帰属意識とは?低くなる要因と6つの高める方法をわかりやすく解説
2023.05.08
企業の成長を維持するためには、いかに優秀な人材を確保し定着してもらうかがポイントです。そのためには従業員に「企業の一員である」という帰属意識を高めてもらうことが重要です。
この記事では、帰属意識の重要性や、従業員が低い帰属意識を持っていることの問題点、帰属意識を高める方法をご紹介します。
帰属意識とは
まずは、帰属意識の意味を解説します
特定の組織・企業の一員であるという意識・感覚
帰属意識とは、組織や企業に所属することに基づく情緒的な愛着のことを指します。心理学用語として扱われる単語でしたが、近年ではビジネスの分野でも注目されるようになりました。
ビジネスにおいては、従業員が企業に属しているという意識・感覚として扱われます。帰属意識が高い状態を維持できていると、従業員が自然と企業に定着するようになります。一方で、帰属意識が低い状態のままでいると、次第に企業から離れて転職したいと考えるようになるでしょう。
帰属意識が高い状態の従業員は、企業のために積極的な行動や学びを行う傾向にあります。企業に対しての忠誠心も強く、企業の目的やビジョンに共感し、自分から企業を良いものにするために働けるようになるでしょう。
エンゲージメントとの違い
帰属意識とエンゲージメントは、どちらも従業員が企業に属することについての意識や感覚のことを指しますが、ベクトルに違いがあります。帰属意識が従業員から企業に向かう一方通行の意識・感覚に対して、エンゲージメントは企業・従業員の双方向から発する関係性のことを指します。
高いエンゲージメントを維持できている状態であれば、従業員と企業それぞれが同じ方向性を目指しながら、相互に貢献しあう姿勢につながります。
企業が従業員の帰属意識を高めようと施策を行うことは、結果的にエンゲージメントの向上にもつながるため、従業員のモチベーションや生産性の向上に重要な考え方です。
帰属意識の低下による弊害
帰属意識が低下すると、次のような問題が発生します。
- 生産性や業務効率の低下
- モチベーションの低下
- 離職率の増加
これらは企業にとって望ましいものではありません。帰属意識の低下によって企業に不利益が得ないよう、事前に対策を取ることが重要となります。
生産性や業務効率の低下
帰属意識が低いと、従業員は企業にとって必要のない存在だと感じやすくなります。成長やキャリアアップに対しても興味を失い、その結果、積極的に他の従業員に関わろうとする意識まで低くなるかもしれません。情報共有がされないと業務効率の低下につながる可能性が高くなります。
また、従業員同士でのコミュニケーションの減少につながれば、活発な意見交換や新たなアイデアが生まれる可能性が低くなるなど、生産性にも悪影響を及ぼします。
モチベーションの低下
帰属意識が低いままだと従業員は業務に対して興味を持たず、モチベーションを低下させてしまいます。自分は企業にとって必要なく、いくらでも代わりがあるとマイナス思考に陥ることもあります。
モチベーションが低下すると、仕事のやりがいを感じられなくなり、業務に対する取り組みや改善に対しても消極的になってしまうでしょう。繁忙期を乗り切ろうとしても、メンバー同士での助け合いが求められる重要な局面で自分事と捉えられず、適切な行動がしづらくなります。
離職率の増加
帰属意識が低いままだと、属している企業で働く価値を見いだせなくなるため、従業員の離職率が高まります。他の環境へ移るほうが良いのではないか、と考え転職活動に踏み切る従業員や、早期退職を希望する従業員が出てくる可能性があります。
また離職しないとしても、業務へのモチベーションが低い状態で働いてしまえば、他の従業員のモチベーションを下げてしまい、チーム全体ひいては企業全体にまで悪影響を及ぼす可能性もあります。連鎖的にほかの従業員のモチベーションを下げたり、帰属意識が高い従業員との間でトラブルを起こしたりと、社内に不和を生むことも懸念されます。
負の連鎖を防ぐためにも、帰属意識の低下への対策は事前にしておくべきです。
帰属意識が低くなる要因
帰属意識が低くなるおもな要因は次のとおりです。
- 不透明で共感できない企業のビジョン
- 終身雇用の廃止
- 適切に評価されにくい職場環境
- 働き方に対する意識の変化
それぞれ詳しく見ていきましょう。
不透明で共感できない企業のビジョン
企業のビジョンが不透明である場合、従業員は企業の目的に共感できず、仕事にも疑問を抱いてしまいます。結果として「この仕事に意味がない」と思うようになれば、帰属意識は低下してしまうでしょう。
