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中小企業と学生のマッチング促進施策「ユースエール認定制度」とは?

安倍政権の主要政策である「働き方改革」の議論が進められ、さらには長時間労働是正に関する報道も相次いでおり、これまでの働き方を見直す気運が高まっている。こうした世の中の流れは就活生にとっても無関係ではない。2017年卒学生は企業を選ぶ上で、業界や仕事内容、社風といった点だけでなく、労働環境についても重きを置く傾向が見られる。弊社主催合同企業セミナー「就職博」に来場した2017年卒学生に対するアンケート結果でも、企業を選ぶポイントとして、「福利厚生が充実している」(20.9%)、「地元で就職できる」(14.3%)、「離職率が低い」(8.5%)等の労働環境や働きやすさに関する項目がいずれも前年を上回った。

そうした中で、人材育成方針や教育訓練計画を策定していたり、所定外労働時間の抑制に努めるなど、若者の採用・育成や労働環境の改善に積極的に取り組む企業もある。このような中小企業を「ユースエール認定企業」として認定する制度が2015年10月からスタートした。採用活動の場では、大手企業と比べると中小企業は知名度という点で劣勢を強いられがちであるが、労働環境面で大々的にアピールができれば学生が興味を持つきっかけになるため、今後注目度が高まりそうな制度である。今号ではこのユースエール認定制度について取り上げる。

Q.企業を選ぶポイントは?(2つまで選択)

出所:学情「就職博」就活アンケート
(2017年卒学生については2016年3~10月調査の、2016年卒学生については2015年3~10月調査の平均値を算出)

ユースエール認定制度とは

ユースエール認定制度とは、若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業を、厚生労働大臣が「ユースエール認定企業」として認定する制度である。これは、新卒学生等の若者と企業との間に生じるミスマッチの是正を主目的として2015年10月より順次施行されている「青少年の雇用の促進等に関する法律」(若者雇用促進法)の一環として実施されているものである。認定によって様々なメリットがあり、厚生労働省は以下の6点を掲げている。

メリット1

ハローワークなどで重点的PRを実施
 「わかものハローワーク」や「新卒応援ハローワーク」などの支援拠点で認定企業を積極的にPRすることで、若者からの応募増が期待できる。

メリット2

認定企業限定の就職面接会などへの参加が可能
各都道府県労働局・ハローワークが開催する就職面接会などについて積極的に案内するため、正社員就職を希望する若者などの求職者と接する機会が増え、より適した人材の採用を期待できる。

メリット3

自社の商品、広告などに認定マーク(右図)の使用が可能
認定企業は認定マークを、商品や広告どに付けることができる。認定マークを使用することによって、優良企業であるということを対外的にアピールできる。

メリット4

若者の採用・育成を支援する関係助成金を加算
認定企業が次の各種助成金を活用する際、一定額が加算される。
⑴キャリアアップ助成金、⑵キャリア形成促進助成金、⑶トライアル雇用奨励金、⑷三年以内既卒者等採用定着奨励金

メリット5

日本政策金融公庫による低利融資
株式会社日本政策金融公庫において実施している「地域活性化・雇用促進資金(企業活力強化貸付)」を利用する際、基準利率から-0.65%での低利融資を受けることができる。

メリット6

公共調達における加点評価
公共調達のうち、価格以外の要素を評価する調達(総合評価落札方式・企画競争方式)を行う場合は、契約内容に応じて、認定企業を加点評価するよう、国が定める「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針」において示された。

このように、若者の採用・育成に積極的であることを示し、採用時にアピールができるだけでなく、融資や公共調達等においてもメリットがある制度である。
「ユースエール認定企業」として認定されるためには、⑴中小企業(常時雇用する労働者が300人以下の事業主)であり、⑵以下の基準を満たせば認定企業となることができる。卒後3年までの新卒者に占める離職者数の割合、残業時間の上限、有給休暇取得率等が数値で定められているほか、求人情報内での採用者数・離職者数や平均勤続年数などの公表といったことが必要とされる。

