医療の現場において、お互いを信頼し合う関係を「ラポール」と言います。
最近は営業や面談、交渉などビジネスでも「ラポール形成」が重要だと考えられています。上司と部下、企業と顧客などでラポールを形成すれば、さまざまなメリットを得られるためです。
本記事では、ラポールの基礎知識や形成するメリットを解説します。ラポールを形成する方法や社内でできる具体策も解説するので、ぜひ参考にしてください。
ラポールとは
まずは、ラポールにどのような意味があるのかを解説します。
「相互に信頼し合う関係」を指す
ラポール(rapport)とは「相互に信頼し合い、安心して感情の交流ができる関係」を指します。フランス語では「橋を架ける」の意味です。
ラポールという言葉が誕生したのは、精神科の医療現場でした。オーストリアの精神科医が、自分と患者との関係性を表現したのがきっかけだと言われています。
ビジネスシーンで注目を集めている
ラポールは、精神科の医療現場で誕生した言葉です。しかし、近年は医療現場にとどまらず、さまざまなシーンで使われています。
特にビジネスでは営業や交渉、面談など、相手とすぐに信頼関係を築くことで有利に働くシーンが多くあり、注目を集めています。
上司と部下、企業と顧客、面接担当者と応募者間でラポールを形成すると、コミュニケーションの活性化や信頼関係の構築などさまざまなメリットがあります。
ラポールを形成する効果・メリット
ラポール形成とは信頼関係の構築を指します。ラポールを形成することで得られる効果やメリットを確認しましょう。
信頼感を高められる
ラポールを形成すると、お互いに対する不信感が取り除かれ、信頼感や安心感が生まれます。
ビジネスにおいては相手の立場に関わらず、信頼関係を構築することが重要です。
相手に対して不信感を持った状態だと、コミュニケーションが希薄になりがちです。仕事の指示や依頼を躊躇してしまう、本音で話せず契約が進まないといったこともあるでしょう。
ラポールを形成すると「この人なら大丈夫」と安心できる関係性が生まれ、円滑な人間関係を築けます。
心理的安全性を確保できる
ビジネスを円滑に進めるには、心理的安全性を確保することも大切です。心理的安全性とは、組織のなかで自分の考えや意見を誰にでも安心して発信できる状態のことです。
心理的安全性を確保するには、お互いの信頼関係が重要です。ラポールを形成すると相手への信頼感が高まり「ありのままの自分を受け入れてもらえる」と自然に感じるようになります。
心理的安全性が確保されていると、チーム間でのコミュニケーションが活発化します。相手のミスを指摘しやすくなったり、知識の共有が行われたりするため、トラブルの未然防止につながるでしょう。
円滑なコミュニケーションが図れる
ビジネスシーンでは、双方向の円滑なコミュニケーションが求められます。自分の考えを相手に伝えられなかったり、相手が伝えたいことが理解できなかったりすると、プロジェクトや商談の進行に支障をきたす恐れがあります。
その点、ラポールを形成するとコミュニケーションが活発化するため、会話上の齟齬が生じるのを防ぐことができます。普段から接している相手はもちろん、知り合って間もない相手とも生産的な会話を実現可能です。
生産性の向上を期待できる
心理的安全性が維持されていると、円滑なコミュニケーションがとれるようになります。スムーズな情報交換や意思疎通が可能になり、結果的に組織の生産性向上を期待できます。
また、顧客や取引先と信頼関係を構築すれば「この企業から購入したい」「この人となら契約したい」と思ってもらえるため、商品やサービスの売上につながり、企業の業績にも寄与するでしょう。
定着率の向上につながる
近年は生産年齢人口減少により労働者不足に悩む企業も少なくありません。従業員を確保するには、定着率を向上させる必要があります。
従業員同士がラポールを形成できていると、従業員は企業に居心地の良さを感じています。「この企業で働きたい」と思ってもらえるため、離職を低減でき、定着率の向上につながるでしょう。
Re就活が行ったアンケート「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(転職理由)2022年7月版」によると「転職で実現したいこと」の質問に対して「良好な人間関係を築くこと」と回答した20代はヤングキャリア(就業経験3年以上)27.5%、第二新卒(就業経験3年未満)で28.6%でした。
転職の際に信頼関係を重視する人が多いことから、ラポールが形成されている企業は、新たに入ってきた人にとっても魅力的であることがわかります。
ラポールを形成する方法
ラポールを形成する方法を紹介します。上司と部下、企業や顧客・取引先だけでなく、出会ったばかりの人事担当者と応募者にも有効な方法です。ぜひ参考にしてください。
ミラーリング
ラポールの形成のスタンダードな手法として、ミラーリングがあげられます。
