面接官は素の候補者を見るために緊張をほぐす必要があり、そこで活躍するのがアイスブレイクです。
この記事では、アイスブレイクのトークテーマ13選とその質問例、ポイントやアイスブレイクにおけるNGについて解説します。
面接でアイスブレイクをする理由
アイスブレイクとは、緊張感のある空気を「氷(Ice)」に例え、その雰囲気を「砕く(break)」ことを意味します。アイスブレイクには、その場を和んだ雰囲気にさせ、積極的な発言やコミュニケーションをうながす効果があります。
候補者にとって将来を左右するといっても過言ではない面接では、どうしても緊張してしまって本来の力を出しきれないケースがよくあります。面接官は素の候補者を見るために緊張をほぐす必要があり、そこで活躍するのがアイスブレイクです。
面接前に軽い雑談を挟むことで候補者の本音を引き出し、ミスマッチを防ぎましょう。
面接でアイスブレイクをする際のポイント
トークテーマの紹介の前に、まずは面接でのアイスブレイクを成功させるポイントを5つ説明します。
1.まずは来社(選考参加)のお礼を伝える
もっとも初めに実践すべきは来社のお礼です。オンラインの場合は、選考に参加してもらったことへのお礼を伝えましょう。
面接官の第一印象は候補者にとって最重要です。面接官は候補者の合否を決める立場でもありますが、「候補者から選ばれる立場」でもあるのを忘れてはいけません。
ほかにも、候補者が委縮する気持ちを取り去る役割もあります。「自分は歓迎されている」と感じてもらうことで相手の心理的安全性を担保し、ありのままで面接に臨める状況をつくれます。
オンラインの場合は、通信状況や映像・音声に問題がないかを確認し、聞き取れなかった場合は聞き返して大丈夫であることをあらかじめ伝えておくのをおすすめします。オンラインに慣れていない候補者のなかには、聞き返すのも遠慮してしまう人もいるからです。
2.アイスブレイクは合否に影響しないことを伝える
入室した時点からすでに面接がはじまっていると考え、たとえアイスブレイク中でも返答に詰まる候補者もいます。事前に、アイスブレイクの内容は合否に影響しないことをアナウンスするのがおすすめです。
効果的に相手の緊張をほぐすには、候補者がいま感じている不安を理解し、共感するアプローチが重要です。
3.クローズド・クエスチョンから始める
クローズド・クエスチョンとは、YESかNOで答えられる質問です。回答がふたつしかないので候補者が答えやすく、最初の質問に向いています。
そこから徐々に、回答のしかたが自由なオープン・クエスチョンに移行して、話を展開していきましょう。
例:
本日は電車でいらっしゃったのですか?(YES/NO)
↓
ここまで来るには何線を使うのですか?(○○線です。)
↓
○○線なのですね。もし今回弊社とご縁がありましたら、入社後はストレスなくご通勤できそうですか?私は△△線を使うのですが…
4.面接官も自己開示をする
アイスブレイクでは、話を盛り上げようと、次から次へと質問をしてしまいがちです。しかし、質問攻めは候補者に威圧感を与えるおそれがあります。面接官側からも積極的に自己開示を行いましょう。
ただし、候補者とまったく関係のない自分語りにならないよう注意が必要です。趣味や出身などの共通点を見つけて、広がりやすい話題を選びましょう。
5.あらかじめ時間配分と話すことを決めておく
あらかじめ、アイスブレイクにかける時間とトークテーマを決めておくのがポイントです。
面接時間のうち、アイスブレイクには0.5~1割程度の時間を充てるのが適切といわれています。
面接時間が60分の場合:アイスブレイクは5分、
面接時間が30分の場合:アイスブレイクは3分が目安です。
また、その場の思いつきで話題を選ぶと、思わぬ方向に話がいって時間を大幅に超過してしまう可能性があります。
場をコントロールできるように、トークテーマをいくつか事前にチョイスしておきましょう。
次の章では、具体的な質問例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
アイスブレイクのトークテーマ13選【トーク例も】
では、実際にアイスブレイクで使えるトークテーマを13個、状況別に紹介します。
世間話 | 1.当日の交通手段 |
2.天気や季節、最近のニュースについて | |
3.今日の朝ごはん | |
4.オフィス周辺の土地について | |
候補者自身についての質問 | 5.履歴書に書いてある情報 |
6.休日の過ごし方 | |
7.お気に入りの場所 | |
オンライン面接の場合の アイスブレイク |
8.接続状況や操作方法についての確認 |
9.Web面接やリモートワークに関する質問 | |
グループ面接や グループディスカッションで おすすめのアイスブレイク |
10.GOOD&NEW |
11.「実は○○です」自己紹介 | |
12.共通点探しゲーム | |
13.ヒーローインタビュー |
これらの中から、そのときどきに合わせた話題を選びましょう。
世間話
会話のきっかけには、相手のことを知るための一歩目となるトークテーマがよいでしょう。
1.当日の交通手段
対面形式の面接では、当日の交通手段に関する質問がおすすめです。候補者にとってもつい先ほどのことですので話しやすく、回答に困る必要がありません。
実際に入社したあとの通勤経路や電車の混雑に不安がありそうなら、面接官から混雑しにくい時間帯やルートを教えると喜ばれるでしょう。
・本日は電車でいらっしゃったのですか?
