就職活動の早期化の影響で内定から入社までの期間が長くなり、内定を受けた学生が内定ブルーに陥るケースが増えています。
内定ブルーは、本人だけでなく、企業にとっても大きな課題です。
本記事では、学生が内定ブルーになる要因と具体的な対策方法を紹介します。
内定ブルーとは?
内定ブルーとは、学生が内定承諾後に自分の選択は正しかったのかと疑問を抱いたり、はじめての社会人生活への不安や焦りで落ち込んだりする状態を指します。
ほかに「○○ブルー」と付く言葉には、マリッジブルーやマタニティブルーがありますが、その就職活動版と考えてよいでしょう。マリッジブルーは、結婚前に迷いが生じて気分が落ち込んでいる状態のことです。マタニティブルーは、出産前に起こる不安や緊張感を表します。
内定から入社までの期間が長いほど、学生が内定ブルーに陥る可能性は高まります。
近年の新卒採用は売り手市場が続いており、早期化と長期化の傾向が強まっています。これに伴い、企業側もメインの大学3~4年生対象の採用活動だけでなく、その前の学年への施策も同時並行で実施するケースも増えました。企業が採用活動に割ける人員や工数は限られており、内定者へのフォローが希薄になった結果、内定ブルーを引き起こす一因となっているのです。
内定ブルーは内定辞退につながる
ここ数年の新卒採用において、内定辞退は一定の課題となっています。
株式会社学情が2023年6月に全国の企業の採用担当者を対象に行ったアンケート調査では、「内々定辞退者数の前年度比を教えてください」との設問に「大幅に増えた」「やや増えた」と回答した企業が合わせて約3割、「例年並」と回答した企業が5割でした。
※出典:「2024年3月卒業予定者/就職戦線中間総括」(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/24sokatsu-report/)
内定辞退の要因はさまざまですが、内定ブルーがそのひとつです。 内定ブルーになった学生は、一度終えた就職活動を再開する可能性があります。学生が新たに受け直した企業のほうを選べば、すでに内定を受けていた企業は辞退することになるでしょう。
内定ブルーが起こる要因
内定ブルーが起こる要因を4つ紹介します。
- 内定先企業への不安
- 人間関係への不安
- 情報不足による不安
- 社会人になることへの不安
内定先企業への不安
入社するまでに内定先企業について考える時間が長いと、「本当にこの企業に就職して良いのか」「就職活動を続ければ、もっと条件の良い企業から内定をもらうことができるのではないか」などの不安を感じる学生もいます。
学生は、さまざまな要因で気持ちが揺らいでしまいます。たとえば、友人との会話の中で内定先企業を比較してしまう、SNSや口コミサイトなどにある些細なマイナス情報を目にするなどです。
学生が内定ブルーになったとしてもすぐに対処できるよう、企業は定期的に連絡を取り続ける必要があります。
人間関係への不安
「人」を重視して就職先を選ぶ学生にとっては、入社後の人間関係への不安も内定ブルーになる一因です。
株式会社学情が2024年卒学生を対象に行ったアンケート調査によると、「就職先の決定理由は?」という設問に対して「人(人事や社員の人柄や雰囲気)」と答えた学生が18.3%で、「携わる仕事内容」に次いで多い結果となりました。
学生は入社するまでの期間に「部署の先輩と仲良くできるだろうか」「社員同士の仲は良いのだろうか」と、入社後の人間関係について思い悩むこともあるでしょう。
このような不安を取り除くには、社員の人柄や会社の雰囲気を人事担当者が口頭で伝えるだけでなく、実際に学生自身に感じてもらうことが重要です。
実際にかかわりのある先輩・上司はもちろん、他部署の社員や会社全体の雰囲気がわかるようなイベントや同期との交流会を企画するとよいでしょう。
内定者には、遠方に住んでいる学生や、学業が忙しく時間がとりづらい学生もいます。その際は、オンラインでのイベント実施や会社の雰囲気を伝える動画、SNSを通じた定期的な情報発信が効果的です。
※出典:「2024年3月卒業予定者/就職戦線中間総括」(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/24sokatsu-report/)
情報不足による不安
内定先の企業について情報収集を行う学生は多いです。
昨今、インターネットを使えば企業の口コミや評価を簡単に見つけられます。中には、マイナスにとらえられてしまう内容や誤った情報が拡散されている可能性もあるでしょう。学生にはそれらの情報の真偽を判断しにくく、誤った情報を信じてしまう場合も考えられます。
企業は正しい情報を適切なタイミングで学生に提供する必要があります。
社会人になることへの不安
内定先の企業で働いている姿を具体的にイメージできない学生は、社会人になることに不安を感じやすいです。
今までは就職活動に専念していて不安を感じる暇がなかった学生も、内定獲得後に実感が湧き、気分が落ちこむことがあります。
とくに、内定出しが早い場合は学生にとって考える時間も多く、内定ブルーになる可能性も高いです。企業からの適切なフォローが防止策になるでしょう。
内定ブルーを解消するには内定者フォローが効果的
内定ブルーを解消するためには、内定者フォローが効果的です。
内定者フォローとは、企業が採用選考プロセスにおいて、内定者に対して行うさまざまなサポートのことを指します。
内定者フォローを実施する際のポイントや具体的事例、注意点などをこちらの記事でくわしく解説しています。ぜひご覧になってください。
