスコアは調査対象139カ国中132位という結果になりました。「非常に意欲的な社員」の割合も世界平均が15%なのに対し、日本ははわずか6%に過ぎないという結果でした。この調査報告をきっかけに、日本でも大企業だけでなく、中小企業においてもエンゲージメントの向上を経営の優先課題として掲げるケースが増えています。
エンゲージメントの向上を図るには、まず組織のエンゲージメントを測定する必要があります。その手段として最も多く用いられているのがアンケート調査です。米ギャラップ社が組織の「エンゲージメント」を測定する際に用いる「Q12(キュー・トゥエルブ)」という、12の質問があるのでご紹介いたします。

Q1 職場で自分が何を期待されているのかを知っている。
Q2 仕事をうまく行なうために必要な材料や道具を与えられている。
Q3 職場で最も得意なことをする機会を毎日与えられている。
Q4 この7日間のうちに、良い仕事をしたと認められたり、褒められたりした。
Q5 上司または職場の誰かが、自分を一人の人間として気にかけてくれているようだ。
Q6 職場の誰かが自分の成長を促してくれる。
Q7 職場で自分の意見が尊重されているようだ。
Q8 会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる。
Q9 職場の同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている。
Q10 職場に親友がいる。
Q11 この6カ月のうちに、職場の誰かが自分の進歩について話してくれた。
Q12 この1年のうちに、仕事について学び、成長する機会があった。

「完全に当てはまる」を5点、「やや当てはまる」を4点、「どちらともいえない」を3点、「やや当てはまらない」を2点、「完全に当てはまらない」を1点で計算し、スコアとして定点的に観測していきます。例えば、部署間で比較したり、前年と比較することで、今現在自分の組織のエンゲージメントはどうなのか、また、どのように変化をしたのかが可視化されます。一般的に、人のやりがいや気持ちは定量化しづらいと言われていますが、このように定点観測をすることで、組織の課題や強みが見えてきます。


会社としての人事評価の仕組みを整えることが非常に重要。

では、エンゲージメントを向上させるためには、どのような取組みが必要なのでしょうか。

◆会社の情報、経営者の考えを伝える
会社に対して不信感を持つのは、会社の情報やトップの考えがオープンにされていないことが原因の1つです。その解決のためには、会社がどこに向かおうとしているのか、どんな世界を実現したいと思っているのか、考えていることやメッセージを定期的に従業員に伝えていく必要があります。社長等の経営層からのメッセージ、普段業務で接する上司からのメッセージ等が正確に現場の従業員に伝わっているのか、そのメッセージに矛盾は無いか、振り返ってみると良いのではないでしょうか。

◆社内のコミュニケーションを活性化させる
社内の同僚やチームメンバー等と良好な関係を築くことも、エンゲージメントを高めるうえで役に立ちます。社内で人とのつながりが感じられなくなり、コミュニケーション不全が起きると、会社への愛着が低下してしまうので注意が必要です。このチームのために頑張りたい、この人のために貢献したいと思えるような人間関係作りが求められます。例えば部門横断的なプロジェクトを行ったり、ランチ交流会やイベントを主催したりする等、社内のコミュニケーションが活性化するような仕組みを取り入れていきましょう。

◆適切な人事評価とフィードバックを行う
エンゲージメントを高めていくためには、従業員に「会社はきちんと自分のことを認めてくれている」「自分を正当に評価してくれている」という意識を持ってもらうことも必要です。人は誰かに必要とされていると感じることで、自分自身も貢献したいという気持ちを抱くことができます。そのためには、会社としての人事評価の仕組みを整えることが非常に重要です。現場のマネージャに任せきりにしていると、給与や具体的なフィードバック等が不十分になってしまうこともあるので注意しましょう。どのような指標で人事評価を行うのかを従業員にきちんと伝え、こまめに評価のフィードバックの機会を設けることが大切です。

労働者人口が減少しつつある中、エンゲージメントを高めて、職場への定着率を高めるということは非常に重要です。エンゲージメントは定量化しづらいと思われがちですが、アンケートをとったりすることで定量化は可能です。また、向上するための人事評価制度、マネジメントを実践することで向上させることもできます。まずは自社の従業員エンゲージメントの状況を把握し、向上させるための施策を検討してみてはいかがでしょうか。

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