・迷わず来られましたか?
2.天気や季節、最近のニュースについて
アイスブレイクの鉄板ネタに、天気や季節についての世間話があります。相手のことをまだあまり知らなくても気軽に話しやすい話題です。顔を合わせてすぐの導入によいでしょう。
オリンピックやワールドカップなどの、誰もが見聞きしているようなちょっとしたニュースもおすすめです。
・最近涼しくなってきましたね。この時期は服装選びが難しいですよね。
・昨日のワールドカップはご覧になりましたか?すごかったですね。
(オンラインの場合)
・今日こちらは雨で大変なのですが、○○さんの地域はいかがですか?
3.今日の朝ごはん
今日の朝ごはんを聞くのは、とくに午前中の面接やオンライン面接など遠方の候補者に最適です。異なる地域の食文化には新しい発見があるかもしれません。
朝ごはんの話題から食の好みなどについてのパーソナルな質問にも移行できるでしょう。
面接が午後であれば「お昼はどこで食べたのですか?」など、オフィス周辺の土地についての話にも広げられます。
・今日の朝ごはんは何でしたか?
・○○という郷土料理があるのですね。どんな作り方ですか?
・○○を食べたのですね。いつも同じメニューですか?
4.オフィス周辺の土地について
採用後に働くイメージをしてもらうために、企業周辺の土地について話題に出すのもよいでしょう。美味しいお店やランチにおすすめのメニューなどを伝えます。
「おすすめのお店があるので、ぜひ帰りに寄っていってくださいね」と、候補者の気持ちを軽くするような一言も添えられるトークテーマです。
このあとお昼は近くで食べていかれますか?○○というお店のカレーがおすすめなので、ぜひ帰りに寄ってみてください。
候補者についての質問
候補者のパーソナルな部分に一歩踏みこみたいときにおすすめの話題です。
5.履歴書に書いてある情報
すでに履歴書に目を通してある場合は、その内容に基づいたアイスブレイクを実践してみてください。具体的には、趣味や特技、住んでいるところについて質問します。
自己紹介でよく出る話題でもあり、候補者にとっては話しやすく感じられるでしょう。
候補者と趣味や出身が同じなら、共通の話題で親近感をもってもらえます。
また、「履歴書を事前にしっかり見ている」ことをアピールでき、面接官、ひいては企業に対する信頼度を上げる点でも効果があります。
・履歴書に、趣味はギターと書かれていましたね。私も高校時代は軽音楽部でギターを弾いていました。どんなジャンルの曲を演奏するのですか?
・ご出身は○○なのですね。以前、出張で行ったことがあります。
6.休日の過ごし方
趣味や特技と同様に、休日の過ごし方についての質問もアイスブレイクには適切です。自分からも話すことでお互いに自己開示ができます。
長期休みが近い時期であれば、どのような休日を過ごしたかを聞いてみるのもよいでしょう。
・夏休みはどこか行かれましたか?
・普段のお休みはどのように過ごしますか?
7.お気に入りの場所
お気に入りのお店やレジャースポットなどの場所に関する質問は、答えが見つかりやすく、気軽に答えられるトークテーマです。
なぜならば、たとえあまり外出しない人でも「家のリビング」などの回答ができるからです。共通のお気に入りの場所があれば、候補者と話題を共有しやすく、相手の趣味や好みについても知るきっかけとなります。
・お気に入りの場所(お店・レジャースポットなど)はありますか?
