ポリティカルコレクトネス(ポリコレ)とは?企業が取り組むべき理由や
採用活動で気をつけるポイントを紹介
2023.10.18
「ポリティカルコレクトネス」略して「ポリコレ」という言葉を時折耳にするものの、どのような意味なのかわからず困っている人は少なくありません。企業の担当者であれば、社内外で起き得る問題を未然に防ぐために、ポリティカルコレクトネスについて学ぶ必要が出てきたかもしれません。
本記事では、ポリティカルコレクトネスの概念を具体的な事例を交えて紹介し、企業がどのように対処すべきかを解説します。ぜひ参考にしてください。
ポリティカルコレクトネスとは?
ポリティカルコレクトネス(political correctness)は、特定の要素を持った人々やグループに不快感や不利益を与えないための対策です。直訳すると「政治的な正しさ」となり、「ポリコレ」と略されることがあります。差別的・軽蔑的な意味を持つ言葉を避けて、中立的な表現を使うことを目指します。
ポリティカルコレクトネスが言葉や表現に影響を与えた例としては「看護師」という言葉があげられます。以前は女性を「看護婦」、男性を「看護士」と呼び分けるのが一般的でした。しかし、この使い分けは特定の性別に対する偏見を強化する恐れがあるとして、現代では「看護師」で統一されています。
ポリティカルコレクトネスが注目されている理由
ポリティカルコレクトネスは、1990年代にアメリカで提唱され、広まりました。近年、注目されている理由は「世界的な多様性への意識の高まり」にあります。
多様性を尊重することで、異なるバックグラウンドを持つすべての人が自分らしい生活を送り、能力を最大限に発揮できます。こうした社会を築くためにポリティカルコレクトネスが注目を浴びているのです。
過去にはマイノリティな人々やグループに対する差別や偏見が広く存在していたことから、すべての人に配慮したより中立的な表現が求められています。
しかし、行き過ぎたポリティカルコレクトネスは「息苦しい社会を作っているのではないか?」「表現を制限しているのではないか?」とたびたび批判されているのも事実です。
ポリティカルコレクトネスの具体例
ポリティカルコレクトネスに該当するおもな具体例を紹介します。
人種の表現
ポリティカルコレクトネスの代表的な事例として、人種における表現があげられます。
人種差別につながらないように、昨今では、北米の先住民族「インディアン」は「ネイティブアメリカン」、「黒人」は「アフリカ系アメリカ人」という表現が使われるようになっています。
性別に関する表現
ポリティカルコレクトネスの影響から、性別に関する表現も変わりつつあるのが現状です。
たとえば、「カメラマン」は「フォトグラファー」、「スチュワーデス」は「フライトアテンダント」もしくは「キャビンアテンダント」といったように、性別を連想させない名称に変更されています。
また、学校や企業でも、名前の後につける敬称を性別で分けずに、すべて「〜さん」で統一する動きが広がっています。
性的指向や宗教に関する表現
さまざまな性的指向が存在するなか、かつては性的マイノリティが非難・侮辱されるケースがありました。
しかし、現代では性的マイノリティを受け入れる考えが広まっており、LGBTQ+コミュニティの人々を尊重し、「同性愛者」「トランスジェンダー」といった適切な言葉の使用が求められています。
また現代社会では、宗教の違いによる差別も回避すべきです。宗教の多様性を認識し、他人の宗教的な信念を尊重する姿勢が重要とされています。
年齢や出生に関する表現
ポリティカルコレクトネスの例として、年齢や出生に関する表現もあげられます。年齢に基づく差別的な表現や、出生地をもとにした評価を避ける取り組みが広まっています。
たとえば「シニア」といった言葉は、年齢に基づく差別的なイメージを回避するために使われることがあります。
また、出生地による差別や偏見を避けるため、「仲間以外の人」という意味がある「外人」を「外国人」や「〇〇出身の○○さん」などと尊重する表現が使用されています。
企業がポリティカルコレクトネスに取り組む必要性
企業がポリティカルコレクトネスを意識した取り組みを行うことで得られるおもな必要性は、次のとおりです。
