この記事では、2026年卒業予定の学生を対象にした新卒採用のスケジュールを、政府主導のルールと実際の動きを比較して解説します。
弊社が2025年卒学生を対象に実施したアンケート結果や「採用動向調査レポート(2024年1月22日発行)」のデータもあわせてご紹介します。
スケジュール例のダウンロードもできるので採用戦略を立てる際にぜひご活用ください。
2026年卒の新卒採用スケジュール(全体)
2026年卒業予定の学生を対象にした新卒採用のスケジュールは、例年と大きく変わりません。
政府が要請している採用活動の日程ルールは以下の通りです。
- 広報活動開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
- 採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降
- 正式な内定日:卒業・修了年度の10月1日以降
※出典:2025(令和7)年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000184189_00002.html)
しかし、学生の動きには例年よりさらに早期化の傾向がみられます。実際のスピード感は以下のようになるでしょう。
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2026年卒の学生の動向はさらに早期化の傾向
2025年卒の学生の動きから、2026年卒の学生の動き出しはより早まると考えられます。トピックスは大きくわけて2点です。
- 2025年卒業予定の学生は、3年生の1月時点で4人に1人が内々定を保持
- 4割弱が大学1・2年生の頃から情報収集を始めている
弊社の調査結果を踏まえてそれぞれ解説します。
同時点での内々定率は年々増加傾向
株式会社学情が毎年実施している内々定率調査では、「1社以上の内々定をもっている」と答えた学生が3年連続で増えました。
※出典:
2023年卒 内々定率調査 2022年9月度(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/23naiteiritsu0902/)、
2024年卒 内々定率調査 2023年9月度(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/24naiteiritsu0904/)、
2025年卒 内々定率調査 2024年1月度(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/25naiteiritsu0109/)
2023年卒業予定の学生の内々定獲得率は1月時点で14.6%、2024年卒業予定の学生は同月時点で17.9%、そして2025年卒業予定の学生は同月時点で25.0%の結果でした。
このことから、学生が就職活動を始めるタイミングは年々早まっているといえます。2026年卒の採用活動では、この傾向はさらに強まるでしょう。
4割弱が大学1・2年生の頃から就職活動のための情報収集を始めている
株式会社学情が、2025年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に実施したアンケートでは、37.6%の学生が大学3年生になる前からオープン・カンパニー&インターンシップや企業についての情報収集を始めていることがわかりました。
※出典:2025年卒学生の就職意識調査(インターンシップ)2024年1月版(あさがくナビ)(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/240117/)
約半数の学生が4年生になる前に内々定を獲得していることからも、2026年卒学生の就職活動は、実質、3年生に進級するとともに始まるでしょう。
2026年卒の新卒採用スケジュール(時期ごと)
前章で説明した2025年卒採用の傾向をもとに、2026年卒採用の動きの一例を紹介します。
3年生の4月~6月|情報収集が本格化
オープン・カンパニー&インターンシップサイトがオープンします。学生の情報収集が本格化し、企業は学生との接点を逃さないように手を打つ必要があります。
学生側
4割弱の学生が、3年生になる前から企業情報やオープン・カンパニー&インターンシップの情報を調べ出しています。
しかし、実際に各社のインターンシップサイトがオープンし、エントリーできるのは4月~6月です。本格的に情報収集をするフェーズに入るでしょう。各大学が就職ガイダンスを開催するのも5月頃です。
この時期の情報収集の目的は、おもに夏季休暇中のインターンシップ参加です。
この頃からすでにOB・OG訪問をスタートする学生もいます。実際に働いている社員からリアルな話を聞くことで、業界研究や仕事研究に活かし、夏のインターンシップに参加する企業を絞り込みます。
企業側
この時期に夏のインターンシップの情報を遅れず出すのが重要です。逆に言えば、この頃までにインターンシップの内容をある程度決めておかなければなりません。
26卒の学生は、インターンシップに参加した企業の中から選考を受ける企業を選ぶ傾向があります。しかし、学業やアルバイトなどと両立し、かつ、決められた期間内で学生が参加できる機会には限界があります。
株式会社学情が2023年12月に実施したアンケートでは、就職活動を通して2~4社ほどのインターンシップやオープン・カンパニーに参加する学生が最多でした。学生との出会いを逃さないために、魅力的なプログラムを提供する必要があるでしょう。