・私も○○はよく行きます!特にどんなところがお好きなのですか?
オンライン面接の場合のアイスブレイク
オンライン面接に特有のアイスブレイクをご紹介します。
8.接続状況や操作方法についての確認
相手がスムーズに面接を始められる状況であるかどうかを確認します。
オンライン面接では、誤ってミュートになっている状態に気が付かなかったり、回線やデバイスの不具合で上手く進行できなくなったりすることもあります。
また、最近のWeb会議ツールは多種多様で、ツールによって操作方法が異なります。候補者が初めて使うツールの場合は、操作方法に不安を抱えている可能性も考えられます。
候補者の緊張をほぐすには、「こちらの音声や映像が正確に届いているか」や「操作方法に不安はないか」などについて、相手の視点に立って質問しましょう。
・こちらの音声は聞こえていますでしょうか。画面にも問題はありませんか。
・Web会議ツールの操作方法について、何か不明点はございますか。
9.Web面接やリモートワークに関する質問
オンライン面接では、オンラインでのコミュニケーションに関連した話題もおすすめです。
たとえば、Web面接の経験の有無や、中途採用なら現職でのリモートワークの状況を聞くのがよいでしょう。新卒採用なら、オンライン講義についての質問ができます。
もし候補者がオンライン面接に慣れていない場合、先回りしてケアをすることもできます。
「接続トラブルなどで面接が続けられない場合、このような対応にします」と、トラブル時の対応を事前に伝えておくと、候補者も安心してオンライン面接に臨めるでしょう。
・オンライン面接の経験はおありですか?
・(新卒採用の場合)学校の授業もオンライン形式が多いですか?
・(中途採用の場合)現職ではリモートワークをされていますか?
グループ面接やグループディスカッションでおすすめのアイスブレイク
複数人での面接では、面接官に対してだけでなく、候補者同士でコミュニケーションを取れるようなアイスブレイクがおすすめです。
10.GOOD&NEW
GOOD&NEWとは、24時間以内に起きた「よかったこと(GOOD)」と「新しい発見(NEW)」をひとりずつ発表するアイスブレイクです。
ひとりあたりの発表時間は30秒~1分以内で、発表後には必ず全員で拍手をするのがルールです。
緊張している候補者に、ポジティブなことを考えてもらう時間を設け、明るい雰囲気で面接を始めましょう。
11.「実は○○なんです」自己紹介
多くの場合、面接は候補者の自己紹介から始まりますが、このアイスブレイクでは普通の自己紹介ではなく「実は……」で始まる内容を話すのが特徴です。
「実は」のあとには、初対面の印象からは想像がつかない趣味や特技を入れます。たとえば「実はひとり飲みにハマっています」や「実は学生時代に部活で優勝しました」のような内容です。
このアイスブレイクの目的はあくまでも自己開示と相互理解なので、過度に意外性を求めなくてもよいことを事前に説明しておきましょう。
面接官にとっても、たとえば「実はダンスができる○○さん」など、面接が終わったあとも人とキーワードと紐づけて覚えておくことができる点で、便利です。
12.共通点探しゲーム
二人組になって相手との共通点を探すアイスブレイクです。「○個共通点を見つけられたらクリア」と事前にルールを設けます。
「ゲームをクリアする」という共通のゴールがあるので、初対面でもお互いに遠慮せず相手について深掘りしやすいです。
このアイスブレイクは、単独面接の場合でも、面接官と候補者のあいだで実施できます。一時的に同じ目的に向かって協力することで、候補者に親近感を抱いてもらいやすいでしょう。
13.ヒーローインタビュー
自分の「成功体験」について、他の参加者からの質問を受ける形で紹介するアイスブレイクです。ペア内でインタビュアー(聞き役)とインタビュイー(話し役)に分かれ、インタビュー形式で会話します。
野球などのスポーツで試合後に活躍した選手に対して行われるインタビューのイメージで、インタビュアー役がリアクションをしながら進めるのが特徴です。
時間を決めて話し合い、片方が終わったら役を交換してもういちど行います。
面接前に、候補者に成功体験を思い出してもらうことで、それぞれポジティブな気持ちで自信をもって面接に臨めるでしょう。
アイスブレイクにおけるNG
アイスブレイクにはNGな話題もあります。「これも質問してはいけないの?」という意外なNGもあるので、ぜひ確認して意識するようにしてみてください。
