会社説明会で参加者に「この会社に入社したい」と思ってもらうには、会社説明会の資料が重要です。資料の出来は会社説明会の成功に大きく影響します。
本記事では会社説明会資料を作成する採用担当者のために、会社説明会の資料のおもな役割や、自社の魅力が伝わりやすい資料(スライド)作成のポイントなどを解説します。ぜひ参考にしてください。
会社説明会資料のおもな役割
会社説明会資料(スライド)を用意すると、プレゼンターだけでなく、参加者にもメリットがあります。ここでは、会社説明会資料の役割を解説します。
理解を促して説明時間を短縮できる
会社説明会の資料では、重要な情報やポイントを絞ることで、効率的に伝えることができます。冗長な内容や細かな詳細を省くことで、説明時間を短縮できます。
また、グラフやチャート、イラスト、写真などの視覚的な要素を取り入れることで、説明を補完できるのも魅力です。視覚的な情報を活用すると、効果的に伝わりやすいうえ、プレゼンターの説明を効率化することもできます。
図やイラストで視覚的にインパクトを残す
視覚情報は人間の脳に強いインパクトを与えます。グラフやチャート、イラスト、写真などの視覚的な要素を活用することで、複雑なデータや情報をわかりやすく伝えることができます。
また、視覚的に魅力的なデザインやイメージは、参加者の興味を引きます。説明会に対する関心や集中度を高めることが可能です。
図やイラストにするとわかりやすい例には、次のものがあります。
表示形式 |
内容 |
グラフ |
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図 |
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フローチャート |
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配布すると自社を思い出すきっかけになる
会社説明会で使用した資料をコピーして参加者に配布すると、帰宅後に自社を思い出すきっかけになります。
また、選考を受ける際の企業研究に活用してもらえる可能性もあります。参加者が、持ち帰った資料で情報を再度学習したり、さらに深く理解するための研究に活用したりするかもしれません。
会社説明会資料のテンプレート例
会社説明会の資料をゼロから作成するのは時間と手間がかかるものです。一般的な会社説明会資料を参考にして、デザインや内容をカスタマイズすればスムーズに作成できます。
ここでは、会社説明会資料のテンプレート例を一つ紹介します。
項目 |
盛り込む内容例(図やグラフなど) | p. | |
0.タイトルと目次 |
トップページ(表紙) |
タイトル、社名 |
1 |
目次 |
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1.企業概要と会社の強み |
見出し |
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企業データ |
創業、設立、本社、資本金、売上高、社員数、事業内容 |
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事業所 |
本社、研究所、工場、全国拠点 | 5 | |
売上高推移 |
売上高推移(グラフ) | 6 | |
事業ドメイン |
基幹事業(図) | 7 | |
事業領域別売上構成 |
売上構成(円グラフや図) | 8 | |
事業展開 |
海外事業所や製品など(写真) |
9 | |
グローバル展開 |
海外支社の場所(地図) | 10 | |
事業の強み |
会社の強み |
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2.企業理念・社風 |
見出し |
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企業理念 |
果たすべきミッションや今後のビジョン、業界内の課題、創業ストーリーや沿革など |
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社内の風土 |
社内の風土 |
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社内の様子 |
(社内写真) |
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3.募集職種・仕事内容 |
見出し |
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社員紹介 | プロフィール(写真)、職種、仕事内容、やりがい | 17 | |
一日の流れ | 一日の流れ、活躍の様子(写真) | 18 | |
キャリアパス |
研修体制、サポート体制、キャリアパス(フローチャート) |
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4.求める人物像 |
見出し |
20 | |
求める人物像 |
求める人物像の内容 | 21 | |
求める人物像の解説 |
求める人物像を具体的に解説 |
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5.福利厚生と各種制度 |
見出し |
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ダイバーシティ(多様性) |
例:時短勤務、育児休業制度、在宅ワーク、外国人雇用など |
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施設 |
施設(写真) |
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6.応募・選考の流れ |
見出し |
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募集要項 |
職種ごとの採用予定人数、初任給、福利厚生、所定労働時間、年間休日数、休暇制度、勤務地、現在の平均残業時間など |
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応募受付 |
エントリー方法 |
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選考の流れ |
選考の流れ(フローチャート) | 29 |
上記はあくまで一例です。プレゼンターのストーリーに合わせて構成をつくることが大切になります。
会社説明会資料の作り方
ここでは資料の作成方法を一から解説します。
1.参加者の人物像を絞り込む
まずは「誰に」メッセージを伝えたいのか、人物像を絞りましょう。具体的な人物像をイメージしながら資料を作成することで、よりダイレクトに気持ちや熱意を伝えられます。