ミラーリングは相手の行動に対して自分も鏡のように似た行動をする手法です。たとえば相手が腕を組めば同じタイミングで腕を組み、相手が飲みものを飲めば同じタイミングで飲みものを飲みます。
人は自分と同じような行動をする相手に親近感を抱くと言われています。相手と同じ行動を意識することで距離を縮めるきっかけとなり、親近感からラポールの形成を期待できるでしょう。
ペーシング
相手と同じ行動を意識するミラーリングに対し、ペーシングは話し方や呼吸、話すスピードなどを合わせる手法です。たとえば、相手のペースに合わせてゆっくりまたは速く話します。
相手とペースを合わせることで一体感を演出可能です。安心感が生まれるため、ラポールの形成につながります。
マッチング
マッチングは英語で「調和する」「合わせる」といった意味があります。ラポール形成の手法としてのマッチングは「細かいニュアンスを相手と合わせること」です。たとえば、相手の声の高さや強弱、癖などを合わせます。
マッチングは、ペーシングよりもさらに相手の言動を意識した手法です。相手がより話やすい環境を作ることでコミュニケーションが活性化し、信頼関係の構築につながるでしょう。
キャリブレーション
キャリブレーションには、英語で「目盛り」「調整」という意味があります。ラポール形成の手法としてのキャリブレーションは「しぐさや話し方などから相手の心理状態を読み取り、適切に対応すること」です。
たとえば相手が話の内容に納得していないようであれば、説明を付け加えて理解してもらえるように努めます。
キャリブレーションは、相手をよく観察してコミュニケーションの取り方を工夫するのがポイントです。相手のリアクションによって対応を変えることで、共感的理解が生まれ、ラポールを形成するきっかけになります。
バックトラッキング
バックトラッキングは、英語で「相手の発した言葉をそのまま返す」という意味があります。ラポール形成の手法としてのバックトラッキングは、相手のリアクションにオウム返しで対応する手法です。
たとえば「○○でした」に対して「○○だったのですね」、「〇〇したいです」に対して「○○したいのですね」などと返します。相手の反応に同調することで共感を得られるため、ラポールを形成しやすくなります。
ラポールを形成する際のポイント
ラポールを形成するために、いくつかおさえておきたいポイントがあります。ポイントを理解した上で実践すると、効率良くラポールが形成できる可能性があります。
相手の状況をよく観察する
ラポールを形成するには、相手をよく観察することが大切です。
「相手がどう感じているのか?」「何を考えているのか?」を把握できないままでは、どの手法を用いても十分な効果を得られず、逆効果になる可能性があります。
適切な手法や対応を選択するために、相手の話し方や動作を細かく観察しましょう。
相手を否定しないよう気をつける
ラポールを形成するには、お互いを理解しようとする姿勢が重要です。信頼関係を構築できかけていても、発する言葉に否定的な内容が含まれていれば、相手の心は離れてしまいます。
ときには、相手と自分の考えが異なることがあるかもしれません。しかし、相手を否定するのではなく、まずは肯定して理解していることを伝えましょう。何度もやり取りするうちに考えが擦り合わされ、信頼関係が構築されていきます。
ラポールを形成するために社内でできること
ラポールの効果やメリットを発揮するには、組織全体でラポール形成を目指す必要があります。社内でできることを解説します。
社内研修を実施する
前述したとおり、ラポールはおもに医療現場で使われている言葉です。言葉の意味を知らない従業員がいるかもしれません。
ラポールを形成して十分な効果を発揮するには、すべての従業員がラポールを把握し、意識的に行動してもらうことが大切です。
ラポール形成の重要性や効果を周知するために、社内研修を実施するのも手段の一つです。まずは管理者の教育から開始し、従業員にフィードバックする形で研修を実施するのもよいでしょう。
上司と部下がコミュニケーションを取る機会を増やす
自社の業務を円滑に遂行するためには、上司と部下の信頼関係が重要になります。上司と部下がコミュニケーションを取る機会を増やして、信頼関係の構築に寄与しましょう。
上司と部下のコミュニケーションを増やすには、1on1ミーティングが効果的です。ただし、単純にコミュニケーションを取る機会を増やせば良いというわけではありません。
たとえば上司にラポール形成の手法を伝えて実践してもらうなど、1on1ミーティングの質を上げる必要があります。
組織全体でラポールの形成を目指そう
従業員がラポールを形成する企業は、コミュニケーションの活性化や心理的安全性の確保、定着率の向上などさまざまなメリットがあります。
また、従業員が信頼し合える企業は求職者からも魅力的に感じられ、人材市場で有利に働く可能性があります。
ラポール形成に取り組む際は、組織全体で内容を理解して実践することが重要です。
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