内定ブルーを解消する具体的な方法
内定ブルーを解消する具体的な方法を5つ紹介します。
- 対面形式の懇親会
- オンライン面談や懇親会
- 先輩社員との交流会
- 内定者インターンシップ
- SNSツールの活用
対面形式の懇親会
内定者同士が実際に会って話すことができる、 対面形式での懇親会も、内定ブルーを解消する効果的な方法です。
内定者にはまだ社内のつながりやネットワークがありません。企業は、まずは同じ想いや志をもつ内定者同士でのつながりを作る手助けをすると良いでしょう。
企業側から働きかけて懇親会や交流会といったきっかけをつくることで、内定者からの企業への印象もよくなります。また、懇親会や交流会の内容も非常に重要です。
対面形式での懇親会の例を紹介します。筆者は新卒学生のときに、視覚以外の感覚を使って目的を達成するワークショップを体験しました。
このワークショップは、内定者全員が目隠しをした状態で、先導者に導かれながらゴールを目指します。途中、声を掛け合ってボールを受け渡すなどのミッションがあり、内定者は協力してそのミッションをクリアする必要があります。このような内容のワークショップを実施することで、内定者同士でのコミュニケーションを促し、チームでものごとを進める大切さを知ってもらえます。
対面形式ならではの企画によって内定者同士の親睦を深められるしょう。
オンライン面談や懇親会
オンラインでの面談や懇親会は、場所を選ばないところが利点です。
とくに遠方在住の学生は、対面形式のイベントに参加できない都合が考えられます。その学生は次第に孤立を感じ、内定ブルーになってしまうかもしれません。
しかし、オンラインで開催すれば長時間移動の必要がないので、遠方在住の学生であっても参加できる可能性が高くなります。
企業にとっても、会場費や交通費などのコスト削減につながる点がメリットでます。
株式会社学情が2025年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に行ったアンケート調査では、内定者フォローの内容でトップ3は「人事担当者とのオンライン面談」39.8%、「先輩社員とのオンライン面談」29.2%、「オンラインの懇親会」28.8%でした。
※出典:「2025年卒 内々定率調査 2024年3月度」(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/25naiteiritsu0301/)
それぞれの企業がオンライン上で工夫して内定者フォローをしていることがわかります。
全国に内定者がいる企業やまだ導入できていない企業は実施を検討してみてはいかがでしょうか。
先輩社員との交流会
先輩社員との交流会の実施も、内定者の不安を取り除くことができる手段のひとつです。
内定者同士のコミュニケーションだけでは不安が増長する恐れもあります。なぜなら、内定者は実際にその企業で働いたことがなく、疑問があってもその場で解消ができないからです。
よって、内定者には定期的に先輩社員と交流する機会をつくるのがおすすめです。先輩社員は自身が内定者だった際の経験をもとに、不安を解消したり、内定者の疑問に答えてくれたりするでしょう。
ほかにも、入社前から先輩社員と面識をもっていると入社後のコミュニケーションを円滑にする効果もあります。
内定者インターンシップ
内定者インターンシップとは、採用目的のインターンシップとは異なり、内定者が対象です。
内定者インターンシップでは、業務体験が有用です。
入社前に実際の業務を体験することで、内定者は自分自身が入社したあとの具体的なイメージをもちやすくなります。
企業側にとっても、内定者の早期戦力化が期待できる点でメリットです。内定者に入社前から仕事への心構えや社会人になる意識をもたせられるほか、不足スキルを自覚するきっかけも与えられます。
たとえば、営業職採用の内定者インターンシップには、オンライン商談の同席や実際の商談に向けたロールプレイング、テレフォンアポイント(企業に架電をしてアポイントを取る仕事)の練習などがあります。ほかにも、マーケティング職採用の内定者インターンシップは、企業に向けて配信するメールの内容を作成し、効果性を検証するといった例があります。
これらの内容は内定者の教育の一環にもなります。
SNSツールの活用
SNSツールの活用も、内定ブルーを解消する方法のひとつです。
近年の新卒学生は、Z世代に当てはまり、幼いころからインターネットやスマートフォンがある環境で育っています。そのため、「デジタルコミュニケーション」に長けているデジタルネイティブでもあります。
Z世代の新卒学生が慣れ親しんだSNSを通じて内定者とコミュニケーションをとり、社内の行事やできごと、雰囲気を伝えることで不安を低減できるでしょう。
就職活動で最も連絡のつきやすいツールは、電話やメールではなくLINEです。
LINEを活用したコミュニケーションの導入も検討してみると良いかもしれません。
株式会社学情のあさがくナビコミュニケーターはLINEを活用したコミュニケーションツールです。
採用時の母集団管理から採用後の内定者フォローまで幅広くご利用いただけます。
まとめ
内定ブルーが起こる要因と解消方法を具体的に解説しました。
内定ブルーの学生を放置すると、内定辞退につながってしまうかもしれません。
企業は内定者をしっかりフォローし、内定ブルーを解消しましょう。
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