人物像は「大学卒の20代男性」のように漠然としたターゲットではなく、ターゲットのなかに含まれるであろう個人像(ペルソナ)で設定します。
たとえば「自社の業界や事業内容に興味があり、将来的なキャリアパスや成長の機会を知りたい、経済学部の大学4年生」「IT関連の経験があり、キャリアチェンジを考えている。自社の業界への転職のメリットを知りたい30代の男性」など、より具体的に設定します。
ペルソナの設定方法は、下記記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
2.説明する項目を決定する
ペルソナを設定したら、次はペルソナが知りたがっている内容をもとに資料の項目を決定します。
Re就活の「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(求人での情報収集)2022年7月版」によると、20代求職者が求人で詳細を知りたい情報は次のとおりです。
- 職種・仕事内容
- 給与
- 休日・休暇
- 勤務地・転勤の有無
- 応募資格(求める人材)
これらの情報を盛り込むことで、参加者にとって有意義な資料となります。ぜひ参考にして、会社説明会の資料をより魅力的にカスタマイズしてください。
3.ストーリーに沿った構成を意識する
会社説明会は、プレゼンターがあって成り立ちます。プレゼンターは自身が話しやすいよう、ストーリーに沿った構成を心がけます。情報を羅列しただけの資料にならないように、気を付けましょう。
通常は、会社紹介、理念、事業内容、仕事内容、募集要項の順で構成すると、話しやすい流れができます。ただし、会社のトップや、入社2〜3年の新卒などがプレゼンターを務める場合は、構成を工夫することが重要です。
たとえば会社のトップが会社説明会のプレゼンターを務める場合、創業の熱い想いから話し始めるのも一つです。
基本的な構成を踏まえつつ、プレゼンターに合わせて構成を組んでください。
4.デザインを決定する
スライドは視覚効果が高いため、デザインは非常に重要です。資料のデザインが魅力的だと、会社への好感度アップも期待できます。
デザインは、自社の雰囲気に合わせるのがよいでしょう。目を引くため鮮やかな色を多用したくなりますが、使い方を間違えると統一性がなくなり、目に負担をかける資料になるので注意が必要です。
また情報を詰めすぎて、細かい文字ばかりになるとわかりにくい資料になります。
要点がまとまったメッセージを心がけることが重要です。
5.第三者からフィードバックをもらう
自分では良い出来だと思っても、ほかの人が見るとわかりにくい場合があります。上司や先輩に資料を確認してもらい、フィードバックを受けることで改善点が明確になり、より精度の高い資料が作成できます。
フィードバックは完成してからでも構いませんが、早い段階で一度チェックしてもらうとデザインや構成などの大幅な手直しを回避できます。
最終チェックは、細かいところまで確認してもらうことが重要です。数字の正確さや誤字脱字、専門的な視点からもチェックしてもらいましょう。
また、資料を見ながら質問をしてもらうと、参加者がどのような点に疑問を持つのかを把握できるため、質問対策にも役立ちます。
フィードバックを受けて資料を改善することで、参加者にとってより理解しやすく魅力的な資料を提供できるでしょう。
会社説明会資料を作成する際のポイント
精度の高い会社説明会資料を作成するために、おさえておきたいポイントを紹介します。
目的に合ったソフトを選ぶ
資料作成ソフトにはさまざまな種類があります。無料のものや画像作成に優れたものなど、それぞれに特徴があるため、目的に合ったソフトを選ぶことが重要です。
次にいくつかソフトの特徴をまとめたので、選択する際の参考にしてください。
製品名 |
無料 |
特徴 |
Power Point |
〇 |
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〇 |
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△ |
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△ |
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△ |
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△ |
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※△=無料版には一部機能に制限あり
シンプルなデザインにする
資料作りに熱中すると、ついついデザインに凝ってしまいがちです。プロ並みのクオリティを目指してアニメーションを多用してしまうと、強調の意味が薄れたり、参加者が話を聞き漏らしたりしてしまうことがあります。
基本的にはシンプルなデザインを心掛け、強調したい部分にアニメーションや凝ったデザインを取り入れましょう。
また鮮やかなカラーを使いすぎると、統一性のない印象を与えてしまいます。目が疲れにくく見やすい資料にしたいなら、使用するカラーを4色以内におさえるのがおすすめです。
グラフや図、イラストを用いる
グラフやチャート、イラスト、写真などの視覚的な要素は、文字よりも参加者の注意を引きやすく印象に残ります。資料作成時はこれらをうまく活用しましょう。
グラフやチャート、イラスト、写真などを挿入する際は、一貫性を持たせるのがポイントです。同じスタイルやテーマで統一することで、資料全体の見た目が統一され、視覚的にも整った印象を与えることができます。
スライド1枚にテーマはひとつ
基本的に、スクリーンに表示するスライドは1枚につき1テーマに絞りましょう。内容がわかりやすくなり、参加者の理解が深まります。
一つのスライドに詰め込みすぎず、各テーマを明確に伝えることが大切です。
総ページ数はスライド1枚の説明時間から設定
会社説明会の時間は、限られています。時間をオーバーしないためにも、1枚のスライドにかける時間から総ページ数を設定するのがよいでしょう。
たとえば1枚のスライドにかける説明時間が約2分、スライド説明の時間が20分なら、総ページ数は10枚程度になります。
総ページ数が多いと、プレゼンテーターが時間内に終わらせようと早口になり、参加者が十分に理解できない可能性があるため、注意しましょう。
耳慣れない専門用語を多用しない
会社説明会では、普段使っている専門用語でも参加者が理解しているとは限りません。
専門用語は特定の業界や職種に精通している人には理解されるかもしれません。しかし、一般の参加者には理解しづらいケースがあります。
参加者全員がスムーズに理解できるように、専門用語の使用は避け、わかりやすい言葉に言い換えましょう。
応募を促す会社説明会にするコツは?