認定基準

1 学卒求人(※1)など、若者対象の正社員(※2)の求人申込みまたは募集を行っていること
2 若者の採用や人材育成に積極的に取り組む企業であること
3 以下の要件をすべて満たしていること
  • 直近3事業年度の新卒者等(※3)の正社員として就職した人の離職率が20%以下(※4)
  • 前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下または週労働時間60時間以上の正社員割合が5%以下
  • 前事業年度の正社員の有給休暇の年間付与日数に対する取得率が平均70%以上または年間取得日数が平均10日以上
  • 直近3事業年度において、男性労働者の育児休業等取得者が1人以上または女性労働者の育児休業等取得率が75%以上(※5)
  • 「人材育成方針」と「教育訓練計画」を策定していること
4 以下の雇用情報項目について公表していること
  • 直近3事業年度の新卒者などの採用者数・離職者数、男女別採用者数、平均継続勤務年数
  • 研修内容、メンター制度の有無、自己啓発支援・キャリアコンサルティング制度・社内検定の制度の有無とその内容
  • 前事業年度の月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得対象者数・取得者数(男女別)、役員・管理職の女性割合
5 過去に認定を取り消された場合、取り消しの日から起算して3年以上経過していること
6 過去に[7]から[12]までに掲げる基準を満たさなくなったため認定辞退を申し出て取り消した場合、取消しの日から3年以上経過して いること(※6)
7 過去3年間に新規学卒者の採用内定取消しを行っていないこと
8 過去1年間に事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと(※7)
9 暴力団関係事業主でないこと
10 風俗営業等関係事業主でないこと
11 風俗営業等関係事業主でないこと
12 重大な労働関係法令違反を行っていないこと

※1 少なくとも卒業後3年以内の既卒者が応募可であることが必要です。
※2 正社員とは、直接雇用であり、期間の定めがなく、社内の他の雇用形態の労働者(役員を除く)に比べて高い責任を負いながら業務に従事する労働者をいいます。
※3 新規学卒者を対象とした正社員求人または採用枠で就職した者を指し既卒者等であって新卒者と同じ採用枠で採用した者を含みます。
※4 直近3事業年度において新卒者等の採用実績が無い場合、他の要件を満たしていれば本要件は不問となります。
※5 男女ともに育児休業等の取得対象者がいない場合は、育休制度が定められていれば可とします。また、「くるみん認定」を取得している企業については、くるみんの認定を受けた年度を含む3年度間はこの要件を不問とします。
※6 [3][4]の基準を満たさなくなったことを理由に辞退の申出をし、取り消された場合、取消しの日から3年以内でも再度の認定申請ができます。
※7 離職理由に虚偽があることが判明した場合(実際は事業主都合であるにもかかわらず自己都合であるなど)は取り消します。

出所:厚生労働省ホームページ「ユースエール認定制度」

ユースエール認定制度が2015年10月からスタートし、2016年12月上旬段階で130を超える企業が認定されている。認定されるためのハードルは決して低くはない。それでもそのハードルを乗り越え認定に至った企業の中から、東京都第一号の株式会社ビービージーシーと神奈川県第一号の株式会社NSPの声を紹介する。

株式会社ビービージーシー 代表取締役 板橋 隆行 氏

■認定年月日/2016年1月14日 ■所在地/東京都練馬区 ■従業員数/8名
■事業内容/ERPパッケージ、会計等のシステム構築・運用・保守、システム基盤の設計・構築、ITコンサルティング


Q.1「ユースエール認定企業」に申請されたきっかけ、理由をお教えください。

IT業界はブラックというイメージが広がり若者に敬遠される傾向にありますので、そうではない企業もあるということをアピールしたかったためです。加えて、毎年それなりの人材育成予算を投入していますので、助成金が有利になるというのも理由です。

Q.2「ユースエール認定企業」の認定に向けて、意識して取り組まれたことをお教えください。

就業規則を見直しました。認定に向けては産休・育休制度の詳細を就業規則に加筆する程度でしたが、規則の内容について改めて社員と共有する機会となりました。一方、東京都第一号企業だったということもあり、基準に達しているかを確認する問い合わせが労働局の担当者から何度もあり、安心いただくのに苦労しました。

Q.3「ユースエール認定企業」として認定されたことで、採用活動において良かった点をお教えください。

学生に対してユースエール認定企業であることを伝えた際、昨年度は全くリアクションがなかったのですが、今年度は数名の学生から「こういう取り組みをされているのですね!」と好印象のリアクションがありました。