従業員が共通認識として抱いているビジョンや目的を持って働くことはとても重要です。既存のビジョンがよくわからない場合はもちろん、経営の方向性の変化によって理解を得られなくなってしまった場合にも帰属意識は低下してしまいます。
もし自社のビジョンの認知が不十分だと思っていれば、ビジョンの明確化に取り組みながら、従業員が働きやすい労働環境づくりを推進させる必要があります。
終身雇用の廃止
終身雇用の廃止も帰属意識低下の要因として挙げられます。福利厚生の一つとして終身雇用を掲げる企業の数は、近年少なくなっています。
定年まで仕事が保障される終身雇用制度は、従業員の帰属意識を長期的に高める効果がありました。しかし現代では、昨今の経済成長の鈍化により、終身雇用が崩壊しつつあります。そのため福利厚生が充実した大企業であっても、早期退職や希望退職を募らざるを得ないケースが増えました。
適切に評価されにくい職場環境
仕事の評価基準が明確でない場合や仕事内容に見合う報酬が不適切な場合、従業員のモチベーションが下がってしまうでしょう。また上司からのポジティブなフィードバックが欠けている場合も、自身の業務への姿勢を評価されていないと感じ、やがて帰属意識の低下につながります。
企業の適切な評価体制の確立と運用は、従業員の帰属意識を高める上で重要な施策と言えるでしょう。
コミュニケーションの減少
従業員同士のコミュニケーションの機会が減ることで、帰属意識が次第に低下してしまいます。特にリモートワークが普及している昨今においては、多くの企業でコミュニケーションの希薄化が課題となっています。
コミュニケーションが減少すると、従業員同士の何気ない会話が減ることで、お互いの信頼関係にも影響を及ぼし、やがて個々の帰属意識の低下につながります。
働き方に対する意識の変化
近年では、働き方改革が推進され、ワークライフバランスを重視している求職者と企業が増えつつあります。このような働き方に対する意識の変化の風潮は、知らぬ間に帰属意識の低下をもたらす可能性があります。
かつては、多くの人が仕事を人生の中心に考える傾向にありましたが、現在では育児や家族生活、個人的な趣味や活動、副業などの多様なライフスタイルに対する需要が高まっています。
そのため現在の企業には、多様な考え方やライフスタイルを重んじる意識を持ちながら、自社の働きやすい環境づくりを目指すことが求められているのです。
企業の帰属意識を高める5つの方法
帰属意識の向上に役立つ施策例をご紹介します。
- 多様なワークスタイルを推奨する
- チャットツールや社内SNSの活用
- 1on1ミーティングを実施する
- インナーブランディングの導入
- 社内イベントを企画する
多様なワークスタイルを推奨する
帰属意識の向上には、従業員に多様なワークスタイルを認め、従業員のワークライフバランスを確保することが有効です。社内の制度として、フレックスタイム制やリモートワーク、ワーケーションなどを導入し、従業員一人ひとりのニーズに応じて柔軟な働き方が実現するようにします。
たとえば過剰な残業が容認されている企業の社員は、帰属意識が低くなっている危険性があるため注意する必要があります。自社に必要な人的リソースを十分確保することで、個々の業務の負担を減らし、なるべく定時退社しやすい社風を確立すれば、それぞれが働きやすさを感じられるようになるでしょう。
チャットツールや社内SNSの活用
それぞれの働くスタイルに関わらず、従業員同士のコミュニケーションが円滑にできる環境を整えるのはとても重要です。社内で使用するチャットツールやSNSを導入するなど、今一度、コミュニケーション方法を見直してみるのはいかがでしょうか。
チャットツールや社内SNSを活用すれば、社内外問わずプロジェクトに関わるメンバー同士のコミュニケーションがスムーズにできます。メールや電話よりも気軽にコミュニケーションしやすいツールであるため、まだ導入していない企業は検討するとよいでしょう。
1on1ミーティングを実施する
1on1(ワンオンワン) ミーティングを実施して、上司と部下の信頼関係を築くことも重要です。1on1ミーティングとは、部下と上司が1対1で行うミーティングのことです。日頃の部下の抱える課題や悩み事について話したり、メンタルヘルスのチェックをしたりなど、週に1回〜月に1回程度の間隔で実施します。
部下と上司の間に信頼関係を築くことができれば、社内コミュニケーションの改善や部下の生産性・モチベーション向上に効果があり、帰属意識の向上にもつながるでしょう。
1on1ミーティングを効果的に実施するためには、1on1の目的を企業のリーダー層に理解してもらい、正しい1on1のやり方の習得を促すことも必要です。