社内外からの信頼を獲得
企業がポリティカルコレクトネスに継続的に取り組めば、社内外からの信頼を獲得できます。
従業員が自身のアイデンティティを尊重されていると感じられる環境を作り出すことで、従業員の満足度や帰属意識を高められます。その結果、従業員のモチベーションが向上し、生産性の向上を期待できます。
また、社外からの信頼を獲得するためにも、ポリティカルコレクトネスへの取り組みは重要です。消費者や投資家などのステークホルダーは、企業が多様性と包括性を尊重し、差別や偏見を排除する姿勢を持っていることを好意的に評価する傾向があります。ポリティカルコレクトネスに取り組むことによって、企業のブランド価値が向上し、市場での競争力の強化につながるでしょう。
新たなイノベーションの創出
ポリティカルコレクトネスを通じて多様性を尊重し、異なるバックグラウンドを持つ人材を集められると、多角的な視点に基づく問題解決や新たなイノベーションが生まれる可能性があります。
既存の枠組みを超えて画期的なアイディアや技術、製品、サービスを創り出すことが可能となり、新しい事業拡大につなげられるかもしれません。
従業員のモチベーション向上
企業がポリティカルコレクトネスを意識することで、従業員の間での差別や偏見が少なくなることが期待できます。
マイノリティの人々のなかには、自分の指向が周囲に受け入れられないという不安を感じ、心を閉ざしてしまうことがあります。その点、多様性を認める環境が整っていれば、心理的安全性を感じられるでしょう。
その結果、従業員のモチベーションが向上するだけでなく、多様な意見交換が促進され、新しいアイデアも生み出されやすくなります。
人事担当者が気をつけるべきポリティカルコレクトネス
ポリティカルコレクトネスの取り組みで、人事担当者が気をつけるべきポイントを解説します。
求人広告掲載
求人広告を作成する際には、差別やハラスメント、偏見につながらないような文言や条件になっているか考慮する必要があります。
具体的なポイントは次のとおりです。
- 性別による服装の指定はしない
- 性別記入欄に「その他」や「無回答」の選択肢を設ける
- 性別の記入欄自体を省略する
こうした点に配慮した適切な対応をしないと、有望な人材を逃すだけでなく、極端な場合はSNS上での批判や炎上につながる可能性もあるので注意が必要です。
応募書類の審査
応募書類を審査する際には、候補者の属性に基づく偏見を排除し、公平な評価を心がけることが重要です。
たとえば「女性だから不採用」「日本人でないから不採用」といった差別的な判断を避けて、個人の能力と経験を公平に評価しましょう。
採用面接
採用面接の際には、差別的な質問を避けることが重要です。本籍地や出生地、家族の状況や財産などのプライベートな情報を聞き込むのは避けましょう。
また、思想や政治信条、信仰についての質問も避けるべきです。これらは本来自由であるべき事項で、企業が介入するべきではありません。
昇進・人事評価
採用業務だけでなく、現在の組織内の人員に関しても、性別や年齢、人種などで人事評価差別が存在しないか確認することが大切です。
能力や実績と関係のない属性によって評価が左右される状況は、ポリティカルコレクトネスの目的に反するものと言えます。
また、組織内の従業員がポリティカルコレクトネスに反した差別やハラスメントを行っていないかどうかもチェックする必要があります。従業員にポリティカルコレクトネスの重要性を伝えるための研修の実施なども視野に入れましょう。
ポリティカルコレクトネスに配慮して企業の多様性を高めよう
多様な人材が安心して働ける環境を整えるために、企業はポリティカルコレクトネスを取り入れる必要があります。ポリティカルコレクトネスへの取り組みは、差別や偏見の排除を促します。
企業は特定の属性や背景を理由にした差別的な行動や発言を防ぎ、すべての従業員に平等な機会を提供するよう心掛けることが大切です。個人を尊重した、偏見のない組織作りに努めていきましょう。
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