Q.4「ユースエール認定企業」として認定されたことで、採用活動以外で良かった点をお教えください。

社員に対して、会社が本気で社員のワークライフバランスのことを考えている、というメッセージになりました。

Q.5「ユースエール認定制度」について、要望があればお教えください。

学生に、企業がユースエール認定の要件をクリアするのがいかに大変で、経営努力の賜物であるかということを認知いただきたいです。

Q.6 貴社の、研修等の社員教育や労働環境整備、福利厚生等について、特に力を入れていることをお教えください。

若い方の研修にとても力を入れています。おそらく、業界の中でも屈指の力の入れ具合だと思います。研修内容も、一人ひとりの個性や特性を考慮してカスタマイズをし、個々人のスキルアップに向けしっかりフォローアップしています。また、残業や勤務時間については、各現場のプロジェクトマネージャやお客様と意識を合わせたうえ、プロジェクトとして管理する体制を取っています。

Q.7 学生をはじめとする若年求職者に対してメッセージがございましたらお願い致します。

昨今、特にIT業界では学生に対してもプログラミング経験を求めたり、より即戦力に近い採用を行う企業が増えている印象があります。一方、学生側はそれに呼応するように、テクニックや実績をアピールすることも多いと感じています。日本の学生は海外の同年代の若者に比べ社会との接点が限られがちのためか、就職活動が表面的なやりとりになり、結果として入社後のミスマッチが発生する要因になっていると考えています。弊社をはじめ、ユースエール認定企業はポテンシャルを重視した企業がほとんどだと思います。そういう企業もありますので、ぜひ小手先のことに振り回されるのではなく、「自分はこんな年の取り方をしていきたい」「漠然としているけどこんなチャレンジをしていきたい」「大きなことをやりたい」「社会の役に立ちたい」といった、大きな人生観を持ってほしいです。

株式会社NSP 管理本部 管理部 人事総務担当主事 杉本 利美 氏

■認定年月日/2016年3月25日 ■所在地/神奈川県横浜市 ■従業員数/227名
■事業内容/システムインテグレーション、顧客システムの開発・保守・運用支援、アウトソーシングサービス、ITインフラ構築、パッケージソフトウェア開発・保守、組み込み系ソフトウェア開発・保守、他


Q.1「ユースエール認定企業」に申請されたきっかけ、理由をお教えください。

雇用面において、自社のステータスアップが図れるものを探しており、その中で「ユースエール認定制度」を見つけ、「これは就職活動をしている学生への訴求力がありそう」と思い申請することにしました。しかもまだ始まったばかりの制度で、神奈川では取得している企業もなかったことから、「神奈川県での認定企業第1号になれる」という思いもありました。

Q.2「ユースエール認定企業」の認定に向けて、意識して取り組まれたことをお教えください。

特に意識したことはありません。初回の申請が2月、認定が翌月の3月と年度ぎりぎりだったこともあり、データ収集・分析は集中して行う必要がありましたが。現在もそうですが改めて何かをするということはなく、通常の業務の中でデータを蓄積・分析し、次の申請に備えるということをしています。

Q.3「ユースエール認定企業」として認定されたことで、採用活動において良かった点をお教えください。

求職者(学生)に対しては、一定の訴求力があったと思っています。特に女子学生の反応が良かったです。弊社は「よこはまグッドバランス賞(※)」もいただいていますが、この賞と「ユースエール認定」の2つをもって“ワークライフバランスに配慮した企業”と思っていただけているようです。また一部の大学の学生さんから「ユースエール認定企業の研究をしています」とインタビューを受けたこともあります。

※よこはまグッドバランス賞…男女ともに働きやすい職場づくりを進める中小企業に対し横浜市が認定する制度

Q.4「ユースエール認定企業」として認定されたことで、採用活動以外で良かった点をお教えください。

教育訓練に関する助成金を受給する際、ユースエール認定されていると助成の割合が高いことなどです。

Q.5「ユースエール認定制度」について、要望があればお教えください。

ユースエール認定企業が公開している職場情報は裏付けのあるデータですので、学生が就職先を選ぶ上で有益な情報だと思います。認知度向上に向け、制度自体の広報を強化いただくとともに、このような情報にアクセスしやすく、積極的に利用できるような仕組みを作り上げていただければ、と思います。

Q.6 貴社の、研修等の社員教育や労働環境整備、福利厚生等について、特に力を入れていることをお教えください。

教育体系については現在見直しを進めています。社会・時代のニーズ変化も踏まえて社員の人的および技術的な資質を向上させるものにしたいと考えています。また弊社では社員から「こうした方がいい」「こうした方が働きやすくなる」と思うものを提案できる制度があります。この制度は誰でも毎年応募でき、挙げられた意見については検討し、可能な限り実践しています。そのほか「働き方改革委員会」も設けており、主に労働者側の視点で働き方改善への取組を推進しています。