5つ紹介します。
「緊張していますか?」という質問
実は、「緊張していますか?」という質問は、逆に候補者の不安や緊張を煽ることになりかねません。なぜならば、候補者としては「はい」としか答えようがないからです。
それ以上話が広がらないうえに、この質問をされた候補者はさらに緊張を意識し、場合によっては威圧感を感じるかもしれません。
候補者の緊張を感じ取ったら、それはあえて言葉にせずに、前の章で紹介したような話題でアイスブレイクを行いましょう。
合否に影響すると誤解を与えるような質問
たとえば、「弊社を知ったきっかけは?」という質問は、志望動機を聞かれているのかと勘違いする候補者もいます。
ほかにも、「面接はもう何度か受けていますか?」といった質問も、他社の選考状況を聞かれていると思い、候補者が返答に困ってしまうケースが考えられます。
面接官としては気楽に聞いたつもりでも、選考の合否に影響すると勘違いされるような話題はアイスブレイクには向いていません。
ネガティブな時事ネタ
新型コロナウィルスや台風・地震などの自然災害に関連する話は、人によってはネガティブな記憶につながり、不用意に傷つけてしまう可能性があります。アイスブレイクの話題としては避けたほうが無難でしょう。
厚生労働省「公正な採用選考の基本」に抵触する質問
本人に責任のない事項や本来自由であるべき事項について面接で尋ねることは、就職差別につながるおそれがあるとして、厚生労働省「公正な採用選考の基本」 によって禁止されています。
本籍・出生地に関することや家族に関すること、宗教や思想に関することなどを面接の場で質問するのは避けましょう。
面接で聞いてはいけない事項について、こちらの記事もご覧ください。
相手のプライベートに踏み込みすぎる質問
候補者の自己開示を促したいが、プライベートに踏み込みすぎる質問との線引きが難しいと感じる面接官の方もいらっしゃるでしょう。
その際は、「就職差別につながらないか」を基準にして考えるとよいかもしれません。
たとえば、性自認や恋愛対象などに関する質問は避けましょう。ハラスメントになる可能性があるほか、面接官が自分でも気付かない無意識の偏見 によって、排除につながるおそれがあります。
また、アイスブレイクに聞きがちな尊敬する人物や愛読書についても、思想を探る質問になりかねないので注意が必要です。
オンラインでの面接では、たとえ候補者の背景に本棚や趣味のものなどのプライベートゾーンが映り込んでしまっても、家の内部や個人的な話題に触れることは避けましょう。住宅状況や生活環境に関する話題に関わってしまうためです。
「素敵なインテリアですね」や「面白そうな本ですね」といった発言はNGです。
面接前に有効なカジュアル面談
ここまで、アイスブレイクをする際のポイントやトークテーマ、NG例をご紹介してきましたが、候補者とさらに本音でのコミュニケーションを図るなら「カジュアル面談」がおすすめです。
たとえアイスブレイクで十分に緊張をほぐせたとしても、合否が決まる場で候補者の本音を聞くことは難しいでしょう。候補者にとっても、実際の働き方や福利厚生などの面で逆質問をしたくても、面接では聞きにくいかもしれません。
しかし、双方の理解が不十分なまま選考を進めるとミスマッチが起こる可能性は高まります。
カジュアル面談とは、求職者が求人に応募するかどうかがまだ確定していない段階で行われる面談で、企業と求職者が気軽にお互いのことを知れる場です。
面接前にカジュアル面談で相互理解を深め、ミスマッチの防止に加えて志望度アップが期待できます。
株式会社学情が2023年8月に20代社会人を対象に実施したアンケート調査では、カジュアル面談に参加したことで「志望度が上がった」とする回答が7割に迫りました。
引用:株式会社学情 2023年8月アンケート調査(https://service.gakujo.ne.jp/jinji-library/report/230808)
まとめ
アイスブレイクは候補者の緊張をほぐし、積極的な発言やコミュニケーションをうながす効果があります。正当な評価やミスマッチを防ぐため、面接前にアイスブレイクを行って候補者の本音を引き出しましょう。
ミスマッチに悩んでいる方は、ぜひカジュアル面談の導入も検討してみてください。
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