会社説明会のおもな目的は、求める人材が選考に進んでくれることです。参加者が応募したいと思える魅力的な会社説明会のポイントを解説します。
若手社員を登壇させて入社後をイメージさせる
説明会の参加者が新卒や第二新卒などの場合、実際に活躍している若手社員を登壇させると入社後のイメージがしやすくなります。
参加者の応募動機につながりやすく、若手社員にとっても良い経験になるでしょう。
若手社員に話してもらう内容は、入社当初の経験や挑戦、入社後の成長、プロジェクトの成功や失敗から学んだこと、社風などです。
リアルな経験を聞いた参加者は「入社したら、同じような経験ができるかもしれない」と考え、憧れや共感を抱き、応募の可能性が高まるでしょう。登壇者がリラックスして話せるように、練習の機会を設けるなどサポートすることも大切です。
特別感のある情報を盛り込む
「参加してよかった」と感じてもらうためにも、説明会参加者しか体験できない内容を盛り込みましょう。
特別感を出すには、体験談が有効です。若手社員の体験談のほか、会社のトップに直接話してもらうのもよいでしょう。
また、実際のプロジェクトや製品開発の成功事例を詳細に解説すれば、会社の成果や実績をリアルに感じられます。
動画を活用して職場の雰囲気を伝える
会社説明会に、動画を活用する会社も増えています。特に学生や20代は日常的にアプリやSNSで動画を見ることに慣れ親しんでいるため、視覚的な情報が早く理解されやすい傾向があります。
あさがくナビが実施した「2025年卒学生の就職意識調査(応募前の動画視聴) 2023年6月版」では、「動画を視聴し企業への関心が高まったことはありますか?」という質問に対して「ある」が40.4%、「どちらかと言えばある」が25.7%と、6割以上が動画で関心が高まったと答えています。
「動画を説明会に取り入れたい」場合は、あさがくナビのJobTubeシリーズがおすすめです。JobTubeシリーズは株式会社学情が提供する職場体験型採用動画作成サービスで、本格的なスタジオや収録機材を用いてクオリティの高い動画を作成できます。
学情レポーターが社員にインタビューするので、参加者が疑問に思っている内容や知りたいと考えていることを、動画でわかりやすく伝えられます。
魅力的な会社説明会資料を作って応募につなげよう
説明会資料(スライド)は、会社説明会の進行や雰囲気を決定する重要な要素です。
資料はグラフやイラスト、写真を使ったり、シンプルなデザインを心掛けたりと工夫します。また帰宅後に自社を思い出すきっかけとなるよう、作成した資料はコピーして配布します。
参加者が飽きることなく、「参加してよかった」と思ってもらうために、魅力的な資料を作成しましょう。
株式会社学情 エグゼクティブアドバイザー(元・朝日新聞社 あさがくナビ編集長)
1986年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者や採用担当部長などを経て、「あさがくナビ」編集長を10年間務める。「就活ニュースペーパーby朝日新聞」で発信したニュース解説や就活コラムは1000本超、「人事のホンネ」などでインタビューした人気企業はのべ130社にのぼる。2023年6月から現職。大学などでの講義・講演多数。YouTube「あさがくナビ就活チャンネル」にも多数出演。国家資格・キャリアコンサルタント。著書に『最強の業界・企業研究ナビ』(朝日新聞出版)。