エンゲージメントサーベイとは? 実施する目的や期待できる効果を解説
2023.09.25

エンゲージメントサーベイは、企業と従業員の関係を向上させる手段として注目されています。自社に適した形で実施することで、課題の把握や解決、そして人材のパフォーマンス向上が期待できます。
この記事では、エンゲージメントサーベイの基礎知識から効果、具体的な実施方法まで詳しく解説します。
エンゲージメントサーベイを理解し、適切に活用することで、従業員の満足度向上や組織全体のパフォーマンス向上を目指しましょう。
エンゲージメントサーベイとは

エンゲージメント(engagement)は、「約束」「婚約」といった意味を持つ言葉です。一般的には「従業員のエンゲージメント」という形で用いられ、従業員と企業の信頼や愛着、情熱的な関与などを指します。
サーベイ(survey)は測定や調査を意味します。
つまりエンゲージメントサーベイは、従業員と企業の信頼や愛着などの関係を測るための調査方法です。
従業員満足度調査との違い
エンゲージメントサーベイと類似した取り組みに、従業員満足度調査(ES:Employee Satisfaction)があります。両者は調査の対象が異なります。
エンゲージメントサーベイは、「従業員が組織に対してどれだけ情熱的に関与し、意欲的に取り組んでいるか(=ワークエンゲージメント)」を測定します。一方、従業員満足度調査は「従業員が給与額や福利厚生などの待遇にどれだけ満足しているか」を調査します。
ワークエンゲージメントについては、こちらの記事でもより詳しく解説しています。
エンゲージメントサーベイの目的

エンゲージメントサーベイは、従業員のエンゲージメントを数値によって可視化できるため、企業の課題の可視化に役立ちます。
可視化できる代表的な課題は次の3つです。
- 組織内の問題の可視化
- 人事における課題の可視化
- 組織の課題の可視化
実際の運用では、アンケートなどを通じて従業員から率直な意見を収集します。意見収集を通じて「コミュニケーション不足」や「モチベーション低下」などの課題が浮かび上がるケースもあるでしょう。従業員と企業がこれらの課題を共有し、解決に向けて協力します。
このような取り組みにより、組織の課題が解決されると、従業員の満足度やパフォーマンスの向上につながります。
また、近年ではリモートワークが進んでいるため、対面での相談や観察が難しく、従業員のエンゲージメントを把握しにくいのが現状です。しかしエンゲージメントサーベイはリモートワークでも有効なことから、より一層の注目を集めています。
エンゲージメントサーベイの実施で期待できる効果

エンゲージメントサーベイの実施で期待できる効果を解説します。
従業員のモチベーションの向上
エンゲージメントサーベイを通じて、従業員の悩みや課題が浮かび上がることがあります。たとえば「上司とのコミュニケーションに不満を持っている」「長時間の勤務や残業で、ワーク・ライフ・バランスがとれていない」などです。
これらの悩みを理解し、適切な対策やフォローアップを行うことで、従業員の満足度とモチベーションを向上させ、組織全体のパフォーマンス向上につなげることができます。
生産性の向上
エンゲージメントサーベイを実施して、従業員に適切なフォローを行い、エンゲージメントを向上させると、仕事への情熱が増加します。
エンゲージメントが高い従業員は自ら積極的に仕事に取り組む傾向があります。自己管理能力や自己責任感が高まり、より効率的に仕事を進められるようになるでしょう。
さらにチーム内で積極的にコミュニケーションをとろうとするため、良好なチームワークが生まれます。これにより生産性が向上し、より効果的に業務を遂行できるようになるでしょう。
また、調査結果をもとに、適切な人事配置や得意領域への異動を行えばより能力を発揮しやすくなり、働きがいを感じて仕事に取り組むことができます。
離職率の低下
エンゲージメントサーベイでは職場に対する不満も把握できるため、離職のきっかけを早期に発見できます。
調査結果をもとに、人事面談などのフォローを行うことで、従業員が「会社から信頼され、自分も会社を信頼している」といった確信が持てると、離職を選択する可能性は低くなります。
適切なフォローを行い、離職率の低下を図りましょう。
リファラル採用の増加
エンゲージメントサーベイを活用することで、リファラル採用の増加も期待できます。リファラル採用とは、自社従業員の知り合いの人材を推薦から採用する手法です。
エンゲージメントの高い従業員は、自社をほかの人に勧める可能性が高くなるため、リファラル採用の活性化につながります。
リファラル採用については、次の記事でも詳しく解説しています。
人事トラブルの早期発見・防止
エンゲージメントサーベイでは、人事トラブルに関する質問項目を組み込むことで、セクシャルハラスメントやパワーハラスメント、人間関係の問題といった人事トラブルの早期発見・防止にも役割を果たします。
一般的に、エンゲージメントサーベイは匿名性が担保されたアンケート形式で実施されるため、従業員が自由に意見を述べやすいのが特徴です。従業員が人事トラブルに関する懸念や不安を共有できるため、正確な情報が得られ、問題の早期発見につながります。
調査結果に基づいて被害者に調査を行う場合にも、情報の守秘を約束し、安心して相談できる状態を確保します。
エンゲージメントサーベイの実施手順

