従来の方法では上手く人材を獲得できず、悩んでいる企業や担当者も多いのではないでしょうか。
人材を効率的に獲得するために、信頼性に影響を及ぼすウィンザー効果を活用するのも一つの方法です。
本記事では、ウィンザー効果の意味やメカニズム、ビジネスシーンでの活用例などを解説します。また、採用活動におけるウィンザー効果の活用方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
ウィンザー効果とは
まずはウィンザー効果の意味を理解し、どのような効果をもたらすのかを確認しましょう。
信憑(しんぴょう)性や信頼性に影響する心理的効果
ウィンザー効果とは、当事者よりも第三者から発信された情報のほうが信頼されやすいという心理効果のことです。たとえば、商品やサービスに関する情報は、提供元や販売元よりも第三者からの口コミやレビューのほうが信頼性が増すとされています。
最近ではインターネットの普及により、商品の購入やサービスの利用に関して口コミを参考にする人が増えています。
企業が提供する情報はポジティブな側面を強調する傾向にありますが、実際の購入者や利用者による口コミにはポジティブなものだけでなくネガティブな意見も含まれています。
こうした率直な感想には信頼性があり、商品購入やサービス利用の意思決定をする際の判断材料となることがあります。このように、消費者の口コミがほかの人々の購買意欲に影響を及ぼすため、ウィンザー効果は「口コミ効果」とも呼ばれています。
アメリカ生まれの小説家の著書が由来
ウィンザー効果という言葉は、アメリカの小説家であるアーリーン・ロマノネスの著書「伯爵夫人はスパイ」に由来します。
小説のなかで、登場人物のウィンザー伯爵夫人が「第三者の褒め言葉がどんなときも一番効果があるのよ」と発言したことから、ウィンザー効果と呼ばれるようになりました。
ウィンザー効果が起こるメカニズム
ウィンザー効果は、情報の発信者が第三者であることによって客観的な評価を期待でき、その結果、その情報の信憑(しんぴょう)性や信頼性が向上するという一連の流れで起こります。
たとえば、企業が商品の魅力を広告でアピールしたとします。しかし、この情報が本当であっても、消費者は企業側が「商品を売り込むために誇張しているのではないか?」と疑念を抱き、情報の信頼性が低くなるケースがあります。このような心理状態は、企業と商品の間に利益関係があるために生じるものです。
一方で、実際の購入者が自分の体験に基づいてポジティブな情報を発信する場合、企業と第三者である購入者には利益関係がないため説得力が高まり、情報の信頼性が増す傾向があります。
ウィンザー効果は、前述したとおりビジネスにおいても有用性が発揮されており、企業のあらゆるマーケティング戦略に活用されています。
企業のマーケティングにおけるウィンザー効果の活用例
企業のマーケティングにおいて、ウィンザー効果は、おもに次の4つの手法で活用されています。
- 口コミ
- アンケート
- モニター
- インタビュー
一つずつ見ていきましょう。
口コミ
インターネットの普及に伴い、消費者が気軽に口コミを投稿できるようになっています。第三者による口コミやレビューは、今や消費者の購買行動に影響を及ぼす重要な要素の一つです。
特にSNSを通じた口コミは広まりやすいため、ポジティブな内容が広まれば、ウィンザー効果によって商品やサービスの売上向上につながる可能性があります。
ただし、ウィンザー効果を得るには、購入者や利用者の口コミをただ待つのではなく、企業側から積極的にアクションを起こすことも大切です。
たとえば、インフルエンサーマーケティングやオンラインキャンペーンを活用することで、ウィンザー効果を促進する方法があります。
アンケート
ウィンザー効果を狙うには、アンケートを活用する方法もあります。購入者や利用者にアンケートをとり、その内容を企業のホームページや情報誌に掲載することで、消費者の購買意欲を高められるかもしれません。
アンケートを実施するおもな方法は、次のとおりです。
- 郵送した用紙を返送してもらう
- 店頭で用意した用紙に記入してもらう
- Webの専用フォームに入力してもらう