インナーブランディングの導入
インナーブランディングを導入するのも帰属意識の向上に有効です。インナーブランディングとは、企業の内側(インナー)に対するブランディングのことを指します。
従業員全員で企業の目指すべき方向や価値を共有し、企業力を向上させるのがインナーブランディングの目的です。企業風土や企業文化を担う者として当事者意識やプライド、自負を持つことができれば、帰属意識を高められます。
インナーブランディングには、研修プログラムへの盛り込みや社内インテリアへのポスター掲示だけでなく、社内報や社内SNSでの呼びかけが有効です。共感してもらえる理念やビジョンに基づいたメッセージを従業員へ伝えましょう。
社内イベントを企画する
社内イベントで業務に直接関係のないコミュニケーションの機会を提供することで、企業の帰属意識を高める効果が期待できます。従業員が個人として相互理解を高めることで信頼や安心を抱け、普段の業務も円滑にこなせるでしょう。
大がかりな社内イベントには、スポーツ大会や新年会・忘年会などが挙げられます。社内のメンバーと昼休みのランチを一緒に取る機会を設けたり、コーヒーブレイクで雑談をする機会を作ったりなど、小規模なイベントでもコミュニケーションを活発にさせる上で効果的です。
帰属意識を高める際の確認ポイント
帰属意識を高める方法を実践する前に、次のようなポイントを確認しましょう。
- ミッション・ビジョン・バリューを策定する
- 施策に適切な優先順位をつける
- 必要に応じて補助金制度を活用する
ミッション・ビジョン・バリューを策定する
帰属意識の向上を図った施策を実施する際には、その施策のミッション・ビジョン・バリューの策定が求められます。ミッションは施策の存在意義、ビジョンは施策の指針、バリューは施策を遂行する価値観のことを言います。この3つの要素を明確にし、施策を遂行するチームの方向性をしっかりと定めることが大切です。
ミッション・ビジョン・バリューの考え方は人事制度にも反映でき、従業員の帰属意識を高める効果もあります。企業の存在意義であるミッションを達成できているか、ビジョンは間違っていないか、バリューはチームで統一されているかを評価し、フィードバックを与えましょう。
施策に適切な優先順位をつける
帰属意識の改善のために複数のプランが挙げられても、全てを実行するには手間もコストもかかります。そのため、どの施策が自社に効果的かを分析し、優先順位の高いものから実践することが大切です。
仮に1on1ミーティングをいきなり全社的に導入すると、部下の多いリーダー層が自身の業務に支障がでるなどのトラブルになりかねません。定期的に、施策の効果や反省点を洗い出して次の機会に活かせるように、段階的かつ長期的な改善と検証を行いましょう。
必要に応じて補助金制度を活用する
帰属意識の向上に役立つとはいえ、大がかりな施策には費用がつきものです。場合によっては公的な補助を受けることもできるため、施策実施前に一度確認してみると良いでしょう。
国が提示している補助金には、次のようなものがあります。
制度名 | 制度の目的 | 補助金・助成金の額 |
---|---|---|
キャリアアップ助成金 | 正社員化支援や従業員の処遇改善支援 | コースにより変化 |
ものづくり補助金 | 中小企業・小規模事業者への設備投資支援 | 最大750万円~5,000万円 (補助率1/2もしくは2/3) |
業務改善助成金 | 生産性向上に資する設備投資の経費補助 | 最大30万円~100万円 |
IT導入補助金 | ITツール導入に対する補助金 | コースにより変化 (150万円未満のものや、450万円以下のものがある) |
他にも、地方自治体が独自に展開している補助金制度も存在しているため、企業の所在する地域で利用できるものがないか確認してみるとよいでしょう。
従業員一人ひとりの働き方を重んじて帰属意識を高めよう
企業に対する帰属意識が低い状態を放置すれば、離職率やモチベーション、生産性や業務効率に悪影響が出てしまいます。企業に問題があることで帰属意識が低くなっている可能性を考慮し、要因の特定と改善を行うことが求められます。
帰属意識の向上には、従業員に多様な価値観や働き方を認め、安心して企業に勤められるサポートと安心感、愛着を与えることが重要です。どのような施策が自社の帰属意識を高めることに有効か、従業員一人ひとりの性質を踏まえながら考えていきましょう。
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