Q.7 学生をはじめとする若年求職者に対してメッセージがございましたらお願い致します。

ユースエール認定は、教育体制や育児休暇、有給休暇といった若い世代の働き方への支援を示すバロメーターについて、一定の基準を満たしている企業を国が認定、公表する制度です。あくまで、ある一定期間の成果についての認定ですから、単発で認定されているのではなく毎年認定され続けている企業については、常に働きやすい環境づくりに努力している企業であると言えるでしょう。社名は知らずともそういった企業にも目を向け、一度は訪れてみてほしいと思います。

厚生労働省担当者へインタビュー/
「ユースエール認定制度」の概要および認定によるメリットや効果について
厚生労働省 職業安定局 派遣・有期労働対策部 企画課 若年者雇用対策室  室長補佐 大山 恵美子 氏


「ユースエール認定制度」は、若者雇用促進法に基づき、中小企業(常時雇用する労働者の数が300人以下)を対象とした、学生等の若者とのマッチングを促進することを目的とした制度です。規模が小さいながらも優良な企業は多数ある一方で、学生は大企業に目が行きがちです。中小企業が学生に対し自社をPRするための有効な情報発信は難しく、そうした情報発信を支援する制度が求められていました。既に、若者の採用・育成に積極的であることを提示する「若者応援宣言企業」という制度がありますが、それをグレードアップさせたものが「ユースエール認定制度」です。「若者応援宣言企業」は過去3年間の採用者数・離職者数や平均勤続年数、有給休暇の平均取得日数といった職場情報の開示がメインですが、「ユースエール認定制度」はそれに加えて、過去3年間の新卒者等の離職率が20%以下、といった数値の基準を設けました。そうした基準を満たす企業を厚生労働大臣が「若者の採用・育成に積極的で若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業」として認定するものですので、優良企業として客観的に評価されていることを提示でき、学生とのマッチング向上に有効な制度だと考えています。

認定によるメリットは、ハローワークでの重点的なPRや、都道府県労働局・ハローワークが行う面接会・説明会での優遇措置といった採用に関するものから、助成金の加算や日本政策金融公庫からの低金利融資、国や地方自治体の公共調達での加点評価といった経済的な支援まであります。認定企業にアンケートを取ったところ、申請理由として「ハローワークでの重点的PR」や「助成金」のためという企業が多くなっています。

認定後の効果について、まず採用の局面では学生からの応募が増えた、合同企業説明会等でもブースに来てくれる学生が増えたという声をよく聞きます。また、認定されるには一定の認定基準をクリアしなくてはなりませんので、取引先から「よくこの認定を取れましたね」といった関心や賞賛、さらに、地方の企業については、地元の新聞社やテレビ局で取り上げられ、それによって認知度が高まったというケースもみられます。さらに、「そうした対外的な効果だけでなく、社内のモチベーションアップという波及効果も生んでいるようです。日常的に自社と他社を比較する機会はなかなかないと思いますが、国の制度として認定されたことで「うちの会社は実はすごいんだ」と社員の方が実感されるようです。

この制度では毎年度認定要件を満たしているか確認していきますが、認定企業からは「有給を積極的に取ろう」、「残業を減らそう」と認定維持に向けての取組を前向きに行っているという話も聞きます。認定がきっかけとなって「働きやすい職場環境作り」に向けての意識が更に高まるといった良い効果も生んでいるようです。

2015年10月に制度を創設し、現在130社強が認定されていますが、2016年度から5年間で1,000社の認定を目標に掲げています。前述したとおり数々のメリットがある制度ですので、中小企業の皆様におかれましては認定に向けて積極的にチャレンジいただきたいですし、学校や学生の皆様には就職活動における企業選択の一助としてこの制度をもっと知っていただきたいと考えています。

ユースエール認定企業の情報は 下記サイトにてご確認いただけます。

「若者雇用促進総合サイト」
https://wakamono-koyou-sokushin.mhlw.go.jp/

このサイトは、学生たちが就職活動を行う際に役立つ以下の情報をまとめたポータルサイトです。

①登録企業の就労実態等の職場情報
②ユースエール認定企業などの各種認定の取得状況
③国が実施する若者雇用関連施策
④国や地方自治体が運営する就職相談窓口
⑤ユースエール認定企業に対するインタビュー

※ユースエール認定制度について、詳しくは都道府県労働局、ハローワークへお問い合わせください。