紙媒体を用いたアンケートは、回収後に手作業で情報を入力したり集計する必要があります。そのため、近年はオンラインでのアンケートが主流となっています。オンラインのアンケートは回答が安易で、印刷や郵送にかかるコストを削減できるメリットもあります。
モニター
モニターとは特定の条件で応募者を募り、一定期間内に商品やサービスに関する感想を集める方法です。
モニターに応募してくれる人は、商品やサービスに対してポジティブな印象を持つ人が多い傾向にあります。高い意識を持つ消費者の意見が集まるため、商品やサービスの品質向上に役立つでしょう。
また、回答は一度に限らず、同じ消費者から複数回意見を得られるため、商品やサービスの変化を追跡するのにも有用です。モニターは、自社で行う方法のほかにリサーチ会社に依頼する方法もあります。
インタビュー
自社の商品やサービスに対するウィンザー効果を狙う際には、インタビューを活用する方法もあります。インタビューを通じて直接消費者の意見を聞くことで、紙媒体やオンラインアンケートでは得られない生の声を把握することが可能です。
アンケートではあらかじめ用意した質問に対する回答しか得られませんが、インタビューは回答内容に応じてその後の質問を調整できるため、より具体的な意見を得ることができる可能性があります。
インタビューは1対1ではなく、複数の消費者を集めて座談会形式で行う方法もあります。
採用活動におけるウィンザー効果の活用方法
採用活動でウィンザー効果を活用するには「リファラル採用を導入する」「従業員のインタビュー記事を公開する」「面接内容や採用基準を公開する」「転職エージェントを利用する」といった方法が考えられます。
リファラル採用を導入する
近年、自社の採用手法にリファラル採用を導入する企業が増えています。リファラル採用とは従業員の友人や知人などを紹介してもらい、人材の獲得につなげる採用手法です。
リファラル採用のメリットは、採用ミスマッチが起きにくいことです。採用ミスマッチにより、内定辞退や早期離職につながるケースも珍しくありません。
リファラル採用では、候補者に対して従業員から自社の社風や事業内容、企業理念をリアルに伝えられます。そのため、入社後のギャップが生じにくく、定着率の向上も期待できます。
従業員のインタビュー記事を掲載する
採用活動では、企業のホームページに従業員のインタビュー記事を掲載することで、ウィンザー効果を狙う方法があります。
掲載するインタビュー記事のなかには、求人情報や企業説明会では得られない情報を盛り込むと効果的です。
Re就活の「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(求人での情報収集)2022年7月版」によると、求人情報で詳細を知れると嬉しい情報のなかに、「会社や部署の雰囲気、部署メンバーの人柄」「先輩社員が現在実際に行っている仕事内容」などがあげられています。
求人情報で詳細を知れると嬉しい情報 |
ヤングキャリア |
第二新卒 |
既卒 |
具体的な仕事内容 |
42.7% |
43.6% |
42.7% |
会社や部署の雰囲気、部署メンバーの人柄 |
40.4% |
43.6% |
35.9% |
1日の業務スケジュール例 |
36.2% |
35.2% |
34.2% |
年収例(給与・昇給のイメージ) |
34.9% |
23.3% |
17.1% |
職場の写真・イメージ |
22.9% |
26.4% |
27.4% |
福利厚生の内容 |
13.8% |
12.8% |
10.3% |
年間休日数 |
12.4% |
9.7% |
14.5% |
入社後のキャリアイメージ(入社直後~5年後のキャリア) |
11.9% |
9.3% |
12.8% |
選考でどこを見ているか |
11.0% |
15.0% |
26.5% |
先輩従業員が現在実際に行っている仕事内容 |
10.1% |
7.5% |
4.3% |
中途入社した先輩従業員の経歴 |
9.6% |
6.2% |
2.6% |
将来のキャリアイメージ、キャリアビジョン |
8.3% |
7.5% |
12.0% |
平均退社時間 |
6.9% |
6.6% |
11.1% |
中途入社の従業員定着率 |
6.4% |
4.8% |
0.9% |