エンゲージメントサーベイを導入・実施する手順を紹介します。
各段階におけるタスクを理解して、適切なプロセスでエンゲージメントサーベイを実施できるようにしましょう。
1.従業員に周知する
まずは従業員にエンゲージメントサーベイを実施することを周知します。エンゲージメントサーベイの概要や実施する目的を説明し、理解を得ることが大切です。
加えて「正直に答えたら不利益になるのでは?」「上司に見られたくない」といった不安や疑問の解消に努めます。
エンゲージメントサーベイの効果は、従業員の率直な意見を拾い上げることによって増大します。従業員には匿名性が担保されていること、実施することでのメリットを伝え、安心してもらった上で実施しましょう。
2.自社に合う方法で設問を設定する
エンゲージメントサーベイでの設問は、企業の目的やニーズに合わせて選定します。設問例は次のとおりです。
- 私は自分の仕事に誇りを持っている
- 会社のビジョンと目標に共感している
- 日々の業務に対して意欲的に取り組んでいる
- 上司や同僚、部下とのコミュニケーションは円滑である
- 成長やキャリアの機会に満足している
自社に合った独自の質問を組み込んでエンゲージメントサーベイを実施します。なお、自社で作成するのが難しい場合は、外部の専門業者に委託するのも一つの方法です。
3.エンゲージメントサーベイを実施する
調査対象者へエンゲージメントサーベイを実施しましょう。エンゲージメントサーベイはクラウドサービスを利用するのがおすすめです。
クラウドサービスを利用すれば、スマートフォンやパソコンを使って簡単に回答を収集、集計できます。これにより、人事や総務のコスト削減に役立ちます。
また、アンケート結果をリアルタイムで取得できるため、課題の早期発見や迅速な対応が可能となります。
4.結果から改善策を考える
エンゲージメントサーベイの結果を分析し、浮かび上がった問題を解決するための方法を検討しましょう。従業員の問題に対しては、個々人に合った対策を取ることが大切です。
まずはエンゲージメントサーベイの結果を詳細に分析します。特に低いスコアや問題のある項目を特定し、従業員の悩みや課題を洗い出します。
特定した課題や原因に基づいて、効果的な対策を考えましょう。従業員の意見を尊重するのがポイントです。
改善策を実施し、定期的にフォローアップします。
エンゲージメントサーベイを実施するときのポイント

エンゲージメントサーベイ実施時には、次のポイントに注意しましょう。
PDCAサイクルを回す
エンゲージメントサーベイは、PDCAサイクルを回していくことでより有効に活用できます。
PDCAサイクルとは、Plan(計画する)Do(実行する)Check(評価する)Action(改善する)を繰り返し改善していく手法です。
調査で明らかになった問題や課題に対策を講じても、すぐに解決できるとは限りません。また、改善策の実行中に新たな課題が浮かび上がる可能性もあります。そのため、継続的な実施が欠かせません。
本人にフィードバックを行う
エンゲージメントサーベイの調査・分析結果は調査対象者本人にフィードバックします。結果を伝え、企業として改善に取り組む姿勢を伝えましょう。
企業が課題解決に向けて協力することで、従業員のエンゲージメントの向上が望めます。
また、調査が行われている理由を周知するため、社内報などにエンゲージメントサーベイの結果と改善を掲載するのもよいでしょう。
調査が生産性向上に貢献できることを広く周知すれば、社内すべての従業員が調査と改善に積極的に参加してくれることを期待できます。
従業員の負担にならないよう配慮する
エンゲージメントサーベイの実施には従業員の協力が必要です。業務時間中に実施する際には、通常業務に支障をきたさないように配慮します。
また、調査の設問を絞ることで、従業員の負担を軽減するのもよいでしょう。回答にかかる時間を削減するだけでなく、調査の分析にかかる工数も減らせます。
エンゲージメントサーベイは継続的な実施が重要なため、調査担当者と従業員の両方が無理のない範囲で実施できるよう配慮することが大切です。
エンゲージメントサーベイで継続的な組織改善をしよう

エンゲージメントサーベイやその結果に基づいた対策は、従業員のエンゲージメント向上に役立ちます。従業員のエンゲージメントが高いと、生産性の向上や離職率の低下などさまざまなメリットがあります。
エンゲージメントサーベイは定期的に実施することが重要です。調査で明らかになった問題や課題に対策を講じても、すぐに解決できるとは限らず、さらに新たな課題が浮かび上がる可能性もあるからです。
エンゲージメントサーベイを実施し、発見した課題に対する改善策を長期的に運用すれば、企業をより良い方向に導くことができるでしょう。