3年生の7月~9月|夏のインターンシップに参加
学生は夏季休暇に突入し、長期のインターンシップをメインに参加して企業選びに注力します。採用競争は年々激しさを増しているので、企業にはこの時期からのていねいなフォローが求められるでしょう。
学生側
6月から徐々にオープン・カンパニーなどに出席しはじめ、8~9月の夏季休暇中には、就業体験が可能な長期のインターンシップも含めて参加します。
参加する企業は、これまでの情報収集やイベントなどで興味をもった中から選ぶ傾向があります。
今の新卒学生にあたるZ世代は「デジタルネイティブ」とも呼ばれ、インターネット上で効率よく情報収集をすることに長けています。
しかし、それと同時に、実際に足を運ばないとわからない情報も重要であるのを知っているのです。
自分の将来を想像するために、会社の雰囲気やそこで働く社員にどんな人がいるのかなど、オンラインでなくリアルでの体験は大事な情報のひとつです。
また、オープン・カンパニーやインターンシップで得た情報から、とくに興味をもった複数社の企業理解を深め、選考に参加する準備を始めます。
企業側
株式会社学情の調査では、対面形式のプログラムは3年生の7~9月に実施する企業がもっとも多い結果でした。
※出典:2025年3月卒業予定者/採用動向調査レポート(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/25saiyo-report/)
実際に足を運んでもらう対面形式だと、まとまった時間がとれる夏季休暇中での実施のほうが、学生の参加率を高められると考えられます。
オープン・カンパニーやインターンシップに参加した学生には、素早く次のステップの案内とフォローを行いましょう。
株式会社学情が実施したアンケートでは、「インターンシップやオープン・カンパニーに参加した企業から案内されたセミナーや選考に参加した」と回答した学生が65.4%でした。
※出典:2025年卒学生の就職意識調査(インターンシップ参加企業への選考参加)2024年1月版(あさがくナビ)(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/240118/)
せっかく自社に興味をもってインターンシップやオープン・カンパニーに参加してくれた学生とのつながりを失わないためには、企業側からのきめ細かなフォローが効果的でしょう。
複数社にエントリーしている学生も多いので、企業のイメージが薄れないうちに次の対応を行うのがポイントです。とくに自社とカルチャーマッチしそうな学生とは連絡の期間を空けないよう心がけましょう。
3年生の10月~1月|選考開始
早い企業では選考が開始されます。学生もこの時期に初めて選考に参加する割合が高いようです。
学生側
ひとつ前の章でご紹介した、2025年卒学生対象のアンケート(実施期間:2023年11月24日~2023年12月18日)からは、3年生の12月時点ですでに半数以上の65.4%の学生が選考に参加していることもわかります。
※出典:2025年卒学生の就職意識調査(インターンシップ参加企業への選考参加)2024年1月版(あさがくナビ)(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/240118/)
2026年卒採用では、より多くの学生がすでにこのタイミングで選考に参加していると考えられます。この場合、順調にすすめば12月頃から最終選考を受けはじめるようなスピード感です。
就職活動のメイン時期は、学生が3年生のうちに始まり、3年生のうちに終わるといえます。
選考を受けながらもより自分とマッチする企業を求め、同時並行でオープン・カンパニーや説明会にも積極的に参加します。
企業側
新卒採用の通年化がすすむにつれて、採用担当者は年間を通して繁忙期といっても過言ではありませんが、この時期の前後がとくに注力時期です。
まだ接触できていない学生に向けて、冬のオープン・カンパニー&インターンシップを実施する企業が多くみられます。一方で、夏のインターンシップに参加した学生に、より企業理解を深めてもらうための説明会や座談会なども開催します。
※出典:2025年3月卒業予定者/採用動向調査レポート(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/25saiyo-report/)
2学期制の大学の多くでは1月中旬~2月初旬に後期試験があるため、この時期は学業との両立に便利なオンライン形式の需要が高いと考えられます。
動き出しが早い学生を対象に、選考がはじまるのもこの時期です。面接官の選定や面接日程の調整、エントリーシートの選別、学生ごとの選考状況の管理など、たくさんの事務作業が発生します。余裕をもった採用計画が、その年の採用結果に大きく影響するでしょう。
この時期、同時に2025年卒学生の10月の内定式準備や入社前研修も並行して実施します。
3年生の2月、3月|最終選考と内々定
この時期の内々定獲得率は毎年上がっており、26卒採用にも同様のことが言えるでしょう。
学生側
2024年卒の学生では、3年生の3月末時点で内々定をもっている学生の割合は49.3%と半数弱にのぼりました(※出典:2024年卒 内々定率調査 2023年4月度 https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/24naiteiritsu0404/)。2025年卒学生の同月時点でのデータはまだありませんが、これよりも上回ると考えられます。