企業が感じている、自社の課題・伸びしろ |
4.6% |
2.6% |
6.0% |
入社後の研修内容 |
3.2% |
7.0% |
9.4% |
企業の目指す方向性(パーパス・ビジョン・ミッション) |
2.3% |
3.5% |
2.6% |
経営理念、企業理念 |
1.8% |
1.8% |
4.3% |
企業の社会貢献性 |
1.8% |
3.5% |
0% |
商材・サービスの特長や、競合と比べての強み |
1.4% |
1.8% |
5.1% |
中途入社の年間採用人数 |
0.5% |
1.8% |
2.6% |
企業の成長度 |
0% |
0% |
0% |
そのほか |
0.9% |
0.4% |
1.7% |
ウィンザー効果をより高めるには、動画の活用も効果的です。同アンケートでは、応募する企業の雰囲気を知るために活用したいものとして、動画と回答した人が50%程度だったこともわかっています。
応募する企業の雰囲気を知るために活用したいもの |
割合 |
動画 |
47.6% |
写真・画像 |
29.0% |
テキスト情報 |
22.9% |
そのほか |
0.5% |
たとえば、自社の採用専用ホームページに動画で従業員のインタビュー記事を掲載するなど、求職者の志望度を上げられるコンテンツを検討しましょう。
面接内容や採用基準を公開する
ウィンザー効果を高めるには、面接内容や採用基準を公開するのも一つです。企業が面接内容や採用基準を公開することで、選考プロセスの透明性と公正性を強調し、優秀な人材を効率良く集めることができます。
また、面接内容や採用基準の公開は求職者からの信頼度が増すだけでなく、企業への興味や好感度が高まるきっかけにもなります。そのまま応募につながることも期待されており、一部の企業ではエントリーシートの評価ポイントや内定者のエントリーシートの傾向を公開しています。
転職エージェントを利用する
転職エージェントとは、キャリアアドバイザーが自社の条件に合う求職者を紹介してくれるサービスです。求職者はキャリアアドバイザーという第三者からの意見を聞けるため、自社の魅力をアピールしてもらえれば、応募につながる可能性があります。
転職エージェントを利用してウィンザー効果を狙うなら、Re就活エージェントを検討してみましょう。Re就活エージェントは、20代の求職者に特化したサービスです。登録会員の95.2%が20代なので、若手人材の獲得が期待できます。
ウィンザー効果を採用活動に活用する際のポイント
最後に、ウィンザー効果を採用活動に活用する際のポイントを紹介します。
ネガティブな口コミも掲載する
自社のホームページや情報誌に口コミを掲載する際には、ポジティブな内容とネガティブな内容の両方を含めるようにしましょう。ウィンザー効果を狙うために、企業はポジティブな口コミだけを掲載したいと考えるかもしれません。
しかし、ポジティブな口コミだけが掲載されていると、「企業にとっての悪い情報は隠されているのでは?」と求職者に疑念を抱かれ、不信感につながる可能性もあります。
ネガティブな内容を見て第三者からの公平な口コミだと伝われば、信頼性が増し、狙った効果が十分に発揮できる可能性があります。
ターゲットに合わせた内容を掲載する
第三者の意見は、ターゲットに合わせて適切なものを選ぶことが重要です。たとえば、事務職向けのページには事務職従業員の評価を、営業職向けのページには営業職従業員の評価を掲載するようにしましょう。
求職者は自身が希望する職種や業務内容に関連するページを参照するため、求める情報以外の口コミは役に立たず、ウィンザー効果が生まれにくくなります。
第三者からの情報を活用してウィンザー効果を狙おう
ウィンザー効果は、当事者よりも第三者からの情報提供によって信頼性が高まる心理効果です。ビジネスシーンではマーケティングや人事マネジメントにとどまらず、採用活動においても活用されています。
ウィンザー効果を狙うにはターゲットを意識しつつ、ネガティブな内容も正直に伝えることがポイントです。また、従業員満足度や定着率、有給休暇取得率などの明確な数値を提示すれば、より高い効果が期待できるでしょう。
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