2026年卒採用では、半数以上の学生が、3年生が終わるまでに内々定を受けていることでしょう。
企業側
2025年卒の採用活動計画について企業を対象に行ったアンケートでは、内々定出し開始の時期を3月とする企業がもっとも多い調査結果でした。
※出典:2025年3月卒業予定者/採用動向調査レポート(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/25saiyo-report/)
しかし、2月以前とする企業も前年より増えています。ピークは3月ですが、それよりも前から多くの企業が着々と内々定出しを始めるでしょう。
4年生になる直前の3月~|再始動、かつ、フォロー期間
学生の活動が再び活発になると同時に、各社もあらためて今後の動きを検討する時期です。
学生側
政府主導のルールに従って、3月1日から採用広報活動が解禁されます。内々定をすでに受けている学生も、大手やそのグループ企業に志望度の高いところがあれば、選考を受けるために再び活動量が増えます。4年生までに単位を取り終えて授業にほぼ出席する必要のない学生も多く、就職活動に集中して取り組めるのもこの時期といえるでしょう。
一斉に企業が活動を始めるため、学生にとってもスピードが命です。エントリーシートの提出から選考、内々定出しまで、3か月程度で終わることも少なくありません。
企業側
すでに内々定を出した学生をフォローする期間です。
近年の学生の傾向として、複数社の内定を受け、その中からもっとも自分に合った企業を選ぶのが一般化しています。内定辞退を防ぐにはこの期間のフォローが重要です。
採用活動を続ける企業もあります。政府主導のルールに従う場合や、この時期までに採用予定数に達しなかった企業、一定の内定辞退を前提に予定を上回って内々定を出したいケースなどです。
企業セミナーの開始時期は、2月以前を合計すると7割を超えるものの、個別では3月が23.5%と最多でした。
また、25卒採用の企業セミナーの実施形式に関しては、コロナ禍が明けて対面回帰がすすんだ24卒採用よりも、オンラインのメリットが見直されたようです。
※出典:2025年3月卒業予定者/採用動向調査レポート(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/25saiyo-report/)
内定者フォローにはいくつかのおさえるべきポイントがあります。こちらの記事でくわしく紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
よくある質問
26卒の採用スケジュールについて、よくある質問にお答えします。
採用と連携できるインターンシップの条件は?
- インターンシップ実施期間の半分を超える日数の就業体験を行う
- 職場の社員が学生を指導する
- 「汎用的能力活用型」では5日間以上、「専門能力活用型」では2週間以上実施する
- 学部3年・4年ないし修士1年・2年の長期休暇期間(夏休み、冬休み、入試休み・春休み)に実施する
- 募集要項に必要な項目を記載し、公表する
2022年に、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省は「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を改正しました(三省合意改正)。
2025年卒採用より、一定の条件下で、インターンシップを通じて取得した学生情報・評価を採用広報・選考に活用できるようになりました。
※インターンシップはあくまでもキャリア形成支援の仕組みであり、学生は改めて採用選考のためのエントリーが必要になります。
また、短日もしくは就業体験なし、対象が大学1,2年生のイベント・説明会などは、「インターンシップ」の呼称を避けるように要請されました。今後は「オープン・カンパニー」というタイプに分けられることになります。
オープン・カンパニーで取得した学生情報の採用活動への活用はできません。
「汎用的能力活用型」と「専門活用型」の違いとは?
- 汎用的能力活用型インターンシップ:学生が有する適性・汎用的能力を重視したプログラムであり、基本的に、専攻や分野を問わず、学生が広く参加可能なもの。
- 専門活用型インターンシップ:学生が有する専門性を重視したプログラム。参加にあたり、特定の専門知識・専門能力を必要とするもので、場合によっては専攻を指定するなど、参加する学生が限定されるもの。
2026年卒の採用活動から、高い専門性をもつ学生に関しては採用選考活動を3か月前倒しで開始できます。
対象は、産学協議会がタイプ分けした4つの取り組みのうち、タイプ3の専門活用型インターンシップに参加した学生のみです。
余裕をもった採用計画と早期化に乗り遅れない動き出しが重要
この記事では新卒採用の動きの一例を紹介しましたが、実際のスケジュールはさまざまです。就職活動をはじめる時期は学生によるので、企業の採用ターゲットに合わせて変わります。
しかし、全体を見ると新卒採用のスタートが年々早まっているのは事実で、26卒採用も例外ではないでしょう。採用の難易度が高まる中、この記事で紹介したほかの企業の動きも参考に採用計画を立ててみてはいかがでしょうか。
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